ようキャ   作:麿は星

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 今年って、2月29日が実装されてるんですね。



93、分水嶺

 

 ゲームから数日後、しっかり覚えていた一之瀬の襲撃イベントはあったが、勢いがかなり失われていたので割愛。僕に与えた効果の少なさから、これで彼女も勢いと機を図る重要性について学んだことだろう。

 

 あれは言ってみれば、激しく動揺するナニかをぶち込み、精神を揺さぶったところでリミットを突きつけ、更なる動揺と混乱を与える。そして冷静になる猶予を確保しつつ、話題を違う方向へと誘導して逃げ切ったのだ。

 

 僕は過去の記憶から抜粋した真実を使ったが、『ナニか』には本来は嘘を使うもので、作られたリミット内でそれを解消する方法を提示するのが定番。これこそ特殊詐欺の典型的手口、その応用である。

 だから、あの時の櫛田がいつになく仮面を外して拉致やら膝蹴りやらをしてきたのは、船で近い事を話していたのも要因の一つだったのかもしれない。

 

 コイツ、マジで一之瀬に実践しやがった、と。

 

 まぁ櫛田は櫛田で溜め込んでるモノが多そうだから、アレで少しでも発散できたなら幸いだ。

 これから助けてもらう場面も来るかもしれないし、友達としては弾けてる方がずっといい。それに彼女の中で真実の使い方にバリエーションが生まれれば、負の方面だけじゃなく楽しむ方面のストレス解消もできるようになる。

 認めたくはないが話してて楽しい奴なので、愚痴やらストレス発散の一助くらいしてもバチは当たらないだろう。

 

 櫛田についてはともかく、一度でも機を外してしまえば、自分の意見を押し切るためのパゥワーや機会も少なからず失われる。僕があの場だけしか一之瀬の再訪を恐れなかったのは、土壇場でこの策を思いついていたからである。

 

 これで未来に一之瀬が特殊詐欺に遭おうとも、耐性を得ることができただろう。この経験と耐性を持っていれば冷静さを失わず適切な対応ができる可能性は上がったはずだ。

 いやぁ、同級生に詐欺耐性を付けてやるなんて良い事をした。そろそろ僕も聖人君子を自称しても過言ではないのではなかろうか。

 

 

 

 

 

 後半になってようやく食っちゃ寝しまくれた夏休みも、残すところあと2日。

 ピンポイントなイベントこそあったものの、平和にダラダラと過ごせた。これも聖人と見紛うほど僕の日頃の行いが良いからだろう。

 その為、僕も佐倉も基本予定を消化できてギリギリでバイトの日数をクリアし、今日は特に目的を持たない暇人ども+αが天文部の部室へと集結していた。

 

「先輩はともかく、お前ら暇なの? ここに居ても、マジで僕が天体望遠鏡の手入れしてるだけで面白くないだろ」

「そんな事ないよ。わたしもカメラのお手入れしてるし、それにここはなんか落ち着く…実家のような安心感があるというか」

「いや。意外とそういう仕組なんだなってわかって面白いぞ。分解して整備したりするんだな」

 

 僕の問いかけに、真っ先に言葉を返してくれた愛里と四方はまだいい。実家じゃないけど。

 

「ふっ。実にナンセンスなクエスチョンだねぇ。この場以上に暇つぶしできるモノで溢れている場はないよ」

「愛里さんや夢月さんが居て、退屈なんて感じませんよ。というか神社のお役目が終わると、やることないんですよねぇ。誘われたプールも桔梗さんだけじゃなさそうでしたし……」

「くくっ。後輩。君がやらかした数々の所業は、色んなところで芽吹いているようだ。誰だってそんな面白そうな場面を見逃したくはないだろう?」

 

 なんだこの自由人3銃士。

 結構予定ありそうな奴らなのに、まるで意に介さず堂々と振る舞っているとこちらが間違っている気さえしてくる。王者の風格すら醸してるのを見ると、お茶の一つでもお出しした方がよろしいのではなかろうか?

 特に先輩とかここに居て大丈夫なのか少し心配だったが、この態度を目の当たりにすると何を言えばいいのかわからなくなってくる。

 

 と、何か言おうかと迷っていると、天文部に尋ね人。

 次いで扉がノックとほぼ同時に開かれた。返事を返す暇もなかった。

 

「おう左京。お前、10月になったら生徒会に立候補しろよ」

「は? ついにボケたか。断るに決まってるだろ」

 

 来たのは南雲。

 開口一番、ボケた勧誘をされた。

 天文部をやめなきゃいけないことは当然として、こんな我が世の春を謳歌してそうなリア充と同じ組織に入るわけがない。前に話した感じ、南雲も僕がわざわざ創部したのは知っているみたいだったし、わかってたと思うんだが。

 それか本気で若年性認知症の可能性を疑った方がいいのだろうか?

 

「誰がボケだコラ。そうくると思って、ちゃんと用意もしといたから逃さねぇぞ」

「用意?」

「お前、明日プールで俺と勝負しろ」

「? プール? 勝負? いきなりなんのことだ?」

「プールの開放日くらい知ってんだろ」

「か、開放日?」

「……チッ。知らねぇとか、どんだけ人と交流してねぇんだよお前。念の為、俺が動いといて良かったぜ」

 

 唐突に来たくせに、何故か呆れ返った感じに説明してくれた南雲曰く。

 今日含めて3日間に一人に付き1度、学校施設のプールが9時~17時の間だけ開放されているらしい。興味なさすぎて記憶に残っていなかったが、そういえば顧問の東山先生からも言われてた気がする。

 

 そして明日がその最終日で、副会長が僕(達?)を遊び?命名決闘?に誘ってきたというわけだ。

 内容は、なんかで競って負けたら僕が生徒会に入れ。とかそんな感じに勝手な話を投げっぱなして、返事を返す前に南雲は去っていった。

 

「……何なんですかあの無礼な男は!? うちの部長を引き抜こうとした上に、勝負の順番も飛ばそうとするなんて!」

「ああ、まったくもって横暴だ。この場所を作った夢月がいなくなるのは許容できない!」

「南雲の奴もなぁ。後輩に絡む事情は理解できなくもないが、少々調子に乗っているようだな。現状で満足していればいいものを……」

 

 南雲がいなくなると、天文部に集う者共が意気投合していた。鬼龍院先輩はちょっと違うかもだけども。

 というか。

 

「いや、勝負の順番とか初耳なんだが? てか、お前ら、一応僕のこと部長だって認識してるのな」

「ま、まぁ夢月君がいなくなったら、きっとここもなくなっちゃうから…………そんな事になったら、わたしも嫌だな」

 

 愛里はそう言うが、そんなことはないだろう。

 それに南雲は言いたいことだけ言って片手落ちのまま帰ったから、引き抜きなど無用の心配だ。

 なぜなら命名決闘の必須条件である僕の同意も勝った時の話もないし、そうでないならスルー安定だろう。水場とはいえ必要な用事もないのに、このクソ暑い中で出掛けるとか正気の沙汰じゃないと思っていたので、永遠の後回しで問題ない。

 

 それを指摘しようとはしたが、ヒートアップした話はすでに僕が置き去りになっている。なので開きかけた口を閉じ、まぁ勝手にすればいいかと切り替えた。

 そして何事か話し合う部員達を放っておいて、僕は天体望遠鏡の整備に戻る。

 明日の予定は、寝まくって起きたら新学期になっていたという伝説作り、もしくは1日中クーラーの効いた部屋でゴロゴロすることに決まっているのだ。ボケ倒してきた副会長に構っている暇はない。

 

 

 

 

 

 夏休みの最終日、7:30頃。

 予定通り惰眠を貪るつもりだった僕の部屋に四方、早苗、愛里が襲来した。

 てか、寝床から見えるいつにない光景が……清隆を呼んだ時の教訓で2つに増やした椅子に座る女子二人。ふむ。愛里は白で、早苗はピンクか。我ながらヤバいほど素晴らしい目覚めだ。

 ただ四方はまだしも、そのせいもあって早苗と愛里に朝起ちを誤魔化す為、朝から寝ぼけたふりして密かに円周率を計算する羽目になったが。

 

「やっぱり寝てたか」

「早めに来ておいてよかったですね」

「夢月君……行こ?」

 

……うん。流石に部屋まで呼びに来られたら普通に行くから、これ以上起き抜けの高校生男子の股間を刺激しないで? 体勢・位置的に、こっちへ寄って来た愛里に女豹のポーズで揺さぶられて囁かれると、寝床がベッドじゃなくて低いからかやたらとエロく感じる。全然、収まらない。

 

「わかったからちょっと待って。そんなすぐに起きられるように僕はできてない」

「……ああ。すまん、そうだった。佐倉に東風谷、こっち来てくれ。まずはコーヒーでも淹れて待ってよう。使っていいよな、夢月」

「ん、ありがとう。コーヒーとお茶はアイスのやつが冷蔵庫にあるから、適当なコップで飲んでいいよ」

 

 四方がフォロー入れてくれて助かった。

 早苗や一之瀬あたりには、多少『テント』を目撃されてもどうとでもできるが、愛里に見られるのは困る。内弁慶のくせに、どうしてか僕を積極的に連れ出そうとしてるし、このやる気が変に化学反応したら顔を合わせ難くなってしまう。

 

 あっ。てか、今更気づいたけど、昨日の南雲の誘い。

 印象にそぐわないガバガバさだとは思ってたけど、僕じゃなくてコイツらをやる気にさせて連れてこさせる目論見だったのかも。部長を生徒会に勧誘することで、天文部にゴタゴタを持ち込んで外堀を埋め、それを達成できたからさっさと帰ったと。

 こうなったら、行くしかないけどさ。回りくどいやり方だなぁ。ストレートに自分の引き立て役兼ほどよい暇つぶしになってくれ、でいいじゃん。何をやりたいか知らんけど。

 

 3人が一息つく頃には、僕も起きられるようになっており、適当な残り物で朝食を仕上げてみんなで食べた。

 何気に早苗もおにぎりを持ってきていたのが、時間短縮に繋がった。こういう時に、マメで家庭的な奴がいてくれるのは助かる。時々、おすそ分けし合ってるから、お互いの勝手がある程度わかるというのも大きい。

 

 朝食後。

 急かしてくる部員達にどうせまだプールが開いてないと説得して、なんとか身支度の時間を確保。これ以上時間短縮しても意味がないはずなのに、自室にまで来たことといい、いつにない強引さである。

 しかたなく限界まで引き伸ばして、8:30に自室を出てプールに向かうことになった。

 

 またエレベーターホールで何人か見知った顔がいたが、特に用はないので通り過ぎる。

 その際、気づかれる前にと普通に歩みを止めぬ僕と早苗、僅かに足を止めるものの進みだした愛里。四方だけは誰かに挨拶しようと試みていたが、容赦なく置いていく素振りを見せると呆れたため息を吐いて付いてきた。

 うむ。これこそ天文部の模範的行動である。

 

 

 

 聞いていた通り、9時になるとプールが開放されたので入場する。

 同時に、何故か池を先頭にした清隆達4人が駆け出し僕達を追い抜いていったが、そんなに楽しみにしていたのだろうか? 若いっていいね。

 

 更衣室に入り、一番人口密度が低い場所を探していると、先程の4人が奥で不審な動きをしていた。池がしゃがみ込み、壁になるように清隆と山内が立ち、須藤が意味もなく(いや、あるのか?)周囲を威嚇している。

 ただ四方が偶然来ていた神崎や柴田と話に行ってしまった現状、なんか僕の方を見てくる須藤や清隆に話しかける気も起きず、さっさと着替えてプールサイドに出た。

 

 最速で更衣室を出たからか、どうやらプールサイドには僕が一番乗りしたらしく監視員しかいない。

 なので、貸し出しの浮き輪を膨らませて、流れるプールでプライベートプールを満喫する。浮き輪を膨らませてる間にちょこちょこ人も増えだしたが、なかなかの独占気分は僕を満足させた。

 

 しかし時間が経つと、周囲に人が増えてきて騒がしくなってくる。

 それに学校施設のはずなのに、ジャンクものの出店が展開され始めていた。ちらほらガチャの時に見た顔が店舗にいることから、おそらく上級生が運営しているのだろう。2年生か3年生は、お祭り的な特別試験でも実施されたのかもしれない。

 

 流されながらぼんやりと賑わってきた様子を眺めていると、遠くから四方と清隆からの視線を別々に感じた。

 四方はいち早く水上へ『避難』した僕と何か話したかったかもしれないが、目立つことが予想される何人かが来るだろう現状では、愛里よろしく気配を消すのが無難だろう。

 

 それにしても先日、改めて四方と友達になっていたというのに、相変わらず一人でいる清隆にほんの僅かに親近感が湧く。だが僕と違い、あれで平穏とか事なかれ主義とか言うんだから矛盾の塊である。

 浮かないようにしたいなら四方に話しかけるくらいすればいいのに、と思いつつ視線を切った。

 

 と、その時、空気というか注意がとある場所に流れ出すのが見なくてもわかった。

 プール入り口から、一之瀬が現れたのだ。

 尤も本人は、多数のエロ目線に集中砲火されていても、まったく気にした風もなく四方、次に清隆へ話しかけに行っている。話しかけられたら、冷静を装えていても男の内心的におっきしないか気が気じゃないだろう。

 

 あれほどの容姿とエロボディで、乳をバインバイン揺らしながら活発に動くのだから、万乳引力の法則は彼女の為にある言葉である。容姿やサイズは比肩しようとも、基本激しい動きをしない愛里では瞬間最大風速でしか超えられないからだ。

 

 その愛里といえば、いまだ現れていない。

 普段の早苗が何事も迅速なせいか、一之瀬より少し遅れただけで不思議に感じてしまう僕がいる。まぁ着替えに時間がかかる印象のある女子が、柴田や神崎より早い時点でどこかおかしいが。

 もしかして、僕は早苗に価値観を歪ませられているんじゃなかろうか。

 

「夢月さん」

「んぁ?」

 

 つらつらとどうでもいい事を考えていると、ザバリと水音を上げて静かにその早苗が現れ、並走するように揺蕩っている僕の浮き輪に掴まった。

 ん? 愛里はまだ来ていないよな? まさか本当に何かあったのか?

 心配が顔に出ていたのか、早苗は珍しく安心させてくれる笑みで太鼓判を押してくれた。

 

「ああ、愛里さんなら大丈夫です。まだ着替えないように言ってから来たので」

「よかった……って、着替えないように?」

 

 だが、すぐに笑みを消し去ると、声を潜めてその理由を口に出した。

 

「はい。更衣室が盗撮されました」

「は?」

「録画機能付き遠隔カメラを搭載したラジコンが、女子更衣室の通風孔付近にあります」

「おいおいおい。マジか……マジか」

「マジです。今はどうとでもできるようメモリーカードを抜いて動けなく細工した上で、通風孔を鞄で塞いでますが」

「それで愛里はどうしてる?」

「私の動きを不審には思っているはずですが、着替えは待ってもらってます。明確な事はまだ言ってません」

「……多分、最後までその対応が良いな。ストーカー事件の後遺症が出そうな事は、なるべく知られない内に処理するのがベターだ。犯人の見当と対応は?」

 

 よりにもよって、早苗がいる時に性犯罪を実行する奴が居ようとは……。

 ある意味、どこぞへ突き出されるより地獄を味わうかもしれない。

 

「明確に誰かは教えてもらえませんでしたが、関係者5人に諏訪子様が軽い『呪』をかけたそうです」

「じゅ…呪術とかのじゅ、か? 軽いとはいえ、神様の呪い……まさか死んだり再起不能になったりしないよな?」

「ええ。私の口から言うのはアレですが…その、男性のシンボルがしばらく機能停止するとか」

 

 予想的中。

 これってアレだろ。好みの美少女と役得なイベントが起こっても。告白なんかが成功したとしても。フェイバリットなエロ動画を見つけても。

 イ○ポだから―――なにもできない。

 

 自覚の有無に関わらず、ラジコンに細工をしたことから十中八九、犯人達は機械に詳しい者を含めた高校生男子。周囲には可愛い女子が溢れるほどで、曲がりなりにも同じ屋根の下。

 この状況と年齢でイ○ポとか、生殺しにもほどがある。しかもそれが5人……。

 予想を上回る男にとっての地獄の一つだった。

 

「…………うあ。しばらくがどれくらいかにもよるけど、自業自得とはいえエグすぎる罰だ。しかも5人も…てか、こんな手の込んだ盗撮って……徒党を組んでまでやることかよ」

「私は手ぬるいかと思ったんですが、夢月さんの反応からするとかなり効果的な天罰みたいですね」

 

 これで手ぬるいとかコイツは鬼か。

 僕だったら、学校に突き出されて退学処分とどっちがマシか悩むレベルだ。いや、キツい報復をしたい気持ちもわからなくはないけども。

 

 でも多分、神様にとっては戦後しばらくから広まったウーマンリブの男女『平等』ではなく、日本古来の男女『公平』という価値観の方が馴染みあるのだろう。社会的地位を利用した性的要求や強姦=死刑の時代で長く存在していたのなら、たしかにこの罰は現代社会に合わせて加減しているのかもしれない。

……そもそも、物理的拘束さえなければナニされても合法という法解釈は、平等の良い部分だけで教えられた僕でも首を傾げる(いや、どちらかというと恐怖する、か?)ところだったが。

 

 ともかく、その神様達と深い付き合いがある早苗もまた然り。古いとか流行に乗れてないとかいうわけでなく、根っこの価値観が純日本的なのだと思う。

 それはそれとして、男としては想像だけでも恐ろしい天罰だ。

 

「相当ツラく厳しい。この学校、内面はどうあれ、妙にルックス良いのが揃ってるから、それを見て自分が反応しないのはじわじわ効いてくるぞ。長期になったら、無気力になったりするかもしれん」

「無気力……綾なんとかみたいにですか?」

「清隆は内心が読みにくいから微妙だけど、表向きならそんな感じ。しかし誰だか知らんが、この代償は高くついたなぁ」

 

 首尾よく成功していても、実際の女子とエロい事できたわけじゃないという事実も憐れさに拍車をかける。

 早苗や愛里が被害受けていない前提の上でだから、そう思うだけかもだけども。

 

「それなら犯人を割り出し、証拠を付けて突き出すのは勘弁しましょうか」

「許せる被害だったらそうしてやれ。犯罪の報いは生き地獄だけでも充分だろう」

「被害……愛里さんとお手洗い寄ってから見つけたので、桔梗さんや一之瀬さん、他数名はおそらく生着替えシーンを撮影されてますよ」

「僕にそれを聞かせてどうしろと?」

「夢月さんも抜き取ったメモリーカードの録画映像、見ます?」

「証拠と一緒に汚物は消毒してやれ。本物で偶然なら喜んで見るけど、僕にそんな趣味はない」

 

 朝のパンチラみたく目の前にあればともかく、これはリスクとリターンが釣り合っていない。不思議な笑みを浮かべながら言う早苗には、当然のことを返す。

 まぁ正直、見たいか見たくないかで言えばそりゃ見たいが、この件については下心なんか二の次三の次だ。

 仮に櫛田や一之瀬の全裸が鮮明に映っていたとしても、色々ヤれる可能性もない女子の着替えシーンなど後で絶対に虚しくなる。いくら可愛くて発育が良かろうと、どの女子も僕が手にすることはないのだから。

 

「うふっ……汚物を消毒ですか。確かに。

 それじゃあ、さっさとアレは処分して愛里さんを呼んできますね」

「うーい。一応、他も気をつけろよ」

「誰に言ってるんですか。私は勿論、諏訪子様がそんな見落としをするとでも?」

「そっちじゃねーよ。最近は……なんとなく愛里にとって重要な分水嶺にいるような気がするから、友達だからって変に干渉しすぎないようにな、ってこと」

「……これも夢月さんの勘ですか」

「勘というか、愛里から何かを決断しそうな奴の匂いがするだけ」

「諏訪子様と似たような事を…………まぁ、それはともかく。ようやく諸々片付けられそうですし、不愉快な事は忘れて気兼ねなく『遊び』ますか」

 

 また後で、と早苗は言い残して浮き輪から手を離し、更衣室へ戻っていった。

 ん? そういえば、早苗が僕のところに相談?しに来た目的はなんだ? 聞いた限りでは全て早苗と神様で対処済みだったから、僕は必要ないじゃん。

 僕が盗撮に関与してるかの探り? 男にとっての罰の重さの確認? それとも何かを試された? 朝のパンチラの一件に勘付いてて、その釘刺しとか?

 

……う~ん。早苗の考えは基本わからないし、やぶ蛇になったらコトだから、もういいか。

 一人、浮き輪に尻を突っ込んで水の流れに揺られながら、僕は文字通り無慈悲な天罰を落とされた誰か5人へ適当に南無~、と一応祈っておいた。早苗達以外、今はまだ誰も気づいていないかもしれないが。

 

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