上級生に上から指示を出したことを怒られた後、ダッシュで早苗の元へ駆けた。メロスのように。
しかしその頃にはすでに玉入れが始まりかけていて、僕は焦燥や懸念を貧乏ゆすりで誤魔化すしかなかった。なので、しかたなく人が多い場所で考えを整理しながら観戦する。
棒倒しは白組2戦2勝と、僕はほとんど何もやってないけど、勝ちと吹聴しても怒られないくらいには結果を出したはずだ。
2戦目は学も南雲も切り替えて、普通?に来てくれて僕と話すことができた。南雲にはちょっと「騎馬戦では覚えてろよ」とか言われたが、学や栄一郎もいたためか本来の彼からするとかなりマイルドになっているのが笑えた。
ま、先日南雲が来た時に、僕が負けたら生徒会入りはともかく、勝ったら「俺は天文部に手出ししない」とかいうふざけた条件で命名決闘を仕掛けられた事実が全てを台無しにしているが。
なんだこれ。手出しする気満々じゃないか。
しかもわざわざ『俺は』なんて条件を混ぜるあたり、一之瀬や葛城、もしくは他の存在から手を回すことも示唆している。なんなら僕が勝ったとしても、抜け道を使ったり裏切りなどをする可能性が高く、ふざけてるなんてもんじゃない。
それでも勝っておかないと余計にマズい状況に追い込まれていくのが予想されるので、直接対決の場面は勝ち越しておくのが無難だろう。
正式部員ではないけど、あんな性格の南雲と同学年の鬼龍院先輩に同情したくなるレベルである。
状況分析すると、純粋に身体能力とクラスの総合力を試される綱引きとリレーでは勝ち負けは未知数…より上級生な分、少し負けの可能性が高め。
なら、できるだけ個の能力を薄められる集団戦、つまり棒倒しと騎馬戦は楽しみつつも勝てる方向にしておきたい。
これらが先程までの僕の必要以上の煽りと本気度の理由である。やりすぎてしまうのも理解できるだろうJK。
あとついでに、ここで総大将の役割や特典的なものも復習しておこう。
全学年競技の棒倒し・玉入れ・騎馬戦・リレー、あとこれから僕も参加しなくてはいけない各学年男女の綱引きでは勝利数の多い方に1ポイント。
以上の5競技で総大将ポイント的な勝ち点が計5点を与えられ、各組の総合得点とMVPも合算したものが赤組・白組、ひいては総大将の勝敗を分ける。つまり玉入れが勝利に終わり、あと一つでも残りの3競技に勝てば、僕の勝利は確定する。
勝ち負けはどうでも良かったが、ここまで喧嘩売られて放置すれば僕の矜持が廃るし、裏が露見した時に他はまだしも早苗や高円寺がどう出るか予想できない。
ならば、可能な目があるうちに一度徹底的にやり込めておく必要があるだろう。
そう。ここまでくればわかるように、僕は最初から午前中に総大将の責任を果たすつもりだったわけだ。
だから多少不義理をしてでも龍園率いるCクラスの戦力が欲しかったし、慣れない真似してでも一之瀬のケア?を前夜にした。また、ほぼ関与できない女子の玉入れとかも早苗に頼んでおいた。
龍園と一之瀬・柴田の性格上、放置すると変にうちとぶつかることも考えられたからだ。情報さえ渡しておけば、無駄な部分は向こうで調整してくれるだろう。
早苗も基本真面目ではあるが、時々常識に囚われない動きをするため、四方同様に正面から頼んである。櫛田の事もあるのに、二つ返事で頼まれてくれたのには感謝である。
ともあれ現在行われている玉入れは特に従来と変わりないらしく、2つのグラウンドにて3学年12クラス同時に紅白それぞれで行われる。なんかこれも前に僕が提案した的あてになるはずだったらしいのだが、すでに変更しすぎたなどいくつかの事情でそのままになったのは追い風だろう。
なぜなら、見ていればわかるがこれもチームワークにかけては追随を許さないうちのクラスの圧勝ムードが漂っている。
1年Bクラスの戦略は単純で、測定して投擲コントロールの成績がクラスで最も高かった一之瀬・安藤の爆乳コンビを範囲内の対角線上に置き、それ以外の面子で二人に玉を集めて投げ入れるだけだ。
それと、落ちたり零れた玉を拾ってフォローする早苗という布陣。
しかし競技には関係ないけど、APPが10以上の奴しかいない(それどころかAPP16越えの奴すら男女ともにちらほら見かける)んじゃないかとひそかに思ってる学校の中でも上澄み。そんな容姿で高1のくせして愛里に匹敵するほどの…メロンどころかスイカみたいな乳を揺らして、玉を投げまくる様は圧巻の一言である。
……てか、なにあれ? 一之瀬と安藤はあんな乳しておいて運動能力が高い以外おかしくないけど、前に揉んだ限りそれに次ぐ大きさを持つ乳の早苗。見てる限りでは一発も外さない上、とんでもない速度で零れた玉の回収してるんだけども。
神様達がなんかしてる風にも見えないし、素でアレとか意味不明な変態挙動はいい加減にしてほしいものである。
これらの要素が噛み合ってるおかげで、競技終了までに全ての玉がなくなる凄まじい勢いだ。
他5クラス(全学年B・Cクラス)が常識的なだけに、赤組に隠れてる非常識がいなければもはや勝ちといって過言ではないだろう。
今のところ全体の得点はそこまでの差はないが、微妙にマズい気がする。いや、油断と驕りが発生しないなら問題ない……こともないが、まぁいいんだ。
こういう状況を見極めて隙を突いてきた僕としては、一抹の不安がよぎるだけである。
って、それはそうと。
「早苗! ちょっと来てくれっ!!」
「えっ、夢月さん?」
玉入れが終わったと同時に、綱引き開始までの僅かな時間で僕は女子の集団に突っ込み早苗を連れ出した。
うん、反省している。通常ならこんなことはしないが、それよりも勘が警鐘を鳴らしっぱなしなのだ。
「強引で悪かった。けど、空にいるご『神』族───」
「ご親族? 上にいる神奈子様のことですか? ……ああ、親族じゃなくて神……というか、授業参観みたいでちょっと恥ずかしいですよねぇ」
「いやいや!? それもアレだけど、それより!
───神様と一緒にいる金髪の日傘さしてる存在って……えーと、ナニ? 金髪だけど洩矢様じゃないよな!? 神様方のご友人ならいいんだけど、青娥さん……バイト先のオーナー以上の面倒事を運んできそうというか、これまでにないくらいに勘がヤバいほど反応してて……」
「あ、ホントですね。私も知りません。
けど、大丈夫なんじゃないですかね? 神奈子様が談笑してるくらいですし」
今までにないほどの異常なレベルの予感となんとなく漂ってくる胡散臭さも、早苗は特に感じないらしくいつものままだ。ただ僕がマジで慌ててるのはわかるのか元気づけてくれた。
それにより少し冷静さが戻ってくる。
「…………考えてみれば、それもそうか? 神様とも普通に話してるっぽいなら、今回ばかりは勘の誤作動なのかも……?」
≪ふふっ。それはまだ早合点ではないかしら≫
!?
「さ、早苗? なんか言った? 早合点、とか」
「? いえ?」
き、気のせいだな! うん、気のせいという事にしておこう!
そう! 僕が調子に乗りかけてたところを止めてくれた優しい『妖怪』なんだよ、きっと! 言わば鬼太郎みたいな!? だから、面倒事や危ない事は何もないに違いない!
「───早苗……しばらくはできるだけ僕から離れるな。怖くなった。頼むから守って?」
「…………えっ。なんです、その……格好良さ気な台詞の後に、そこはかとなく情けない頼み。普通、逆じゃありません?」
「ふ…ふっ。普通や常識に囚われるな。
見ろ、僕の足を。ガクガクだぞ? こんな状態で形振りかまってられるか」
「それ…………うふっ。しかたない人ですね」
でも怖いから、念の為にできるだけ早苗のそばを離れないようにしとこう。怖いモノ、怪しいモノから逃げるなら、神様の近くが一番だ。
早苗自身もそれに準ずるけど、あの神様方の視界内で何かしら仕掛けるような……語弊あるかもだが、下等な存在には到底見えない。だからこそ恐ろしく感じるわけだが。
てか、青娥さんにも見られてる感覚があるし、なんでこんなただの高校の体育祭を人外達が観戦してるんだよ。この早苗の態度からすると狙われやすいとかいう愛里じゃなさそうだけど、早苗や四方、高円寺あたりが狙いか?
クソ。思わず気づいてしまう僕は、視線や余波だけでガクブルになるんだから神様以外は存在感を控えてほしいものだ。
ともあれ、ちょっとした異変はありつつ、早苗と話して多少の切り替えができたので、遅れてしまった綱引きの待機場所にシレッと混ざる。ちなみに玉入れは、予想通り全学年中でうちが首位だった。
醜態を演じてしまったが、アレはもはや考えてもどうしようもないから忘れてしまいたい。そうしよう。
ちょうどいい事に、合間時間がほぼないくらいに次々と競技が押し寄せてくる。
こういう時は思考する余裕がなくなるので助かると言えなくもないが、真面目に全ての競技で全力を出すと最後まで持たないのは明白なのが難点である。
「これ絶対勝ってるよなっ」
「AクラスとDクラス…赤組にはな。同じ白組とはいえ、Cクラスとは僅差だろうが……」
「これまでほとんど勝ってるし、午後までこの勢いなら早々に勝負が決まるかもしれないな」
しかし年齢的にしかたないが、みんな勝ち続けているせいか沸き立っている。四方と神崎が冷静『っぽい』くらいか。
玉入れにも圧勝したこの雰囲気で言い出すのはなんだけど、今は変に勝ちすぎている。四方はまだ冷静だが、話してる柴田と神崎は浮足立ち始めている。そろそろ負けておかないと油断と驕りが顔を出してくる可能性が高い。高1で、勝って兜の緒を締めよというのは流石に無理な注文だろう。
ブレーキをかけられるのは、形だけではあっても一時指揮官になった僕が適任である。
「なぁ。水を差すようだけど、次の綱引き―――捨てない?」
「「はぁああっ!?」」
「なんでだ? トップを狙うんじゃなかったのか」
「狙ってるからこそだ。あっちにも花を持たせないと、盛り上がらない場面が多くなる」
「そうなると、勝って当たり前…向こうはどうせ負け、みたいになってしまうということか」
「ん。山場で盛り上がらない勝負なんて『美しく』ない。勝ち負けも大事だけど、美学を感じないゲームは楽しくなくなる」
≪美しく、ねぇ……≫
ぼぼぼ僕には何も聞こえてないし、見えてもないよ?
何かやっちまったわけでもなく、憑りつかれたなんてこともない。スルーしてればそのうち居なくなってるはず!
今は謎の存在よりも体育祭が最優先なのである。
……よし。意味はないけど、あの決定的に『変なの』を見ないように四方達に意識を集中しよう。特に意味はないけども!
だから…だからお願いします。僕じゃなくて、他に目を向けてください! 文字通りに!
その口に出せない切実な願いが届いたのか、あるいは早苗か神様のおかげか、フッと視界に映る変な裂け目と不気味な目のようなモノが消えた。
ふ、ふぅ。無駄にビビらせやがって。
あっ、もう不審に思われてるかもしれないけど、切り替えて思考と話を戻さないと……。
「そ、それにお互い先にも繋がりにくい。だから八百長じゃないし手を抜けとは言わないが、以降の団体戦は力を温存して必要な時に全力を出せるようにしといた方がいいんじゃないか?」
ちなみにこれは、勝ち目がない場面だと清隆や高円寺なんかを呼び込みにくいという意味が大きい。
何らかの理由でノッてくれたとしても、僕の矜持的に負い目みたいなのができるからだ。
そんな面倒な事は御免である。
「…………先、か。左京はこの特別試験を」
「神崎。特別試験じゃない。体育祭だ」
「同じようなものだろう」
てか、神崎は体育祭を特別試験だと捉えているのか?
それは苦労しそうな考え方なので、一言あった方が親切かな。
「確かにそうだけど、普通の学校行事まで特別試験みたいに見てたら疲れるじゃないか。夏休みにあったのがスタンダードだと仮定すると、基本アレは裏を考える必要があるからな」
「裏……」
「このへん面倒くさいよなぁ」
「まったくだ。せっかくそういうの考えなくていい体育祭なんだし、先に繋がって後味が悪くない勝ち方を狙おうぜ」
学校行事と騙し合い前提な特別試験の境界。
これをきちんと認識してないと、盤外戦術を仕掛けられた場合に対応が難しくなる。能力の多寡に関わらず、真面目度合いが高いほど境界を曖昧にしてしまい、学校行事にも無駄に裏を考えるようになるからだ。
綱引きのルールは至極単純。2本先取した方の勝ちだ。
こればかりは綱の長さの関係で人数を増やせないので、学年ごとの競技になる。それでも男女別で2クラス分、40人(白組は栄一郎の分で41人、赤組は高円寺欠席の為に39人だが)ずつという充分規模が大きい競技だが。
「柴田は話し合いに行ったが、左京は本当に龍園と話しておかなくていいのか?」
「いまさら遅いだろ。どっちにしろ『遊ぶ』条件は整ってるし、龍園なら楽しさ優先にしそうだから、後ろから刺される注意だけしとけば問題ない」
というか話しぶりから考えて、一つ一つの勝ち負けの重要度の低さを龍園は知っている。特に干渉しなければ、敵味方をおちょくる方向に舵をきってくれるだろう。
「綱引きだと、後ろから刺される方法も限られてくるか」
「……目の前の勝負に目を向けないなんて、左京や龍園は本当にどんな視点で物事を見てるんだ」
これは悩むような事じゃない。経験を積むだけで自然とわかってくる事だ。
「はぁ…前から言おうと思ってたんだが、お前は真面目すぎるぞ神崎。単純に楽しいやり方を想像するだけで、いくらでも相手がやりそうな事は浮かんでくるだろう」
「…………はぁ。それはおそらく左京だけだ」
「ああ、そうだな。龍園はもっと違う事を考えてそうだし、夢月に至っては明後日の方向すぎる」
「そんな事はない。簡単なことだ。
とある監督の言葉だけど『美しく負ける事は恥ではない。無様に勝つ事を恥と思え』ってな。これを言った人は、チームを世界最強にしてみせたよ。だから根本は一流の模倣さ」
「……」
神崎が考え込んだが、こうきちんと順序立てて流れを構築していけば、おのずと見えてくるモノがあるはずだ。面倒くさいし時間もないから詳しい説明はしないが。
まぁ、経験値の差で混乱してしまうのもわからないではない。
なぜならRPGで例えると、僕が基本職LV50(前との年齢合算的に)くらいで、神崎は上級職LV15か16。同じく四方などの天才級も最上級職や勇者のLV15か16。基本能力に差があっても、レベル上げてゴリ押ししてる僕に正面から来れば、そりゃあ大抵は対応できる。ポテンシャル自体はともかく、少なくとも思考の幅にはそれなりの差が出てくれないと立つ瀬がない。
僕は無駄に社会経験してきたわけじゃないと自分で思う程度には凡人なのだ。
……うんまぁ。この経験値を持ってしても、時として軽く追い越して行く奴らがおかしいのである。具体的には、四方とか清隆とか早苗とか高円寺とか鬼龍院先輩とか……!
早苗は神様ブーストもあるかもしれないが、この全員に対して先読みした上で追いすがるのが精一杯とかどうなってるんだよ。
それに他にも、椎名に南雲、龍園、坂柳さんなどは、どう考えても高校生レベルじゃない。裏道にかけては最上位層に譲るだろう学に、一之瀬・神崎・葛城だって、まともに当たれば確実にほとんどの分野で僕よりは上だ。
むしろ、もう少し手心を加えて欲しいまである。
頑張って龍園と事前交渉っぽい事を試みていたもののポシャった柴田が戻ってきた。
「なんの…なんの成果も! 得られませんでしたぁー!!」
「柴田までネタ使うのかよ」
「いや、やってみるとちょっと楽しいな、これ」
「だろ? 僕の気持ちがわかったか、柴田」
「左京とは規模が違うがな」
柴田も神崎も冗談が言えるなら大丈夫。良い精神状態といえるだろう。
一之瀬ほどじゃなくても、この二人は良くも悪くもBクラス男子の中心的存在だ。リーダーシップはあるし、駄目だったことは切り替えて、普段通りに振る舞えるならOKである。
そうしてベストに近いコンディションで始まった綱引きは、1年赤組全体は葛城と須藤が引っ張っており、それを戸塚・橋本と平田がフォローする感じで、クラス間の連携がない白組は苦戦を強いられた。
その為、1戦目はあっさり負け、2戦目は柴田が頼んだことが理由か龍園が微妙に連携指示を出してくれたこともあって辛勝。
何気に体格的にアルベルトという超級パワーの持ち主と、2人分の人数差を感じさせないあたり、きちんとクラスを越えて連携している。あれはおそらく、葛城の真面目さの表れだ。
実に葛城らしい守りの硬さといえるだろう。龍園とは別の意味で、大したリーダーシップである。
Dクラスは微妙ながら、AクラスのBクラスにも劣らない団結力には龍園も小さく目を見張っていた。
とまぁ、ちょっとしたアレコレはあったものの、最後の3戦目。
龍園が仕掛けるならここだろうと、少し離れた位置から四方と神崎が視線を向けてくる。何故か最後方の龍園も目を向けてきてるが。
「……何をやってくるんだ」
僕の後ろで綱を持つ柴田の独り言が聞こえてきた。
白組は戦略以前の問題で、B・Cそれぞれ綱の前方・後方で別れている。Bクラスは前方だ。
赤組はA・D入り乱れた身長順らしく、最後尾に須藤がいる以外は綺麗に背が高い順に並んで見えた。しっかり連携を取っている。すでに経験済みだが普通に手強い。
ただBクラス単独の戦術も身長順で高い奴から前に並んでいるので、僕と柴田はちょうど真ん中くらいに位置している。ちなみに四方はクラスで最後尾…Cクラスとの境界にいて、神崎は前の方だ。
逆にCクラスは最初バラバラで、2戦目から低い順に並んでいた。Bクラスと合わせて弓なりになる形。
この連携を最初から捨ててる感じ。やっぱり龍園には「流石やでぇ」とか称賛したい。頼りになる。
なぜならキャットルーキーの神童のごとく、脅して宥めてまた脅すヤクザなやり口と他者を嘲笑うことにかけては、龍園の右に出る者はいないかもしれない。赤組にも白組にも、聞こえよがしに煽りを入れるテクニックはなかなか真似できない。
元々警戒されていたところへ、更に倍プッシュするかのような非効率ともいえる無駄に洗練された無駄な振る舞いは、あの性格ゆえにだろう。
再度、正確に言おう。
流石、高育随一のコミュ障(当社比)である。
なお、綱引きの3戦目に関しても言うことはない。
いきなり後方のCクラス全員が綱から手を離す戦術を取られたので、赤組の奴らや柴田に他数人が抗議していたくらいだ。
また押されたり引っ張られた僕含むクラスメイトも、ちょっと擦りむいたりしたがみんな軽傷。最後尾にいた四方だけはほぼ確実に無傷。こうなったのは、心構えがあったことも少しは影響してるかな。
それでいて、男子は3戦して1勝2敗、女子は順当に2戦2勝である。この後の僕達1年生が障害物競争をしていた裏での話だが、2年生・3年生の結果を合わせて2勝4敗。赤組の勝利に終わる。
文句は……ないこともないが、綱引き全体の結果は文句なしに上々だ。
だからこの結果を導き出したキーマン───敵味方からの罵倒と苦言を聞き流して去っていく龍園に、一般的にはアレかもだが大した玉だと僕は再認識していた。