ようキャ   作:麿は星

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 今回は3人称っぽい??視点。
 いやまぁ、読んだらバレバレですが一応名前は伏せさせてください。理由は後書きに載せておきます。

 あと内容前半はほぼ作中ゲームのストーリーなので、一部を除きだいぶキャラの話し方が違ってます。地の文と『』内は、外側が漏れ出してますが。
 その性質上、よう実要素低め、というか東方要素高めです。



EX、小東方高育桜

 

 学園の姫と呼ばれる存在が健やかに過ごす為だけに、忠実?なる従者・左京夢月は命名決闘をはじめ数々の制度を創り出し、学園を根本からひっくり返し、学園の対抗組織・ホワイトルームを設立した。

 この左京と佐倉が起こした改革は、後に「夢桜異変」と呼ばれるようになる。

 

 それに対し、高度育成学園生徒会はブラックルームの精鋭を投入することを決定した。

 承諾したのは、綾小路清隆、東風谷早苗、四方二三矢の3人。

 彼らはそれぞれの思惑で事態解決に動き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 茶番と奇妙なオープニング、最初の道中でのチュートリアルを経て、ようやく本格的に始まった小東方高育桜。

 最初のステージは、制作者の左京がチュートリアルと言っていただけあり、緩めの弾幕に設定してあるようだ。

 勿論、三者三様に優れた資質を持つ『強き者』は難なく突破していく。

 そして最初のボス、チュートリアルの黒幕・左京夢月の待つ空き教室の拠点へと辿り着いた。

 

「ぐはははっ! 我こそは黒幕の魔王・左京夢月! 私など貴様らの足元にも及ばんわ!!

……だから…えーと、なんとか佐倉共々、見逃して貰えません? なんでもはしませんが、ちょっとお得なプランがあるんですよ。話し合いましょう」

「初っ端から黒幕で魔王が登場からの命乞いとかふざけてるんですか!? 私は敵のことごとくを退治しに来たんですよ!!!」

「お得なプランを紹介してくる黒幕か。なんか嫌だな」

「……第一声で降参するトップとか斬新すぎるだろ。絶対これ普通じゃない」

「ぐぅ。聞く耳持たないか。しかたない……! それなら3人まとめてかかってくるが良い。あっという間にやられて度肝を抜いてやろうではないか」

 

 戦闘前の会話通り、どうやら準備運動にもならない模様。

 あっさり撃破である。

 最も操作がぎこちなかった綾小路でさえ、お試しと思われるボム一発使用しただけで終わった。

 どうでもいいが、このボムの顔型爆発はおそらくモデルになった櫛田と思われる者の反感を買ったことだろう。

 

「弱い……」

「当ったり前だろ!? 僕はチュートリアル! ゲームオーバーになるたびに見ることになるんだから、弱くないとね!」

「何を言ってるんだ?」

「というわけで―――サラダバー」

「は? 観念したかと思えば、逃げるだと? 命名決闘の約定はどうした!?」

「油断しました! 追いかけましょう!」

「あ、ああ」

 

 動き出して早々に黒幕・左京を発見・撃破するものの、呆気に取られた隙を突かれ意味ありげな笑いを残した左京に逃走を許してしまう。

 これよりいよいよ本番ということだろう。

 今、類も見ないほどの追走劇が幕を開ける……!

 

 

 

 本番というのも怪しくなってきた。

 道中こそ魔法陣からのトリッキーな砲撃弾幕が自機の行く手を遮り、綾小路の残機を一つ減らし、難易度の上昇を感じられた。

 だが、次の渡り廊下で出てきた2面ボス、椎名ひよりもまた―――。

 

「うふふ。私こそは動かない点S・椎名ひより! 左京君なんて黒幕の中で最弱です! 黒幕が左京君しかいないという点を除けば!」

 

 イロモノだったからだ。

 

「さあ! 何故か私が相手になりましょう。かかってきてください。あっという間にやられてみせますから」

「何なんですかこのイロモノ集団は!? 本当に学園の敵対組織なんですか!」

「珍しくノリノリに動いてるな椎名。いつも儚げな雰囲気で本を読んでいたお前はどこ行った」

「ここまでの二人、勝負前から負け宣言してるんだがそれは」

 

 呆れた風な会話ではあっても、3機の総計で4つのボムを使わせる健闘。いまだ序盤のボスといえど、やはり少しずつ強くなっている。

 倒した後の道中ではまたも左京が現れ、一発で倒されては逃げていく。まるで自機達をどこかへ誘うように……。

 

 その先にある正面玄関にいたのは、新制度での学園の守り手と目される3面ボス、葛城康平と戸塚弥彦のコンビだ。

 

「葛城、戸塚。まさかお前らまで……」

「違うっ! ちょっと俺と弥彦は、その…左京に借りがあってな。それで今はしかたなく……そう、しかたなく! し…質実剛健な守り手、というモノをやっている。すまんがここを通りたければ、命名決闘で俺・葛城康平を負かしてから行ってくれ。それが新たな秩序を守り、義理を通すということに繋がるだろう。繋がってほしい」

「ここに来てようやく少しまともな敵が! やっと面白くなってきました!」

「これ本当にまともか? むしろ巻き込まれた感が出てるんだが」

「勝負とは。勝ちとは。負けとは一体……うごごごご」

 

 葛城の頭上に光を浴びて反射させるレーザー攻撃で、逃げ場を潰され3機が一つずつ残機を失う。おそらく度重なる緊張感の欠けた会話シーンと葛城の涼しげな頭の利用法により、集中力を削がれたせいだろう。

 

 

 

 新たなステージに突入し、ホワイトルーム本拠と目される桜公園へと繋がる遊歩道入り口では他と少し雰囲気が違う。

 そんな中で登場する4面ボスは、何やら描き手に思い入れでもあるのか、やたらと精緻に描かれた美少女、一之瀬帆波。その彼女『への』不意打ちから始まった。

 

「にゃ~っはっはっは! みんなの超絶美少女アイドル・帆波ちゃんで~す♡ 君のハートを撃ち抜いちゃいますよ~♡」

 

『ひああああっ!!! やめてやめて! こんなにリアルな私の顔で……ああああっ! 左京君! なんてもの作るの!?』

『この帆波ちゃんも……素敵です! 私、撃ち抜かれちゃったかもしれません!』

『あっ、これもしかして……』

 

「ここをひっぱったら、どうなるとおm―――っ!!」

 

 登場から手鏡を覗き込みつつ、投げキッスとともに雫のあおり文句だった言葉をノリノリで放ってから闖入者に気づく一之瀬。

 これは相当恥ずかしい。

 

「い、一之瀬……」

「なにやってるんだ?」

「またイロモノですか! しかも一之瀬さんまで……くっ、遅すぎましたか」

「…………ああ~~~っ!!! ちがっ、違うんです! これは君達を迎える台詞を考えてて、色々試してたらいつの間にか来てたんです!」

「はい。わかってますから。前に「ざぁこ♡」とか言ってましたし、本来はそっちなんですよね?」

「え? 一之瀬ってそうなのか?」

「……ああ、まぁ確かにそういうこともあった」

「へぇ。クラスリーダーの意外な一面だな」

「にゃああああっ! ねえ東風谷さん、みんな! お願いだから、違うってわかってください!」

「「「うんうん。わかってる。わかってるよ(ますよ)」」」

「あ、ああ……これ、絶対わかってません。なんで私はこんな役なの……?」

 

『うにゃああ……。想像以上に恥ずかしい。私じゃないってわかってるのに』

『帆波ちゃん、あっちで休憩しましょう? 私が付き添いますから。ね?』

 

 しかも畳み掛けるように黒歴史と思われるモノが開陳される。

 本来は色白だろう顔を羞恥で赤く染め上げ、赤みがかった金髪よりもなお赤くなった顔。絵でもそうだが『外側』でも似たような顔になっている。

 憐れにも全身でイロモノを表現している彼女には、外側からのやり取り、悲鳴と抗議、それに称賛の声が聞こえるかのよう。創られた黒歴史を白日の下に晒された彼女に笑いが止まらない。

 いったい制作者は一之瀬のことをどう見ているのだろう。

 

「……うぅ、左京君に上手くノセられてしまいました。こんなところで恥ずかしいです。相手に綾小路君がいなかったら絶対来なかったのにぃ……!」

「一之瀬、大丈夫か? いつも以上にポンコツ臭がしてるぞ?」

「言わないで四方君。これも全ては綾小路君と決着をつける為なのです」

「…………一之瀬さんがここまでイロモノに侵食をされているなんて!? これは早急になんとか……するのも面倒なので、もう私達は通っていいですか?」

 

 これまでに登場した人物達と明らかに違うタッチと表情差分。

 明るい笑顔。赤面する半泣き顔。悟ったような諦め顔。他にも細々とした変化も描かれている。

 一之瀬帆波という人物だけに、何枚もの精緻な絵と長めの会話シーンがあることには、なにか意味があるのだろうか? 制作者の性格上、あまりその他大勢の中の一人に過度な肩入れはしないと考えていたのだけど……。むしろ他の誰かが一之瀬の出番を増やすようにねじ込んだ印象を受ける。ほんの僅か興味深い。

 

「いいですよ……って言えたらどんなに良かったか。すいませんが四方君と東風谷さんにも付き合って頂きます。綾小路君との決着がつくまでは通せません」

「何故オレに? 因縁でもあるのか?」

「はっ! そ、そうでした。恥ずかしすぎて混乱してしまいました。

 えー、コホン」

「咳払いして誤魔化すつもりか」

「お、お久しぶりです綾小路君。貴方に土をつけられて以来、73日と4時間10分ぶりですね。本日はお日柄もよく、絶好の報復日和。

 なので―――白い最終兵器の狂人・一之瀬帆波! いざ推して参る……って誰が狂人ですかぁ!?」

 

 それにしても、一言で狂人だと理解できる言葉選びは秀逸だ。あの『玩具』にこんな使い方があったなんて思いも寄らなかった。

 今度、わたくしも遊びで使ってみましょうかね。

 

「いや、非常に似合った二つ名だと思うが」

「褒め言葉になってないんですよ! この非常識男っ!」

「ははっ、まさか。オレもこれまでに常識を学んだんだ。それによると、女子にはとりあえず似合ってるという言葉で褒めるのが良いらしい」

「すまん一之瀬。綾小路は女子とのコミュニケーションを雑に褒めることだと学んだらしい。これでも大真面目だと思うから許してやってくれ」

「……ふ~ん。そっかそっか。じゃあこれなら意趣返しになりますかね」

「あっ、一之瀬さん。それはやめた方が……」

 

 恥ずかしさを誤魔化す為か急に態度を変えた一之瀬。

 やろうとしている事を察したのか東風谷が割って入ろうとしたが、それは一歩遅かった。

 

「にゃははっ。綾小路君おもしろ~い♡ ざぁ~こ♡ で、よわよわ♡ なあなたに私が教えてあげましょうか~♡ 女の子の、こ・と♡」

「だだだ駄目に決まってるだろ一之瀬! こんなところでそんなふしだらな!」

「駄目なのはお前らの頭だよ」

「確かに」

 

『左京君!!! いくらなんでも唐突にこれって! これじゃあ私が頭おかしい娘みたいじゃない!』

『オレも流石にここまでじゃないぞ! 常識的な褒め言葉くらい考えられるに決まってるだろ! 例えば……これはこれで可愛いぞ、とか!』

『え~、この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。

 ってことだから、騒ぐのはやめような? 一之瀬と清隆、それに白波も』

 

 外側ではクレームが飛び交い、制作者が伝家の宝刀を抜いているようだ。

 

「はぁ~~~。

 常識に囚われないのと、間違った常識を学ぶことは似てるようで違うことだぞ綾小路、一之瀬」

「もう良いです! この恥ずかしさを拭うには、問答無用で綾小路君を打倒することでしか解決できません!」

「……結局こうなるんですね。一之瀬さんも」

 

 気の抜けた煽り合いを強引に終わらせると、会話からはなかなか想像できない多数の一般生徒を喚び出し、容赦のない弾幕を降らせる一之瀬。

 これにより四方が2機、他が3機ずつを落とし、東風谷・綾小路がボムを使い切る。

 お試しを除いて初見とはいえ、だいぶ後がなくなってきた。と、思えば一之瀬の撃破後、1UPアイテムを落とし、少しだけ盛り返す。油断できないことに1UPアイテム取得時、3度目の左京の奇襲があって危ない場面もあったが。

 

 

 

 5面は華やかな桜舞い散る遊歩道。

 そこにいたのは通りすがりの自由人・高円寺六助。

 やや荒めなタッチながら優雅に佇む様は、なかなかの雰囲気を醸している。

 

「おや? もしや君達が私の相手かね?」

「高円寺……!」

「お前までいるとは」

「高円寺さんは首謀者とは関係ないですよね、多分」

「なんのことやら。レディに客が来るとは聞いていないが」

「約束があると言えば通してくれるのか?」

「いいや、通さないよ。夢月から、ここにいる間だけでいいからレディを任せた、と頼まれているからねぇ。“簡単に”通しては私の完璧な精神に僅かな傷が付きかねない」

「……もしかして佐倉愛里は、命名決闘法案なんかを創る為、左京に利用されているのか?」

「レディを見ればわかる。尤も、彼女の元まで辿り着ければ、の話だけどね」

「くっ、お前ら気をつけろ。こうなった高円寺は手強いぞ!」

「わかってます! お互いの邪魔にならないようバラけましょう!」

「わかってはいたが、なんて我の強い奴なんだ」

「君達もまたほんの僅かだが興味深い。それに免じて、見事な美しさを乱す資格があるか、この私が試してやることにしようか」

「望むところです!」

「ふっ。いいだろう。私はやると決めればやるし、やらないと決めれば絶対やらない。今回はやると決めてしまったのでね。

―――さあ! 手加減はしてやるから、かかってきたまえ!」

 

 問答が終わると、これまでにない速度の弾幕の嵐。

 小細工なしにただただ速い弾速で、自機狙いとパターン弾幕を組み合わせた正統派な強さだ。これまで、一部を除いてそれぞれの者に似合った弾幕だったことを考えると、おそらく制作者が高円寺という者を『純粋な強者』と見ている証左だろう。それは台詞の節々からも見てとれる。

 そうなると、突破された後ですら余裕の表情を浮かべていた高円寺もまた規格外な一人なのかもしれない。

 

 ここで3人はコンテニューまで使う羽目になり、残機は四方と東風谷が2、綾小路は次に落とされたらゲームオーバーというところまで追い詰められた。

 明らかに難易度が上昇している。

 制作者がここを2番目の山場だと想定していたのだろう。高円寺の弾幕が最後の方だけ緩かったのは、難しくしすぎて抑えたというところですかね。

 

 機械的パターンに適度なランダム要素を混入させた初見殺しは、わたくしにも通じる左京夢月の匂いを感じる。

 だが、そのままではゲームとして使い物にならないので、不可能弾幕にならないように、適した壁になるように、調整を加えたのだろう。2~3度ほど目にすれば突破できるようなレベルに。

 

 そんな中、表向きの目的がある綾小路や東風谷もだが、特に言動や意識で制作者が最も注視していた四方二三矢は流石と言えるだろう。

 落とされた回数こそ他二人とほぼ同じだが、ボムの使用回数では断トツに少ない。それこそ壁と言ってもいい多数の弾幕が襲い掛かっても、的確に小さな穴をすり抜けて、再び高円寺の正面を陣取り誘導弾以外もかなり命中させている。

 

 攻撃力が他より劣るというのに、撃破までにかかった時間は3人ほぼ同時という時点で、よほど集中して操作していたのだとわかる。素晴らしい。

 人並み外れた集中力という前評判も、リップ・サービスというわけでもなかったようだ。

 

 

 

 

 巨木と言って過言ではない一本桜の前。

 高円寺を突破した後の6面は道中もなく、敵の出現もない。ゆっくりと大きくなる桜を眺めているだけだ。

 嵐の前の静けさとでもいおうか。どこか神秘的な美しさを感じる。

 

「これは見事な桜だな。あの高円寺が言っていたのはこの木のことだったのか」

「桜……もう片方の首謀者の名字も佐倉だったな。関係ないとは思うが」

「ああもうっ! そんなのどうでもいいんですよ! イロモノばっかりでちっとも気持ちいい退治ができない方が重大です!」

「私達で作った場所に勝手に乗り込んできて騒ぐなら帰って」

「「「!?」」」

 

 会話を始めた自機達の前にそう言いながら現れたのは、6面のラスボスである学園の姫君・佐倉愛里。

 本来の性格を知っていると、不思議と笑いが零れそうになるほど魅力に溢れた姫君を演じている。

 

「まぁ私達の仲間に変わり者が多いのは事実だけどね」

「ここを佐倉達が作った?」

「うん。桜の木以外は左京君がほとんど。それを葛城君達も手伝ってくれたんだよ」

「……そういえば左京はどこだ」

「一之瀬さんの後は見てませんね」

「呼んだ?」

「左京君!」

 

 役者が揃ったということだろう。

 何故か左京はサングラスをかけスーツに着替えているが、彼を傍らに控えさせた佐倉のラスボス感は格段に増した。もしもこれが左京ではなく、ここまでに出てきた葛城や高円寺なら増すどころか溢れ出ていたことだろう。

 それを意図しているにしては、一貫して軽い態度の左京がこの場では浮いているが。

 

「弱い癖に散々おちょくってくれた上で逃げ回ってくれたが、ようやく年貢の納め時みたいだな左京。お前を葬るのはこのオレだ」

「ふっ。僕の逃げ足を侮ってもらっては困るな綾小路。弱いからこそ僕はあらゆる手を尽くし」

「……くない」

「ん、どうした佐倉?」

「左京君は……左京君は弱くなんてない!」

「え」

「左京君はいつだってみんなを助けてくれた! 才色兼備で容姿端麗、その上で天才なわたしを信じて頼って……そして助けてくれた! そんな人が弱いわけない!」

「うぐぅ。謎の罪悪感が……」

「……おい、黒幕がラスボスの言葉でダメージ受けてるぞ」

「この様子だと、佐倉さんが利用されてたってわけでもないみたいですね。むしろ左京夢月が自分から利用されるように動いたってところでしょうか」

(正解)

 

 シリアスとシリアルがだんだんと交差してくる。

 よくできた物語とは言えないものの、わたくし個人にとってはなかなかおもしろい展開になった。

 

「だからわたしは信じるよ! 本当に強い人は、他人の為に自分の力を使える人だって!」

 

 そんなシリアル方面を華麗にスルーした佐倉の言葉から、音楽と雰囲気が変わった。

 

「そんな左京君を葬ろうとするのなら。他の二人はともかく、あなたはわたしの敵だよ。

 だから―――」

「お前にそれができるというのか佐倉。本気で来るのなら、オレも実力を出し惜しみしない。

 それに―――」

 

「―――桜の下で散ってもらうよ、綾小路君!」

「―――オレを葬るのはお前じゃない」

 

『綾小路君! わたし、こんな自惚れまくったこと言わないからね!? あくまでゲーム内のわたしだから! ちょっと良いなって部分はあったけども!』

『わかってる。オレが悪役みたいな台詞言ってる時点で、こうなるのは当然だな。諸悪の根元は明らかだ』

『清隆。その言い方だと、僕がそうみたいに見えるだろ。てか、これ以前にお前が似たような事を言っ』

『制作者なんだから、諸悪の根元は夢月以外ありえない!』

『……』

 

 ああ。外側の会話で理解できました。

 綾小路の…というかこれまでの登場人物の台詞は、制作者が現実で言われた言葉のアレンジが混ざってるみたいですね。それなら別に遮ってまで隠すような事でもないとは思いますが、物語のクライマックスでは無粋ですし流しておきましょう。

 

「よくわかりませんけど、戦う気になったのならぶっ飛ばすまで!

―――大人しく身柄を預けてください、全ての黒幕!」

「こうなったら仕方ないか。

―――依頼は確実に達成させてもらうぞ、ふざけた道化!」

 

「えっとぉ、じゃあ話し合いに持ち込むまでは佐倉が落ちないようにフォロー入れることにするかな。なんか僕を狙ってるっぽい奴らがいるけど。

 それにしても―――流れに一人だけ置いてかれた感が半端ない!」

 

 ともあれ、各々そうして煽り合うと、ついに最後の戦いが幕を開けた。

 

 物語的には3対2のようだが、ゲームでは当然2対1。

 佐倉の桜を模したと思われる美しい花びら型炸裂弾と、神出鬼没な左京の不規則に変形したレーザー&保護色な見えにくい弾幕。

 これらを掻い潜れず、まず綾小路が。次に東風谷の自機が落とされゲームオーバーに。粘りはしたものの、そう時間はかからないうちに四方も。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 初見とはいえ、思いのほかあっさりでしたわね。

 最初の方しかわかりませんが、佐倉の弾幕は明確に、左京の弾幕はレーザーの軌道と転移にパターンがあったので、精神を乱されていなければもう少し粘れたかもしれません。

 まぁ聞いた話ですが、操作反転の左京単独シーン、安置を素早く判断できなければ確実に撃墜される佐倉単独シーン、クライマックスのコンビネーション弾幕など、初見殺しというだけではない壁もあるらしいので、あくまで粘れた可能性に過ぎないと思いますが。

 

 一回ではエンディングに到達しませんでしたが、わたくしはあらかじめ物語だけ読ませて貰って知っています。

 それによるとラストは、ストーリーに出てきたホワイトルームやブラックルームを統合して、キャットルーキーという集まりになり大団円という流れです。

 

 これがゲーム内の左京の第一声に繋がる伏線になるのですから、最初に読み終えた時は感心しました。また、そのキャットルーキーになった全員で宴会するエンディングもなかなか面白い着地点なので、せっかくですし全員クリアしてほしいものです。

……おそらく、左京夢月の『願い』はそうなる事で僅かずつ前進するのでしょうし。

 

「あら?」

 

 おっと。気分良く続きを視ようとしたら、遠見の術に介入されました。

 東風谷早苗と左京夢月に憑く神々ですか。

 目こぼしはこれまでということですわね。過保護ですこと。

 まぁ直接見ずとも、左京さんの送ってくれている映像があるので、生の会話が見れなくなる以外の問題はないですが。

 

 他も侮れませんが、強大な祟り神に目を付けられると厄介です。

 少し惜しくはあれど、ここは退いておくべきでしょう。

 この時代に『あんなモノ』を憑けている東風谷早苗にもまた、左京さん同様に数奇な運命を感じますね。

 

 それにしても……。

 自身の意に反してわたくしに肩入れさせた一方、何度かわざと見せた術や希少な道具を歯牙にもかけず、本気で口約束を守ることで真の意味でわたくしに強いと印象付けた。それにより諦めかけていた人間の可能性を思い出させたのは、特異な前世を含めてすら50にも届かない…肉体年齢にして20にもならない子供でしたか。

 非常に強固な意思や精神力の持ち主といえるでしょうが、それだけでなくわたくし好みの悪辣さまで持ち合わせている。あの若さでです。

 

 今でもあの日の事は鮮明に覚えています。

 無理難題をふっかけた時、面白くない回答が返ってきていたら、きっとわたくしは彼にも佐倉さんにも興味を失い、玩具も投げっぱなしでここを去っていたでしょう。

……しかしまさか、わたくしの無理難題に更に上乗せしてきた上で、実現可能に『見える』提案をされるとは思いませんでした。

 

 また提案自体もさることながら、横で軽く手を広げ、「素晴らしい」と言わんばかりの表情でわたくしを乗せようとしていた左京夢月。

 貴女が僕を同類だと、同じ穴のムジナだと言ったのでしょう? こんな風に終わらせて貴女は楽しめるんですか? と。暗に僕は貴女を利用するから僕『達』で遊んでいいよ、と。

 自身も困惑していたでしょうに、あの昔のわたくし自身を思わせる笑顔には、久方ぶりに意表を突かれて心から笑ってしまいました。

 

 その為、最初こそ遊び半分でしたが、ここ数ヶ月でかなり考えも変わってきています。

 厳密にその未来が見えているわけでないにしろ、望む未来の為に必要な手を打ち続け、人やそれ以外までも巻き込んでほぼ不可能を可能にさせた。

 能力それ自体はともあれ、頭脳明晰、金剛不壊、不老長寿の『仙人』であるわたくし相手に知恵と共感を武器に立ち向かえる―――強き者。

 

 人間のままにしておくには惜しい存在です。

 というか、人間に甘んじている存在ではないとすら思えます。生死を超越していないのに、ほとんど何事にも縛られていない部分も含めて。

 只人のまま自然に振る舞い―――それでいて清濁を併せ持ち、わたくしや芳香ちゃん、堕ち神のような存在すら受け入れる度量は、あの御方とは別方向に興味深い存在ですわね。

 

 なにより紙一重としか言い様のない瞬間。

 佐倉さんの時も。松雄さんの時も。そして……今回も。そもそも、最初にわたくしの元まで辿り着いた一件も。

 必要な存在の前に、必要な時に必要なモノを手にして現れるその在り方はまさしく―――。

 

 まぁ、急がなくとも左京さんの気質から考えて、まだまだ機会はあるでしょう。その気質のせいもあって、わたくしのモノにはならないとわかっていますが、もう一度は遊ばれてくれるらしいので何か考えておきますか。

 

 時に邪仙とも呼ばれるわたくし、青娥娘々と、そうとわかって契約したのですから。

 





 というわけで、今回は3人称っぽい青娥視点で、左京の学校改革やゲーム制作の裏話含めた話でした。最初から名前出すと微妙に先が透けるかなと思い、こういう形になってます。
 坂柳視点から数話あけてるとはいえ、他者視点が連続するのはアレではありますが、元々坂柳と青娥は改革とゲームの裏側セットみたいに考えてたのでご容赦ください。
 あとゲーム制作に実質1ヶ月とか私には不可能なんですが、こういう理由なので見逃していただけると幸いです。

 ついでにゲーム結果。
 それぞれのクリア回数を1D20で判定。
 綾小路が13回目、早苗が11回目、四方が4回目でクリア。
 作中でも出しましたが、高円寺は7回です。
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