ようキャ   作:麿は星

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 シヴィライゼーションって、ヤバイですね。
 気づいた時には休日が終わってました。



18、平等

 

 僕に科された学級委員会の罰ゲームは、結局『一之瀬の言うことを聞くこと』に決まった。

 これは実質無罪放免と言ってもいいだろう。なにせ、一之瀬とは接点がほぼないし、これまで面と向かって話したことすらないも同然の関係である。一之瀬から僕への意識も、どちらかというとマイナス寄りの無関心であることは予想できるので、向こうから接触を図ってくることもないはずだ。休みが明けたら挨拶と僕がやる事の指示を貰いに行く必要はあるが、それ以降は再び接点が消えるだろう。

 

 皆が無駄に笑顔を浮かべて話し合っていたから、とんでもない罰でも企んでいるのかと思ってしまっていたが、そこはクラスの中心が一之瀬である。善性に寄った采配をしてくれるものと信じていた。これで心置きなく遊びに行ける。

 

 昨日のあの状況では、四方や柴田を誘うこともテントを買いにいくこともできなかったが、天体望遠鏡を持って公園で夜明かしするだけなので必須のものはそんなにない。今となっては正式な天文部員なので、補導対策もばっちりである。

 そんなわけで今日は昼まで二度寝して、いざ鎌倉で三度寝だ!

 

 

 

「左京君!」

「左京さん、こんにちわ」

 

 昼過ぎに寮を出て、公園の東屋で日向ぼっこをしていると、佐倉と東風谷に遭遇した。

 どこかへ行った途中なのだろう。二人仲良く結構なことだ。

 

「…………………………はよ~~~」

「……今日は一段と気が抜けていますね」

「でもバイトの暇な時とか結構こんな感じになってたよ」

「ああ、そういえば学校でも空き時間ではスライムみたいに融けていきそうになってましたっけ。

……でも昨日、クラスであんなことがあったのに、何でこんなにのんきにしていられるんでしょう?」

「左京君、オンオフが激しすぎるよね。というか、また何かやらかしたの?」

「ふぁ~あ。……あ、お茶飲む? 水筒しかないから回し飲みだけども~」

 

 充分すぎるほど寝て、日向ぼっこまでしていたせいか、口も頭も回り始めてくれない。

 

「はい、いただきます。

 昨日クラスのリーダー的な人が言っていた事を早合点して大騒ぎした挙句、投げっぱなしで普通に帰ろうとしたんですよ。その後もふざけてるような事を言い立てたりしたので、ついに首輪を着けられる的な罰まで受けるようになった……はずなんですけど」

「それって、ちゃんと首輪がつながってないんじゃ? わたしは、そもそも左京君が束縛されてる姿が想像できないからそう思うのかもしれないけどね。

……ありがとう。あ、おいしい」

「いやまぁ、実を言えば私もそんな気がしてるんですけど、左京さんのおかげで居場所ができたような恩を感じてる身からすると少し心配と言いますかなんというかで」

「あっ、ちょっとわかる! なんか左京君って、滅茶苦茶に進んでるようにしか思えないのに不思議と目的地に着いてそうな雰囲気があるんだよね。だけど、進んでる時は不安だったり心配になったりして……バイトや生徒会での事、思い出しちゃったなぁ」

 

 僕の頭上で茶を飲みながら話に花を咲かせている佐倉と東風谷だが、本人が目の前にいることを忘れているのではなかろうか?

 

 でもそうか、佐倉は不安や心配だったのか。

 今考えてみると、電器店から生徒会まで目的と効率だけを考えて怒涛の勢いで事態が進めてしまったから、じっくり進めるタイプっぽい佐倉だと精神が持たなかったのかもしれない。

 東屋のテーブルに突っ伏していた状態から顔を傾けて覗いた佐倉は、悟りを開いたかのように遠くを見つめていた。

 

 一方、東風谷が言う恩には心当たりがない。

 居場所云々をいうなら天文部の事かもしれないが、あれはなんとなくで誘った話を受けて貰った僕の方が恩を感じるべきだろう。それに彼女の近くに感じる神様にも何度か助けられているような気もしていることから、どちらかというとやはり僕が受けている恩の方が多いと思われる。

 

……………………でも、まぁいいか。考えるのが面倒くさいし、眠くなってきた。……ねむ、い。

 

 一瞬、ほんの少しだけ思考能力が戻ったがすぐに力尽きて、僕は二人も近くにいるにもかかわらず本気で惰眠を貪りにかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「人は平等であるか否か?」

 

 そこそこ寝て起きたら佐倉と東風谷がまだ居て、いきなり問いかけられた。

 

「寝る前にしていた話題が、どう変化すればこんな哲学的な問いかけへと至るんだ?」

「私達にもわかりません」

「わたし達、なんでこんな話してたんだろう?」

 

 問いかけてきた癖に、どういう流れでそうなったのかわからなくて疑問顔の二人がそこにいた。まぁ話題が二転三転してわけわからなくなる事はそう珍しいことではないが……。

 しかし、平等か。あんまり頭使わなそうだし、別に答えるくらいはいいか。

 

「平等って聞こえが良い場合が多いけど、僕が思うに結構怖かったりもするからできるだけ否であった方がいいな」

「あ、普通に答えるんですね」

「怖い?」

「うん。一時的に平等になっただけならそれほどおかしなことじゃないけど、平等であり続けるのは自分も周囲も怖いししんどいだろう?」

「「?」」

 

 わかりにくかったのか、まだ疑問顔が消えない二人を見て補足を入れる。

 

「例えば、産まれた瞬間は環境に差はあれど平等だよな?」

「そうだね」

「こういうのは別にいいんだよ。どうせすぐに平等じゃなくなるんだから」

「平等じゃなくなる……ですか」

 

 東風谷が考え込んでいるが、何か琴線に触れるようなことを言っただろうか?

 

「僕が怖いのは能動的に平等であろうとする、もしくはあろうとし続ける人だ」

「能動的に……」

「こういう奴は怖いぞ。友達を本当には友達と思ってなかったり、場合によっては冷徹に切り捨てたりすることを躊躇わない。それに敵になる前の段階、邪魔者と見做されただけで攻撃されたりもする。これは感情を排しているとかいうわけじゃなく、本当に機械的な行動原理で動くからだ」

「……」

「しかも、こういうタイプは何らかの分野や能力に秀でている事が多く、出世して集団のリーダーやその周辺、あるいは独特な立ち位置で目立ってたりする事もある。そしてその自負の為か、本質的にはほとんど友達や仲間を必要としていない」

 

 会社組織で言えば、有能と言われたりするリストラ担当者がわかりやすいかもしれない。

 共感性がなく、それを必要ともしていない人間は意外と多いのだ。そして、そういう人間を求めている組織も。

 

「僕はそんなしんどそうな生き方の奴にはなりたくないし、金や効率とかの理由であっさり人を切り捨てる奴は怖いからな。だから人は平等であるか否かという問いには、できるだけ否と答えたい」

「「……」」

「……まぁ、僕の平等はそういう印象ってだけで、佐倉や東風谷の答えはまた違うんだろうし、ただの雑談にそう考え込まなくてもいいんじゃね?」

 

 なんか結構真面目に考え込んでる二人が不思議だ。確かに本音ではあるのだが、所詮僕個人の勝手な言い分なのだから軽く流せばいいと思うのだが。

 

「でも、もしも自然体で真の意味の平等を体現し続けている奴がいたら、僕はそいつを人間とは思えないだろうな……」

 

 まだ考え事をしている二人を横目に、とある饅頭顔の原型がそう評されていた事をなんとなく思い出しながら、僕は独りごちた。

 

 

 

「ところで、そろそろ完全に日が落ちるが帰らなくていいのか?」

 

 実は僕が起きた時点で夕方だったので気にはなっていたのだが、今はもう橙よりも群青や黒が強い。この東屋近辺はまだ電灯がつき始めているので明るいが、軽く見渡しただけでも公園の道は結構暗い場所がある。

 

 それにしても女子高生二人が、夜の帳が下りたのに公園の東屋で並んで考え事。

 この状況、まるでエ○ゲかAVの導入のようではないか。

 この街ではないかもしれないが、万が一友達二人がよからぬ輩に声をかけられて、その想像が現実になってしまったら寝覚めが悪いなんてもんじゃない。

 また逆に、佐倉はともかく、東風谷は返り討ちのついでにソイツの金ちゃんとかを潰したりしそうな雰囲気もあるので、想像だけでもヒュンッとなる。勿論、どこがとは言わないが。

 

 僕がバカな想像をしていると、東風谷が我に返ったように聞き返してきた。考えていたことを勘づかれるわけにはいけないので、何とか切り替えて取り繕う。

 

「左京さんは帰らないんですか?」

「僕は元々ここで星見したりして夜明かしするつもりだったからな。でも二人が帰るなら寮まで送るぞ。たいした手間でもないし、一応心配でもあるからな」

「ええ!? 公園で? 一人で?」

「ん。四方とか男連中には声かけるつもりだったけど、昨日色々あってその暇がなかった」

「その色々あった次の日に、公園で夜明かしするってなに考えてるんですか?」

「だってアレって実質無罪放免だろ? 酒とか飲めたら、一之瀬の優しさと統率力に乾杯したいところだよ」

 

 そう言うと、二人は顔を見合わせて「やっぱり!」と言いながら吹き出した。

 しかし仲良い様子は微笑ましいのだが、なんか腹が減ってきたので早急に何かを食いたい。しばらくは様子を見ていたが、食欲に支配された僕は我慢できず、いつぞやのように二人の背中にツッパリをかましつつ、追い立てるように寮へ向かって歩き出した。

 

「ちょっ、押さないでください!」

「歩く! 普通に歩くから!」

「いいから行こう。夕食に行くついでに送るから細かいことは後だ。今は早急に丼物が食いたくて仕方ないんだ」

「自分は、さっきまでのんびりしてたのに!」

「気分屋すぎるでしょう、この人」

「うっさいわ。僕は、丼物への欲求と二人への心配を解消するべく急ぎたいんだよ」

 

 この後、なんやかんやありながら二人と牛丼を食べて満足した僕は、星見スポットへと戻り一晩中星を堪能したのだった。

 ちなみに食後には二人を寮に押し込んだのだが、その時ついでに自分用のお茶を補充するのを忘れて、缶で我慢することになってしまったのはこの日最大の失敗である。

 





 原作主人公と本格的に会う前の佐倉愛里&東方霊夢と数年後に出会うかもしれない東風谷早苗と、この話をさせたくて多少の無理を承知でここにねじ込みました。まぁ、冒頭からこの自分語りしている主人公を想像できなかったという理由もあるんですけども。
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