よう実っぽい物語に、二十則・十戒・九命題を参考にした隠し推理要素ありの数を減らしていく3連続短編。略して、数減らし短編は今話で一応ラストですが、書けたら、物語はあともう少しだけ続く……予定です。
それと独自設定を後書きに載せとくので、気になる方がいたらどうぞ。
「私達の週明けの特別試験、見とくとちょっと良いことあるかもよー?」
できる保険がより万全に近づいて安心していたのか、鬼龍院先輩や天沢達と話したのが妙なスパイスになったのか、もう少しで禁欲期間に入る落ち着きのなさがあったのか。
ちょっとお互いハッスルしすぎて、どちらともなく寝落ち。起きたらすでに僕の横で目覚めてた愛里に、何故か頭を抱えられてナデナデされてた朝からしばらく経った。
天沢の去り際に零された意味深な言葉があったので、僕は僕に労力の掛からない手を打っておいた。栄一郎と一之瀬へメールするだけというなんてことない手だ。1年生の特別試験まではあと土日の2日だけだし、伝と気質、人望、影響力を持ち、拡散能力に優れた奴に投げるのが最も楽で後味悪くないと思ったので。
本当は四方経由で一之瀬に伝えてもらうのが先を見据えると一番だったのだが、今の四方は甲子園の地区予選に向けて猛練習に励んでるので些事で邪魔はできない。
それがどう転がったのか、6月16日に1年Cクラスの波田野と宇都宮という2人がうちのクラスに来て、“首にチョーカーを付けた”一之瀬にお礼を言っている現状に繋がった。なんでもペア試験と……今回の特別試験では大変世話になったとのことだ。誰も退学しなかったことにも一之瀬が一役買ったとのことで、彼らはとても感謝していた。
ああ、一之瀬が何をしたかと言うと、ペア試験では筆記が危うそうな生徒をフォローするための交流会を開いて、主に1年生の成績に不安の残る生徒達に救いの手を出していたらしい。
そしてこれは今回の1年生の特別試験もだ。聞こえてきた話を簡単に解釈すると、石取りゲーム的なババを引いたら負けという試験だったようで、助言や警告を一部に回していたようだ。
本来の石取りゲームは、それなりの数の石をプレイヤーが交互に取っていき、最後の1つを取った方の負け。一度に取れる石は3つまでというのが基本ルール。
ここから変化させて、それぞれのクラスに数人の他クラスからCPを取れる者・自クラスから取られる者が選ばれる。選ばれた者が石を持つ者・取る者ってことだな。その自クラスのCPがマイナスされる石を一定数以上集められると、退学になるルールもあったようだ。
つまり一之瀬が感謝されてるのは、退学者を出すために石を『誰か』に集める人がいるかもしれない、みたいな助言と何らかの手助けを1年生数人にしたから。
天沢の言葉を僕なりに解釈して伝えた一之瀬の生徒会相談室も、おそらく発端の1つである。
手助けの内容を全部聞いたわけじゃないが、聞こえてくる部分だけで考えても龍園や坂柳さんなら何かやりかねないから妥当とはいえよう。
ともかく、それを聞いた1年の各クラスリーダー達(個人的に、この時期から全クラスにリーダーがいることに驚きを隠せない)が対策を打ったことで、2度の特別試験の退学者はゼロだったそうだ。
順位はB→C→D→Aで、不可解な動きが浮き上がって結果的に1年Bクラスが少し落ちた以外は、そこまで差が詰まる結果じゃないらしい。
しかし、先に述べたように1つの懸念も浮かび上がってきた。
何者かが実行したと思われる成績優秀な生徒を退学させようと狙う明らかな誘導があったという話だ。僕視点だとBに容疑者がいそうで怪しいけど、客観的に考えてD…というか宝泉も怪しく見えるだろう、あのフリーダムさなら。
一之瀬に会いに来るのが半月くらい遅くなったのも、波田野がまさにその退学の標的にされて、疑心暗鬼というか容疑者を割り出そうと1年生の間で揉めていたのが原因だと言う。
だからこそ波田野は試験前に適切な助言をくれた一之瀬に、見ればわかるくらい心から感謝している。嵌められかけたことに、相当の危機感を持っていたようだ。上級生の教室に来たこと自体も、感謝の度合いの大きさを証明しているだろう。
彼と一緒に来た宇都宮も、冷静な風を装いつつ一之瀬には信頼を寄せ始めてるのが表面から隠せていない。うちのクラスで例えるなら、神崎っぽい奴だ。宇都宮の方は、何故か僕をチラチラ見てくるしな。
もしかして、僕が考えてることを何らかで察したのか?
……一之瀬って、こんな聖女みたく振る舞っておいて、人を飼い慣らそうとしつつ貶されて喜ぶ生粋のドSでありドM疑惑もあるんだぜー、ぷっぷくぷー。っていう思考を。
そう、つい数日前、たまたま一之瀬と2人になった時のことだ。
妙に強張った笑みで僕にチョーカーを差し出し「夢月君。少し早いけど、誕生日プレゼント…です。よかったら……その、私に着けて」と偽装しようとしたと思われる変な言葉(私『に』じゃなくて私『が』だろうに、とかツッコミ処は他多数)とともに、僕を飼い慣らそうとしてきたドS。
そして、その言葉を遮ってチョーカーを奪い、逆に一之瀬の首に強引に装着して「ふっ、甘いな。これで一之瀬は僕のモノだ。ふはははっ! ご主人様とお呼び!」と返してやったら、その場では目を見開いて硬直しつつ、翌日からもチョーカーを装着し続けている素直なドMでもある。
馬鹿がよ、墓穴を掘りやがった。
こんなアレな手で、僕を容易く手駒にできると思うな。
冗談とはいえ、自分を僕のモノ扱いされても律儀にチョーカーを着け続ける一之瀬には、思惑?そのままにひと捻り加えた仕返しがお似合いだ。
いずれ来るべき時、この札は一之瀬に再び牙を剥くだろう。
なんせ彼女持ちの僕じゃなかったら、硬直した隙に即お持ち帰りされてもおかしくない悪手だ。なら、ストレス発散ついでにセクハラしても罰は当たるまい。
くっくっく。ここしばらく散々追い回しやがって。本当にエ○ゲみたくご主人様とでも呼ばせてやろうか、あのナチュラル淫魔が。
おっと、宇都宮の前に一之瀬が僅かに引き吊った顔を僕に向けてきた。気づきかけたのかもしれない。
誰に察知されてもマイナスにしかならない益のない思考は、ここでお仕舞いにしよう。口笛でも吹きながら、席を立つのが吉。
アスファルトにタイヤ(靴先)を切りつけるのだ。背中に大量の視線の矢を浴び、精神的には落武者のようになるスリルに身を任せて怯えていたけども。
酒も煙草もないし、そもそもまだやれる年齢でもないから、気分のみ新宿の種馬を気取るハードボイルドだけに。
最後の三種の神器である女は縁次第なところもあるが、酒も煙草もないハードボイルドなど僕は決して認めない!
……なんの話だっけ? あ、そうそう。保険の話だった。
サラリと一之瀬達のことを忘れ去って切り替え、野次馬でしかない僕は自然にさりげなくGET WILDを演奏しながら教室を出て、そそくさとバイト先である喫茶・芳香へ向かった。
そのまま向かったバイト先では、時間ができるたび各種応急処置や緊急対応について入念に調べる。
あらかじめ昨日6月15日の抽選結果を見て知った今年の甲子園東京地区予選の日程は、7月9日に第一試合。それまでにできる保険は揃えておく。
何故、野球部所属でもない僕がこんな事をしてるかというと、キャットルーキーでの四方がおそらくこの地区予選前後に腹膜炎、もしくは盲腸を発症しているからだ。
キャットルーキーは『俺』の頃にしかない物語だし、そもそもの年代すら違う。現実的に考えて友達の四方とは関係ない可能性はある。だけど、まずないとは思っていても、万が一を想定するのは必要な気がする。
ただでさえキャットルーキーの登場人物が何人か確認できたのだ。そのものな世界でないにしろ、発生するかもしれないイベントや危難は参考以上の警戒に値する。
何もないならそれが一番良い。僕が勝手に奔走して勝手に疲れるだけだ。
四方が甲子園へ向けて連日のように練習に出向く努力を知る身からすると、何事も起こらないことを祈りたいが……十中八九それは起きる。保険は必要だ。と、ずっと勘が囁き続け、Xdayが近づくにつれて大きくなっている。
多分、手助けしてくれると言ってくれた鬼龍院先輩は学校か、あって南雲関係の対策だと思ってるかもしれないが、もはや僕の中では確信に等しい。
だから甲子園まで約1ヶ月を切った今。
四方が腹膜炎を発症した場合に、いち早く察知するための症状など詳しいデータ。術前・術後の管理方法。救急医療など僕でも可能なサポート。医療方面に詳しい早苗への伝達と助力。
これらは全てを来るべき『その日』に備え、進級前から最優先で最適な対応ができる準備をしてきた。もう少ししたら、期末テストを口実にテストとこの件が落ち着くまでは、愛里とも禁欲生活になる予定だ。
だから先月末の夜は、やりたくてしかたなかったというわけ。機会を逃せない心理になるのは、高校生の性欲を理解できればわかるだろう。常識的に考えて。
とまぁ、四方本人や早苗は勿論、愛里にも、椎名にも、青娥さんにも、高円寺にも、鬼龍院先輩にも、清隆にも、葛城や戸塚にも、栄一郎を通して七瀬さん含む1年生にまで根回しした事前準備に隙はない……はずだ。僅かな兆候でも確認できたら、四方に痛みを我慢させる暇すら与えず病院にぶち込む算段である。
チャンドラーの九命題・その8───犯人は物語終了時までに罰を受けなくてはならない(治療は最善最速を目指さなくてはならない)の応用式、名付けてハードボイルド作戦は完遂間近だ。
シティハンターのテーマソングから紐付けて、思い込んだ今の僕は冴羽獠である。
もしくは現場の戦術よりも事前の戦略が大事って言ってたヤン・ウェンリーさんでもいいかな。能力は別にして、こっちの心情の方が僕っぽいし。
ここまでの保険を用意してあるなら十中八九は大丈夫。
そう思ってようやく安心できていた僕なわけだが───。
幸せで充実した日常を謳歌しつつも保険の策を着々と整えて備えていた僕に、またしてもほぼ全てを壊す予定外が挿入された。
翌日の17日、ロングホームルームでそれを我が手にもたらしたのは、ヒト科イロモノ目の精神的幼成体である担任・星之宮知恵である。
「今日はちょっと先のお知らせがありま~す。
夏には前回とは違う無人島で特別試験があるよ~。全部で2週間くらい無人島で生活することになる代わりに、1週間は豪華客船の船旅を楽しめるんだって。みんなやったね☆」
「───歳を考えろ、歳を。☆とかふざけてんのか」
だから、うん。
担任のお知らせを聞かされて、八つ当たりなのは承知の上で詳しい話を聞く前にぶちギレそうになったよね。準備してきた保険プラン、ほとんど崩壊したと直感したんだもの。
……連年、海に船出するとか想定するわけないだろ。
「ひどいっ! 左京君は毎回、私にきっつーい口撃を食らわせないといけないの!? でも説明もまだなのに早すぎない!? 早い男は嫌われ」
「っざけんなや、いいから黙ってろ、ドブカスが、ぁ?
……あっ、担任にはドブカスじゃなくて酒カスの方が適切でした……い、いや。そこでもなく。つ、つい本音が漏れてしまい、その……すいません。口を挟んだのも余計でした。説明を続けてください」
「本音……ドブカスが……ぶふっ」
「ドブカスに酒カス。五七五の韻を踏みながら罵倒しておいて方向転換するとか……。全然フォローになってないから心にも響かない謝罪だ。おいたわしや星之宮先生」
「今日の口撃の切れ味、いつにも増して鋭すぎない!? お願いだから左京君『達』は、あまり強い言葉を使わないで? じゃないと私、泣いちゃうでしょ」
薄っすらと化粧してて、こんな公の場で泣けるわけないだろ。
涙を流すと薄化粧でも大層酷いことになる。だから女の化粧はお洒落やマナーでありながら戦支度みたいなものでもあり、泣かないためにする大人はそこそこいる。大人の女は涙という武器をここぞという時にしか使わないものだ。
身体は大人でも精神が子供だとそうでもない場合はあるけどな。
冗談か本気かわからないが、化けの皮を外さぬ担任のあまりの気持ち悪さに再びキレそうになるがギリギリ抑える。
COOLだ、僕はCOOLでハードボイルドな男。落ち着け。オブジェクト指向を思い出せ。
早苗は吹き出すんじゃないぞ。四方もツッコミつつ哀れむなよ。他のクラスメイトも、僕を凝視するとか大きな反応は見せるんじゃない。担任以外は年齢的にしかたないかもだが、まったくもって騒がしい。
今は静かに真面目に聞くしかないのだ。僕が衝動をかろうじてセーフに抑えられた暴言───。
≪アウトだよ、完全無欠の、暴言だ≫
セ、セーフに抑えた『発言』を拡げないでほしいと……あ、あの八坂様? ホームルーム中ですし、穏便に進められるようお願いします。僕もこれ以上は冷静さを失わないと誓いますので何卒。
ふよふよ浮いて眺めてた八坂様が脳内にツッコミを入れてきたので、こう誓ったわけだ。
「ぶっふぅ! 神奈っ、様! 追い討ちはやめっ、あっはん! ごほっ、けほっ」
「ぶほっ! まさかのこっちも五七五で! けだし迷言返し……!? はははっうくぅ!」
何気に早苗や四方にもこのやり取りが聞こえてたのか、謎の言葉とともに吹き出し肩を震わせながら俯いて黙ったから不幸中の幸い。おかげで教室の注目は早苗と四方にも分散された。
なにやってんだ、コイツら。
席は前後に挟まれてるが、他人のフリしとこ。と、僕はこの機を逃さず、優等生モードの左京夢月になって大人しく説明を聞く。
一方、僕が一応の謝罪をして黙ったからか、静かにはなったからか、ひきつった顔でなんとか先程の発言を呑み込んだと思われる担任の説明をざっと聞く限り。
3学年合同の無人島生活で獲得ポイントを競う特別試験。
トランプの大富豪のように、ポイントのトップ3グループとワースト3グループが、それぞれ50、100、150のCP移動。あとワーストの5組は、ペナルティーの退学か救済措置の罰金になり、最終メンバー数に応じた割り勘の金額を使って退学回避も可能。退学回避の額も1人グループなら600万円、6人なら100万円ずつと、払いきれなくもない微妙なラインだ。
ただし、ペナルティーを受ける生徒が退学回避に必要分の金額を所持してないといけないから、ある程度は当たりを付けとく必要もある、と。
人数は、無人島までにあらかじめ決めておく各学年1人~3人のグループでスタート。条件付きながら、試験本番の無人島で合計6人までは増やせる。増員した場合は、加わったグループも含めた平均ポイントになる。グループを組む男女比率も1:2という条件まである。
特例で1年生だけは4人グループでスタート可能。
あとは生徒1人1人に配られるカードか。
基本カード5種・先行、追加、半減、便乗、保険。特殊カード3種・増員、無効、試練。
質疑応答の時間に、他の奴が聞きそうになくて、材料にできそうなことを聞いておいた方がいいか。
「担任! 例えば『便乗』カードで、他学年の南雲生徒会長って指定できますか?」
『便乗』カードは、試験開始時に指定したグループの金額報酬の半分を受け取れるものだ。トップ候補最有力と思われる南雲に指定できれば、労せずして多額の追加報酬になる可能性は高い。
僕の質問に対し、担任は何故かなんとも言い難い表情を浮かべつつ、答えを返してくれた。
「……左京君。私の説明、ちゃんと聞いてた? 学年別競争の意味もあるんだけど、この特別試験」
「はいはい、競争っすね。で、指定可能ですか?」
「む、夢月君……感動! 普段は南雲先輩に対してあんななのに、きちんと実力は認めてるんだねー!」
「…………無理だよ。対象は同学年の生徒だけ」
ま、これができないなら、担任の妙な態度含めてオマケ要素とでも思っておけばいい。僕の想定から考えて、『保険』カードが持てると多少マシな備えになるかなって程度。
ちなみに『保険』カードはサバイバル中に不慮の体調不良となった場合、休息期間をもらえるってヤツだ。2週間もあるなら、これはそこそこ重要なカードだと思う。
……いや、そもそも長期サバイバルなのに、体調不良で即リタイアはないだろ。ケアはどうした、ケアは。ないのかよ。相変わらず人材育成を考えない切り捨て上等な学校だ。
体育祭などで予想はできるが、これも聞いとくか。
あとなんか一之瀬が隣で、どこぞの逃げたギターのように感動?してるっぽいが、脳内が花畑になってるコイツには触れないのが無難。担任もそうするつもりらしいスルー安定だろう。
「では、単独で無人島サバイバル当日を迎えた生徒が、体調不良で参加できなかったらどうなります?」
「ああ、たしか去年の無人島の高円寺君みたいに? それは勿論、退学か600万円の支払いになるね。……間違っても左京君はやらないでよ?」
やっぱりか。むしろ本当に体調不良だった場合を聞いたつもりだったけど、これはおそらく仮病だろうと本当に不調だろうと変わらないな。
ただ、僕自身だけのことだったら『その手』もないことない。が、それでも今回はなしだ。
クラスリーダーの一之瀬に6人組の救済グループでも提案して、四方やヤバそうな奴の救援・救済措置を……いや、駄目だ。直近は良くても、下手すると四方が責任を感じて後々に無理することに繋がりかねない。仲間を大事にする四方とクラスメイト達の性格上、充分にありえる。
いっそ近い未来でこうなるかも、ってネタバレするか? こっちも無理がある。元の保険プランでも明確なことは言ってないのだ……誰に信じられても、信じられなくても、良くない道筋しか見えない。これも却下で。
「……マジか。マジなのか、ここで来るのか」
なにより不味いのが日程だ。
グループの提出締切が7月16日なのは良いとして、同月19日に学校出発、試験開始の20日から約2週間って、四方の推定術後期間に思いきり被ってる。
盲腸の術後は2~4週間くらい安静らしいからな。短い方で考えても、無人島開始から少なくとも数日は安静が求められる。
腹膜炎の術後すぐの期間に、無人島サバイバルなんか無理に決まってんだろ。どうすればいい? 担任がしてる特別試験の説明を聞いて、打開策とかを見つけるしかないのか?
なんでこう、間の悪い時に去年を上回る合計3週間の船旅試験なんだよ、クソッタレ。
てか、春以外は連続でそこそこの期間を拘束される特別試験って、夏や冬の長期休暇に全国大会がある部活は、勝ち上がっても途中から参加すら不可能になるじゃないか。マジでどうなってんだよ、この学校……!
いや、文句を言っても始まらない。
担任を論破しても意味がないのは流石に理解してるし、慌ててもこれだけ様々な思惑が交錯する特別試験を無視するのはどうあっても不可能だ。
去年と違う無人島と言う時点でかなり大規模と思われ、資金も人員もすでにそれ相応が動いてるはず。いち生徒どころか、生徒会レベルでさえ太刀打ちできないだろう。
なら、せめて四方の安全を確保しつつ、最低限をクリアしつつ、僕自身が途中で投げ出さないように楽しめるプランを作っておこう。もう1つ、愛里の安全策も加えてだ。
どんな試験かまだ詳しく知らないが、僕のサバイバル知識には多少の自信があっても、不安の残る友達は何人かいる。愛里や椎名のことを早苗とかに任せられるなら後顧の憂いも減るが、はたしてそれが可能な試験なのかが問題と言えば問題か。
まずは必要な事を聞いとかないと、そうしたプラン作成に支障が出る。
それからの僕は、呆気に取られて僕を見るクラスメイトをよそに担任へいくつかの質問を繰り返した。
僕が珍しく質問責めしたからか、ちょっと取り乱したからか、クラスメイトから視線を感じているが、正直それどころではない。思考を切り替え、いくつかの進めていた保険プランの修正と追加について考え込む。
……くっ。四方が腹膜炎になる未来があるかまだ客観的にわからない以上、四方には誰とも組まないか僕とだけ組むように言っておくのがベターか。最初よりかはマシになってきたとはいえ、人に迷惑かけるのを四方ってすごく嫌うからなぁ。
僕自身は念のために単独でいた方が何かと融通が利くし、男女比率の条件的に僕・四方・愛里ではどのみち組めない。四方を単独のままにするリスク(腹膜炎で問答無用のリタイアになる)を考えれば、例えばここへ四方の代わりに早苗を入れたグループを組む、なんてことは悪手にしかならないからだ。
それなら愛里は早苗と……できれば長谷部さんか、ないと思うけど櫛田あたりで組んでくれると安心できる。愛里が組む最有力候補と思われる綾小路グループの男メンバーが信用できないわけではなく、単純に恋人が誰か男と2週間も無人島生活するなんて個人的に凄く嫌だ。
プライドを捨てて頼み込むことも視野に入れて、後ですがり付いておこう。
まぁ、清隆にしろ、幸村にしろ、三宅にしろ、他の野郎にしろ、愛里がOKする奴なら変な事にはならないとは思うけど、僕の感情が耐えられない。
愛里はこれでいいとして、椎名にも何らかの手は……必要か? 愛里と条件はそんなに変わらないのに、なんか不思議と心配いらない気がする。一応、柔軟に対応できるよういくつか考えておくつもりだけども。
ともあれ、どうあっても確定できない四方の問題は残る。
それなら坂柳さんのケースを流用する手はどうだろう?
要は、腹膜炎が発症した場合、体力や体調に不安が付きまとう坂柳さん的な特殊な待遇かポジションへ四方を置く手だ。これが頭に浮かぶ。
おそらく坂柳さんの病気が謎の完治をしようが、運動能力は最下位付近の生徒と比較しても更に下回るだろうし、医師だって待機させとかないと万が一の時に大変だ。
そんな坂柳さんを、いくらなんでもいきなり無人島サバイバル2週間なんて過酷な状況に、他の生徒と同条件では放り込まないはずだ。また、他の生徒が怪我や病気になった場合の対応を含めて用意はするだろう。そこに賭ける。
そう。新たに決まった僕の目的は、腹は黒いのに全体的な外見のイメージカラーは白っぽい坂柳さんである。
よし、とりあえず新・保険プランの方針が決まったし、切り替えてまずは動いてみるが吉。細かい部分は動きながら後で考えて辻褄を合わせていけば充分だろう。
というわけで、僕はロングホームルームが終わると同時、坂柳さんに会うべく2年Bクラスの教室へ乗り込んだ。Bクラスと同じ3階なので、DクラスやCクラスよりはアクセスしやすいのは好都合である。
「こんちゃー! 毎度お馴染み清く正しい左京でっす! お邪魔しまーす!」
「どういうわけだ左京!?」
「ちょ、なんでBクラスに来たの!? なんなの、この人……!」
「とっ、止まらない……! なんで止まってくれないの夢月君!?」
ちょっと神崎や網倉他数人(部活組の四方や柴田、早苗は来てないが)も付いてきちゃったけど、一之瀬が僕の腰にしがみついてるせいでおっぱい当たってるのが少し下半身をムズッとさせるくらいだ。勿論、一之瀬相手だろうと欲情レベルには到達しないが。昨夜も頑張って僕を賢者モードにしてくれた愛里には感謝である。
ちなみに今回は一之瀬の拘束をわざと外さずに引き摺ってきた。こうしていれば、一之瀬よりパワーのある野郎共が僕を止められなくなるからだ。
人気者の女子が掴んでいる僕を更に掴むのは、接触事故や痴漢の恐れがある。普通の野郎なら躊躇うだろう。
しかも目的地到着と同時にペイッと引き剥がせば、僕にとって昼下がりのコーヒーブレイクと何ら変わらない。
引き剥がした一之瀬を網倉の方へ追いやり、目的達成の道筋に思考を切り替えて歩を進める。
一方、このクラスの友達2人は、そんな僕を視認するなり悟った笑顔で出迎えてくれた。
「大丈夫だ、問題ない。敵意からではないと承知しているから、神崎達は安心してくれ。これも左京の平常運転だ」
「で、左京は何をしに来たんだ?」
「今回は葛城と戸塚に、ってより坂柳さんに用があるんだ」
「私、ですか? 特別試験の発表直後に何を」
どちらかと言うと、葛城は神崎や一之瀬に意識を持ってかれてるようだが。
まったく騒がしいクラスメイトだ。呆れられてんじゃん、一之瀬達(責任転嫁)。
「うむ。ぶっちゃけ、坂柳さんが仮に絶好調でも、基礎体力的に2週間の無人島サバイバルを普通に受けられると思えない。だから、どんな形で参加するのかなって質問しに来た」
「……相変わらず聞きにくいことでもストレートに聞いてきますね左京君。逆に何故か理由をお聞きしても?」
四方のことは伏せるにしろ、他の理由も考えてきた僕に抜かりはない。
「だって坂柳さんは、一之瀬か……櫛田、あるいは椎名あたりと組むつもりな気がしたから。そうなると僕も無関係じゃないだろ」
ん? なんかシーンとしちゃったんだけど、おかしなことは言ってないよな、僕。椎名はあわよくば、って追加したけども。
えぇい、毒も食らえば皿までだ。突撃あるのみ。
「…………藪から棒になんですか。まだなにも決まってませんよ」
「そりゃ決まってはないだろうさ。でも、現時点の坂柳さんが欲しいと思われるモノを持ってて、組む申し出をしてくる『期待』ができる相手はこの3人くらいだ。僕が知らない奴はいるかもしれないがな」
「私の欲しいモノが左京君にはわかると?」
「確信はない。ただ、動きにくさは感じてるだろ。2週間、グループの『頭脳』として交流を深めることで、坂柳さんにも『コレ』が多少は流れ込む。それによって打てる手も増える。
どうだ? 食指が動かないか?」
「たしかに……これはなかなか興味深いですね。左京の読みは良いところを突いています───が」
ここで不興を買う覚悟で遮り、冥府の使いみたく見える坂柳さんから主導権を貰いに行く。
「現実的ではない、かな?」
「その通り。一之瀬さんだけ、櫛田さん、あるいは椎名さんだけ、というならありえますが、全員を集めるのは不可能」
「いや、やろうと思えば可能だよ。それに今の坂柳さんには『難しく』ても、ある要素を補填すればずっと動き易くなる」
「ある要素……。なるほど。どうやら左京の考えていることは、私と似ても似ていなくもある、といったところですか」
適当な言葉を並べただけだったけど、もしかして意外と当たってるか、これ。坂柳さんの反応に手応えらしきものを感じる。
「そう。その考え通り『信頼』ってのが坂柳さんには欠けているから動きにくいんだ。なら、余裕がある今のうちに補えばいい。信頼を得る方法で手っ取り早いのは、一之瀬とかの人望ある奴と組むこと、って感じの手を打ちそうだと思ったけど間違ってたか?」
「……………………ふぅ。いいえ、間違ってはいません。私が想定したプランの1つではあります」
おっ? いけるかもしれない。
「尤も、ただそれだけでは『左京君が』言い出すには足りない。違いますか?」
「違わないな。利益かリスク低減、坂柳さんはどちらを重視してる?」
「『今は』リスク低減でしょうね」
「じゃあ話は早い。僕が口を利いて『彼女ら』に承諾させたら、さっきの質問に答えてくれるか?」
「……ふふっ。いいでしょう。左京君にそれができるなら、現時点で確定してしまっても構いません」
「よし、言質は取ったぞ。一之瀬はちょうどここに来てるし、まずは最初のグループメンバーを口説き落とそう」
実に話が早い。
同学年でのクラス競争という目先の『利益』に傾く坂柳さんじゃない。年度末に彼女が攻撃した一之瀬と、そして直近で僕が仕掛けた情報戦の後始末……表向きでも和解しておく意味に即座に気づいてくれた。
『信頼』を得る選択は、大抵は利益を得にくいと。争い事を収めるには、仕掛けた側・仕掛けられた側のどちらであっても自分が動かなくては始まらないということを。
なにより僕が櫛田へ年末にした助言───校内においては櫛田を凌ぐかもしれない人気者の一之瀬から『敵』と見られ続けるのが、特大のリスクでしかないことを。
坂柳さんは、しっかりわかっている。
彼女も流石に天才の部類ということか。ま、そこを間違えるほど坂柳さんが子供だとは思ってなかったが。
なので、言質を取ったら早急に一之瀬を巻き込む。
元より、勝つやら倒すやらよりも負けないことを重視するコイツには、プラスしかないからな。
「一之瀬! 勝手に決めて悪いけど、無人島サバイバルで坂柳さんと組んでくれないか? お前にとっても悪い話じゃないと思う」
「えっ……は? ちょ、ちょっと待って? 夢月君が組むグループじゃなくて私が? え……え???」
「ふむ、一之瀬よ。わからないなら、ただこう言えばいい。
───お願いします坂柳さん、と」
「お、お願いします、坂柳さん? え、あれ?」
「ほっ、帆波!!?」
彼女にとっての不測の事態でもあったのか、なんか混乱してたので言葉の勢いで押し倒してみたら、あっさり鸚鵡返ししてくれた一之瀬。手間が省けて実にグッド。なんか坂柳さんも引き気味だけど。
付いてきた1人である網倉は遮るように叫ぶが、吐いた唾を呑ませないことに抜かりはない。一之瀬に話しかける直前、端末の録音機能を作動させている。
お人好しな奴らにはこの程度の言質があれば充分。もはや覆すことは不可能に近いのだろう。
「マーベラス! まずは一之瀬確保だな、坂柳さん」
「え、えぇ……」
つまるところ、坂柳さんも呆れるチョロ之瀬爆誕である。
詐欺耐性をもっと強化した方がいいんじゃなかろうか。今はまだいいが、チョーカーの件に続き、大学以降のヤリサー飲み会とかに引っ掛かりそうな雰囲気に流されやすすぎる娘である。
まぁ、ともかく……ヨシッ! 一之瀬はなんとかなったし、次だ。
スタート時のグループ人数制限の関係上、1人は浮くので『増員』カードを入手するのに適した櫛田を後回しにして、椎名に電話をかける。苦手なツールだけど、時短のためにはしかたない。
すると、数コールで出てくれた。これは天運が味方をしていると思わざるをえない。
「はい、もしもし? 珍しいですね、左京君が電話してく」
「あ、椎名か? 悪いんだが、今度の無人島サバイバルで坂柳さん・一之瀬と組んでくれないか? 龍園も交えて次の機会にでも説明するから、なんとか頼まれてほしい。勿論、貸しは全部まとめて僕にツケといてくれていい」
「……あの、左京君? いくらなんでも唐突すぎませんか。ついさっき大まかな試験内容が発表されたばかりなんですが」
「必要な事を必要な分だけ必要な時にやれば、細かいことは後でどうとでもできるもんだ。で、頼めないか?」
「はぁ……。別にかまいませんが、私はあまり動くのが得意ではありませんよ?」
「全く問題ない。僕の勘だが、やり方次第で知識系統のみでも乗り越えられる試験だ、これは」
時は金なりだから勘なんて言い方をしたが、これまでの特別試験の傾向から考えて知恵と知識で充分に上位も目指せるだろう。女子なら、そっち方面で頑張った方が楽で安全なのは明白である。
まして、この面子で手をこまねくなんてありえない。リーダー適性の高い一之瀬と櫛田。参謀適性の高い椎名と坂柳さん。『増員』カード含めて残り3人に実行力の高い人材のグループを合流させれば、即物的な利益こそ減るが先を見据えた関係性への一手に化けるはずだ。
「それに4クラスの頂点付近の女子を揃えたグループなら、それぞれのクラスメイトは協力を惜しまない。なによりこのグループの結成目的は、試験で1位を狙うことじゃなく2学年全体の押し上げと万が一の場合のフォローだ。クラスリーダーの葛城も坂柳さんもそう言っている」
「言ってないが」
「……言ってませんが」
僕のぶち上げに、葛城と坂柳さんの小さく漏らした声が聞こえる。
いやまぁ、葛城と一之瀬はともかく、坂柳さんの真の目的がこれじゃないのは察してるけど、結果的にこうなるのはわかっているだろうし、椎名に『期待』を持たせる交渉はこうしないとまず成立しない。
以前のゲームで、僕が椎名に『動かないようで動く点S』なんて異名を付けたのは伊達じゃない。友達の中でも頭の回転が速い部類だから、僕が『本音』で頼まないと上の結果を目指してくれないのだ。
「上手くやれば、他学年含めて、どことも争わず陥れることのないWINWINへの道さえ拓けるだろう。これは椎名の気質にも合ってるんじゃないか?」
「そう、ですね。左京君には───『それ』をする理由があるんですね」
「ああ、ついさっきできた。だからってわけじゃないが───頼む、椎名」
「ふふっ。わかりました。龍園君達への説明は任せてください。
私も今回はできることを頑張ってみますよ」
「ありがとう」
これは、かなり深くまで椎名に読まれたな。付き合いも長くなって、そろそろ僕も色んな奴に追い抜かされてきたのかもしれない。
お礼を言って電話を切り、気づいたことをスルーして乗ってくれたことに改めて感謝だ。
さて、最後に残した交渉相手は櫛田。
コイツだけは、人前で深い交渉をしてはいけない。なぜなら、人前では基本出さない黒い部分も出してもらわないと、表面上だけで話が終わってしまう。
何気に先月に調査を頼まれた八神の件も合わせると、このグループに入るのは櫛田にとってかなりのプラスにも保険にもなるのだが、それを口に出すのが人前だと猫を被る可能性ができて話が進まなくなる。
そこをなんとか伏せつつ、猫被りスキップして承諾される言葉を数瞬だけ目を閉じ、何通りか軽くシミュレートしてから櫛田に電話を入れる。彼女は大抵いつもすぐに電話に出るから、こういう時はとても助かる。
「やあ櫛田。いきなり電話してすまん。
で、時間ないから早速用件なんだが、次の無人島サバイバル───一之瀬と椎名と坂柳さん、そして櫛田で組んでみないか? あ、詳しく説明するから少し時間を」
「いいわよ。左京君のことだから確定はまだで、きちんとした説明は今度してくれるんでしょ?」
うぇ? 交渉以前に二つ返事? これ、櫛田じゃなくてかける相手間違えた?……わけがない。声も表示される電話番号も確実に櫛田だ。
「え……あ、ああ。それは勿論……」
「左京君が苦手なことをする時って、大抵は配慮済みだから楽できていいわ。……電話、苦手だったよね? その上、時間ないならその時に詳しく聞くわ。
とりあえずグループに関しては承諾ってことで」
「お、おぅ。ありがとう?」
「なんで左京君は感謝がいつも疑問形なのよ……。私、そんなに変なこと言った?」
「いや、そんなことない。ただ、すごいあっさり承諾されて驚いただけだ」
「……まぁ、これまでの積み重ねってヤツかもね。信じられるってなかなかいい気分だわ、これ。
あ、急いでるんだっけ。じゃあまた今度ね、左京君」
「ああ、また今度……その、櫛田。恩に着る、ありがとう」
「うん、じゃあね」
そう言い合って電話は切れたが……。
な、なんだこれ? 交渉最大の難関になると想定してたのに、クラスリーダーになってからの櫛田は電話越しにもわかる余裕というかなんというかな雰囲気が溢れてて、素で猫被りバージョンっぽくなってる気がしてならない。
正直、櫛田本人なのはわかってるのに、やっぱり別人じゃね? って言いたくなる。怒らせるに決まってるから言わないけども。
と、ともかく。予定人員3名の交渉はなんとかまとまった。櫛田だけは試験開始からの合流になる予定だが、これで坂柳さんから情報を貰うことが可能になったはずだ。
えっと、グループ結成は成ったし、もう少しだけ時間をもらって坂柳さんが適用されると思われる特別措置について……おや? 坂柳さんも、葛城や橋本達も、一之瀬達も、呆然?とこちら、僕を見てるな。
静謐で静寂のアウェーな中、そんなに見られると恥ずかしい。もうさっさと終わらせて、この場から去りたくなってきた。聞くだけ聞いて速やかに去ろう。
「あ、あー。というわけで、坂柳さん・一之瀬はおそらく学校でも初のグループ結成おめでとう。これで坂柳さんとの交渉は成立だよな?
そしてそれは置いといて、改めて坂柳さんの無人島生活の見通しについて聞きたいんだが……」
「「「……」」」
7月16日、各4クラストップの女子グループ結成交渉を成立に導いた僕なわけだが、非常に居心地悪かった。ゆえに、当初の目的だった坂柳さんの無人島での措置について聞くのが最も手間取ったのは言うまでもない。
主にみんなに口を開いてもらうまでが。
沈黙は金とばかりに口をつぐみ……アホ面を晒して口を開き続ける一之瀬を含む付いてきたAクラスの一部と、坂柳さんや葛城などBクラスの者達にはホトホト参る。
しばらく特に普段と変化のない戸塚と、なんか普通に混ざってきた森下という女子の3人で軽口を叩き合いながら待つ時間が発生した。
戸塚達への事情説明を兼ねた雑談が終わる頃には教室もざわめきを取り戻しており、坂柳さんからようやく目的の内容を聞き出すことができた。
でも、やっぱり清楚とか優等生とかな奴らは駄目だな。
僕と絶望的に波長が合わない。
彼女らはもっとチャンドラーの九命題、その5。物語の構造は読者に分かりやすい単純な物が望ましい、を現実に適用して実践してほしいものだ。ぶっちゃけ、常識を持ってもらいたい。
何はともあれ、防御と保険の手札は早々に整った。
ついでに、時間ができたらここ最近の話を製本してまた椎名に読んでもらい、推理小説っぽい謎が成立してるか評価・助言をしてもらおう。その下地は充分なはずだ。予測できることなら、こうして先手を打っておくのが凡人の基本的な嗜みである。
これが主に椎名の借りを返すことに繋がってくれると、趣味と実益を兼ねた一石二鳥になるのだが。勿論、椎名以外にも感謝の形を考えておくが、まずは喜ぶモノがわかりやすい椎名が妥当だろう。
さて、次に僕がやっておくべき事は───。
推理要素を本編の隠し味に混ぜ込んだり暗号作りとか初めてやったけど、結構面白いですね。そのせいかちょっと長め(約15000字)になっちゃったけども。
3話で終わらせる気満々のタイトルだったから、今回は切れませんでした。長くてすいません。
石取りゲーム的な1年生の特別試験や甲子園関係は、一応原作にあった話からの憶測と現実の記録にあった日程を基に設定してますが、独自設定にせざるをえない事情もあって、特に甲子園の東京地区予選はあえて2016年7月9日にしてあります。ご了承ください。
あと、例によって原作にある特別試験の説明など原作準拠部分はだいぶはしょってるので、原作2年生編2巻~を参照してください。
2年生編の無人島サバイバルは……書くとなれば、相応の時間とピタッと来る閃きがないとモチベと気合いが生まれないから、とりあえずここで後日談は区切りってことにします。あって清隆や四方関係の諸々ってところですかね。
ところでふと思ったけど、数減らしの推理要素や謎、トリック?って出題すらハッキリしてない(椎名には本にして見せる、みたいに書いたけど)けど、解説や答えは開示した方がいいのかな。完璧に自己満足用だったから特に考えてなかった。
……読んだ人をモヤッとさせて終わる可能性を残すのもなんだし、もし次話が書けたらそこの後書きあたりに載せときます。