エリセンは海の町。
海人族が王国から保護を受けている土地だ。
砂漠の端の港からエリセンへ船で向かう必要性がある訳だが、ハジメの錬成で船を造りエリセンの港まで移動している。
しかし、港に到着するもトライデントを突き出した複数の男共が激しい音を立てながら一斉に海の中より現れたのだ。
その数は約20人くらい、エメラルドグリーンの髪と扇状のヒレの如く耳を持った海人族であると判る集団である。
「お前達はいったい何者だ? そして、どうして此処に居る? その乗っている物は何だ?」
取り敢えずは今の一触即発の状況を打開したいと考え、王牙とハジメに代わってウサミミを揺らしながらシアが海人族へ答えようとした。
「あの、その……少し落ち着いて下さい。えっと、私達はですね……」
「黙れっ! たかが兎人族如きが勝手に口を開くなど何様の心算だ!?」
兎人族の地位は樹海の外の亜人族の中でも低いらしく、海人族の男は答えたシアに対して怒鳴り散らしてくる。
海人族から見れば舐めた態度でしかないが故に意地があり、他の亜人と違い差別対象として視られていない矜持からか槍の矛先はシアへと向き、凄まじいまでの勢いで突き出された。
「ねぇ、僕達はミュウを助けてあげたのにその態度は何なの?……そんなに死にたいの?」
ハジメはドンナーを構えながら海人族に向ける。
流石に力の差を理解しているのかトライデントを収めたのでハジメもドンナーをしまう。
「ミュウ。君の家はどの辺かな?」
ハジメは上空に飛ばしているドローンの映像をミュウに見せながら家の場所を聞く。
「あ、これなの!」
ミュウが指した家の屋根の色や形を覚えてハジメを先頭に王牙達はミュウの母親の元に向かった。
家の前に到着した俺様達はドアをノックして家主がいるか確認する。
すると中から声が聞こえドアが開く。
「ママーーッ!!」
「ッ!? ミュウ!? ミュウ!」
開いた瞬間ミュウは若い女性に飛び込み抱きつく。
もう二度と離れないという様に固く抱きしめ合う母娘の姿に、周囲の人々が温かな眼差しを向けている。
レミアは何度も何度も、ミュウに「ごめんなさい」と繰り返していた。それは目を離してしまった事か、それとも迎えに行ってあげられなかった事か、或いはその両方か。
娘が無事だった事に対する安堵と守れなかった事に対する不甲斐なさにポロポロと涙をこぼすレミアに、ミュウは心配そうな眼差しを向けながらその頭を優しく撫でた。
「大丈夫なのママ、ミュウはここにいるの。だから大丈夫なの」
「ミュウ……」
まさかまだ四歳の娘に慰められるとは思わず、レミアは涙で滲む瞳をまん丸に見開いてミュウを見つめた。
再び抱きしめ合ったミュウとレミアだったが、突如ミュウが悲鳴じみた声を上げた。
「ママ! あし! どうしたの! けがしたの!? いたいの!?」
どうやら、肩越しにレミアの足の状態に気がついたらしい。彼女のロングスカートから覗いている両足は包帯でぐるぐる巻きにされており、痛々しい有様だった。
「パパぁ! ママを助けて! ママの足がいたいの!」
「えっ!? ミ、ミュウ? 今、なんて……」
「パパ! はやくぅ!」
「あら? あらら? やっぱり、パパって言ったの? ミュウ、パパって?」
混乱し、頭上に大量の"?"を浮かべるレミア。
「う〜ん……僕は治療魔法を持ってないし……」
……仕方ない。
「ミュウ。少し離れてな」
「王牙お兄ちゃん?」
「安心しろ!俺様が治してやるから。ハジメ、レミアを運べ」
「う、うん!少しごめんなさい」
「え? ッ!? あらら?」
ハジメはヒョイッと全く重さを感じさせずにレミアを抱き上げると、ミュウに先導してもらいレミアを家の中に運び入れた。レミアを抱き上げた事に背後で悲鳴と怒号が上がっていたが俺様の殺気で黙らし無視した。当のレミアは、突然抱き上げられた事に目を白黒させている。
ソファーにレミアを座らせた後、俺様は上着をレミアの膝に被せる。
好きでもない女の下着を見る気はないからな。
そして包帯を解き足の容態を見る。
(……何故か復活した光の力。ここで試してみるか)
両手に光の力を集めてレミアの足に少しずつ流し込む。
すると火傷で
ボロボロになった皮膚が徐々に再生していき、傷一つ無い綺麗な足に戻った。
「ほらよ。これでいいだろう」
「……ぇ?」
信じられないものを見たという表情で自分の足を眺めるレミア。
「あらあら、まあまあ。もう歩けないと思っていましたのに……何とお礼を言えばいいか……」
「気にするな」
「えっと、そういえば皆さんは、ミュウとはどの様な……それにその、……どうしてミュウは、彼の事を"パパ"と……」
レミアの当然と言えば当然の問いかけに、俺様は経緯を説明する事にした。フューレンでのミュウとの出会いと騒動、そしてハジメをパパと呼ぶ様になった経緯など。全てを聞いたレミアはその場で深々と頭を下げ、涙ながらに何度も何度もお礼を繰り返した。
「本当に、何とお礼を言えばいいか……娘とこうして再会できたのは、全て皆さんのおかげです。このご恩は一生かけてもお返しします。私に出来る事でしたら、どんな事でも……」
「そうだな。……なら宿を探しているんだが……当面泊まってもいいか?」
「はい。幸い家はゆとりがありますから、皆さんの分の部屋も空いています。エリセンに滞在中は、どうか遠慮なく。それにその方がミュウも喜びます」
「なら有難くそうさせてもらうぜ」
その後ハジメに変わり今後のミュウの事についてレミアと話をしている。
本来ならここでさよならのつもりだったがミュウがハジメと離れたくないと駄々を捏ね、レミアも何だかんだでハジメに興味を引かれたのか一緒に居ても良いと言う事になった。
「そう言われても……レミアさんも何か言ってくださいよ」
「私も夫を亡くしてそろそろ五年ですし……ミュウもパパが欲しいよね?」
「ふぇ? パパはパパだよ?」
「うふふ、だそうですよ。パパ?」
ユエ達は絶対零度の視線でハジメを見つめるが、当の本人は頭を掻いて困ったように笑っているだけだ。
すると家のドアが開き1人の青年が入ってきた。
その青年に俺様は驚きの顔をする。
「レミアさん。頼まれた物を買って……父さん…」
「……ジード」
ウルトラマンジードだった。
何故ジードがトータスに居るのか聞くと、この世界に俺様の遺産、デビルスプリンターがあるらしくそれを回収するためにジードは来たらしい。
そして見知らぬ星をひたすら歩き続け疲労で疲れ果てた時にレミアの家の前で倒れていたのを助けて貰いお礼にと手助けをしているらしい。
「それで父さんは何でこの世界に?」
「俺様はお前に倒された後、人間として生まれ変わった。今はこの世界の神(笑)に強制召喚されてここにいる」
「へぇ〜」
俺様とジードの会話中ハジメ達は誰?と言った顔をしており、香織と雫からはハイライトが消えた瞳をしている。
「初めまして。僕の名は朝倉リク。M78星雲光の国の戦士、ウルトラマンジード。そして父さん、ウルトラマンベリアルの息子です」
『王牙(君)の息子?!』
ジードの正体に全員驚愕の声を上げる。
まぁ驚くわな。
俺様はそんな事よりもデビルスプリンターとか言うのが気になる。
「それで?その俺様の遺産は何処にあるか分かったのか?」
「まだ何とも……」
「……なら俺様も探すのを手伝ってやる」
「父さん!」
こうしてデビルスプリンターを探す旅と迷宮攻略と言う目標がひとつ増えた。
その後……
「じゃあリク君は私と雫ちゃんがお母さんになるのかな?」
「はぁ?!」
夕食を食べ終えのんびりしていると香織が突然変なことを言い出す。
「だってリク君は王牙の息子。
そして私と雫ちゃんは王牙君の恋人だから将来的にはリク君は私たちの息子になるんでしょ?
それじゃあリク君!」
「え、えぇ……」
流石のジードも香織のテンションに着いて来れないのか苦笑いしている。
香織は香織でお母さんと呼んで欲しいのか満面な笑みでジードを見つめている。
こういう時にしっかり者の雫が香織を抑えてくれるはずなのだが……
「王牙君の子供……この年でお母さん……」
ダメだ……トリップしてやがる……。
「お、お母さ……ん」
ジードが恐る恐ると口を開く。
「うん!リク君!!」
ジードの言葉に笑顔全開で抱きつく香織。
ジードも戸惑いながら、それでも嬉しそうに抱きしめ返していた。
正直面倒なのでさっさと席を外れた。