前回の話を見返したら、かなりアレだったので整えようと四苦八苦したけど、どこから手を付ければいいのかわからなくて結局放置することにしました。土日を2・3時間も使った結果がこれだと正直どうしようもなかったです。
はい。言い訳です。すいませんでした。
それとこの結果を見て、作者では仕事終わりに毎日書き上げて更新は無理があると悟りましたので、今後は余裕がある時に更新しようと思います。
読者さん方、ただでさえ遅い展開速度ですが、よかったら気長にお待ちください。
……すごい量を短期間で更新してたり直したりしてる作者さんすげぇと投稿を始めて改めて思い知りました。
「左京君!」
佐倉と橘書記は僕が雑用を始めて30分ほどで戻ってきた。
二人とも表情は明るく、仲良くなったことが窺えて羨ましくてしょうがない。
一方の僕は会長(いちいち生徒会長と呼ぶなと言われた)の作り出す説教地獄を味わっていたというのに、佐倉は優しそうな橘書記と親睦を深めていたのだ。そして何が原因でああなったかは未だにわからないが、現在は笑顔を浮かべてこちらに向かってくるほどの回復をしている。
しかし、橘書記のカウンセリング能力が素晴らしいモノだとわかったのは喜ばしい事だが、僕の状態がわからないのは減点である。
「佐倉」
「会長、ただいま戻りました」
「ご苦労」
僕が佐倉に呼びかけている横で会長と橘書記は穏やかに言葉を交わしているが、僕は佐倉にあることをしたくてたまらなかった。そして会長と接した実感から、そこまで怒らないんじゃね?と考えが至った瞬間、何かを話そうとしていた佐倉に対して行動に出ていた。
「左京君、あのね! わたし」
端的に言うと、僕は佐倉の顔面に手を伸ばし、力の限りアイアンクローした。
「ええええ!……あだ、あだだだだっ、ちょ、痛い痛い! え、なんでぇ!」
「僕が地獄で閻魔に絞られている時に、自分だけ優しげな橘書記と天国で過ごしたことについて何か思うことは?」
もしかすると僕の見当違いである可能性も僅かにある為に、少し力を緩めて言い分を聞く姿勢を取る。勿論、手は顔面から離さないし、逃がすつもりもないから佐倉の肩をもう片方の手で抑える。
僕は某ラノベ主人公のごとく真の男女平等を体現する男。女子が相手であろうとも、アイアンクローだろうがドロップキックだろうが敢行する用意がある。
「地獄で閻魔って……会長なにしたんですか?」
「仕事を手伝うと言うから、雑用をやってもらったついでにいくつか助言しただけだ」
会長と橘書記が何かを話しているのは認識しているが、今の最優先は佐倉である。
「茜先輩はわたしを落ち着かせてくれて、色々アドバイスしてくれただけだって!」
「ざけんな! なんで佐倉は優しげな橘書記で、僕が閻魔なんだよ! 羨ましくてしかたないだろうが! しかも下の名前を呼ぶ夢のシチュエーションの一つをさらっとこなしてるなんて、いつの間に内弁慶モードを橘書記に適用できるようになったんだよ!! 羨ましいを通り越して、もはや妬ましいわ!」
「内弁慶モードってなに!? いや、それ以前にそれって八つ当たり……」
「そうだよ! 八つ当たり以外の何物でもないよ! 悪いか!?」
「開き直った!?」
なので佐倉との論戦を平行線っぽいところへ導き、あえて自分のダメな部分を晒してやった。橘書記のおかげで佐倉の表情もだいぶ晴れてるし、これなら僕が相乗りすれば少しは気安い関係になるだろう。
そんな思惑がなかったというと嘘になる。
アイアンクローの姿勢で言い争いあっていた僕と佐倉は、数分後の生徒会室のソファーで並んで小さくなっていた。いや、正確には佐倉だけが小さくなっていた。ちなみに会長は佐倉を気遣ったのか少し離れている執務机で業務の続きをしている。
佐倉が小さくなって、僕がそのようになっていない理由は簡単である。
なぜなら、僕は雑用業務の対価をもらっていない。そしてその対価を勝手に徴収した気でいる為に、貸し借りなしのトントンと気楽に考えているから。つまり騒いだことを雑用の対価として徴収した、ということにして僕は脳内を改竄していたのだ。
これができるのとできないのではストレスのたまり具合が違う。ブラック企業に生きた経験が、僕の傍目からは堂々とした態度と気分を支えているのだろう。
……すごい嫌だな、それ。
「全く入学早々、生徒会室で騒ぐ新入生なんて前代未聞ですよ」
「「すいませんでした」」
橘書記はため息交じりに僕と佐倉に説教している……つもりなのだろう。
しかし佐倉はともかく、社会人経験と先ほどの説教地獄を乗り越えた僕にはぬる過ぎる。唯一、罪悪感を刺激される手法は僕にも効くが、先ほどの八つ当たりで言いたいことは大体言えてスッキリしている僕にとってはたいしたダメージではない。
佐倉も小さくなっているし、反省もしているっぽいが、橘書記という下の名前を呼ぶほど親しくなっていた相手ならば、緊張したり固まったりはないのだろう。これがもし会長であれば、またもや硬直していた可能性は高いように感じる。会長もそれを察して橘書記から言われたこともあって、任せて仕事に戻ったのだろう。
「あの、なんでそんな目で私を見るんですか?」
ふと気づくと橘書記が不思議なモノを見る目で尋ねてきていた。
佐倉の方かと思ったが、どうやら僕らしい。
「え~と、意味がわからないんですが」
「……左京君、茜先輩を見る目がキラッキラしてる」
佐倉に指摘されて、少し考えてみると答えは直ぐに見つかった。おそらくアレが原因だろう。
「たぶん尊敬と感謝がにじみ出たからじゃないですかね」
「尊敬と感謝?」
「はい。だって、あの閻魔……会長を討伐、じゃない調伏して、後の仕事を任されてたじゃないですか。あの単独で全部やりそうで友達いなさそうな会長に、ですよ!? 僕は今日ほんの少ししか関わってないけど、きっとものすごいことですよ、これは!」
「言い直せてないよ。たぶん調伏じゃなくて説得とかなんじゃ?」
「……会長のイメージがえらい事になってる」
佐倉と橘書記はちょっと引いてるっぽいが、個人的には会長は魅力もある有能なパワハラ上司になる素質がかなり高い部類だと思う。
そして僕の経験上、こうした人間から本当に信用・信頼されるのは至難だ。能力だけではだめ、信じるだけでもだめ、相性の良い人柄・性格だけでもだめ。全て揃っていても忍耐力もかなり高いものを要求され続ける。
橘書記は、これをある程度クリアしているのだ。これは尊敬に値する事だろう。なによりこれである。
「……それに、橘書記は友人で同僚の悩み相談もしてくれたみたいですし、その他にも色々フォローされていたのはなんとなく感じてたので、そりゃあ流石の僕でもお二人に感謝ぐらいしますよ」
「左京君」
「あ、でも会長の方には感謝してるとか伝えないでくださいね。こき使われて嫌いになりたかったのに嫌いになれなかったのが少し悔しいので」
「……左京君」
しかし同じ僕の名前を呼ばれたのに、何でこんなに聞こえ方が異なるのだろうか?
ちなみに余談だが、橘書記による説教が終わり、生徒会室を出る時。
佐倉が橘書記と話しながら連絡先を交換しただろう事を匂わせる仲の良さの横で、何故か僕は会長に威圧的に睨まれ(いや本人的にはただ見てるだけかもしれないけど)ながら会長と『だけ』連絡先を交換していた現実に、佐倉への羨ましさが再び溢れてくる事を僕は止めることができなかった。
……僕も橘書記ルートが良かった。
鞭である会長ルートと飴である橘書記ルート。
この二つがあるなら飴の方を羨望してしまうのは、人として仕方のないことであろう。