暫定の最終話3です。もしも続きを書くようなら、その時は通常ナンバリング『165、隣人』に変更します。
2026/03/14
忘れてましたが『最終話3、隣人』から変更しました。
2026/04/08
今話はホワイトデー記念……っぽく見えるといいなぁ。ようキャでは少し珍しい人物へのアンチ要素もあるから、難しいかもとは思うけども。
近頃、信じることや信じられないことをたまに考える。
学校では教えられない歴史を踏まえ……『俺』が世界各国で仕事してた頃の実感と経験を加えた個人的な私見だが、日本という国の不幸はまともに約束を守る『信じられる隣人』がほぼいないことだろう。
そしてこの学校における生徒の多くが感じている不幸もほぼ同質のモノだ。
まず前提としてだが、西の大陸に存在する広大な国土を持つ中国には『対等』という概念がなく、常にどっちが格上か格下かを考えている。国力が弱い時には甘んじて格下でいることを受け入れるので、西の国々とは上手く付き合え、不都合が少ないからだ。しかし、謙遜を美徳とする日本を相手にすると勘違いが暴走してしまう。最も身近な大国でありながら、実は性質の関係性が完全に水と油といえよう。
更に北に存在する世界最大の国土を持つロシアには『平和』という概念がなく、常にどちらが支配者かを考えがち。未来に勃発するかもしれない戦争も、自分の手下だと思ってた国が独立しようとしたため、支配者ではない=関係の危機と考えて軍事行動に出たという感じである。
日本に対しては、過去の大戦以来、実質的に勝ったことがないために、常に一方的な脅威を感じ続ける関係。ここも「平和」の意味で完全に齟齬があり、なかなか上手くいかない。
半島に存在する韓国・北朝鮮に至っては、常に怨恨と妄想で物事を考える人種なので、マトモな話し合いはできるわけもなし。かの国の恩を仇と受け取り怨恨や妬みで返す民族性は、もはや世界の常識と言って過言ではない。
『俺』の生きた前の世界でも、慰安婦や徴用工など数々の捏造や反日活動を行って金を無心した上、約束事をことごとく反故にしてきた実績は、鬼島総理などの固有名詞や微妙な違いはあろうと今世も健在だ。もうまともに相手するのが無駄なのは、メディアや脳内が花畑な奴ら以外には周知の事実だろう。
しかし改めて思い返すと、たった数十億円程度の出費と先の見えない奴らに批難されただけで韓国の不義理な民族性を全世界に知らしめたこの元首相は、賛否があろうとやはり近年稀に見る名政治家の1人だった。あんな下らないテロで失っていい人材ではなかった。
ポジションが似てる鬼島総理にも近い事件が起こらないとも限らないし、何らかの示唆はしておいた方がいいだろうか。信じられるモノではないし、接点もいち学生に簡単に作れる相手じゃないけども。
この他も目先の利益などに釣られて簡単に約束事を破ることに定評がある国は多く、もはや国際的な信用や信頼は最低レベルである。それこそ愛里に教えた交渉法なら、多大な対価を要求された上で頼んだ仕事の1割をやってくれるか、って印象だ。
特に隣人ではあっても、中国は孫子の兵法、ロシアはKGBの残党、韓国・北朝鮮も半島人気質が骨の髄まで染み付いている。つまり、どこも裏工作や地下活動を得意とする国々だ。
しかも前の世界大戦から何十年経過しようと、国連の敵国条項から日本を削除しない。
ここまで滅茶苦茶でないにしろ、欧米だって信用度合いは低い。
世界大戦に触れたからついでに歴史上の事実を述べるが、世界大戦前後に『宣戦布告』を正式に発した国は日本と他数国のみだ。後付けやこじつけで、したように見せることはあるがな。
しかもこの件で時に批難してきたりするアメリカなど、建国から遡っても片手の指で数えられる数例しか宣戦布告していないし、戦力が揃った国相手にはほぼしない。ならず者国家から始まり現代に至るまで本質に変化ないからだ。歴史的おまいう案件とも言えよう。またイギリスなどは、こうした『お行儀』を気にし出してから戦争に弱くなった面もある。
批難したいわけではないので誤解ないよう付け加えるが、戦争ってモノはなんでもありが基本でシンプルに強いのだ。
奇襲やハルノートとかの無茶苦茶な筋違いは、勝つためなら有効な手段である。
信用や信頼を代償としているだけで、勝って支配したければ奇襲→事後承諾or勝てば官軍をやった方が効率がいい。そんな風に考える国家が今も昔も多いのだろう。
またこんなやり方もある。
『俺』の頃に中国が攻め込んで来た直後、戦う前の段階にも関わらず、馬鹿げた降伏論をマスメディアが大々的に広めたことがある。
それがスパイか空想家かただの無能か、それは確定できないものの、あれは実にマスゴミの蔑称にふさわしい仕事だった。まぁ隠してるつもりはあったかもしれないが、元々ずっと以前から『あちら寄り』なのは隠せてすらなかったがな。
降伏を勧める場合、血の涙を流し、自分の持つ全て……時には命すら差し出す覚悟を持たねばならない。それほど『降伏』とは重い覚悟を持ってするべき決断である。
この覚悟なく降伏論を蔓延させようとする者は、他国のスパイか売国者、もしくはただの馬鹿や無能なのは間違いない。あえて何処とも誰とも言わないし比較にもならないが、戦うべき時に日和る甘く優しい思想の方がまだマシだ。フォローできなくもない部分もある。
勿論、日本だって地位が上に行くほど酷いのが増えてくる。
スパイ天国・日本と有名なだけあって、あれだけテレビで大々的に情報操作や工作活動しても問題にならないらしいしな。日本にもヒトラー全盛期のドイツにおけるユダヤ人みたく、義理も情も持たず自分さえ良ければそれでいいって奴らが、金や権力などの力を持って多数存在しているのかもしれない。
平たく言うなら、日本など少数の国は調和を、ほとんどの国々は支配を望む国ばかりということだ。双方が根本的に相容れない価値観なのは言うまでもない。
ゆえに一般人レベルはともかく、絶対に心を許してはいけない気質の隣人だろう。特に、メディアとかがどんなおためごかしをして持ち上げようと、表で嫌々握手を求めながら裏で銃を隠し持つような───いつまでも仮想敵国を日本と定義し続ける国々に信頼や友好など持てるわけがないのだ。できて、せいぜいビジネスパートナー止まりである。
高度育成高等学校は、社会の縮図という方針な学校のためか、規模は桁違いながら学年・クラスの違いを、これら日本と周囲の国のような関係に当てはめて競わせようとしている気がする。
この場合に強引にでも僕が当てはめるなら、まず学校や生徒会、3年生各クラスが国連やアメリカ、僕達2年生各クラスが上記アジアの国々、1年生が欧州、のような印象だろうか。少なくとも現時点では。
何が言いたいかわかるだろうか。
つまり仲良くできない状況や禁止事項でガチガチに固めて争わせ、その上で『自由』にやり合え、と学校は言っているのだ。
……馬鹿なの? それか生徒が誰もこれに気づかないと侮ってるの? はーい、残念。僕含めて何人も普通に気づいて見放しかけてるよ。
仲間以外は競争どころか戦争しろってシステムなんかくそ食らえだ。
ぶっちゃけ、大なり小なり競わせる事自体はどこの学校でも珍しくないことだが、相互理解を阻もうとする誘導には不愉快しか感じない。
信用すら難しい関係を、学校内で小規模に再現するかのような真似して何になるってんだよ。頭花畑なの? 咲き誇ってんの? そんなギスギス好きな特殊性癖揃いなら、清隆の父ちゃんあたりと大人同士でやりあっててくれ。迷惑だ、生徒を巻き込むな。せめてキナ臭さや腐臭くらい少しは隠そうとしろ、とか言いたくなる。
しかし、そんな環境でありながら、いまだ自分の考え・意思や善性を保ち続ける生徒も少なからず存在する。
僕のような2度目の者の微力は、そういう友達にこそ使いたいものだ。
そして願わくば、僕のしている学生にあるまじき悪辣な対策や根回しの全てが無駄になることを。
僕は四方の手術が成功した七夕の翌日。緊急対応した者の権利で真っ先にお見舞いして大事ないことを確認できて安心できたところで、バイトしてから学生寮へ帰宅している。
喫茶・芳香でのバイトの必要日数(月13日)を夏休み前にクリアするために前倒しで出勤を増やしてもいたので、たまたま休みの日に起こって不幸中の幸いだと心底安堵した。
ああ、そうそう。なんと臨時で学内病院に来ていた医者が『あの』有森先生だった。今はたまたまここに来てて四方の主治医になってたのを知った時は驚いた。奇妙な縁である。
顔を合わせた時こそ四方の容態を聞くことに集中してて気にならなかったが、喫煙スペースまで付いてきて話を聞く僕が心底安心してるのを見て、微笑ましげに煙草を吸うふてぶてしさ(失礼)にようやく思い出した。
有森馮子(ありもり ひょうこ)は、キャットルーキーの登場人物ではあってもそこまで登場しない上、野球と直接は関係ない医者で女性だから記憶が薄かった。
思い出したのも、せいぜい一部で怪我した主人公・雄根の主治医って事と、どうしても試合に出なくてはならなかった雄根と「出場できるようにしてくれるなら、これから先生を女王様と呼んでもいい!」「呼ぶな!」「呼ばれたいくせに(作者コメント?)」って感じの掛け合いしてた事くらいだ。
だが、喫煙スペースとはいえ、現代で学生の前で普通に煙草を吸える肝を持つ女医などそうはいない。正確には覚えてないが、この彼女の気質を見て記憶が甦った。
それにしても、まさか四方の治療で遭遇するとは予想だにしなかった。こんな状況だが、格好良い美人さんと話せてテンション上がるのも当然だろう。
そんなお祭り気分な精神状態で四方と面会したものだから、四方がなんとなく気づいてたと思われる質問に、ついキャットルーキー関連を除いて素直にゲロってしまった。
まぁ、坂柳さんの件から繋げていけばこの疑いは発生してただろうし、何人かは情報さえ得られれば普通に察してくるから話しても問題ない。
僕的に重要なのは、四方が無事だという部分だけだ。だから野球の試合や特別試験に参加できなくなるのは残念だが、退学を避ける最低限の予防策は敷いてあるから大丈夫と元気付けておいた。
なんにせよ、しばらく色々動き、思考を深め、策を巡らせていたわけだが、なんとかマシな落とし処へ持ち込めたと思う。
ただ、もはや精神的にいっぱいいっぱいだったので、2人でバイトした後に自室へ誘った愛里に目一杯甘えて、僕の内部で『いっぱい』をおっぱいに変換する術をしてたら……その、平日なのにムラッときて、ね? つい一発やってしまったのはしかたのないことなのだ。
ほ、ほら。感情の高ぶりや不安を解消するには人肌が一番って昔から言われてるじゃん? だから一発で収まらないのもしかたのない。
外の気温が暑く感じるこの時期、本来あまりくっ付くのは好きじゃないが、愛里のOKサインも出てたし、室内はクーラーが効いてて涼しかったのもあるかもしれない。
ちなみにOKサインとは、僕の経験に独断と偏見を加えて得られたデータから算出される……なんというか「しよっか」みたいな雰囲気になるヤツだ。具体例を出すなら、自分からくっついてきたり、キスすると舌を出して絡めてきたりするアレである。
これらの条件を愛里がクリアしてないと、中身におっさんが混じる僕では高校生に手を出してる罪悪感っぽいモノに邪魔されて乗りきれない。一旦、乗ってしまえば関係なくなるのだが、自分はやる気になっても愛里が乗り気じゃないと不思議とブレーキがかかるのである。
さて、余談は置いといて問題発生は、だ。
7月8日金曜日の夜、21時過ぎに″ちょっと”深めな恋人コミュニケーションの最中に人が訪ねてきたのが発端だった。
一発ヤって少し落ち着いた合間に、キスマークを付けられる勢いのキスをあちこちにされてエンジンが再動。僕と愛里はほぼ真っ裸(制服を汚すと面倒なのだ)のまま、2回戦に突入しようと、今度は僕からキスして押し倒した瞬間───部屋の呼び鈴が鳴り響く。
鳴り響くなんて大袈裟に表現したが、この時の僕達には伏兵が突撃してきた時の銅鑼の音にしか聞こえなかった。
…………うんまぁ、慌てふためくよね。
そんなわけないのに、来客に現状を見透かされたかのような錯覚が僕と愛里の精神を掻き乱す。おおっぴらにできないことをしている時に乱入されるとなるアレな精神状態だ。
居留守を使えばいいものを、先っぽだけ入れてる状態で大きな声を出して「ちょっと待って!!?」と返事をしてしまった僕も。今まさに入りかけたモノを抜いて、あたふたと取り繕おうとしたのか散らばってた着るべき衣服をいつになく迅速な動きで洗濯機に放り込み、意味不明にスイッチを入れて水を放出してしまった愛里も。こんな時間に訪ねてきた来訪者も。
きっと全員が等しくおかしかったのだろう。
洗濯機の中で水に浸されていく衣服とドアの外の待ち人の存在感に、半ばパニックになりながら愛里に収納から取り出した無地のTシャツを投げ、僕自身も急いで手近なシャツとズボンを着用する。2つ目のコンドームを着けたままだったから、時間が経過するほど気持ち悪いことになるが、来訪者だけ乗り越えればそれでいい精神だった。
後から思ったが、実に甘い見通しだったと言わざるをえない。
こけつまろびつ無意味に息を荒げつつも急いで部屋の扉を開けると、そこにいたのは……嗚呼、神よ。我を見捨てたもうたのか。
僕のクラスの学級委員長・一之瀬帆波が1人で立っていた。
「こんな時間にごめんね夢月君。四方君の件と…もう一つの用件でちょっと話したいんだけど、今いいかな?」
「い、いいともー!」
「え、なんか夢月君の口調とテンションが───ぴ」
あ、やべ。駄目って言えば場を改められたのに、招き入れる流れになってしまった。特にまだ勃ってるのがヤバい。だが、すぐ中腰体勢への移行…したら不自然すぎる。下手すれば、体勢的に一之瀬の胸をガン見してると誤解されてしまう。
なら……いつかのようにズボンのポケットの内側から息子を封印しておくか。ちょっと下半身が不自然なことになるが、チョロい時の一之瀬ならバレないか誤魔化せるだろ(慢心)。
しかし、このクソ暑い中でもずっと付けてるチョーカーに目をやりつつ、固まったままのポンコツ聖人型奇行種の考えを読めないか試みたが、やはり一之瀬はわけがわからん。誤魔化すのに必要な材料がどうにも読めないのだ。
しかたないので、思考を散らして息子を鎮めるのを優先することにした。
少し先の未来で思い返す。ここで持ち直してれば、被害はまだ軽く済んだのに、と。
「そんなことないさー? HAHAHAHA? お、お茶でも淹れるねー???」
「う、うん。あ、りがとう?」
だが、混乱したままな現実の僕は、一之瀬を愛里もいる椅子やテーブルに誘導し───。
「って、痕跡や匂いが!? いや! それ以前の問題か!!?」
「うぇ!? 今度はどうしたの? さっきから……ぁ、やっぱり佐倉さん、が来てたの? もしかして私、お邪魔しちゃった?」
「ふぇあっ! 一之瀬さん!? ナンデ一之瀬さん!?」
グルグル目(比喩)で窓を開けて床の汁を拭いてた愛里と一之瀬が顔を合わせたらなんか騒がしくなったが、とりあえず僕は消臭スプレーを部屋中に撒き散らす。
この部屋、イカとか栗の花の匂いしない? 布団やクッション、ちょっと湿ってる(控えめな表現)? エッチなのはいけないと思います! なんて一之瀬に指摘されるんじゃないかと気が気じゃなかったから、そりゃもう念入りに撒きまくった。
僕のはまだコンドーム付きで一発しか出してないからまだしも、乗り気になった愛里は意外といつも汁が多めで、さっきもエッチ用の布団がビショビショになったのだ。ついでにキスとか咥えてもらうとかして口を塞がないと、声も大きめになる傾向がある。それは水分補給に気をつけるレベルで。
むしろ一之瀬こそむっつりスケベだと確信する僕では、これらの痕跡を指摘されたら無理矢理でも論破に持ち込んで返り討ちにするだろう。逆に言えば、早急に痕跡を隠蔽しないと普段してるおちょくりやセクハラの僕的制限レベルを超越してしまう。
もっと違うことに対応すればよかったと思いついたのは、ずっと後になってからだった。
なぜなら、ふとそっちを見れば、ノーブラで大きめのTシャツ『のみ』のヤバい姿で尻を突き出してる愛里。一之瀬はまだしも、僕のいた位置からだと大事な部分が丸見えで心臓が止まるかと思った。
即座に最優先事項を塗り替え、頭で考えるよりも先に勝手に身体が反応して対処に当たる。
「う、うおおおおっ!! ちょちょちょっ、愛里!? ししし下ぁ! 下を履いてねぇ! 落ち着けぇ!!?」
一之瀬に見られまいと僕は必死に頑張った。なにより僕を君付けしないデレモードの愛里はなるべく他の奴に見られたくない。たとえ女子であろうともだ。
「ひゃうあ!! ちょ、夢月が落ち着いて!? いま抱きつかれたら余計履けな───あぅふっ!」
「てか、尻もだけど乳のがデケーじゃねーか! 抱え上げると破壊力がヤバすぎる!!」
「なに言ってるの!!? お姫様だっこは人がいない時に」
「っんなこと言ってる場合か! 愛里の色々が零れ落ちそうになってんだよっ!!」
ゆえに僕は注意を促しながら、最速で収納箱から自分のジャケットとズボンを取り出し、火事場のクソ力で尻を突き上げてコケた愛里ごと抱え上げて浴室に放り込み、せめて肌を半分は隠してから再登場してくれと言い渡す。
「ととととにかく! 愛里はその半ば透けてる乳と丸出しな尻を隠してから出てくるように! 一之瀬相手だろうと見られたら僕が死ぬ!」
「すっ、透け───!」
微妙に嫉妬心も溢れてたかもしれない。
急に恥ずかしくなってきたが一之瀬を放置するわけにもいかず、何か言いかけた愛里を浴室に残して僕はそのまま取って返す。
「はぁはぁ、ぜぇぜぇ……! や、ややややはっ、お待たせ一之瀬♪ 今すぐお茶を用意するからもう少しだけ待ってねっ」
華麗に誤魔化せねば、一之瀬に色々ヤバいモノがバレてしまう。
「……にゃはは。ご主…夢月君こそ少し休んで? 顔も真っ赤だし、息も荒いよ? 私が淹れてくるから」
愛里を抱え上げたため、何気に復活しかけていた股間を抑えつつ、手遅れにならないうちに自然な対応を心掛ける。
意図せず、一之瀬にセクハラするわけにはいかない。リカバリーできなくなるからだ。
落ち着け、落ち着くんだ僕。大丈夫、まだ頑張れる。持ち直せる。
「……お願いするわ。ちょっと短時間に色々ありすぎて疲れた」
「うん! 道具はキッチンにあるよね?」
「ああ……」
ほっ。普段表情豊かな一之瀬には珍しく無表情など、多少は異常も見られるが、自己暗示の甲斐あってか会話自体はいっそ不自然なくらいにいつも通りだ。これなら不純異性交遊とかで訴えてはこないだろう。
お茶を淹れてくれたのもあってクールダウンできた。
しばらくして着替えた愛里が戻ってくるまで、四方が無人島サバイバルに参加できなくなった旨を話してた時も、たまに一之瀬が見せるポンコツの片鱗を出すことなく至極冷静。これまでになく聖人オーラもないビジネスライクな会話である。
幸いにも一之瀬は僕の顔や…首元?に視線を固定してたので、話してる間に徐々に収まっていく息子の状態はおそらく露見しなかった(希望的観測)。
こっそり付けっぱなしのコンドームも回収できた。ポケットの裏から布越しに引っ張って外し、ズボンの裾に落として足の指で掴んで手に回す変な動きしたから、少し奇妙に見えたかもしれないが。
「それじゃ落ち着いた?ことだし、今日の本題だね。夢月君、それに佐倉さんにも」
「んぇ? わたしにも?」
「うん、ごめんね佐倉さん。『今』話しておくのがフェアかなって」
胸部分以外はブカブカな僕の服を着てる愛里も、戻ってからはそこまで冷静さを欠いていない。普通に一之瀬と話せている。
ジャケットから覗くTシャツのおっぱいがピチピチだから、僕の内心はわっしょいわっしょい(意味不明)してたが。
でも───なんだ、これなら僕も慌てることなかったな。ヤバい場面をよりにもよって一之瀬に目撃されかけたのが、予想外に僕の平常心を奪っていたのかもしれない。
「用件を単刀直入に言うね。
―――佐倉さん。提案なんだけど、うちのクラスに移動してもらえないかな?」
「え……」
「勿論、2000万ポイント…じゃなくなったんだっけ。2000万円は用意してあるし、夢月君以外の全員……うちのクラスと佐倉さんのクラスのリーダーである桔梗ちゃんから条件付き同意をもらってるよ。
あっ、あらかじめ言っておくけど、どうするかは佐倉さんの自由だし、桔梗ちゃん達にも追い出すつもりは全くないからね」
そして平常運転に立ち返れば、思考能力も普段のレベルまでは持ち直せる。瞬時に一之瀬が来た裏を察することができた。
「は? 愛里の引き抜き?」
「ぶっちゃけ、そうだね。すぐにどうこうってわけじゃないけど、スカウトしたいってこと。ちなみに桔梗ちゃんからの条件は、佐倉さんの合意と少し向こうに有利な同盟。今度、夢月君には詳細を話すね」
あ、おそらく担任が一枚噛んでるな。それどころか一之瀬を乗せて動かした主犯の可能性もある。一之瀬の性質と微妙に噛み合ってないし。
四方や早苗がいるからないとは思ってるだろうが、これは僕が彼女である愛里のクラスへ移動するリスクと、自クラスを天秤にかけて愛里を取ってしまう僕達3人のリスクを、そこそこの代償を払ってでも完全に失くすつもりだ。
担任である星之宮先生が主犯だと推測する理由は、進級前後あたりから一之瀬に迫るレベルでグイグイ来てるからだ。心当たりもある。
学年末試験後に清隆と話してたら絡んできた茶柱先生にイラッときて「いつも特別試験ではお世話になってます。茶柱先生が『自分のクラスを差し置いて』僕のクラスに何度も多大な貢献をしてくださっているおかげですよ。どうもありがとうございました!」と皮肉ってたのを見られて以来、なんか担任が僕に対して異様に好意的になったのだ。
特にこの茶柱先生にお礼()を言った時などは、見たことないほど上機嫌な笑顔で現れて茶柱先生を煽っていた。
反対に茶柱先生の反応はお察しで内心ブチ切れてるのが丸わかりだったが、教師に失礼とは思わない。目先しか見てない奴のくせに、小さな落ち度で僕の友達を見下すなんて馬鹿な話があるものか。
そう、絡んできたというかあからさまに『清隆』を下に見てる態度だったから僕はムカついたのだ。
当時の時点で山内という学年唯一の退学者を出したばかりのクラス担任が、不運だった清隆を低評価してるかのような厚かましい雰囲気を醸しながら絡んでくるとは何様だよ。逆に僕から茶柱先生への評価が、担任すら追い抜いて底辺をぶち破ったわ。
更に清隆が現在のようになった何割かは茶柱先生のこれまでにも原因があると確信していたし、僕にとっての『信用できない隣人』への対応はもうこうすると決めた。
だから、ちょうどいい機会だと思い直して、面倒事を増やす元凶に一撃をくれてやったってことだ。
清隆も地味に吹き出そうとしたのを堪えてたし、乱入してきた担任はうざ絡みして僕達から茶柱先生の意識を逸らしてくれるくらいには上機嫌だった。残りの僕は清隆が笑みを見せた時点でニュートラルだ。トータルでの雰囲気の差し引きはプラスだろう。だから、ざまあみやがれと思いつつ、そこで一旦は矛を収めた。
そしたら、この時はあくまでオマケだった担任に、何故かよく絡まれるようになった。
あと、無人島サバイバルの説明で僕が質問責めしたのや南雲との交渉結果なんかも少し影響あるかな。あれは明らかに勝つ以外の意図に満ちていたし、何かが心配になったのかもしれない。
ともかく、これらの材料から担任に僕が何をするかや性格が割れてきてるのもあって、クラスより愛里を取ったり、いきなりクラス移動したりしないための防衛策のような感じだと考えられる。
場合によるが、意外とこの担任はあらかじめ動いておく手際自体は悪くない。精神が幼く感じることはあるものの、是非は置いといてまず動くことができる人だ。
愛里がうちのクラスに来れば、少なくとも僕・四方・早苗がそれをする確率は大幅に下がる。愛里と同じように場合によっては手助けしに行く櫛田か椎名、男友達なら単独の引き抜きでも戦力になるし、更にリターンも大きくなっただろうが、僕がこちらだとまず承諾しないのもわかっているのだろう。
可能かは別として、櫛田は現在の愛里の最大のバックで、椎名は龍園クラスの主要穏健派で動かす事自体がリスク。そして野郎共にそれを提案するのは美学に欠けるからだ。
なら、いくつか想定される危機が発生しやすく、引き抜いても異論が上がりにくい愛里を真っ先に確保しようとするのは、妥当な保険戦術の1つである。
てか、誰が本当の提案者か確定できないが、こんな手に出るってことは僕もそれなりに高く買われているってことか? 自惚れないようしっかり自重し直しておこう。
櫛田が出したという同盟の条件についても、詳細や意図はまだわからないけど現状なら悪くない気はするし、邪魔をすることもないか。
思考が脱線しすぎてたし話を戻すが、突然訪ねてきた一之瀬の裏には十中八九担任がいる。
しかし、なんかそれだけでもなさそうな気が……? 一之瀬の用事っぽいものもあるのではなかろうか。そんな雰囲気を感じる。
真意を探るべく、軽く突いてみよう。
「ん? 僕には?」
「そう。この話を承諾してくれるかしてくれないかはともかく、答えと次の特別試験の前に佐倉さんと一度“二人”で話しておきたくてね。これから佐倉さんの時間を少しもらえないかな?」
これは当然だろう。2000万も使うとなれば、引き抜く愛里の人柄や能力はリーダーとしてある程度は把握しておくべき。試験などでたびたび必要になるからだ。
それにしても愛里と2人で話すのか。冬の合宿や学年末みたく特別仲が良さそうでもないのに、愛里と一之瀬は不思議とお互い意識してる場合があるな。
ま、こうした話があるなら、愛里本人の意思が最重要だろう。フォローは入れつつ、僕の意見も添えておく。
「どうする愛里? 勘だけど、愛里にとって悪い話じゃなさそうだが。クラス移動するかは別としても」
「……うん、クラス移動のことはちょっと考えさせてほしいけど、一之瀬さんとはわたしも話したかった。で、でも、これから話すなら、一回わたしの部屋に寄ってもらってもいい…ですか、一之瀬さん」
「もちろん、かまわないよっ。むしろ私はそうしてほしい、かな。ああ、それと同級生だし、敬語は使わなくていいよ、佐倉さん」
何故かゴウンゴウン動いてる洗濯機の方向へ視線を向けながら、愛里は一之瀬と話すことに決めたらしい。一之瀬も布団の方向へ視線を向けつつ、快く承諾した。
その穏やか“っぽい”やり取りを見つつ、僕はなんとなく一之瀬の視線の先にも目をやると───!?
「ぉ───っ!」
まくらの上に堂々と鎮座する片付けから漏れたと思われる愛里のブラジャーを発見。声無き声を上げて、さりげなくも早急に回収する。椅子が二脚しかなくて、愛里と入れ替わりで僕は立ちっぱなしだったのが功を奏した。
その際、思わず自分のポケットに隠匿しそうになったがなんとか思い直し、駆け寄った愛里のポケットにねじ込む。
愛里が着てるのも今は僕の服だけど、これから自室には寄るらしいし、ここに突っ込むのがベターだろう。一連の僕の動きを目で追ってくる一之瀬を見ないフリすれば。
ただ、一之瀬は目を瞑ってくれてるっぽい……が、基本的には穏やかな雰囲気なのに時々なんか心臓に悪いな。あまりない面子と状況の組み合わせだからだろうか。
こんな風にちょっとしたトラブルは発生しつつも、僕以外の2人は普通に会話を続け(というか、ほとんど一之瀬が話しかけ)、話がまとまると2人は一之瀬の部屋へ向かうことになった。
「夢月君、お邪魔しました。また学校で…………ご主……」
「ん?」
「う、うぅん、なんでもない。学校でね。おやすみ、夢月君」
「ああ、一之瀬もな。いい夢見ろよ」
「いい夢……柳沢○吾?」
「あばよ」
「あばよ……」
特にその意図はなかったが、一之瀬から去り際にネタを振られたのでリクエストにお応えしておいた。知ってるなら応えてあげるが世の情けだろう。
ベルトや紐で服がずり落ちないようにしてた愛里も一之瀬に倣ったのか、これまた古いネタである…だっちゅーのポーズ?でくっ付きながら声をかけてくる。
「じゃ、じゃあ『夢月』。行ってくるから……『後で』ね」
「お、おう。行ってらっしゃい愛里」
あれ? でも、愛里のデレモードがまだ解除されてない? 一之瀬が先行したとはいえ姿は見えるのに、両腕広げてハグされたいかのような仕草するのは……。
まぁ、パッと見た一之瀬が背を向けてたので、遠慮せず抱き締めるが! てか、一之瀬もいる事実が僕の脳内から消し飛んでいた。
だいたい一発したくらいだけで高校生の野郎がアレを中断させられた上、彼女のメス顔を向けられて我慢できるはずもないのだ。だからちょっとまた人前で『立てなく』なってしまったのもしかたのない事象である。
とはいえ、1時間ほど部屋の片付けしたり、洗濯物を干したり、隣近所に騒いだ詫びを入れてると、ある程度はクールダウンできた。
それらもあらかた終わって綺麗になった床で涅槃物のポーズで瞑想してたら、愛里が帰ってきたので声をかける。
「んー、おかえりー愛里」
「ただいま夢月…君。それで、その」
しかし、エロ抜きでも、もはや愛里が住み着いてる気分になるやり取りだ。クールダウンしたのに、なんというか、こう……瞬時に盛り返してくる。思わずキスしてしまった。
一之瀬との会話?を終えて再来した愛里も、キスしたからか一発で中断させれられてたせいか見るからに出来上がっていた。いつも2回戦から本格的にエンジンがかかる愛里だし、しかたないかもだが。
「わたしが、こうなったの……夢月のせい、だからね……? せ、責任、取って」
「喜んで取るに決まってんだろっ! だけど愛里、お前な……」
……それにしても、コレは実に良いモノだ。いつもの最終確認を告げつつ、抱き寄せて再び愛里の唇を奪う。
「───そんなことすると僕が止まらなくなるぞ。今、愛里が止めない限り、朝までコース確定だ。だから僕を止めるなら今のうちだからな?」
至近距離で言葉を交わしながら、上気した表情や上目遣いで愛里みたいな美少女が全力で求めてくると僕も歯止めが効かなくなる。
「うん……いっぱい、して?」
勿論、完璧なOKサインで再開されたこの夜は、お互い大いに盛り上がった。
愛里から『したがる』条件とともに、あえて一時中断して溜め込んでから爆発させるといった新たなバリュエーションを研究しておこう。
無人島での強制禁欲期間を脳内変換して、転んでもただでは起きない様を証明してやる。旅行が終わったら爆発させられるように。
てか、一之瀬……愛里とナニを話したんだ?
僕がスイッチを入れ直すまでもなくいやに積極的だったんだが、愛里が話してくれなかったので真相は謎のままだった。
クラス移動するかどうかは本人が納得済みならどうでもいいけど、こっちは気にならないわけがない。
まさかとは思うが、女同士にも関わらず愛里に手を出そうとしてないよな?
いくら『信用できる隣人』である一之瀬だろうと、本当にしてたら自作したスライム責めの刑に処した後、おしりペンペン(本気)で報復してやるが。って、万が一にもないだろう可能性がいつもと違う興奮のスパイスになったのは、関係なくありえない余談である。
愛里? 僕の横で寝てるよ。的な朝チュンの賢者モードを発動しつつ、なんとなく彼女の尻を揉みながら翌朝に考えてたのは、そんな他愛ないことだ。
それにしても、昨夜の色っぽさ。はたして愛里はサキュバスだったのだろうか。あの時々発生する色気と高校生離れした身体を十全に使われながら好き好きってやられると、テンプテーションにかかったかのごとく全く止められなくなる。
僕はその答えを探すべく、目前に実在した彼女の柔らかな肌色の海へと旅立った。
……起きた愛里と登校前に致してしまい、遅刻しそうになったのは言うまでもない。
前書きでも述べているように、2年生編の無人島サバイバルは物語の形に整えるのに時間と気合が必要なので、投稿するのは私の気が向いた場合のみになります。
万が一、続きをお待ちしてる方がいたら悪いですが、ここでとりあえず何度目かの完結となりました。変なところで終わってんなぁ、ってなったらすいません。
あと前話の後書きの続き。
後書きを前話と半分に分けたのに長くなり、今回はネタバレも含みますが、それでよかったらちょっと覗いてやってください。でも私見なんか見たくない方は、5行スペースの下からはスルーするのをオススメします。
ホワイトデー記念というわりには作中時期が7月だし、表面ではともかく裏面だと一之瀬や佐倉すらあまり関係ないのはどうかと思いますが、後日談やるなら書いておきたかった事は書けたかなぁと。
具体的には茶柱関連と初心に帰ったつもりで1年生編の無人島のテーマである『信じる』ことについてです。
これだけだとわからないかもしれないので補足説明すると、茶柱がこれまでやってきた結果が巡り巡ってきたのもあって、佐倉の引き抜きが発生したって話です。
ようキャではフラグ折りまくりなので悪いですが、綾小路(2年間)の件、櫛田の件、平田の件、篠原(池)の件、長谷部(佐倉退学後)の件、何人かの退学者の件、2年生編までしか読んでないのでおそらくが付きますが綾小路のクラス移動後も。私が知る限り、自クラスの生徒が生徒ではどうしようもない場面でさえ一度も動かず(動ける場合でも)、しかも放置や丸投げどころか脅迫すらしてたので、知る者・察せられる者から信用されないのも敵対視されるのも残当だと思います。
なにより彼女は人を見る目がない上に、自分のことばかりで願望しか見てません。つまり学校とかの指示以外は、ほぼ『教師』の役割をしてないんですよね。
他のクラス担任の真嶋や星之宮、坂上だってあまり褒められたものじゃない部分はありますが、彼らは最低限教師の役割や生徒の味方をしてるのにです。
本文でサラッと触れたアレを茶柱にやったのは、綾小路や星之宮が持つのと近いレベルの不信感を夢月に持たれてたからです。星之宮の乱入で中断・省略してなかったら、『実力至上主義』での対南雲に匹敵・越えるくらい煽りまくったかもしれません。
花見や進級以降に、何度か夢月がイベントを起こしたりDクラスに乗り込んでも茶柱の存在や名前すら出なかったのも、軽くとはいえこれをやられたせいで茶柱が夢月を避けてたからだったり。無論、夢月としてはそこも計算ずくの嫌がらせでした。
星之宮の逆恨みじゃないけど、最低限の仕事・フォローもせず、かなり後半まで生徒任せで棚ぼた寸前まで行くとか個人的に嫌だったので、原作とはまた違うこの早めの因果応報を考えてました。
結果、おそらく原作2年生ラストの綾小路のクラス移動、その2~3歩手前の衝撃と苦手意識の植え付け効果はあったことでしょう。
ついでに星之宮に関して。
彼女は、以前の櫛田視点の内心(夢月が堀北と話した時とか)と一之瀬視点の心情を足して2で割った感じに加えて、愉快さと鉄砲玉のような勝手さへの各種心配を主とした単純でいて複雑な感情詰め合わせを夢月に向けてます。
ぶっちゃけ、原作の綾小路=ジョーカーほどとはいかなくても、居なくなられたら困るレベルには夢月を評価してる想定です。
原作の星之宮の動きにようキャ補正をかけたら、何故か彼女はこうなりました。
あ、佐倉と一之瀬については、本文にほとんど出してあるので割愛しますね。流石に長くなりすぎますし。
本文や後書き、ここ何話かも長文の回が多かったと思われますが、ここまで到達した方がいましたら、お読みくださりありがとうございました。