……マジか。最初で困る場合が何度かあったので、ストックしといた書き出し部分。よりによってこのタイミングで現実のニュース(少し前)になってるとは。事実は小説より奇なりとはこのことか。
ちょっとそのまま投稿するか、いっそ寄せてしまうかで迷ってしまい、繋ぎ方が雑になってたらすいません。
とある業界で不正と言われていた問題がある。
国交省の認証基準よりも条件を厳しくしてクリアしたのに、国交省が「俺の言ってる条件とは違うじゃないか」という杓子定規な判断で認定を取り消した、という不正。
何気に過去にもテレビで何度か似たような問題を取り上げて騒いでいたが、これを不正だの虚偽だの言うって……。「問題が起きても認めなきゃ負けじゃない」や「一度決まったら何があろうと見直さない」みたいなアレすぎる屁理屈理論でも各所で蔓延してるのか? 国際基準がどうとかも、ほぼ的外れな部分を言ってただけだし。
あれって僕の解釈だと、60点を基準にするって言われて80点のモノを作ったら、「60点じゃなきゃ駄目なの! 以下は勿論、以上でも駄目!」とかからの「よくわからないけど基準じゃないなら不正やろ」の国→メディアのお得意迷惑コンボなんだよなぁ。
要はより良い物をと頑張っただけでカンニングみたいな確定のズルもしてないのに、不正と言われてる感じなんだが。
そんな頭がアレすぎるようにしか見えない某業界に比べたら、まだ目の前にいる男はかろうじて理解可能な範囲だ。必要があって要求水準を越えても、理不尽な物言いはしてこない。
「俺の負けだ。よくもまぁ最初から最後まで策を積み上げやがったな、左京。自分を餌に、あそこまで扱いにくそうな龍園すら組み込むとは思わなかったぜ」
それどころか龍園と何か一言交わして僕に話しかけてきた南雲は、不意討ちで負けたというのに不思議と楽しそうだった。実情が出たとこ勝負の辻褄合わせだと言ったらどうなるんだろう?
「まぁ、アレだ。必殺をいくつか用意しといてそこに引き込むしか楽しい勝ち方がなくてな。手段を選ばないんなら、強い奴には強い奴を当てて、自分はその下地作りするのが最適だったんだ」
「はははっ! 先頭きって突っ込んで来といて、最後の最後でのあれがかよ!」
どうもならなかった。箸が転んでもおかしいお年頃というやつか。野郎だけども。
それにしても、なんかこう…南雲の印象が微妙に変わったような気がする。何がどうと言われると困るが、コイツって嘲笑ったり見下す時以外でもこんな風に楽しげに笑う奴だっただろうか?
ぶっちゃけ、含みなく笑う南雲が気色悪い。むしろ悪巧みでもしてる雰囲気出してくれた方が、よっぽど「らしい」という感想だ。おそらくこれに反対の者はそんなにいないに違いない。
「……くっくっく。リレーじゃもうこんな事はしないだろうが、俺の『優先順位』はさっき変わったぜ? これも計算通りの下地作りか?」
「んなわけあるか。『ソレ』は素直に学とか龍園とかに向けとけ。僕じゃ力不足だってもうわかっただろ」
「力不足、ねぇ……! ははっ、マジで予想外に楽しくなってきたもんだなっ」
ここ最近の南雲との接触でわかってきた…と思ってたことがある。
それは、自分の負けや失敗……その可能性を見いだした相手を、トロフィーのように飾りたがっている性格。コレクターのようでありながら享楽的でもあるぶん、近いと言えなくもない清隆や龍園とも違う。敵になりえないと見れば、遊び半分、利用半分で潰しに来る。
つまりお互いに全力を出した上で、最終的に自分が勝つのを求めているのだ。その為なら、一時的に負けても、失敗や挫折みたいな壁にぶち当たっても、楽しむ精神を持っているのだろう。気に入らないし、厄介極まりない。
さきに挙げた通り、アレすぎるイイ大人連中よりはだいぶ理解できる厄介さではあるけども。……ふむ。柴田の手を借りて一手打っておくか。ちょうど南雲のはまり役もあるし。
テンションが通常モードに移行してすぐ、我に返った。
南雲が去っていき、それを待っていたかのような早苗に群衆の中から連れ出されている最中に、である。不可解な人外の動きがあるので、早苗であれば引っ張られるくらい別によかったのだが……最初に南雲達と対峙した時、後の事は後で考える、って考えたことをふと思い返したのが間違いの元。
僕は……僕はなんてことをしてしまったのか。もっと穏やかに収める方法もあったというのに勝負に熱中してしまうとか……。
その結果───。
「夢月さん? どうしました?」
「……面倒くさい」
僕の内心はこれ一色で占められた。
あくまで予想されうるというだけであそこまでやってしまったのは、素で南雲にムカついていたのもあったのだろうが、ソレはソレ、コレはコレである。
「夢月。お前、ついに声に出して言ったな。反射的にじゃなく」
「何故僕が自ら面倒な方向に舵を……! 場の雰囲気とかに呑まれて調子に乗っていたのか? 面倒くさくなるってわかりきってたのにっ」
付いてきている四方の指摘もほとんど耳に入らないくらいに、やったことへの後悔がすごい。
「……ああ、結構無理を通してたんだな夢月。その様子からすると……」
「ア、アイリニウムを」
「えっ」
「僕にアイリニウムを届けてくれ。頼む…早苗! 少しでいい。暗い未来を乗り越えるには癒しが必要なんだっ」
心からの嘆願がどうか届けとばかりに、僕は神様一家に向けて祈った。
時は昼休憩のアナウンスが流れてすぐの12:10。
部室の長椅子を二人で占有しつつ、僕は学校が用意していた弁当を食べながら、食べさせることで至福の癒し空間を実現していた。
「───というわけなんですよ、愛里さん」
「どういう理由!? え、それでなんで『わたしが』夢月君に膝枕されながら、昼食を摂ることに!? 逆ならまだわからないでもないのに!」
早苗が愛里への事情説明をしている中、僕の膝の上には愛里のピンク頭が乗っかっている。勿論、起き上がろうとするたびにまた寝かせる。弁当を受け取って合流、からの人目につかない部室まで移動した甲斐があった。
「大丈夫だ。砂ぼこりなんかは可能な限り落としたし、早苗もチェックしてくれた。愛里は大人しく「あ~ん」をされててくれたら、僕のMPは回復するだろう」
「そこじゃない! さっきまでの夢月君は…こう、違ったよ!? あれMPとかいうのを消費してた姿だったの!?」
「うむり。わかったら、昼食の続きだ。やはり定番のだし巻き卵あたりからいっとくか? ほら、あ~ん」
気分は軟体生物になって爆散した某ギターヒーローを、こねくりまわして人へと成型するが如し。
これはイイモノだ。なんか落ち着く。
「あ、あ~ん……って、ああっ。言われるがままに、つい食べちゃった!」
「はいはい。いいから口をしっかり閉じて食べましょうね愛里ちゃん。クチャラーは色んな層に拒絶反応があったりするからな」
「愛里ちゃん!? モグモグ…あ、味がわからない……」
驚天動地といえる早苗の手助けもあり、動くのを諦めて羞恥に頬を染める愛里。相変わらず癒やされる仕草だ。
しかし他ならともかく、愛里への膝枕を後押ししてくれるなんて、今日の早苗は何故かこれまでにないくらい上機嫌である。普段だったら、絶対に譲ってくれないだろう。
「……この夢月さんですよ? 愛里さんの膝に寝かせようものなら、良からぬ事を考えてもおかしくありません」
「と、早苗が言うのでな。正直、今は異性やらソレ系のモノより、癒しが一番欲しいんだが」
「あ、あぅう……。膝枕するのは確定してるぅ」
ただ確かに愛里に膝枕される場合、その危険性は充分ありうる。女子特有の感触や匂いもさることながら、視線を前以外にズラせば校内No.1かもしれない大きな山脈や、ジャージ越しとはいえ柔らかな足や腹が顔を覗かせるだろう。
このπ、下から見るか? それとも横から見るか? って煽り文句のグラビアアイドルに膝枕されると考えたら…って、駄目だ。そこでうっかりモッコリしたら、目も当てられない事態になっていた。そう考えると、早苗の懸念は的を得ていたといえる。
ともあれ癒し枠に精神を回復してもらった以上、なんとか午後からもボチボチやれることだろう。体力はそこまで消費してないしな。
いつになく優しげな早苗と四方、そして普通に来てくれた愛里には感謝である。
12:40。
昼食を終え、持ち直した僕と愛里、その仲間達。
とある事情により、愛里inワンダーランド(ただの部室)から場所を変えていた。
「……なあ」
「……はい」
「……誰も、来ないね」
僕と早苗、応援に来てくれた愛里と四方の4人は、守矢神社の高育出張所(事前に場所や実行の根回し・仕込み・宣伝は済んでいる)で暇を持て余していた。
おかしい。
僕の計算では満員御礼の笹もってこい的な大繁盛のはずだったのだが……。
最終的に学を落とせはしなかったものの、競技中ずっとやりあっていた早苗の…ひいては神社の人気はうなぎ登りになるのが当然ではなかろうか。
「お、お前ら……こんな用意までしてたのか」
「当然だ。むしろここが重要だ。信仰や入信するにしても、何らかの形はあった方がいいだろ」
「あくまで形としてはですけどね。気持ちが大事なのは変わりません」
「でもなんで人が来ないんだろうね? 早苗さんのカッコいいところは、たくさんアピールできてたと思うんだけどなぁ」
「…………さ、佐倉までコイツらに染まって……いや、よく考えると最初からこうだったか?」
四方が慄くような、沈痛なような、何かを堪えるような顔で聞いてくるが、予定では守矢信者爆増イベントだったのだ。熱が冷めないうちに、形を残して確保したいのは人情だろう。
しかし愛里が言うように、現実では人っ子一人来ない。
不思議でしょうがないので、変な態度の四方をスルーして早苗や愛里に懸念を聞いてみる。
「だよな? あんまり考えたくないけど、もしや宣伝する時やチラシに記載した時間や場所とかを間違えてたか?」
ちなみにここは、二つのグラウンドの間にあるコテージ群───の端っこの木陰に椅子と机、入信書を置いただけの簡素な場所である。
「いえ、私も確認してますがそれはありません」
「それなら何故だ。原因がわからん」
「「……」」
競技中に見かけた人外の仕業ってわけがない(それこそ意味がわからない)し、一応打ち破った形になる南雲や坂柳さんは障壁足り得ない。本当に原因不明だ。せっかくチラシともども500枚も印刷した入信書が風に揺られるのみになるなんて、予想外にも程がある。
「お、お昼ごはんの時間だから、とか?」
「ちょっと弱い気はするがそれか?」
「どうなんでしょう」
行き詰まっていると、四方が重々しい口調で問いかけてきた。
「…………あのな? 今、夢月や東風谷が生徒や学校からどう見られてるか考えてみろ。そこに答えはあるから」
「え、四方は原因がわかってんの? だったら教えてくれても」
「いいから。認識を言ってみろ」
とは言われても、改めて考えても認識は一致してると思うが。まぁ口に出して状況把握するのも悪くはないか。
「まず早苗はヒーロー的な感じで間違いないよな?」
「「うん(はい)、多分」」
「……」
早苗と愛里は賛同……だが。
なんだ、四方。その唖然とした顔は。
「僕は……なんだろう? 名ばかりの総大将?」
「名ばかりとは言えないんじゃないですかね」
「夢月君、集団競技では最初から最後まで活躍してたし、わたし達の学年のリーダーみたいに見られてるんじゃないかな」
「ははは。ないない。柄じゃないし、騎馬戦で思いっきり投げ出したのを多数が知ってる。しかも最後なんて、龍園が美味しいとこ全部持ってってくれたからな。あってアイツじゃね?」
「ふふっ。そ、そうですね」
「そう、なのかな? そうかも?」
早苗はなんか笑ってるが、おそらくこの認識も正しいだろう。
多少は総大将として認知されてるかもしれないが、僕は指揮する者としてはマイナス部分が大きい。個人の実績も出してないので、評価が高かったとしても誰かの次点あたりが関の山なはず。
その点、龍園は違う。
1年はほとんどアイツが制圧したようなものだし、南雲の鉢巻を取ったのもアイツである。
今頃は早苗の男バージョン的な扱いを受けてウハウハだろう。
「あっ。てか、結局四方のわかった原因ってなんだったんだ?」
「……………………いや。俺の勘違いだった、すまん」
「それにしては、やけに長い沈黙だが」
「いやいや。ちょっとど忘れしちゃってな。思い出そうとしてたんだよ」
それならその悟りを開いたような笑顔はいったい……。
「そこで私ですよ!」
「ひよりちゃん! わかるの!?」
「その前に椎名が唐突に現れたことにツッコめよ佐倉」
「まあまあ。友達と食後をご一緒しようと顔を出しただけですよ、四方君」
僕達の仲間や友達って、大抵神出鬼没だからな。唐突な出現なんて気にならない身体になって、もう慣れちゃったよ。主に高円寺や鬼龍院先輩、四方に早苗のせいで……。
てか、椎名に客用のを使わせるわけにもいかないから、新たに出すか。
「あー。じゃあ、予備のパイプ椅子出すわ。椎名は僕の席を使って」
「あ、お気遣いありがとうございます」
尤も、椎名が来たのは少し意外だ。あまり動かない印象を持ってたけど、アクティブな時もあるらしい。動かない点Sの異名は返上か?
ま、せっかく友達が来てくれたんだ。細かい事は抜きにして、歓迎するのがダンディーな紳士としての振る舞いである。
席を譲り、僕もパイプ椅子に落ち着くと椎名が話を再開した。
「それで人が来ない理由ですが、思うに早苗さんはやりすぎたのでしょう」
「やりすぎた?」
四方だけは、椎名が言わんとすることがわかってるのか頷いている。
「はい。あまりに高みに登りすぎて、大多数は逆に畏れ多く感じてしまったのです!」
そして瞬時に突っ伏した。
「なる、ほど?」
「高嶺の花みたいに思われたってことか」
「そうです! まして生徒会長との堂々たる一騎討ち。近づき難さ更にアップです!」
「つまり私が完璧美少女すぎたのが仇になってしまった、と。美しすぎるのも考えものかもですねぇ」
「人前ではナルシストもほどほどにな。話しかけられる確率が下がるぞ」
「事実なのですからしかたないでしょう」
てか、もしかしてコレは───。
「……なるほど。椎名もあっち側…………これがツッコミ不在の非常識集団の恐怖、か」
思いついた考えを形にしようとしていると、四方の呟きが聞こえてきた。
確かに僕以外ここには常識人がいないけど、今更そんなに遠い目になるほどのことか? 四方に変な自虐スイッチでも入ったのだろうか。
しかし椎名の説は一理ある。
ガワだけならトップクラスと言っても過言じゃない容姿の奴が魅せた大立ち回り。早苗と付き合いのない奴にとっては、ある意味で学に近い立ち位置のように見えたのかもしれない。
……四方の様子から、早苗がアッパーテンションの邪神スタイルをさらけ出してたせいかも、と一瞬脳裏をよぎったがそれは気のせいだったのだ。
ところで外部接触禁止の制度をぶん殴ったせいか、少数とはいえこの体育祭にも来賓・来客がいたりする。
特筆すべきはは開会式の時に少し見かけただけだが、なんと鬼島という政治家が来ていたことだ。現職の総理大臣である。
画面越しではない総理大臣を見るのは初めてだったものの、間接的には学校制度の改変に力を貸してくれた人だ。ダメ元で昼にお礼を言いに行ってみようとしてたら、棒倒しが終わった頃には姿がなくなっていた。
でもそりゃそうか。忙しいに決まっている。そもそも縁があったとしても、いち学生に会ってくれるかも難しいラインだったし、突然すぎてアポすら考えていなかった。まぁ、やることが詰まってたので、しかたないと思うしかない。
代わりというのは失礼だが───。
「エイイチロー!! 早く早く!」
「つ、翼! そんなに急かさなくても」
「何を言ってるんですか! エイイチローはあの時の自分をよく覚えてないからそんな事言えるんです!」
栄一郎が親しげな女の子と二人で、暇な守矢神社出張所を訪れた。
入信、じゃなそうだな。そもそもあの女の子は、服装からしてこの学校の生徒じゃない。大方、少しは外部接触可能になったことで数名を実験的に招いたという学校見学者だろう。よくそんな枠に入り込めたものだ。栄一郎と親しいところから、彼の父親である松雄のコネクションを頼ったのだろうか。
「はじめましてっ、左京先輩! 私は七瀬と申します! エイイチローがお世話になりました…なってますっ!!」
「あ、ども。ご丁寧に?」
いや、これ丁寧なのか? しかも先輩?
めっちゃ元気でめっちゃ笑顔だからか、つい気圧されてしまった。
「いきなり失礼なことしてすいません社長。翼…この子は僕の幼馴染なんですが、どうしても社長に挨拶したいと言って聞かなくて」
「挨拶じゃなくてお礼です、エイイチロー! あんまり会えなくなってしまいましたが、夏前までのいつか消えちゃうんじゃないかと心配だったエイイチローが元気な姿を―――」
「そんな大げさ…でもない気もするけど、だったらもう少し落ち着こうね、翼。はい、深呼吸」
「う、はい。すぅー、はぁー」
えぇっと、七瀬さんはアレか。栄一郎の押しかけ妻的な?
犬系彼女を彷彿とさせる素直に深呼吸を繰り返す七瀬さん。かなり幼く見えるのは、指摘してはいけないことだろう。坂柳さんの例もあるし。
それにしても。
「な、なあ早苗」
「? なんでしょう?」
「あの七瀬さんって娘、普通に金髪?」
「え? 夢月さんはそう見えないんですか?」
「いや、見えるからおかしいんだ」
「?」
「あ、ごめん。こっちのこと」
こっちも多少慣れてきたとはいえ、何故に名前は日本人なのに金髪や銀髪、それどころか妙な髪色の奴が多いんだ。
生まれ直してから真剣に情報収集や研究とかしてないけど、落ち着いたら生物学をちょっと本格的に調べてみるか? 染めてない金や銀も充分希少なはずだが、結構な割合で黒や茶じゃないのが混じってる現状がマジで不思議でしょうがない。もしかしてこの世ならざる者達や生物学に限らず、常識自体が前と微妙に違うのではなかろうか。
そんな疑惑が湧き出してきた。
ともかく話を戻すと、またもや美少女である。
先輩とか言ってきたし、おそらく現在は中学生だろう。自分に照らし合わせると、まだ推薦が始まったか始まってないかの時期なのでだいぶ気が早いと思うが。
なんか微笑ましい二人を見ていると次々に浮かぶよそ事を振り払っていると、早苗が質問してきた。
「夢月さん。この人にはリア充がどうとか言わないんですね?」
「は? この人って、栄一郎のことか?」
「ああ、そういえば綾小路君や……あのなんとかいう生徒会?の人には時々言ってましたね。ですが、他にもモテそうな人にはあまり言っていないような……。何か基準でもあるのですか?」
意識はしてたけど、よく見てるな椎名も。南雲の名前は知らないみたいだけど。
「基準って……。あのな? 僕は……あー」
「ん? 詰まるような事なのか?」
そのまま口に出そうとして、すんでのところで思い留まった。
偏見が多分に含まれてるし、早苗はもちろん愛里や椎名、下手すると四方にも良い風に聞こえないだろうなぁ。
まず最初に人を道具やアクセサリーみたく見る印象の奴は、釣った魚に餌をやらないベーシスト系みたいだと思ってるなんて……。
特定の対象に絞らず、手当たり次第に食い散らかすクズ中のクズ! 絶対に許すな! なんて思ってるとか、無駄に印象を悪くするようなことは言いたくない。
誤解ないよう補足しておくと、ベーシストとはいっても某酒カスや某YAMADA的なの、ついでに清隆のような本質が陰キャ寄りの奴にはそれほど本気でもないのだ。なんなら僕自身も近しくはある。
あくまで美学なく食い散らかすだけみたいなクズ系に、自動で反応してしまうのである。
「そういうわけじゃないけど、んー。まぁ、栄一郎ならいっか」
でもアレな点を軽く濁して、清隆や南雲の陰口っぽいのを口に出さなきゃ大丈夫だろう。
「早苗や高円寺は明確にそうだから少しわかるかもだけど、大事のモノの為に頑張ってる奴を邪魔したり茶化したりするのはちょっと嫌なんだ。まして七瀬さんも栄一郎とお互いに大事に思い合ってるみたいだし、リア充はリア充でも周囲を不快にさせないリア充だろ、この二人。流石の僕もそんな奴らに嫉妬的な感情は向けないよ」
「ぁ……大事に」
「あら? そうなると、つまり綾なんとかやあの偉そうな副会長は不快なナニかを感じさせ」
「ああっ!! そう! 栄一郎達は良い奴…奴らっぽいって言いたいだけっ! 他意はない!」
なんてとこで気がつくんだ、この緑巫女は。せっかく言い方に気を遣ったのに波風立てるんじゃない。
深呼吸の途中で笑いに変換されたと思われる七瀬さんと栄一郎、それに四方や愛里までが見てきたので、そこからの僕はなんとか誤魔化して良い風にまとめようと頑張った。
気にいらない部分があるってだけで、別にアイツらが嫌いなわけではないのだ。あえて悪評を吹き込む必要などないだろう。
というわけで、すごい今更に感じるかもですが、私が考えるハッピーエンドが見えてくるようにする腹案その3。よう実初期(遅くとも堀北学が生徒会長の間)までにどげんかせんといかん最後の三人目、南雲雅でした。ちなみに一人目は佐倉愛里で、二人目は綾小路清隆だったり。
多分、私の中でキャラの性格や印象なんかが固定される(変えられなくなる)のがこのあたりなんでしょうね。試しに1年目の冬以降に似たような事がやれるか想像しても、全くできませんでした。
だから強引な展開なのは承知してるし、ご都合主義と言われたら否定できないですが、南雲のタガを外さないよう1回目はともかく、三回(プール・舌戦・騎馬戦)は倒しておこうというね。
だって愛里はともかく、清隆と南雲が手段を選んでくれるようになるだけで、なんかすごい安心感。
清隆は櫛田と、南雲は堀北学と。絶対に原作のあのタイミングで決定的に仲違いする必要はなかった、と私などは思うんですよ。
……ところで、七瀬翼を明るい系の丁寧語かつ一之瀬みたいな中3で急激に胸が成長するタイプ(つまり今話の時点では成長途上)にしちゃってます。違和感あったらスルーをお願いします。単純に栄一郎存命時の彼女を出したかっただけで、特に設定とか後の事とか考えてないので。