ようキャ   作:麿は星

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 もう一つの最終話(よう実メイン)。
 文字数と後書きを書くための時間を考慮し、時間を開けて分割2話投稿してます。なので、前話と合わせて読むのをオススメします。
 その後書きは、少し遅れて上げる予定の活動報告に。



EX最終話、最高のパーティー

 

 僕が内心で清隆に祝辞を送りつつ、パソコンを片付けている間。

 色んな意味で精神がグチャグチャになったっぽい坂柳さんは、葛城や神室さんに介護されるように呆然としたまま自分の炬燵エリアに帰還していった。

 時々意味不明な叫び声は届けられるものの、観念したようにされるがままな清隆も、Cクラスの炬燵エリアに引き摺られている。

 それと逃げるように櫛田がさりげなく僕達の炬燵へ移動してきた。

 

 ともかく聞こえが悪いのを承知で言うと、坂柳さんが飛んで火に入る夏の虫になってくれてちょうどよかった。清隆と坂柳さんがWINWINになれるプレゼントは、お膳立ての条件が厳しいからな。

 僕はちょっと余裕なくて大人気ないやり方で負かしちゃったけど、高円寺は女子供には基本的に紳士な奴だ。何故か分かり難く坂柳さんに助力してたから、僕も清隆への何らかの願望を後押しするついでに清隆に伝えておいた。

 あとは若いお二人に任せて、部外者は去るのみだ。

 なにより、これでようやく僕にも安息が訪れた。

 

「う~ん。勝てなかった場合も考えてたけど、また勝ってしまったか。自分の有能ぶりが恐ろしい」

「むつ…さ、左京君は、自分が連続でやった事を自覚してるの……? 一つでも、とんでもないやらかしだと私は思うんだけど」

「むぅつぅううきぃいいい!!」

「……それに綾小路君まで被害者同盟に入れてどうするつもり……?」

 

 言うな、一之瀬。

 妙な同盟はともかく、周囲や坂柳さんや清隆の反応を見て、ちょっとやりすぎたかなって思ったからあえてふざけて嘯いてるんだ。体育祭での南雲の時みたく、サラリと水に流すには坂柳さんと…特に清隆のインパクトが強すぎた。

 とはいえ、清隆の方はまぁ。

 

「大丈夫だ、問題ない。清隆も度々僕へ投げてきてたし、アイツに必要になるかもしれない経験だからな。冷静に戻れば許してくれるさ」

「言いきれるんだ……」

「当たり前だろ。友達なんだ。こういうじゃれ合いで縁を切ろうとする奴じゃないのはわかってる」

「友達……。綾小路君も、なんだね」

 

 なんだ? 妙な雰囲気…のような?

 一之瀬が少し変に感じたが、掘り下げる前に神崎が口を開く。

 

「功績とここぞという時の勝率だけなら、学年でも負けなしなんじゃないか、左京は。……というか、坂柳と同等以上と見ているのか、綾小路を……」

「やっぱりリーダーか生徒会のどっちかは、むt…左京君がやった方が……。ねえ、本当に考えてみてくれないかな?」

「やめてくれ一之瀬……本当にやめてくれ。どっちも地獄の貧乏くじでしかないだろ。僕、マジでM気質ないんだよ」

「……にゃはは。どうしてもそっち方向に話を持って行くんだね。でももったいないと思うなぁ」

 

 清隆や坂柳さんの方にチラチラ目線をやりながら、神崎が変に持ち上げてきた。わかって言ってるだろ。お前の冗談がわかりにくいからか、一之瀬も更に変な発言しだしてるじゃん。

 やることも終わったし、場の流れ的にここにいると面倒事が拡大しそうなので、逃げの一手を打つべき時がきたということか。

 

「───それで夢月はどう逃げるつもりなんだ?」

 

 だが、隙を窺いつつ、話の中心をずらしつつ、懇願していると四方の裏切りにあった。

 

「謀ったか四方!!?」

「何をだよ? ていうか、お前がわかりやすすぎる。何人かも備えてるぞ」

「そうですよ。ここから逃げるのは難しいですよ、夢月さん」

 

 ぐっ、たしかにさり気なく包囲陣を敷き始めた一之瀬達は、簡単には逃してくれなさそう。四方や早苗はただそれを教えてくれたついでに『少し後の材料』を提供してくれたのか。ありがたい(手のひら返し)。

 見回してみると、神崎の目が光ってるように見える。世知辛い世の中だ。

 だが、まだだ。まだ終わっていない。

 こうなれば、坂柳さんからヒントを得た奇策から繋げて正攻法一択だろう。

 

「ふっ…ふ、ふははははっ! 甘く見るなよ優等生共っ! 何が功績だ、何が勝率だ、何がリーダーか生徒会だぁ!! 僕の平穏を崩そうとする奴らは全員徒労感の海に沈むがいい! サラバだ、皆の衆っ!!」

 

 というわけで、まずは素直な逃げの一手である。

 

「あ、逃げた」

「無駄なことを。流石に逃さんぞ左京」

「───何度も逃げられて私も学習したんだからねっ!! お願い! もう少しだけでいいから大人しく私といて!! せめて手を繋いで!?」

 

 会話途中で強引なドリブルで突破を試みた僕だったが、櫛田と神崎の声に続いて、まさかの優等生筆頭・一之瀬が、店内でありながら走り出そうとした僕に、体育祭前夜を彷彿とさせる強襲タックルを仕掛けてきた。

 炬燵から出た瞬間で、神崎に警戒を集中していたこともあり、手どころか半身まるごと捕まってしまった。背後から押し倒され、一之瀬とともに倒れ込む。

 

「また手かよ! 乙女かお前!?」

「正真正銘の乙女だよ!! 夢月君には私が何に見えてるの!?」

 

 僕視点では、聖人のごとき理解不能な化け物以外のナニモノでもないが、むしろ乙女に見られる方が不都合は多いだろう。

 皆無に近い可能性でも、押し倒された僕が勘違いしたりエロい気分になったらどうするつもりだったんだ、このポンコツ……! あんなにセクハラしたのに、この面ではまるで成長していない……。これには安西先生もショック受けるわ。

 それでいて、早苗のようなパワーや担任のような技巧はないものの、逃がさないという強い意思を感じる。マジでなんなんだこの聖人。

 てか、ふざけんなっ。公共の場でこれとか、常識をどこに投げ捨てやがったんだ!

 む? でもあの反応……どうせ拘束されて動けないし、ここは一つ、穏やかな自分に一時フォームチェンジしてチョロ之瀬へ変化するか試してみるか。

 

「……っ。一之瀬が美少女なのはわかってるよ。とても可愛いしな」

「な、なななに、いきなり……」

「本心からの褒め殺しだ。少しは当たりが弱くなるかと思って」

「正直すぎる! もっと取り繕って!?」

 

 しかし口でそう言っても、身体は正直だ。

 

「おちょくるならやはり一之瀬だな。女の子らしくていいよ子猫ちゃん」

「ひょへっ、子猫ちゃん!? ほ、褒めても何も…にゃはは」

「チョロいのもいいよな」

「に、にゃは? 何か言った?」

「いや何も?」

 

 一之瀬は僅かに赤面して満更でもなさそうな素振りを見せ、それとなく態度が軟化した。

 

「ま、まぁ? でも、たしかにリーダーを貧乏くじなんて言う左京君には可哀想かな、って思えてもきたんだけど」

「帆波……」

「ち、違うよ麻子!? これは…その」

 

 まぁ、主に網倉から向けられてる「ちょろすぎ」って視線のせいで、無駄な弁明ターンが発生してるが。

 ふっ、思惑通り。再度、打開のための勢いを復活させることとする。

 

「……そうだな。波乱で輝くこの男に責任ある立場は不安定かもしれん」

「お前ら、そう思ってんなら僕を離すよう言えや!」

「コロコロ態度や雰囲気も変わるしな」

 

 いかん。神崎や網倉に目を向けてる場合じゃない。物理的に掴まれてる元凶をどうにかしなければジリ貧だ。

 僕はターゲットを一之瀬に絞ることにした。

 

「くっ、一之瀬! このまま僕にしがみついてんなら、またセクハラすんぞこの野郎…め、女郎!」

「メロン?」

 

 野郎じゃなかったのを思い出して言い換えた女郎を聞き違えたのだろう。まぁ、女郎の本来の読みは「じょろう」であって、響き重視で僕が口に出した「めろう」ではないわけだが。

 でも、ちょうどいい取っ掛かりができたので、勢いに煽りを乗せておく。

 

「メロンなのは一之瀬のおっぱいだろ!? それが僕の背中に目一杯押し付けられてるから丸わかりなんだよ! ドスケベボディ持ちのマジボケ、ホントいい加減にしろっ!」

「またセクハラするし!! 今日という今日は夢月君に……こ、こうだよっ!?」

 

 こう、とは? この変人の言葉は時々わからなくなるな。

 とはいえ、背面から掴まれているので、結局のところ言葉責めかドスケベボディの密着くらいしかイジれる要素がないわけだが。そしてしかたなかったとはいえ、目の前で一之瀬へセクハラしたせいで愛里の視線が痛いのだが(個人的感想)。

 ま、背中に当たる感触と以前の鷲掴み経験からすると一之瀬はだいぶスイカ寄りのメロンだが、文句なしの大玉スイカだった愛里のおかげで、今回はなんとか平静と思考能力を保てている。彼女持ちの余裕があるって素晴らしい。

 

「……ん? てか、一之瀬の乳……そのサイズだと結構重くね? あ、いや、これはセクハラというわけじゃなく、背中にかかる重量が意外とあるなって」

「───でっしょおっ!!? 成長がいきなりだったからか振り回すことになると痛いし、身体のバランスが上手く取れなくなって陸上を続けられなくなる一因にっ……! ごめんっ、忘れて……!」

 

 その余裕と経験によって、思ったより一之瀬の兵器が重いことに気づいてつい指摘すると、すごい勢いで同意を求められた。話は逸れたが、男には非常に気まずい話題だ。一之瀬も途中で思い至って口ごもった。

 しかしおっぱい博士である清隆を乗せて熱く語ってもらってからというもの、僕までついおっぱいを考察してしまうことが増えて困る。

 

 ちなみにそのおっぱい博士は───大きさの好みはよく議題に上るが、実は形や乳首についてもかなり好みの個人差があるんだ。つまり自分の好み合致率とでも言うべきモノの決め手だな。貧乳・巨乳、お椀型、ロケット型、釣り鐘型、小さいな乳首にデカ乳輪! 陥没乳首に長乳首なんてのもあるな! おっぱいに正解はないんだ!! どれとも違ってどれもいい……! あ、あぁ。また夢月に乗せられたとはいえ、オレは何を言ってるんだ……オレはもうダメかもしれない。

 

 との見解を述べていた。

 でも、うん。アイツは本当にもうダメだ。清隆の父親に会った夜に軽い気持ちで乗せたのだが、予想以上の勢いで話に乗ってきて僕もドン引きだったよ。

 しかも直後に訪れた実地に確認できたチャンス…やろうと思えば可能だった愛里との一夜では、興味と劣情を抑えるのに大変苦労した。やらなかった後悔もまたすごかった。

 もう二度と清隆をこっち方面で乗せない。

 余談が過ぎた。思考と話を戻そう。

 

「まったく。夢月は相変わらずだな。そろそろ学習した方がいいんじゃないか」

「四方も他人事じゃないぞ。左京ほどでなくても、神出鬼没なのはお前もだろう?」

「え……?」

 

 僕が一之瀬とやりあってるその時、流れが変わったのを感じたからだ。

 何気に神崎のベクトルが四方にも向けられている。

 

「そうですよ。二三矢さんは私達のエースなんですから、もっと協力する姿勢を見せた方が」

「いやいやいやっ!! それは東風谷さんもだからね!? 左京君がとんでもエピソード増やし続けてるのもアレだけど、東風谷さんも相当だから!!」

「わ、私…も? え、へ……?」

 

 更には、網倉も一之瀬を手伝いつつ、早苗に言い募っている。きっと溜まっているのだろう。

 しかしこれは……? いや、まだ確定じゃない。探りがてらひと当てしてみる。

 

「僕を裏切るからだ、ざまぁ」

「あっ! 夢月さんがこんなこと言ってますよ、二三矢さん!」

「なんて奴だ! お前、いい加減にしろよっ!?」

 

 あえて言い争いを演じ合いつつ、クラスメイト達を観察すると薄っすら真相が見えてきた。

 

「───いや、3人ともことあるごとに目立ち続けてるんだから、せめて常識的に振る舞って? 一番マシな四方君も結構おかしいからね?」

 

 僕達3人が捕獲ターゲットの策略。

 早々に復活した一之瀬の発言から推察すると、どうもそのつもりなようだ。

 だがしかし、僕達3人の内心はきっと一致しているだろう。飲食店内で一網打尽の捕物を仕掛けたお前が言うな、と。

 

「「「……」」」

 

 なので、一瞬だけ良い気分に浸れたが、鶴の一声で今度は僕達が押し黙ることになった。屁理屈で返すと余計に面倒になるのは、これまでの付き合いで割れている。大人しく隙を窺うのが一番マシだろう。

 しかし肩の荷が下りて、しかも僕は彼女までできたのに。せっかく平穏な日常に回帰できるようになったというのに、なんで僕達は一之瀬に勝てないんだ。僕なんか、担任である星之宮先生と双璧をなす化け物・一之瀬に物理的にのしかかられてるのっておかしくない? これが彼女になった愛里だったらなぁ。イチャつく夢を叶えるチャンスだったんだが。

……まぁ、坂柳さん含めて途中から『クラスメイト以外』を蚊帳の外に放り出してくれたことには感謝してるけども。

 

 

 

 しばらく3人で一之瀬に説教(この時点でのし掛かりは解除された)された。

 とその時、ようやく歴史が動いた。

 

「くははっ。ハァーっハッハッハ!! 素朴な疑問なんだがこれが窮地!? たかが5人で!? 悪いがオレにはそよ風にしか感じられないな!!

 だが、コレだよコレ! こういうわかりやすいモノをオレは待っていた!! 今日は気分がいい! 特別にまとめて相手してやろう!」

 

 これ、誰のセリフだと思う?

 

「───さあ、どこからでもかかってこいっ! オレ直々に葬ってやろう!!」

 

 信じられないことに龍園達に囲まれた清隆である。

 龍園達が何したかわからないが、致命的なエラーが発生しているのだろうか? ヤケクソ風味漂う不審者ムーブが発動したと思われる言葉とともに、清隆へ向かって人の流れが集約しだしたのだ。龍園や坂柳さんなど、ノリノリで宣う清隆の急激なキャラ変に呆然としているが。

 

 しかし、ちょっと精神バランスを崩しすぎじゃね? どっちかと言うと僕や龍園がやりそうな口上だろ、これ。さっきのと合わせて清隆が自室に戻った時、首をくくらないか心配になるレベルの黒歴史公開ショーだ。

 清隆の黒歴史記録にまた新たな1ページ、いや数ページ増える事案発生か。何が原因になったんだろう?

 

 でも龍園達、多少持ち直した葛城・坂柳さん達、騒ぎを収めるつもりかうちのクラスではまず四方係の神崎。次に早苗係だった網倉が。一瞬迷った一之瀬は、注意と視線だけ……。こんだけ人材が揃ってれば心配いらないだろ。

 そして、僕達にもそれだけで充分だ。

 

 隙を突いて早苗が櫛田に近寄り、邪悪な笑みを浮かべ合いながら一緒に動き出す。早苗が動いたということは、このタイミングで決定的に話し合いから物理交渉に移行したと思われる。僕にも視線を送ってくることから推察して、おおよその算段はできた。

 おそらく、どこぞの魔王みたいな嘘くさい傲慢さを見せだした清隆が、龍園達の吹っ掛ける喧嘩を買ったとかしたのだろう。坂柳さんとの事もあって、ヤケクソになってるのかもしれない。もしくは───清隆の闇深さの片鱗を僅かに見せた可能性もある。

 つまり手を離れた僕も椎名も、この場での役割を終えたと考えて間違いない。

 

 

 

 なんにしろ、僕も網倉が一之瀬に救援っぽい視線を求めてきたのを機に憂いはなくなった。

 そこで一之瀬の意識が龍園と清隆、坂柳さんの新たに勃発した三つ巴へ移った瞬間を見逃さず、四方へ端的に囁く。

 

「四方……行くぞ」

「行く? どこへだ?」

 

 ただ、話すくらいなら大丈夫でも動くにはまだ早い。一之瀬が動く時が僕達の動く時だ。

 

「面倒事は御免だ。ずらかるぞ、僕達の自由へのロードへ……! ま、お前が残りたいなら留まってもいいが」

「待て……待て待て待てっ。それは───」

 

 悪巧みを持ちかけると四方も笑顔になり、さりげなく小声返しつつ周囲を観察して機会を窺い始めた。

 やはり四方も自分がこうなるのは窮屈なのだろう。快く共犯者になってくれた。

 

「いいのか夢月。ここまで場をかき乱していなくなったら、また一之瀬や神崎…どころか清隆や坂柳、龍園にすら追いかけられるかもしれないぞ?」

「ふん、何を今更。むしろ四方の方がこれまでの真面目な印象をぶち壊すことになる。てか、先を考えてない悪巧みにそんな嬉しそうな笑顔を見せておいて説得力ないんだよ。クラスのことはいいんか? ん?」

 

 隣の四方は湧き上がる笑みを隠せていないが、きっと僕も同じだろう。不思議とめっちゃ楽しくなってきた。

 

「ちょっとくらいいいだろ。俺のやれることは可能な限りやった自負くらいあるさ」

「ははは。僕もだ。そんな良い気分の時に拘束されるなんて実にナンセンス。安心しろ、手筈は整っているはずだ」

 

 状況証拠に、彼女の持つステルス性能を十全に活かし、座敷の出入り口から目立たないように手招きする愛里が見える。いつの間にか椎名や高円寺といった友達連中も姿を消している。

 坂柳さんや一之瀬達も、不穏な雰囲気を出し始めた清隆や龍園達Cクラスの面子に注目が集まりだしている。最強のデコイである清隆が、何かまた追加の墓穴を掘ったに違いない。僕達が悪巧みできている現状こそがそれを証明している。

 最後まで僕達の周りに残っている一之瀬すら注意を逸している今こそ好機。この好機はそう長くはもたないし、次もないだろう。

 

 龍園や坂柳さんも混ざってるものの、一応店内という公共の場で、有能な調停者たる葛城康平と一之瀬帆波がいる限り酷い結末にはなりえない。万が一、荒事に発展しても栄一郎と神崎がいれば最悪には至らせないはずだ。

 以上の材料から最適解を導き出せば、『部外者』はこの人混みから脱出。陰キャ属性を持つか理解する者は、みんなこの結論へと到達するだろう。

 三十六計逃げるに如かず、と。

 様子を窺っていると、これ以上遅れると本当に荒事に発展しかねないタイミングでついに一之瀬の天秤が傾き、動きだした───今!

 

「安全確認ヨシッ! 速やかに離脱する!」

「了解だ、部長殿!」

「夢月君、二三矢君。こっちへ、早く……!」

 

 ゆえに炬燵の死角を利用して、速攻で姿勢を低く出入り口まで転がり、愛里のいる場所に辿り着く。

……愛里がいつもの雰囲気に戻っててよかった。あっさり一之瀬に捕獲された時から、なんか変な雰囲気の愛里にめっちゃ見られていたのだ。恋人になったばかりで格好悪いところを見られたのが何気に心配だったので、当たり前のように僕の腕を掴んでくる愛里になんか安心した。

 正式に付き合いだしてからまだ1週間ほどだが、愛里から妙にくっついてくる事があるので、そうなる条件を解明したいものだ。僕から行きたい時もあるけど、これはこれで…なんというか良い。心が豊かになる。

 何はともあれ、そのまま僕達はあらかじめ会計を済ましてくれたと思われる椎名の好意に甘え、潜入捜査を完了した忍者のごとく店からの脱出を果たしたのだった。

 

───ぁ……あぁっ~~~!!! また逃げられた! むっ、夢月君どこ行ったの!!? ほんっとうにはぐれメタルなの、あの人……!!?

 

 そして誰かさんの叫びを背に、いち早く脱出を果たしていた早苗と高円寺、椎名に櫛田を遠目に確認する。

 気安いいつもの面子だけになったことで開放感が暴走したのだろう。僕だけじゃなく、四方もホッとした笑顔を見せている。

 

「あはははははっ!!」

 

 それに愛里など謎テンションで、僕の腕を掴んだまま振り回して大笑いだ。曇り一つない晴天快晴の笑顔な美少女は彼女補正抜きでもやはり可愛いし、それが僕の彼女だってんだから最高である。

 現実はいつだって泣きたくなるくらいに辛く厳しい。できる時はみんな笑ってる物語(人生)が僕の好みだ。

 で……うん。それ自体はいいんだけど、掴まれてる腕がね? 興奮してピョンピョン跳び跳ねている愛里のとても柔らかなモノに挟まれてるのが問題なんだわ。

 嬉しいは嬉しくても、一之瀬の時と違って余裕はない。そのムラッときそうな色々入り交じった感情を吐き出そうと、妄言が出てきてしまった。

 

「どうだよ、愛里に『二三矢』。あの包囲網から軽く脱出成功だ。僕達3人『ぼくがかんがえた』最高のパーティーみたいじゃないか?」

 

 もしくは愛里のテンションに釣られたからか、思いつきが口から飛び出る。

 

「で、アイツらが最強パーティーってか! ははははっ!!」

「あ、あははははっ!! わたしが最高パーティー……! わたしも…うふふっ!」

「ふははははっ! 僕達の辞書に不可能はない! なんてな!」

 

 でも、幸いにも二三矢と愛里には受けたようだ。

 みんな、ノリが良くて大変結構。

 おかげで僕もムラッときそうになるところを笑い飛ばして変換→擬似的な余裕を取り戻し、そのまま楽しくなってくる。

 最高のパーティーというのも、あながち間違ってなかったのかもしれない。

 

「はぁーっはっはっは! 楽しくなってきたじゃないか! さぁ、みんな。清隆と栄一郎、葛城は置いてきちゃったけど、最強パーティーも加えて二次会だぜ!」

 

 そのテンションのまま早苗の別働隊に合流し、天文部+αみんなで笑い合う。

 約束通りに高円寺が作ってくれた『天文部グループ』勢揃いだ。何気に、金・銀に桃、緑、茶、黒が二人のバラエティー豊かな髪色が揃うと、実に豪華絢爛である。

 生憎、最大威力と思われるデコイを放ってくれた清隆(茶)、栄一郎(黒)、葛城(無)や戸塚(黒)は諸事情によりいないけど、今回の件でグループを知った椎名(銀)が追加で入ってくれたから彩りは充分だろう。

 

「いつどこでやります?」

 

 ガチャの商売の時、なんのために『あそこ』に電気や水道を引いたのかわかっているはずの椎名が笑顔で聞いてくる。

 無論、こういう時のためである。

 

「「「「これから! 炬燵を置いてある守矢神社で───!!!」」」」

 

 だから僕と二三矢、愛里と早苗は揃って目的地を指し示す。

 椎名に高円寺、櫛田を加えた我ら社会不適合者7人衆!

 楽しくなってくるのはまだまだこれからだッ───!

 





 最後までお読みくださりありがとうございます。
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