ようキャ   作:麿は星

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 おそらく、あまり望まれないかもしれない人達とのふれあい回。
 でも、この人達が無人島サバイバルで左京夢月に関わらないのは私的にありえないので、多分これからも何度かポップします。



169、無意識

 

 無人島のスタート地点にて、スタッフに混ざって設備などを設置すること約1時間。

 このバイト許可をくれた司馬先生の計らいか、報酬に米・カレー粉と飯ごういくつか、大鍋の他に売れ残った野菜類が手に入った。本来は野菜なしだったから課題で入手しようとしてたのだが、どうやら課題扱いにしてくれるらしい。

 

 予想以上の量と鍋の大きさだったのもあって感謝がてら夕食に誘ったら、月城さんの計らいだからと教えられ、伝言を頼みつつ二人共を招待した。来てくれるかはわからないが、融通を利かせてくれるならできる好意で返すのが筋だろう。

 

 この仕事とだいたいの下ごしらえが済んだ頃には本日2度目の指定エリアが出現する1時間くらい前のお昼時で、四方と坂柳さんに荷物や料理素材の保管と状態維持を頼んで早めに昼食を済ませておいた僕も出発する。せっかく大がかりな用意をされておいて試験を疎かにしすぎるのはNGである。

 というわけで、小さめのザックにタブレットやノートだけ入れて適当に東へ向かう。

 方向は初回の指定エリアを確認し忘れたので、なんとなくの勘だ。

 

 島の道は荒れた箇所も多く歩きにくくもあるが、等高線を意識して自分のペースを最適化しつつ進めば田舎での散歩と変わらない。速度と体力を計算に入れ、普段より速めのペースで障害物を避けつつ道なき道を進む。蜘蛛の巣や飛び出た枝などはあっても、どうしても避けられない場所以外はなるべく開けた場所を選ぶ。

 これだけで案外楽になるものだ。

 

 そんな地形なので得点とかは気にしすぎず、設営バイトをいくつかこなして半券(スタート地点で材料と交換してもらう手筈なのだ)をもらい、課題も一応チェック。珍しい植物などあれば採取。特別試験のシステムや島の環境の大雑把な把握が目的として、ズンズン直進する。地理把握が楽になり、帰りも早くできるからだ。

 

 体力がほぼ万全で、大半の荷物も預けられ、少なく済ませられる初日ゆえのアドバンテージを最大限に活用してやる。

 初日から頑張っても旨味は少ないし、なんかプラスがあったらラッキー程度で考えて参加するのが気楽だろう。

 

 と、植物を採取してノートに挟みながら歩いてると、指定エリアの通知が来た。F8の地点のようだ。

 なんか現在地からほぼ目の前だったので、念のためラグを警戒。E8の中央付近にあった小川を跨いでしばらく歩いたあたりで、100秒ほど数えてからラインを越える。

 

 すると僅かなラグの後、到着得点と着順ボーナス1位が僕の腕時計に表示されていた。タブレットを取り出してこちらでも確認してみると、到着と着順で合わせて11得点が履歴に残っている。

 不具合なしなのがわかれば今は充分だろう。

 僕は安心して近くの崖下に実っていた木苺を採取して保存しつつ齧り、植生レポートを書き込みつつ一休みすることにした。

 

 温暖化についての疑問。

 とある米国大統領の始めた文書公開で、国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が語ってきた33件もの気候変動の話や予測のうち、32件もが科学的に間違ってるか論拠の薄いデタラメだったと暴露された。

 時期はまだしも、植生の特殊性やこんな場所に木苺が実ってるあたり、全部とは言わずと疑問を持って自分で調べるのは今こそ必要な事なのかもしれない。

 

 と、レポートの前書きメモ(清書は夜とかの空き時間)を書いてると、続々と現れる人影。考えるまでもなく、僕と同じテーブルか同じ指定エリアの奴らが集結しているのだ。

 偶然にも着順1位だったから忘れてたが、他人との遭遇率が高くなる行動は避けた方がいいだろう。知り合いじゃない奴に声をかけられたらキョドる自信しかない。

 

 ゆえに、素早くタブレット以外の荷物をしまって木々が生い茂る場所に駆け込んだ。

 葉っぱや枝、蜘蛛の巣とかが引っかかったものの、首に巻き付く白蛇がその身体をうねらせると何故か落下したので問題ない。ちょっと生物の常識や物理法則を無視してて、この白蛇が神様かそれに類する存在と確信しSAN値チェックするだけで済む。

 

 そのまま無駄に隠密しながら、タブレットを操作してみる。現実に起きた気軽な奇跡を直視したくなくて、せめて課題をチェックするためだ。

 いくつかの課題を眺め、最初に挑戦するのは出現したばかりらしい『木工細工』にすることにした。特定の道具を使って制作物を作り、完成度で評価される課題だった。

 

 参加で1点、最大評価で5点。副賞に水500mlをもらえるらしいのでちょうどいい。流石に手持ちのペットボトル、1lと500ml一本ずつでは少ないかと思っていたところだ。

 水や食料を得られる課題で『火起こし』や『藁編み工作』の課題も捨てがたいが、どちらもここからはそこそこ距離があるし、有益な+αを狙うならこれだろう。

 

 なぜならこの課題、何個作ってもOKで時間制限も16時までの約3時間という長丁場の条件。手先に自信があり、初期準備に不足が予想される少数グループ向けの救済措置的な課題だろう。おそらく購入できなかったが普段使いできる小物を早めに自分で作っておけ、っていうな。

 ありがたく利用させてもらうとしよう。

 そんな渡りに船な気分で自分を盛り上げつつ、僕は目的地へ向かって無駄に草木を倒さないように避けながら、再び“道なき道”を歩き出した。

 

 

 

 物音はともかく、人の声にビクつきつつも、なんとか課題が行われるE8の北東地点までこぎ着けた。

 またも1番乗りで茶柱先生(げっ!)に『木工細工』の課題の受付を済ませ、準備完了するまで一息吐いてると結構な人数の足音が聞こえて確認し───立ち去ろうか一瞬迷った。

 でもここまで来て受付を済ませた以上は逃げるわけにもいかず、遠い目になりつつ新たな課題参加者達からスッと視線を逸らす。

 

「おいおい、左京。目が合った生徒会長で先輩に随分な態度じゃねぇか。せっかく不運にも相方が不参加で、一人寂しくサバイバルすることになった後輩を気遣ってやったのによ」

「南雲と会うのは情報量が多くなりやすいんだよ。想像だけで頭の中が満タンだ」

「左京の頭を満タンにできるなら最高だろ?」

「は? 南雲程度で満タンにできるわけがない」

「どっちなのよ……? なんなの、この人」

「最高すぎて脂汗出てくるよ」

「最高の時には出ない汁だな」

 

 よりにもよって、めっちゃ統率されてる南雲達のグループだったからだ。10人くらいいて、朝比奈さんもいる。

 ただ気になるのは、もうここまでの人数で動いてることと、コイツが節約する姿を表に見せるイメージはあまりないことだが……。

……切り替えていこう。意図して疑問を脳内の隅に追いやり、僕は話しかけてきた南雲に適当な質問を返す。

 

「ま、改めて。やあ、お疲れ。南雲もなんか作んの?」

「そういう課題だからな。お前は何を作るつもりだ?」

「ん、コップ代わりの枡(ます)や皿とか。課題提出用に念の為に竹とんぼも作るけど」

「ああ。ポイントと道具、ついでに水を手に入れようってことか。意外と抜け目ないよな、お前」

 

 ナイフや彫刻刀、ヤスリなどを配られ、各種置いてある木材置き場から自分の使う木材を取ってきて具合を確かめながら削っていると、同じような道具を持った南雲が僕の横に腰を下ろして話しかけてきた。

 ちなみにこの際の削りカス(かんなくず)は、緩衝材やチップとして後に使うので集めてある。せっかくの乾燥した木材だ、無駄にはできない。

 

 他の課題参加者に目をやると遠くに1年生らしき数人も座っていて、そっちは無人島でナニに使う目的なのか知らんけど、どっかから持ってきた角材(木工細工の置き場にあんな長物は存在しない)から木刀?のような物を作り始めている生徒もいた。何故かメッチャ僕か南雲達から目を逸らされてるけども。

 アレか。初日からやることじゃない気がするけど、修学旅行とかの定番お土産のノリで恥ずかしいとかか? 格好良いと思う奴も一定数いるらしいし、不自然とまではいかないか。

 

 それにしても、それほど付き合いがないわりには南雲も友達連中に勝るとも劣らず話が早い。当意即妙を読み込む能力が高いというかなんというか、予測や察することに関しては、本当にIQの高さを感じさせる奴だ。話をするとよくわかる。

 僕でさえ、それなら一応誘ってみようかな、ってなるからな。人を率いる者の雰囲気っていうの? そういうのがある。

 だから、木を削りながら夕食に招待してみた。

 

「あ、そうだ。今夜、スタート地点でカレー作るつもりなんだけど、思ったより米や野菜とかの材料が多く手に入ってさ。よかったら南雲達も来ないか?」

「あ? お前な……」

 

 あと南雲達が来たら材料が足りないんじゃね? って心配はあるかもだが、そうでもない。バイト報酬が米5㎏。つまり約30合ちょいもあって、とても少人数では食いきれないからだ。これにバーモントカレー5箱や各種野菜まで付けてくれたのだから豪気なものである。

 ちなみに余ったら、こうした食品は四方や坂柳さんにあげるので多少でも節約とかに役立ててくれたら嬉しい。

 

「まぁ、15時からの指定エリアの方向次第でそっち行くかもしれないし、無理には言わないが」

「……そうだな。俺達にとってこの課題は、次までの余白埋めついでの課題だ。前の指定エリアが近場のF8だったしな。だからまぁ、縁があれば受けてやるよ」

 

 F8? もしかして僕と同じテーブルなのか? コイツのグループと競うとか、先の勝率低下が容易く想像できるが……それより、やけに素直だな。清隆といい、夏の無人島でテンション上がってるのだろうか。

 

「はっ、偉そうに。タダ飯の誘いを実に恩着せがましく返してくるじゃないか」

「タダで後輩にもらうつもりもないからな。実はあるところでスイカの群生地を見つけてある。指定エリアの都合が良ければ、スタート地点に戻る途中で寄り道して分けてやるよ」

「スイカ……ふむ。そうか、どうぞ偉そうにしててくれ。南雲が良い気分の方が、カレーにデザートが付く可能性は上がるかもしれない」

「左京君、手のひらクルックルじゃない。というか雅も一緒になって試験でカレーだのスイカだの言って、真面目にサバイバルしてる人に悪いと思わないの?」

「「思わないな(ですね)」」

 

 朝比奈さんが聞いてきて、南雲と答えが揃ってしまった。別にどうでもいいけど、この性格アレな男と仲良さげに見えそうでなんか嫌である。

 なんにせよ、僕が思うに勝負事は負けても自分が楽しければOKだ。つまり遊び心を持ち続けられるのが一番。

 そして遊びは楽しませてもらうモノじゃなく、自分で楽しくするモノである。南雲とはこの点において、僕と近い考えがあるのだろう。

 

「俺は俺が楽しんだ上で勝つ。そのための手間を惜しむ気はないからな。そして“後輩”がここまでお膳立てしたんだ。俺達がそれに一品加えるくらいはあっていいだろう」

「……余所は余所。うちはうちですよ、朝比奈さん。まだ始まったばかりで先は長いんですし、無理せずいきましょう」

 

 ぐ、一理あることを。

 しかし、某最強の弟子も秋雨バージョンの物真似でこう言っていた。

 甘い! 技能とは、すなわち模倣から始まるのだ、と(一部改変)。

 要は南雲に乗っかった。

 

「ん? 雅、もしかして左京君のお誘いに乗る気?」

「そのつもりだ。次の指定エリアが反対方向なら考えるがな」

 

 なぜなら、カレーにスイカが加わるなら僕に異存はない。僕から誘ってもいるし、これまでの南雲のパターンをトレースをするくらいわけはない。

 いや、だってさ。結果的に南雲達から『護衛』されるのは良いと思うんだよ。多少不都合もあるし、面倒な勝負とかはすることになるかもだけども。

 

「あっ、左京君。それ壊れやすいから気をつけ」

 

 話しながら、取らぬ狸の皮算用してたからだろうか。

 目の前の台にあった提出用の竹トンボの材料…細い棒と羽の仕上げに必要なヤスリを取ろうと手を置くのと、朝比奈さんの注意はほぼ同時だった。

 乙女のハートが砕け散るかのような儚く切ないパッキーンという音。朝比奈さんが作っていた細工の飾り部品だった。

 

「……なにも…なかった(ドンッ)!」

「雅、カスのゾロやめて? ドンッ! じゃないから。イラッとしかこないから」

「その、朝比奈さん。誠に申し訳ない。見えてませんでした」

 

 僕がヤベェと絶句してしまった間に、南雲と朝比奈さんの漫才が始まっていた。

 だが、今回は完全に僕の不注意だ。平謝りするしかない。

 

「うん、きちんと謝れて偉いね……左京君は」

「おい、なずな。俺は関係ないだろ。なんでこっちを見ながら言う?」

「関係ないのにしゃしゃり出てきたくせに、なに言ってるの。わざとでもなし、失敗しちゃっても謝れる後輩なら許すのが当然でしょ」

「悪い、なずな。さて、俺も謝ったわけだし、もう水に流してくれ」

「反省がない! なにそのわざとらしさ!」

 

 とりあえず僕の作った食器もどきで欲しい物があればあげる、ってことで手打ちにしてくれた朝比奈さんには感謝である。なんか南雲が怒られてたけど、喧嘩するほど仲が良いって言うし問題ないだろう。

 なぜなら、一見だと南雲が尻に敷かれてるが本質はそうじゃない。言葉少なでありながら、最初から最後まで主導権が南雲から移っていないからだ。

 

 それにしても、この南雲と朝比奈さんのやり取りを見てると、男女の友情は存在するのか? という時に議論に上る命題が思い浮かぶ。

 これは双方が性別を全く気にしていない場合、案外簡単に成り立つのではなかろうか。言葉の通じる異種族間交流に近い。同じ人間と双方が認識しているかすら疑わしいという性別以前の話だ。

 僕視点の実例を挙げるなら、早苗(神)や櫛田(悪魔)との関係に近いように感じる。

 つまり、親しい間柄なら男女の友情はあり得るのではなかろうか。まぁ、僕の方は特殊な対象なのに加え、まだ子供と見てるからかもしれないが。

 

 というか、これを踏まえて俯瞰視点で考えると、何気に僕が人の中にいて緊張してたのを見抜かれて気遣われた? だとすれば、僕も何かしらで返せるモノを次の機会とかに備えて用意しておいた方がいいかもしれない。

 一之瀬とかと同じく、借りには借りを返すのが僕なりの義理というものである。

 

「朝比奈さん、お気遣いありがとうございました。僕がいなくなったら南雲にも伝えといてくれると……」

「は……う、うん。どういたしまして、左京君」

 

 ゆえに、南雲が中座した隙に朝比奈さんへお礼と言伝てを頼んだ。南雲に面と向かってお礼を言うのはなんか嫌だし、アイツの察しの良さなら余さず伝わるだろう、多分。

 

「え、無意識……?

…………一之瀬ちゃん、ホント大変だ。雅とも堀北先輩とも全然違うタイプだよ、これは」

 

 朝比奈さんはどこか困惑してるようでもあったが、この人にもおおよそは伝わっただろう。正直、いまだに話すのに抵抗があるものの、そろそろ知人レベルには到達してそうだしな。

 僕の場合、女子は勝手に親しいと勘違いするとしっぺ返しされるので低めに見積もるが、向けられる好意半分を自意識過剰と計上すれば、朝比奈さんは話し程度はできる知人と言えなくもないはず。

 

 愛里基準の目分量で、好意数値は100点満点中35点といったところか。逆に僕から朝比奈さんだと50点前後と多少の差はありつつも、女子の知人の中では高め。

 彼女と親しそうな一之瀬と、ついでに堀北さん・白波が断トツで僕への好感度が低いと思われる事も考えると、網倉などと同程度と想定しておこう。望み薄でその気もないが、もしかしたら相互でフォローする関係に発展する可能性もなくはない。

 

 作業しながら、時々そんな感じの雑談や思考を挟んだりしてると15時になっていた。僕にも南雲達にも本日最後の通知が来る。

 勿論、お互いに目的物の制作はヤスリがけまで完了し、提出も済んで出発準備は万端だ。5得点と水もゲットした。

 

 僕の次の指定エリアはE7。南雲達はD8……らしい。違うテーブルではあるようだ。

 あ、何故僕が南雲の指定エリアを知ってるかというと、僕のを聞かれて答えたらなんか教えてくれたのだ。だから僕は悪くない。

 なんにしろ、スタート地点方面に南雲達が行くのは好都合。きっとカレーにデザートが付いてくることになるだろう。

 

 とりあえず、僕の指定エリアはすぐ北で、ここはE8の北端あたりなので手早く済ませる。南雲に一言残しつつ到着通知が来るまで北上。すると、今回も運良く着順ボーナス1位を得ることができた。

 初日の合計得点は27点か。最初の指定エリアをスルーし、寄り道ばかりだったわりには上出来なんじゃなかろうか。

 

 なんとなくホクホクした気分のまま、足早に西進してた南雲グループに追い付く。現時点で10人くらいいるので、足跡が辿りやすいのだ。

 彼らは指定エリアがこれだけ近いのだし、今夜はスタート地点でゆっくり休むらしい。

 

 

 

 ところで、3年生と一緒に行動すると明らかにわかる。

 

「にしても、左京って裏表ないくせして、マジで予想外な奴だよな」

「だね。試験スルーとか目の当たりにすると、尚更そう思うよ」

「……すでに10人単位で動いてて、エリア制圧か焦土戦術を見越してそうな南雲に言われたくない」

 

 僕がそう返すと、南雲は不敵な笑みで何故かテンションが上がった。

 

「やっぱりこれも気づいてたか! 俺を止めたかったら、それこそお前が足止めしないとな?」

「なんでもいいから南雲と真っ向勝負して打ち破ったら…ってヤツ? 改めて考えると、僕単独だと難易度高すぎなんだけど」

「別にお前が使えるモノは何でも使っていいぜ? 策でも人でも、な」

「はぁ。じゃあ何か考えとくが、あまり期待するなよ? やった方がお得で、じり貧になりかねないのはわかってるからどこかのタイミングで挑むけどさ」

「ククッ。事も無げに俺に正面から挑んでくる、か。面白くなってきやがったものだぜ」

 

 これは無人島サバイバルでなるべく退学者を減らし、学年ごとのCPマイナスを平均化するため、『無効』カードを最大限活用する案を提案した時に南雲から言ってきたことだ。

 ぶっちゃけ、船で詳しい試験説明をされる前から最上級生全体を操れる南雲に有利な特別試験なのは察していた。それこそ本気で学年の人数を指揮されたら、成績トップスリーは独占されかねない。それにマイナスを3学年で平均化した以上、上位狙い以外は多少無茶をするグループ編成とかしててもおかしくない。

 

 だから僕は保険に更に保険を重ねて、南雲の享楽的な性格を計算に入れた足止め……というか、舐めプしてくれないかな、ってダメ元で交渉していた。

 そしたら、なんか勝負している間と……僕が勝った場合の翌日は『南雲のみ』動かないでいてやるよ、とのこと。つまり部分的に通ってしまったのだ。これはやるしかないだろう。

 

「好戦的な顔でこっち見んな。明日でも見据えとけ」

「なんで熱いこと言った?」

「明日…になるかわからないけど、借りの取り立てを考えててな」

「熱いどころか冷めきってる……」

 

 とまぁ、偶然遭遇した上で、そんな事情もあって今は変な交流してるわけなのだが……。

 不思議なことに、南雲と朝比奈さん以外の3年から男女関係なくスゲー避けられている。いや、前からそうだったと言われたら否定できないし、話しかけられてもキョドるか逃げ腰になる自信があるからそれ自体はいい。

 でも、さっき南雲グループに追い付いた時に後方から声をかけたら、先頭にいた南雲までの道がパッカリ開いた。それこそモーゼの海割りのごとしで、無言のまま人が左右に分かれて道になったのだ。

 

……僕はいったいどんな目で見られているのか。

 最初は肩らへんをニョロニョロしてる白蛇への忌避感か、早苗や神様方に肖った“人避け”が機能してるかと考えたが、南雲や朝比奈さん、ここにはいないが鬼龍院先輩は普通に接してきただけに謎すぎる。

 

 ま、いいか。よく考えなくても。上級生とはあまり接しないだろうし、不都合もない。これからは僕も意識して避ければ、お互い不快なことにはならないだろう。やけに視線は感じてるが。

 

「……左京。お前、やっぱり強いな。これにほとんど反応しないとか」

「は? なに言ってんだ? プレッシャーを感じて嫌だったら、感じないように自分の意識を塗り替えてしまえばいいだろう? 今の僕の頭にはカレーを作ることしかない、とかな」

「へぇ。左京君って鬼龍院さんとかとも少し違うんだね。なんて掴み所のない……。ホント大変だ」

 

 実際、精神は消耗するものの、話す時以外を意識しない社畜由来の技能はそれなりに重要だ。下手に意識すると、どうでもいい関わりができてしまうからな。

 ほら、ニーチェも引用している「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」ってヤツである。

 人間関係の絞り込みと効率化は、鍛えられた陰キャなら無意識にしている防衛手段である。僕が持っているのは当然だろう。

 

 未来で誰かさんに指摘されるまで、僕はこの『無意識』が他人からどう見られるかという事をこの時も全く考慮に入れてなかったあたり、僕自身も普通の凡人と違う価値観が僅かにあるのかもしれない。いやまぁ、『俺』という転生の実例がある以上、価値観は元から“微妙”にズレてはいるんだろうが……。

 嬉しくも悲しくもある微妙な発見である。




 独自設定。
 原作だと到着ボーナス・着順ボーナスですが、ようキャでは到着『得点』・着順ボーナスとしています。個人的に空目して紛らわしかったためなので、ご了承ください。
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