ようキャ   作:麿は星

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 ちょっと長くなっちゃったけど、5話を費やした無人島サバイバル初日の導入部はこれで終了。1年生の無人島にも初日に8話使ったのと文字数合計だとほぼ互角なのは秘密。

 後書きに初日の夢月グループのリザルトを載せておきますので、気になったらどうぞ。



170、キャンプファイヤー

 

 現在時刻は17時頃。

 ここは、開けた場所にある港近くのスタート地点だ。途中で南雲の言っていたスイカを3年生達と手分けして回収し、僕は愛里サイズのデカいのをいくつか選んでスタート地点へ戻ってきた。

 ちなみに、なずなサイズが至高とか戯けたことを宣う南雲と道中で言い争いになり、朝比奈さんのマジ説教を共に食らった。

 原人のごとく道具も使わず、自分の服の下に手を入れて「こんくらい!」とか調子に乗って馬鹿やってた南雲はともかく、なんで僕まで十把一絡げなのか。

 

 僕はちょっと南雲に対抗するため「密と疎を操り、胸の大小をも変化させてやろう。さあ、おっぱい星人共よ、願いを言え。いかなるサイズにも対応してやろう」とインテリジェンス溢れるシェンロン的な冗談を返した上で、せっかく手元に存在するスイカを使って「ほ~ら。ボインボインってな?」ってやっただけなのに。

 南雲や他の3年生達だって笑ってたのに、なんで僕があんな温厚そうな朝比奈さんにブチ切れられにゃならんのだ……。

 

 ともあれ、初日の指定エリアが全て終了したあたりに到着したのだが、続々と生徒達が集まって来ている。

 すごい数のテントからすると、相当数の生徒が戻ってきてるんじゃなかろうか。真っ暗な森で野営するのが不安になったのかもしれない。わからなくはない。スタート地点は電灯も設置されて日が暮れるほど遠くからでも目立つし、明るいから安心できるんだよな。

 

 その中には、僕が仲介してグループを結成した池・篠原・真鍋の3人組の姿もあった。

 とはいえ、池が一緒に組みたいと相談(直でされたわけじゃなく、遠回りになっていた話を分解しておおよそ察しただけだ)してきた篠原はほとんど知らない。ただ、池と仲良さそうにしていたのは新年とかで何度か見てたので、意地かなにかですれ違いそうだった話を軌道修正して、改めてグループ組んでみたら? と、口添えしたのだ。

 

 笑顔を見せて組む承諾をした篠原がいなくなってから奢ってくれるくらいには池も地味に喜んでいたので、まぁ良い仕事をしたんじゃなかろうか。

 しかし、これだけだとグループ結成条件の女子が1人足りなくなり、近しい関係の奴だと気まずいってことで誰かいないか追加で相談された。

 なので、去年の夏に縁があって僕とアドレス交換した女子連中全員に残り一枠を打診してみた。僕のクラスの女子だとほとんど連絡先を知らず、また知ってる奴もこの頃にはグループが決まっていたからだ。

 

 そしたら、余ってたらしい真鍋が乗ってくれた。

 で、真鍋も篠原も結構強気な女子だったから、見かけた時に雰囲気悪そうだったり揉めてたらフォローに入ろうと思っていたのである。

 これはもう1つ仲介した渡辺・網倉・西野のグループも各々の性格は違えど似た事情だ。こっちのグループはまだここにいないが、これが僕が一応気にかけてる理由である。

 勿論、どちらも本人と龍園に承諾を得ている。西野に関しても、真鍋の承諾時に横にいた石崎経由で龍園から推薦された人物だ。

 

 まぁ、問題なければそれでいい。他に知り合いは、と探してみたら……。

 お? 堀北さんと伊吹さんがいる。そしてその喧嘩?っぽいやり取りを網倉と白波、何故か坂柳さん・神室が仲裁してるな。白波はオロオロしつつ、どこか必死さを見せてるだけだし、坂柳さんと神室に至っては冷めた目で事態の推移を眺めてるが。

 あと、それを近くで松下さん・軽井沢さん…とあとギャルっぽい女子が見ながら何か話してる。

 ふむ……彼女らを全員引っ括めて、ギニュー…『偽乳』特戦隊と名付けよう。別に特筆するほどナイチチじゃない奴もいるけども。

 

……下品な思考はやめよう。大人しくカレー作ってよっと。

 というか、さっきからひたすらじゃがいもの皮を剥き、人参をいちょう切り、玉ねぎに涙していてその余裕が本来はない。

 しかも、僕1人でこの量は無謀だと誰の目にも明らかだったので、朝比奈さん含めた南雲の連れで料理とかの腕に覚えがある者に手伝ってもらっているからだ。数人で手分けして米を炊いたり、僕が切った野菜を炒めたり、大鍋に放り込んだり、煮込んだりと大忙しである。

 

 そんな状態でもこんな冗談が思い浮かんだのは、僕流の社畜版・無量空処の副作用である。

 つまり、いつまでも情報が完結しないのではなく、完結『させる』まで手を動かすって使い方だ。効果は考えなくても作業ができること。副作用は作業しながら変な思考が湧いてしまうこと。

 当然だが、本物なんか使えないので脳が焼ききれるなんてこともない。代わりに自分を対象にできるという社畜なら持っていることもある有用スキルだ。これを応用して料理していた。

 

 僕や他数人が忙しく料理している間、何気に南雲も働いている。

 暇がなくなった僕に代わって、教師やスタッフと調理場や必要な道具を確保する交渉をしたり、暗くなるにつれて続々と戻って来る生徒を集めたり、広い場所での火気使用?の許可をもらったりしていた。キャンプファイアーでもやるつもりだろうか。

 

 と、料理しながら見るとはなしに盛り上がりを眺めていると、愛里・早苗・長谷部の乳デカレンジャーが現れた。

 櫛田と一之瀬、あるいは鬼龍院先輩や七瀬がいれば全員集合だった。代わりといってはなんだけど、朝比奈さんがいるけども。

……ギニュー(偽乳)特戦隊といい、乳デカレンジャーといい、清隆と南雲の悪影響がこんなところまで侵食を(責任転嫁)。今、女子に思考を察知されたら殺されるな、僕。

 

「……夢月君」

「ん、なんだ愛里」

 

 愛里に呼びかけられたが、内心はおくびにも出せない。何か言いたげなので、そっちに全力で乗っかるべきだろう。

 

「その、ね……? 夢月君が料理上手だとね……あの、わたしの女子としてのアイデンティティがクライシスしちゃうっていうかなんというかで……」

「つまり愛里さんは、夢月さんの誕生日くらいは料理を作ってあげたいらしいですよ」

「さっ、早苗さん!?」

「あー、彼氏に手料理ね。自分でさっさと作っちゃう朴念仁相手だとタイミング難しいよね、それ」

「波瑠加ちゃんまで!?」

 

 む、普段なら大歓迎なのだが……。

 

「いや、嬉しいけど今日は僕がやる。動き回った後で疲れてるだろうし、ガス台と違っていきなり火を使うのも危ない。かといって、適当なスペースで刃物使うのもなぁ。怪我したらつまらないし、女子は控えといた方がいいんじゃないか?」

「……」

 

 近くで話を聞きつつ、大きなフライパンで野菜を炒めてた朝比奈さんが、何か言いたげに僕を見つめてきたがなんだというのか。

 

「料理男子ってモテるらしいしね。はぐりんもアピールを欠かしたくないのかな?」

「モテる……だと? 自分で作った方が効率良いってだけだったが、もしや愛里と付き合えたのは料理も要因の一つだった? これは、いっそう美味い飯を作って愛里を惚れさせなくては!」

「……話が変わってますよ、夢月さん」

「まともに見える時もあるけど、やっぱりはぐりんってどこかズレてるよねぇ」

「外野から失礼するけど、私も残念に思うよ。雅をやり込めたりとかもできるのに、なんで左京君はこうも極端なのか……」

 

 まったく失敬な女性陣だ。

 愛里は、悪気や邪悪さ、計算を感じないから気持ちが空回りしてるだろうことくらいわかっている。

 でも、髪を括ってポニテールにしてる朝比奈さんと旅行前に短めに切ったばかりで普段から料理してる早苗はともかく、ここまで長い髪の愛里と長谷部に火を扱わせるのは怖い。

 

「ふん。キャンプで火を使う料理するなら、せめて今の早苗くらいの長さの髪にしてから出直してこい。そんな綺麗にしてる髪が酷いことになったら損失でしかないだろが」

「綺麗な髪……」

「あら。私は合格ですか。まぁ、さり気ない変化に気づいていた夢月さんには、女子力も私の次くらいに高いと評価してあげましょう!」

「偉そうにしてまぁ。てか、女子力なんか僕にはないし、元から早苗に心配もない。一部の分野以外はな」

「いつも一言余計なんですよ、夢月さんは!」

 

 それに、正直なところ。

 クソ暑い中で1人だけ涼やかにしてる早苗の珍しいうなじやら、疲れのせいか気だるい雰囲気ながら大きな胸を突き出す長谷部やら、火を使ってる関係で大汗を流して色っぽさのある朝比奈さんやらも、僕的には十二分にヤバいのだが。

 

───いつもの伊達眼鏡を外して髪を下ろしたアイドルスタイルともまた微妙に違う愛里が可愛いすぎてヤバい。してる時とのいわゆるギャップ的なモノがものすごくヤバい(語彙崩壊)。

 

 性欲が暴走しない初日じゃなかったら、この面子に囲まれるだけで気が気じゃなかったかもしれない。できなくなる旅行前に性欲が強くなる傾向にある愛里に、限界近くまで絞られててよかった。これなら、あと数日は効果あるだろう。

 想定通りに下半身の反応を抑えられていることに内心胸を撫で下ろしながら会話してると、その愛里が突然持ち上げてきた。

 

「そ、そういえば夢月君。少し雰囲気変わった?」

「は? 僕がか?」

「う~ん、なんとなくだけど。いつもより自信ありげで頼もしく見えるし、背筋も伸ばして男らしいっっていうか……」

「そう、なのか……?」

 

 お世辞とかでないにしても自覚はないし、それ系のモノをどこかで拾ってたのだろうか? 落ちてた場所とかに心当たりは……ないな。南雲も雰囲気はイケメンじゃないし、奴をラーニングした影響でもないだろう。

 なら、夏のシチュエーション的な効能による愛里の気のせいか恋人の贔屓目ってヤツかもしれない。

 

 そんな状態だからか愛里に褒められ?て、ふと物思いに耽ってしまった。

 その物思いの隙をいまだによくわからない性格の長谷部は見逃さない。からかうようなニヤニヤ笑いで、言わずもがなな事を口に出す。

 

「なに、はぐりん。上目遣いで頬を染める愛里の笑顔にやられた?」

「それは出会ってからずっとだ。愛里の笑顔はいつだって可愛いだろう。僕の大好きだと思えるモノは変わら……」

「可愛っ、かわわわ!」

「わー、ストレートだよねぇ、左京君って」

「しまった。墓穴を掘った…というか、ならなんなの?」

 

 素直に答えると顔をしかめた長谷部が話を変えたので、僕も直前に考えたことを口に出しかける。尤も、おしゃべり好きな女子達の連携で途中から遮られたが。

 しかたないので、あえて長谷部以外はスルーして思うところを述べてみた。

 

「いや、それとは別にふと思ったんだがな。

 せっかく彼女の手料理を食べられる機会に、カウンターのごとき返しとして自分の料理を振る舞おうとしてさ。女子力じゃないにしろ、女子に囲まれた中で普通に会話を可能としてるわけじゃん、僕って。つまり、コミュ力がこのままの調子で高まっていけばだよ? 僕はまるで陽キャのように生まれ変わってパリピ生活を送り……無理を続けた結果、今の僕の残骸にも等しくなった存在に堕ちるのではなかろうか。

 そんな僕は、はたして本当に左京夢月と言えるのだろうか、と想像してしまってな」

「なんかナナメ上すぎる回答が来た!?」

「さ、左京君? 哲学…じゃないよね、これ」

「いや、無理でしょう。夢月さんがパリピとか想像できませんよ」

 

 しかし、どうも女性陣の想定とは外れた答えを返してしまったようで、一気に妙な雰囲気になった。話し声は遠くのものだけとなり、料理する音や火がパチパチ鳴らす環境音が大勢を占めている。

 それでも僕は、長谷部、朝比奈さん、早苗の呼びかけをスルーして語り続けた。

 

 あと関係ないけど、愛里はさっきから壊れたテープレコーダーのようになってて、沈黙?を保っている。

 アレだけ色々やってるのに、なんでか思ったまま可愛いとか褒めると動揺したりするのはなんなのか。女心とやらの複雑怪奇なシステムを理解するには、いまだに越えるべきハードルや謎は多い。

 まぁ、それはそれとして言いかけた懸念に話を戻す。

 

「料理の味も評判も悪くないっぽいし、モテはするのかもしれないが……。そんなさ。ともすれば自分が消失してしまうような茫漠たる不安が脳裏をよぎってきたんだ。人がいっぱいいる所に長居しすぎたのかもしれない」

「夢月さん、変なところで急に揺らがないでください。ほら、みんなどうしていいかわからなくなったじゃないですか」

 

 揺らいでる? 僕が?

 早苗の指摘に空気を読むモードに自分を切り替えてると、柔らかな感触と暖かい言葉がかけられた。

 

「……夢月君、落ち着いて? 賑やかで華やかな雰囲気で精神が不安定なのはわかったから、少し落ち着いて。後で一緒にゆっくりしよ?」

「……うん。ありがとう愛里」

 

 我に返った愛里だ。

 煙の匂いが付いてしまうのも厭わず、思わず手を止めた僕を後ろから抱きしめて心を静めてくれた愛里に感謝を。

 下手するとこれから2週間会えないかもしれないし、アイリニウム補充はありがたい。

 

 でも手は止めてても、包丁持ってる奴に抱きつくのは危ないから次は止めてな。

 それと、なにより調理場であるがゆえに……とても暑い。いや、もはや熱い。地味に愛里が鼻をスンスンしてるのもあって、煙や汗の匂いが気になってしかたないレベル。

 贅沢な話かもだけど、こういうのは涼しい室内とかでしてほしい。

 

「でも夢月さんって、ハーレムとか憧れてましたし、モテたいんじゃなかったんですか?」

「それはそう。だが、現実の僕には無理だと悟った。想像だけでも精神への負荷が大きすぎると愛里と付き合って確信した。性欲だけの関係ならまだしも、頑張って目移りして本格的にってなると予想される面倒事が多すぎるから」

「…………やっぱ一味も二味も違うわ、はぐりん。何気に愛里と早苗以外はほとんど眼中にないとか……」

 

 結局、僕は手と足を動かしてカレーを作りながら、時々この場に留まった女性陣の話に混ざりつつ、自分の悟りを整理することに努めた。

 そして心の整理がひと段落着いたあたりで―――。

 

 

 

 空が夕暮れの紅から青へと移り変わる頃、スタート地点がここまで賑やかになった要因の1人が帰還を果たした。

 立てばシャンプー、座ればダクネス、歩く姿は御坂美琴な本日の主役たる一之瀬帆波である。

 

 僕の彼女へのイメージがいかに混沌としているかわかるラインナップの喩えだろう。

 らんまにこのすば、とあるシリーズだぞ? まぁ、御坂美琴は白波千尋と白井黒子の類似点による影響かもだが。自分で思い浮かべてなんだけど、それ抜いてもわけわかんねぇよ、マジで。

 

 ああ、一之瀬が主役なのは7月20日の今日が彼女の誕生日だからだ。ゆえに僕のクラスメイトほぼ全員が結託して集結し、お祝いムードで盛り上がっている。知らせてなかったのか本人は困惑してたが、じきに雰囲気に釣られるだろう。

 少し意外なのは、1年も何人か混ざってることだ。知って奴だと波田野と宇都宮、それに彼らの周りにいる知らない奴らはまだしも、宝泉が来ている。

 南雲といい、異質な存在に好かれる奴だ。御愁傷様である。

 

 つまり、南雲達が色々動いてるのは、ここに来るまでの僕との雑談で今夜の宴会を知ったからだ。そしたら、なんか張り切って宴会準備をやりだした。

 まぁ、わからなくもない。僕だって七瀬の入学祝いを盛大に執り行ったものだ。年下に格好良いところを見せたいのだろう。

 

「計算通り。馬車馬のごとく働け、南雲雅よ。ふはははっ」

 

 って呟いてニヤリと笑ってたら、近くで野菜を鍋で煮ていた朝比奈さんから軽く叩かれた。ごめんなさい。

 ちなみに一之瀬の誕生祝いにしたのは白波だけど、宴会自体は僕の発案だったりする。バースディケーキもジャズ喫茶のマスターから教師経由で、葛城が後から持ってくる手筈となっていた。生徒会役員じゃないと船着き場の近くに行けなかったので、これまたマスター経由で頼んでおいたのだ。

 

 下船前にあらかじめ根回しをしていた僕に隙はない。いつの間にか一之瀬のケーキみたくなってるけども。

 そう、カレーに誰も釣られなかった場合に備えて、明言しないまま自分で用意していた『僕の』誕生日祝いが、完全に同日誕生日の一之瀬に乗っ取られたことは知られざる秘密である。

 自覚の有無に関わらず、もはやあの明るい場所にいる誰もが僕のケーキを一之瀬へ捧げることに疑問を抱いてないだろうしな。

 

 なんでここにケーキがあるのって疑問を。「Happy Birthday to me」って一之瀬だとすればおかしい不自然(独り誕生日を想定した自分への言葉とか一之瀬には絶対やらないだろ)を……畜生、人気者め。

 

 今回の一之瀬は悪くないけど! 主にジャズ喫茶のマスターと僕が話してた内容を知った白波が、柴田と南雲が話してるところでケーキの手配した件をぶちまけたのが悪いけど! ケーキのスポンジも5号サイズの2~4人用なんて不自然だと確信するレベルだと思うけど! 南雲と朝比奈さんにはさっきの借りがあるから強く言えないけど!

 

 もう白波と柴田、南雲会長から、って大々的に伝えられちゃってるし、葛城も南雲に言われてケーキを一之瀬へ捧げてしまった。一之瀬本人も誰か探してるかのようにキョロキョロしつつ戸惑い気味だが、トータルでは嬉しそうだ。

 

 悔しさや妬みがないとは言わないし、一之瀬ファンクラブの奴らのポイント稼ぎに僕のケーキが使われたと考えると業腹だが、僕のぶんは諦めるほかない。まさかあそこへ割り込んで自分へのハッピーバースデーを諳じ、ケーキ奪還を実行するほど空気読めなくない。諦めが肝心なのだ。

 

 なにより、精神は大人なのにケーキ1つで駄々こねるなんてみっともない。僕は「んんんんー、許るさーん!」とかどこぞの某ギース様みたいなことは言わないのだ。ちなみに『る』が1つ多いが誤字にあらず。元ネタ通りである。

 ここは一之瀬という美少女級長のために陰ながらケーキを用意し、振る舞ったということで脳内を改竄するのが得策か。

 

 まぁ少し後の話だが、キャンプファイアーに南雲が着火して盛り上がる一之瀬達の輪から離れて、天文部の部員や関係者(宝泉も)は僕もついでに祝ってくれたからいいんだけどね。そこまでケーキが食いたかったわけでも……な、ないし!

 策士策に溺れるとはこのことか。一之瀬達が楽しんでる以上、水を差すのは無粋だし、幸いなことである。幸いなことなのである(二度目)!

 

 んんっ、コホン。僕らしくなく取り乱した。切り替えよう。

 ここは四方が無人島滞在中ずっと生活するテントを挟んだ裏スペース。

 南雲が築いたモノからだいぶダウングレードしたキャンプファイアー的な焚き火を円状に囲むように敷いたシートに、それぞれの荷物などを背もたれや枕にして、ポツリポツリと静かめな会話をしながら夜を過ごしている僕達がいる。

 

「煽りを控えた夢月さんは、カレーのないカレーライスだということです!」

「カレーのない……って、それはもしやただのライスなのでは? 何を付けても美味しい最高の主食ってことか。そこまで早苗に褒められると流石に照れるな」

「な、なんてこと……! 例えを間違えたことで褒め言葉に仕上げてしまった!?」

「ふっ、ありがとう早苗。君もライスに乗っけられるカレーの如き精進をしたまえよ」

「む、むむむー。この私がカレー……? グリーンカレーというやつですか」

「わかるわかるー。めっちゃ辛口ってことだよねっ! せちがらーい!」

「お前らはなにを言ってるんだ……」

 

 バースディケーキを諦めた事で、陽キャ共の群がる場所へ出向く理由もなくなった僕。

 ここで最初は早苗と普段と同じように駄弁っていたのだが、四方から早苗に話があるとのことで愛里を連れて元の席へ戻った。

 

 自然の真っ只中で両隣に愛里と月城さん、いつの間にかぬるっといた椿という下級生のいる非日常な席だ。それからは、珍しい面子と星座やゲーム、アウトドア系の話をしていた。

 ゲームの話は、どこで聞き付けたのか椿が以前に僕が自作した『小東方高育桜』の話題を出してきたからだ。

 

「自作ゲームのタイトルにするなんて、左京先輩は“桜”が好きなの?」

「あー。そう見えるかもしれないし、実際に桜は好きな方だけど、ここにいる僕の彼女の名字が佐倉でな。その響きをもじって桜って付けたんだ」

「桜ってそういう……。ゲームには関係ないの?」

「いや、関係はあるよ。桜満開なステージとかな。ただ、愛里の名前呼びじゃなかった頃の名残みたいなものもあるってだけ」

 

 そう言って僕は背後から声をかけてきた椿にわかるように、佐倉愛里の方へ掌を向ける。

 椿と月城さんに目を向けられ、愛里は安定の人見知りを発症させているようだ。特に落ち込んでるとかでなければ、目を伏せた彼女もまたいいものである。

 

「……なるほど。偶然の一致とは面白いね」

「偶然?」

「私のフルネームは椿桜子っていうの」

「へぇ。サクラ違いか。だから桜に反応してたんだ。てか、ゲームに興味あるなら、一度やってみる? 学校に帰ったらいつでもあげるけど」

「そうだね。どんなものか興味が湧いてきたよ。お願いしてもいい?」

「もちろん。地味に何度かアップデートしてるから、当初のバージョンと一緒に渡すよ。代わりに……」

「ふふっ、いいよ。『彼』に関しては私も協力できることがあると思うから」

 

 そして最初に名前を呼びかけられた以外、実は椿と話したのはこれだけだ。

 内容はかろうじて理解できたものの話し終わっても謎にその場に残ったままで、話の飛び方も含めると椿も天才の部類なのかもしれない。

 

 ただ、基本ダウナーな姫野と初期の早苗の無口さを合成したような女子だったので、僕も普通に話せた。いきなり話しかけられた時はギャルっぽい外見にビクッとしたけども。

 ところで月城さんの真横で、そんな堂々とぶっ込むのはいいのだろうか? 一応ふんわり決定的な部分だけは伏せてたものの、椿は肝の据わった女子である。

 

 あとその月城さんは、この椿との会話を聞いてなかったかのようにサラリと流し、色々ためになる僕も知らないサバイバル知識を教えてくれた。

 聞くところによるとボーイスカウトの経験があるらしく、この無人島でも空き時間に島の各地を司馬先生と“散策”してみるようだ。思い返すと、以前に話した時もボーイスカウトの敬礼してたし、意外と多趣味なのかもしれない。

 

 それにしても、陽の者がキャンプファイアー周りでパリピなライフを満喫する一方、僕達は客観視点だと陰の者ひしめく混沌とした人材の坩堝のようだった。

 何人かがもらってきた魚を中心に、余った肉や野菜で木工細工の課題で集めておいたチップを使って燻製にしてもいるので、煙や匂いも相まって余計に怪しい雰囲気である。でも燻製は明日からの保存食代わりにもなるので、できるだけ作ってみんなに分けておくのが親切だろう。

 

 しかし、明るい向こうの大多数より豪華な食事…カレーやスイカを食してはいるが、人の集まりをスルーしてる時点で色々終わっているかもしれない。まぁ、これはこれで落ち着くし、楽しいが。

 それに主に僕と話した月城さんはもちろん、司馬先生や東山先生もお忙しい中で来てくれて、生徒に混じって話している。カレーやスイカに誘ったお礼も言われたし、如才ないことだ。

 そんな僕達は無人島の夜空を思い思いに眺める時間を過ごすのだった。

 

 なんであれ、愛里、僕、月城さん、椿、椎名、伊吹、清隆、櫛田、天文部兼水泳部の顧問である東山先生、鬼龍院先輩、石上君、戸塚、森下(だっけ? こいつはよく知らん)、長谷部、三宅、司馬先生、天沢、早苗、四方(僕の両隣から時計回りに座ってる順)。

 ついでに、そもそもこの場にいなかった高円寺と龍園。高円寺はわからないが、栄一郎によると龍園はここから離れた地点で夜を明かすらしい。彼らも僕的には仲間枠なのを忘れてはならない。

 

 そして顔を出した宝泉に、ちょい抜けしてきた生徒会関係の栄一郎、七瀬、葛城に、一之瀬と南雲・朝比奈さんも加えて……いや? キャンプファイアーの主催である南雲と、誕生日の主役である一之瀬は抜けたら駄目だろ。なに普通にこっち来てるんだコイツら。柴田や白波、桐山とかの慌てた声が聞こえるんだが、ケーキあげたんだし各々の役割を果たせや。

 

……まぁ細かいことはいいか。

 要点は、急遽南雲が開催した華やかなキャンプファイアーではなく、こちらを選択した者の名を胸に刻み、感謝して僕は忘れないことだろう。

 特に誕生日プレゼントってことで、課題による合作の麦わら帽子をくれた愛里と早苗。 

 さて、最後に麦わら帽子から連想したワンピースに因んで。また無事にみんな集う再会の願いを込めて。

 はい、みなさんご一緒に。

 

───2週間後、この無人島のスタート地点で!

 

 大小2種のキャンプファイアーが燃え盛る片方の傍らで、大多数に混じれない僕達に祝福を!




 無人島サバイバルのリザルト1。
 左京夢月グループ(半リタイアの四方との2人組)の初日終了時点での成果は27点。
 ちなみに原作綾小路の初日は3点で、七瀬・宝泉・天沢のグループが13点(途中)。これを考えると少し取りすぎに見えるかもですが、一応すでにふんわり開示している理由はあります。

 あと龍園は本当にいませんが、高円寺はこの場に姿がないだけでカレーとスイカを2人分持っていった王美羽(みーちゃん)と一緒に四方のテントの前側(後側が夢月達)で夕食を共にしています。
 もちろん、夢月含む何人かは気づいて邪魔しないようにしてたり。
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