エクシヴァルワールド ヒーローズ   作:銀祐

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灰塵≒攻勢

難民キャンプで再び起きた惨劇から帰還した祐誠たちXVGSであるが香澄、レオナ、ハルカの3人は難民キャンプで起きてしまった出来事でのショックから自室に閉じこもっていた。一方の祐誠達は生体兵器の正体が難民である事から戦意を喪失し、状況を悪化させた罰として謹慎を言い渡され、それぞれ独房へと入る事にした

 

香澄のいる自室では、メンタルが弱いせいか起きてしまった惨劇の影響でベッドの上で体育座りをしていた。そこへ誰の呼びかけにも応じないカウンセラーの資格を持つキアラが現れる

 

「……何しに来たんですか?」

 

「あのようなおぞましい光景を見られて辛そうだったから私がカウンセリングに来ました」

 

「……祐誠くんや蘭穂ちゃん達は?」

 

「彼等はマスターが謹慎処分を下して独房にいます。あなたのようなメンタルの弱い人たちを除いてね…」

 

自分達のせいとはいえ、余りにも惨たらしくおぞましい光景を見てしまった事や自分達は一体何のために戦っているのか分からなくなってしまった事で収集が着かなくなった末に寝込んでしまいそうになるのも無理もない状態に陥ってしまった香澄に対し、カウンセリングを行うキアラだが香澄は祐誠達は今どこにいるのかと問い、アレスが謹慎処分を下して独房に入れた事を返答する

 

「さあ、楽にしてください……私で良ければお力になりますよ……」

 

そう言ったキアラに対し、香澄は難民キャンプでの惨劇を洗いざらい話した。生体兵器の正体が難民であり、その難民たちをキアラやエッちゃん、そしてアレスが無条件で殺戮していた事を……

 

「一度生体兵器に成り果ててしまったら二度と元には戻れません、彼等を救う方法があるとしたらそれは…一思いにあの世へ逝かせる事になります。それに彼が私達に抗議するのは他でもなく自分が良識人だと自惚れていましたね」

 

キアラの言ってた事は言うまでもなく救出が不可能で、最終的には倒さなければならないと言うものであり、祐誠たちが止めようとするべく講義をしたのは他でもなく歪んだ正義に囚われていたと香澄に向けていた

 

「はい…祐誠くん達がそうとも知らずに倒してしまった事でどうしたらいいのか分からなくなるくらい、情緒不安定で正常な考えが不可能になるほど錯乱してました…」

 

「成程、あなた達の言い分はよくわかりました。この際だからある事を言わせてもらいましょう、人を善の心だけにする事は出来ません。何故なら間違った善は悪、つまり独善というものになります」

 

キアラにその事を聞かされた香澄は絶句する。何故なら間違った善は悪と変わらなくなる、つまり独善というものになるからだ。正確に言うなら善の心だって暴走する事になってしまう。言うなれば自分達XVGSが戦うべき相手であるオレイワルドスと変わらないという訳だ

 

「私達…オレイワルドスと同じような事をしてるなんて…一体私達は何のために……」

 

「人は取り返しのつかない過ちという闇を抱えながら生きています……ですが自分を見失ってはいけません。独善から解放するためには今後のあなた達の行動次第になります」

 

香澄にそう静かに語りかけ数十分後、レオナとハルカのカウンセリングの為、部屋を離れたキアラ…香澄ひとりだけになる

 

「取り返しのつかない過ちと言う名の闇を抱えながら自分を見失わずに生きる…」

 

そう思った香澄はこれから自分達は何をすればいいのか考えた…

 

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それから祐誠達は仲間らと引き離され狭い独房で自分達のしていた事を振り返っていた

 

(難民たちは結局僕達の事を許せなかった…僕達が関わったせいであのような惨劇を引き起こしてしまった…そういう風に憎しみが憎しみを呼ぶような争いを僕たちはやってはいけないと思っていた…でも本当は…僕達が嫌う怒りや憎しみに囚われた輩を生み出した事から自分勝手な正義を信じ込んで理解せず逃げたのかもしれない…僕達が関係なく誰かを巻き込んで被害に及ばせて、それで誰かに憎悪を向けられて…だから僕達はそういった憎悪に囚われた輩を無条件で悪とみなして粛清しようとしていた…今までの戦いだって僕達のやってきた事で間接的に非業の死を遂げた人達もいたと思う…きっと、これからもこういう事は起こる…。僕達は…どうすればいいんだろう…)

 

今思えば自分達がデザストロイアに訪れた事から独力で治安維持をすること自体が時間の無駄である事やもっと早く彼等の事を知ってサンジェルマン・ファウンデーションに訪れたらこんな事にはならなかったと自省の念を持って呟いた祐誠だった

 

(あの少年の苦しみや悲しみが何となくわかった気がした、俺達が正義の味方を気取ってギャラルホルンを解体しちまったせいで家族を失ってしまった…当然の報いだよな、許されない事をしでかしたんだから……)

 

あの時難民たちの事をよく考えず理解しなかった事や少年の苦しみや悲しみを知って置けばこんな事にはならなかったと自責の念に駆られたヒュウガも自分がしていた事を後悔していた

 

(はぁ…俺達は一体何をやってしまったんだろう…?俺達XVGSはオレイワルドスのような脅威から人々を守るために奮闘したがまさか気付かないうちに慢心してこのような事になってしまうとは…これから俺達はどうやってそうならないようにすればいいんだろう…?」

 

そう呟いたリョウマだけではなく、他の仲間たちも自責の念を持って後悔していた…

 

未だに自らの過ちを正当化する道を探すしか知らない愚者は答えに辿り着けず、無駄に言葉を並べるだけしかできない…

 

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サン・ジェルマンファウンデーション、同特務医療機関…その中にある厳重なセキュリティが施された廊下を歩くのはCEOを務めるアレス・ルセディス…いくつもの隔壁を通過し止まった

 

“網膜および虹彩認証…クリア、声紋認証します、氏名をどうぞ”

 

「アレス・ルセディス……」

 

“ロックを解除します…ようこそラファエルへ”

 

隔壁シャッターが開き中へ自動で床が進む…内部は様々な研究セクションが階層ごとに分かれ生体医工学、ナノテクノラート、新エネルギー等の部門が置かれ職員が忙しく働く姿が見える…中央エレベーターシャフトに入り最下層へ到着し自動扉を静脈認証鍵で開いた

 

「病人以外はお断……来たかマスター」

 

「アスクレピオス、どうなった」

 

「…例の患者“クランケ”なら問題ない…」

 

ぶっきらぼうに応えるボサボサの白髪、鋭い目つきだが目の下に隈を作った青年が空間ディスプレイを起動し、指で弾き見せたのは、先の難民キャンプで生体兵器と半ば変わりながら巨大兵器の生体パーツとして組み込まれた少年がベッドて数人の医療スタッフに取り押さえられながら暴れる姿だ

 

『うわああああ!殺してやる!殺してやる!離せええ!!』

 

「…すべて正常値だ…精神がまだ安定してないが…今は眠らせてある」

 

「………わかったことは?」

 

「…クランケから唯一採取出来たサンプル、死体を解析した結果、特殊な細胞が確認された……短期間で正常な細胞に入り込み遺伝子レベルでの形質変態を引き起こし獣化現象を引き起こしつつ脳幹及び原始脳にあるR領域に特殊なプリオンネットワークを形成、特定の思念に感応し意のままに操る獣化マテリアルと仮称する……まるで女王に無条件で従う働きバチみたいにな」

 

解剖されたサンプル…脳のSDモデルを出しながら説明するアスクレピオス…その手が止まる

 

「…だが疑問がある…なぜあの患者だけが脳まで冒されなかったかがわからない……なぜ助けた?」

 

「……人であろう藻掻いていた…それだけだ」

 

「……どこに行く?」

 

「……面会に」

 

「どうなっても私は責任は取らないぞ…」

 

アスクレピオスの言葉を聞きながらし向かうのは例の少年がいる病室…無言でロックを解き入ると寝かされた彼の目が開き辺りを見回し、アレスの姿を捉えた

 

「ようやく目が覚めたか…」

 

「何でオレを生かしたんだよ!?…親父やお袋、妹も居なくなったこんな世界に生きてたって意味がないんだよお!」

 

少年は怒りの声を張り上げ、果物ナイフを手にしアレスに振りかぶる…が果物ナイフを素手で掴み奪い取ると床に転ばせた…キッとにらみつけてくる

 

「…死にたければ勝手にしろ…お前の家族は誰ひとり浮かばれない…」

 

「お、お前なんかに何が分かるんだよ!?」

 

「わかりたくもない。理解したくもない…憎いかオレが?……殺したいか?無理だな、力もない、ただ見てるだけしか出来なかった無力な子供だ……」

 

「…!?」

 

「……お前からすべてを奪ったのは誰だ?お前の父親、母親、妹が死んだ原因は?…ありふれた日常を壊したソイツらを許すな…こんな世界にした奴らをどうしたい?…」

 

「…してやる…そいつらに復讐してやる……ブッ潰してやる!XVGSを…オレが!!アンタも!!」

 

「…なら、力を手に入れてみせろ…ココにはそれがある…」

 

怒りの眼差しを向ける少年を一瞬。哀しみの色でみたあと背を向け病室をあとにした…が気配を感じ振り返るとアスクレピオスが眉間にシワを寄せツカツカと歩き出しながら口を開く

 

「…ルセディス、何故だ?」

 

「憎しみは生きる糧になる…良くも悪くもな…」

 

「重ねてるんじゃないだろうな?嘗ての君とあの少年を」

 

“じいちゃん、母さん、マユ、リム姉さん…う。うわああああああああああああああ”

 

「…それで何か有力な情報は…?」

 

4つ銃声、血の海に沈む老人、女性、小さな女のコの前で膝を突き血の涙を流す子供がよぎる…振り払うと話しを逸らすようにアスクレピオスに問いかける

 

「先の生体兵器の蔓延を防ぐにはデザストロイアに潜み運用する奴等の拠点を見つけ、獣化マテリアルを入手だ……」

 

「……山の翁にも探らせる…あとキアラとエッちゃんをあの少年につけさせる…」

 

「わかった」

 

アスクレピオスの返答は難民キャンプの惨劇を引き起こした“獣化兵器”の蔓延を防ぐため、デザストロイアに潜むオレイワルドス拠点探索、獣化マテリアルを入手…アレスは打てる手を打つために動き出した……

 

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一方その頃、レガシードルでの戦いを終えてグランストレーガーに乗って祖国であるグランドストライアに帰還したユウキ達はグランセイロスから南にあるXVGSの鎮守府である人物が連絡し、乗せる事になった。その人物はギンユウ、リュウジ、スミア、ナズサ、ヒイロ、チハヤの6人だった、ユウキ達は一体何があったのかギンユウ達と話したが…

 

【グランストレーガー 艦橋】

 

「グランストライア全土に被害があったんですか!?」

 

「ああ。俺達は奴等の対応を怠った事や取り返しのつかない大失態を犯してしまい、降格処分を言い渡された…失敗して嘆きたいのは上層部とて理解しているが、事態は深刻を極めている」

 

「私達がいない間に色々とやってくれましたね…一体誰がこんな事を?」

 

グランストライア全土が受けた被害が及んだことを言われて驚愕するユウキに自分達がこのような事を招いてしまい、司令官の座を降ろされてしまった事を悔やむギンユウ。そして自分達がいない間にこんな事をしでかしたのか気になるティアナだが、そこへタスクがギンユウにある事を問いかける

 

「ギンユウ、その前に今のXVGSを議題にするつもりでいた。ここ最近のXVGSは何故かオレイワルドスと同類とみなされている。レガシードルから帰還した君達の行動原理を見れば上辺だけの綺麗事ばかり夢想しているせいか自分たちは正しい、何をしても悪くない、勝てば正義、負ければ悪…だからこそあんな監獄都市を作り、逆らえば断じて連座まったなし。良識ある人間の声を聞かず、他世界にちょっかいを出してるだけというどこぞ時空管理局とてんで変わらないという意見がXVGS内に殺到しているそうだ。それだけではなく問題は君達があまりにも履き違えた結論で自分達の首を絞めている事は分かっているな?」

 

タスクがどことなく刺々しい口調で口を開きながら今のXVGSがこんな有様になっているのかをレガシードル帰りのユウキ達に伝え、ギンユウ達に向けていた。本来オレイワルドスと戦うはずのXVGSがいつの間にかそれらと同じようになっている、何故このような妄執に囚われてしまったのか、綺麗事ばかり並べて、不利になれば自己養護するしかできない現状では平和は来ない事を思い知らされるのも無理もなかった…

 

「…それじゃあ俺達はこれから先どうすればいいんだ?」

 

「そうよ!私達このまま奴等と同類なんて死んでも嫌になるわ!!」

 

「タスクの言う通り俺達は自分達が正義と信じ、相手を理解せず逃げ、事情も知らず、意見も聞かず、力任せに物事を解決しようとしていた…その過ちに善悪両面があるとしたら俺達はその過ちを糧にしなければならない…これからXVGSは一体どうするかお願いしたい!!」

 

このままオレイワルドスと同類になりたくないと言うリュウジとヒイロ、取りかえしのつかない過ちを犯した自分達がこれからどうするかギンユウはお願いしたいとタスクに返答する

 

「…これから先は勝利だけではなく敗北や挫折を知り、成長しなければならない。この世に悪があるとすればそれは人の心であるのなら善も表裏一体…他者からの視点、思想、立ち位置により悪でもあり善であると捉える必要がある。そう思われても仕方のない事をして、誰かに恨まれ、憎まれても、その苦しみや悲しみを抱えたまま、歩き続ける事になるだろう…その事を忘れるな」

 

そういったタスクの言葉を理解し、これからのXVGSをどうすべきか自分達で考える事にした。ここから本題に入るとクロウメサイアが襲撃した際に残された監視映像を映し出す

 

「これってまさか…レガシードルの機神!?」

 

「あの虎のようなものは機神獣なのは間違いありませんが…」

 

「一緒にいるのはシャオランとサクラが乗るディオズワースだな…」

 

サツキとシズノ、そしてモロハがそう言った後、何故かユウキとティアナ、ヒマリの三人があの映像を見ただけでどこかへ行ってしまった

 

「…何か怪しいな。ギンユウ、ナズサ、彼等を探してくれないか?」

 

「「了解」」

 

タスクはギンユウとナズサにユウキ達が何処にいるのか探し出した

 

【グランストレーガー 倉庫】

 

ユウキとティアナ、ヒマリの3人は隠れていたマルスとマリエラに監視映像から映し出された機神と機神獣について話したが…

 

「ええっ?あの機神と機神獣は見た事ないタイプなの?」

 

「ごめん、この機神はレジスタンス側にもないんだ。失われた機神かも」

 

ヒマリが驚くのも無理もないがマルスの返答通りこの様な機神は知らなかったがマリエラが何か思い出した

 

「ん〜虎型機神獣…もしかしたら」

 

「何か心当たりがあるんですか?」

 

「…レジスタンスに参加する予定だったのよ…でも3年前に召喚武具を受け継いでた一族はあのディードに殺されたの…女子供に至るまで生き埋め、焼き殺された……って駆けつけたアスカから聞いたの」

 

「何て事を…ディードはどこまで許されない事を幾つもしでかすんでしょうか…!?とりあえずこの事はギンユウさん達に知らせて…」

 

マリエラからの話によれば虎型機神獣の召喚武具を受け継いでた一族は自分達が倒したディードに殺された事で怒りを感じたティアナだがこの事を知らせようとした矢先だった

 

「何をコソコソと話しているんだ?」

 

「3人共、何か隠し事でもあるんじゃないの?」

 

「ギン兄さん!」

 

「お姉ちゃん!」

 

そう言ったギンユウとナズサが現れた事でユウキとヒマリは驚きを隠せなかった。この後は艦橋でタスクを筆頭ににマルスとマリエラの事情が何なのか話す事になった…

 

 

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