元帝王はありふれた世界で暴れまくる   作:紙の子

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第21話

現在、ホアルド支部にいた

本来なら素通りしてもよかったのだが、フューレンのギルド支部長イルワから頼まれごとをされたので、それを果たすために寄り道したのだ。

 

そこで元クラスメイトの遠藤に出会い、勇者組が苦戦、更に遠藤を逃がすためにメルドや騎士団が殺されたらしい。

そして奥から現れた支部長に呼ばれ連れていかれる。

 

 

 

 

 

 

「……魔人族……ですか」

 

 

 

冒険者ギルドホルアド支部の応接室にハジメの呟きが響く。対面のソファーにホルアド支部の支部長ロア・バワビスと遠藤浩介が座っており、遠藤の正面にハジメが、その両サイドにユエとシアがシアの隣にティオが座っている。ミュウは、ハジメの膝の上、王牙は壁にもたれて見ている。

 

遠藤から事の次第を聞き終わったハジメの第一声が先程の呟きだった。魔人族の襲撃に遭い、勇者パーティーが窮地にあるというその話に遠藤もロアも深刻な表情をしており、室内は重苦しい雰囲気で満たされていた。

 

……のだが、ハジメの膝の上で幼女がモシャモシャと頬をリスのよう膨らませながらお菓子を頬張っているため、イマイチ深刻になりきれていなかった。ミュウには、ハジメ達の話は少々難しかったようだが、それでも不穏な空気は感じ取っていたようで、不安そうにしているのを見かねてハジメがお菓子を与えておいたのだ。

 

「つぅか! 何なんだよ! その子! 何で、菓子食わしてんの!? 状況理解してんの!? みんな、死ぬかもしれないんだぞ!」

 

「ひぅ!? パパぁ!」

 

場の雰囲気を壊すようなミュウの存在に、ついに耐え切れなくなった遠藤がビシッと指を差しながら怒声を上げる。それに驚いてミュウが小さく悲鳴を上げながらハジメに抱きついた。

 

当然、ハジメから吹き出す人外レベルの殺気。パパは娘の敵を許さない。

 

「遠藤君……何、ミュウに八つ当たりしてるの?殺すよ」

 

 

「ひぅ!?」

 

ミュウと同じような悲鳴を上げて浮かしていた腰を落とす遠藤。両隣から「……もう、すっかりパパ」とか「さっき、さり気なく〝家の子〟とか口走ってましたしね~」とか「果てさて、ご主人様はエリセンで子離れ出来るのかのぉ~」とか聞こえてくるが、ハジメは無視する。そんな事より、怯えてしまったミュウを宥める方が重要だ。

 

 ソファーに倒れこみガクブルと震える遠藤を尻目にミュウを宥めるハジメに、ロアが呆れたような表情をしつつ、埒があかないと話に割り込んだ。

 

「さて、ハジメ。イルワからの手紙でお前の事は大体分かっている。随分と大暴れしたようだな?」

 

「まぁ、全部成り行きです。それに1番暴れているのは王牙ですが」

 

成り行き程度の心構えで成し遂げられる事態では断じてなかったのだが、事も無げな様子で肩をすくめるハジメに、ロアは面白そうに唇の端を釣り上げた。

 

「手紙には、お前の〝金〟ランクへの昇格に対する賛同要請と、できる限り便宜を図ってやって欲しいという内容が書かれていた。一応、事の概要くらいは俺も掴んではいるんだがな……たった半日でフューレンに巣食う裏組織の壊滅……にわかには信じられんことばかりだが、イルワの奴が適当なことをわざわざ手紙まで寄越して伝えるとは思えん……もう、お前が実は魔王だと言われても俺は不思議に思わんぞ」

 

「僕をそんな雑魚と一緒にしないで下さい。それに僕よりも王牙の方が魔王が合ってますよ」

 

「ふっ、魔王を雑魚扱いか? 随分な大言を吐くやつだ……だが、それが本当なら俺からの、冒険者ギルドホルアド支部長からの指名依頼を受けて欲しい」

 

「……勇者達の救出ですか?」

 

遠藤が、救出という言葉を聞いてハッと我を取り戻す。そして、身を乗り出しながら、ハジメに捲し立てた。

 

「そ、そうだ! 南雲! 一緒に助けに行こう! お前がそんなに強いなら、きっとみんな助けられる!」

 

「……」

 

見えてきた希望に瞳を輝かせる遠藤だったが、ハジメの反応は芳しくない。遠くを見て何かを考えているようだ。遠藤は、当然、ハジメが一緒に救出に向かうものだと考えていたので、即答しないことに困惑する。

 

「どうしたんだよ! 今、こうしている間にもアイツ等は死にかけているかもしれないんだぞ! 何を迷ってんだよ! 仲間だろ!」

 

「……仲間?」

 

ハジメは、考え事のため逸らしていた視線を元に戻し、冷めた表情でヒートアップする遠藤を見つめ返した。その瞳に宿る余りの冷たさに思わず身を引く遠藤。先程の殺気を思い出し尻込みするが、それでも、ハジメという貴重な戦力を逃すわけにはいかないので半ば意地で言葉を返す。

 

「あ、ああ。仲間だろ! なら、助けに行くのはとうぜ……」

 

「何勘違いしてるの?僕は1度も君達を仲間だと思ったことは無いよ」

 

「なっ!? そんな……何を言って……」

 

ハジメの予想外に冷たい言葉に狼狽する遠藤を尻目に、ハジメは、先程の考え事の続き、すなわち、光輝達を助けることのデメリットを考える。

 

そして黙って聞いていた王牙が口を開く。

 

「おい遠藤……白崎や八重樫は無事か?」

 

「あ、ああ。白崎さんや八重樫さんは無事だ。っていうか、彼女がいなきゃ俺達が無事じゃなかった。最初の襲撃で重吾も八重樫さんも死んでたと思うし……白崎さん、マジですげぇんだ。回復魔法がとんでもないっていうか……あの日、お前が落ちたあの日から、何ていうか鬼気迫るっていうのかな? こっちが止めたくなるくらい訓練に打ち込んでいて……雰囲気も少し変わったかな? ちょっと大人っぽくなったっていうか、いつも何か考えてるみたいで、ぽわぽわした雰囲気がなくなったっていうか……

八重樫さんもあれからメルドさんと光輝以上の訓練をして今ではメルドさんを超える人材になってるよ」

 

「……そうか」

 

聞いてないことも必死に話す遠藤に、王牙は一言そう返した。そして、頭をカリカリと掻きながら、傍らで自分を見つめているハジメを見やる。

 

「……助けたいんでしょ王牙君?」

 

「……あぁ、流石にアイツらを見捨てる訳にはいかないからな」

 

「なら行こうか。助けに」

 

「いいのか?お前らにメリットは無いぞ?」

 

「それでもだよ」

 

そう言うとハジメは立ち上がった。ミュウをティオに任せて。

 

「ティオはミュウをお願い。流石に戦場に連れてはいけないから」

 

「かしこまりました」

 

「パパ!早く帰って来てね!」

 

「うん、直ぐに終わらせてくるよ」

 

ハジメはそう言い残して、王牙と共に部屋から出ていった。

 

『おら遠藤!さっさと案内しやがれ!!』

 

扉越しに王牙が叱り催促させる。

 

 

 

 

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