誤字報告ありがとうございました。
無人島10~12日目。
はたして左京夢月は孤独と孤高のどちらに近いのか。1人なのを苦にしないボッチ気質なのは間違いないと考えているのですが。
無人島10日目の朝6時半。
僕は気が向いたので、出発前に上位10組を見て現状整理をすることにした。
1位、2年高円寺グループ・240点
2位、2年左京グループ232点
3位、3年南雲グループ203点
4位、3年桐山グループ150点
5位、1年宝泉グループ145点
6位、2年龍園グループ143点
7位、2年綾小路グループ140点
8位、3年溝江グループ133点
8位、3年落合グループ133点
10位、1年石上グループ128点
……いや、清隆。なにやってんだアイツ。
昨日3年生の会話を聞いた時は10位だったらしいが、どうやってこんなに稼いだんだ。最低でも40得点くらいは昨日1日で稼いだっぽいんだが。
清隆のことだから無理せず動いたんだろうけど、短期間でどんだけごぼう抜きしてんだよ。奴の言う平穏とはなんだったのか。誰よりも波乱と意味不明に満ちた不審極まる破竹の勢いだ。
なんかの要因でテンション上がってるとかそういう事情? 四方に似て、意外と勢いで動くこともあるからなぁ、清隆。
ま、清隆についてはまぁいいが、上位ランキングが見えなくなる13日目が目安かな。その前に、南雲の猛追というか予定調和なもう1つの破竹の勢いが発生するはずだ。
南雲本人が言ってた通りなら明日の11日目が終わる前後には、おそらく封殺と大量得点の伏せ手が発動する。性格上、自分で逆転して嘲笑う方が好きそうだからな。
南雲雅、奴の最も好きなことは勝ちを確信してる奴に敗北を叩きつけてやることだ……! とか考えてそうなイイ性格してるしな…おや? なんかどこかで聞いたような? ま、気のせいか。
僕が想定するに、ドベになっても構わないグループをいくつか用意して、情報を把握すると同時に3年生以外の上位を妨害しまくる。そして、素直に他学年が伸び悩むならよし。そうでなくても大丈夫なように、自分や上位にしておきたいグループが大量得点できる課題の傾向を絞っておく。
発言を素直に解釈すると、そこのピークがラスト3日だと読んでいると見た。
ただ、十中八九、現状は『3年生』の想定とは大きく違う。圧倒的な大差で3年生が上位を独占できる構想を南雲は打ち出していただろう。昨日の南雲達のやり取りからして。
良くも悪くも南雲がどう判断し、どう動くかが分岐点になるはずだ。
あと特筆すべきは龍園グループか。
元々は龍園と栄一郎の2人グループ…だったが、ここは一之瀬もいる各クラスのトップ女子を揃えたグループに参入して6人グループになっている。一時的に平均得点となって順位を下げたものの、櫛田が『増員』カード枠なので、あと1人の加入枠を残して(当然、すでに枠は獲得済み)急激に得点を上げてきた。
南雲とは違う形の統率力を十全に活かすつもりだろう。
指定エリアではなく、課題重視でな。なんせ知力は高いが半リタイアの坂柳さんと運動音痴極まる椎名がいる。学科を多めに得点を稼ぐ戦術のはずだ。
だから体力方面をカバーできる人材を引き入れると思っていた。龍園が勝ちを狙わず、ここに協力するのは意外だったが。
あと、おそらく残りの加入枠は、まだ近そうな得点差の単独グループ…清隆か、そうでなければ櫛田の説得とかして平均能力値の高い堀北さんあたりに打診してるかもしれない。
ただ、少なくとも清隆は加入の話を断った可能性が高い。なぜなら、清隆も僕と同じく『試験自体は』重視していないからだ。でなければ清隆が持っていた『試練』カードを、無人島前に他人へ…僕に渡してきたりはしない。清隆が見ているモノは、もっと先だろう。
そして単独ではありえないこの上昇幅から『その先』を考えると、僕を保険として利用する算段で、得点は副産物的な側面が強いと思われる。
この渡された『試練』カードのデメリットのせいで、僕は1日にそこそこ稼ぐ必要ができたものの、乗り切るだけならもう躍起になる必要はないはずだ。上位30%に入れる得点はあると思われるからな。
あと、もう一方の天沢と組んでいる宝泉・七瀬のグループが上位に登ってきたのも裏付けの1つだ。計算か運か、なんらかの効率的に目的達成させる手段を稼ぐことにも応用した、と考えれば僕としては話が繋がってくる。
こちらは天沢や椿に打っておいた保険で、失格になった八神の属する1年生の主力グループと思われた宇都宮グループが浮上できなくなった(着順ボーナスはリタイア者がいるグループでは貰えないため)から、急遽主力が変更されたのではなかろうか。
それが石上君のグループになるか、宝泉・天沢・七瀬のグループになるかはわからなかったものの、そうなる道筋は最低限根回ししておいたつもりだ。だから、ここのどちらかのグループも合流の目はあるかもしれない。
あの時は確定しておらず理由あってとはいえ、八神を失格させて1年生の主力グループが上位になる目をほぼ潰したのは僕だからな。補填も僕の不都合が許容範囲を越えないレベルで用意しておくさ。
主なモノをまとめると。
・高円寺や清隆の単独戦術(彼らの性質はかなり違うが)。
・南雲達3年生の少数精鋭と人海戦術を使い分けた制圧『戦略』。
・龍園グループ筆頭の2年生による統率と策略を軸にした課題攻略を主とした正統派?戦術。
・宝泉グループ・石上グループなど1年生の攻撃的博打戦術。
ってことは、逆説的に八神捕縛に積極的だった椿が、もう1人の何かしらの『真実』を握る者だった可能性も高くなるかな。
石上君のグループが無理に上位に入ってきたのと対照的だ。あれだけの頭の回転を持ちながらここで名前が上がってこないなら、椿の目的は試験や学校にはなさそうなので。
まぁ、まだ確定できないし、確定しても僕に関係なさそうだから放っておくけども。
上位と下位それぞれの10組から全体の現状を大雑把に読むと、だいたいこんな感じか。
ふっ、この世の全て(過言)を把握してしまっ……ワンピースとはこの島に存在したのか。
ということは、僕が今いるこの名も知らぬ無人島はラフテル……?
なんということだ、期せずして海賊王に僕がなってしまうとは。自ら王を名乗ってた過去の龍園、すまんな。これからは僕を王として奉ってくれたまえよ、ジョイ…ドラゴンボーイ。
冗談はほどほどにしておこう。
これらの推測を踏まえて、再確認がてら僕の目的を微調整。
まず大前提として、僕自身が失格になるのは勿論、下位すぎる順位にならないこと。しかし、今となってはこれはそう難しくない。10日目までに200得点オーバー、日に平均20得点のラインはすでに越えている。
上位1位を狙うとか欲をかかなければ四方が僕の結果の巻き添えになったり、参加できない負い目を感じるような状態にはもうならないはずだ。
次に清隆、というかホワイトルーム関係。
こちらも、八神のリタイア前後から急上昇した清隆の得点から察するに、おそらく清隆は月城さんの用意している最終地点を読みきっている。そしてそれは先日の月城さんと話した感じ、ほぼ正解だ。
急上昇の理由は、ホワイトルームとやらでは『学べない』知識系統の必要な試しが、だいたい履修できたと判断して合流を視野に入れたのだろう。人数追加の枠も2つ増やしていた、と堀北さんが昨日漏らしていた。
つまり、清隆と月城さんのXdayは順位が見られなくなる13日目~最終日あたり。
どんなモノを用意したかはわからないが、物騒な匂いを発してることから考えて僕に手出しできる類いではない。鬼龍院先輩に清隆への援軍は頼んでおいたけど、これが精一杯だろう。多分、指示に従ってなかったと思われる上に、立場が不確定な天沢も月城さんに削られてしまうだろうし、これ以上は僕の想像を超える。
ゆえに、あっちの身内?のアレコレは清隆と月城さんを信じて待つのが最善である。
ついでに、得点の上昇幅からも想定を広げると、『椿(清隆は名前を特定しないかもしれないが)』の策略を見抜いて3年生をも巻き込みつつ、駒を操るように2年生にガードの手配までさせてる気がする。2年生に関しては、やり方からしておそらく龍園か坂柳さんあたりと取り引きしたのではなかろうか。
例えば、清隆を中心とした3学年の三つ巴戦術、かな?
外から見てるからいいが、相変わらず怖い手を打つ奴だ。何故僕はこんな危ないのと友達になってしまったのか。
ちなみに僕の現在の目的は、八神への断罪ごっこを含めた僕と四方の保身。清隆とその周辺への根回し。ときて、最後の目的は高円寺への支援の3つだ。
正直、悪いとも思ってるが、僕が高円寺に受けた恩を返すなら今が好機なのだ。クラスにかかる迷惑を許容範囲に抑えつつ、他クラスの高円寺に大きな借りを返すにはここしかない、と。
花見で話した高円寺曰く「偽りなき恩を受けたと感じれば、それを返すのは当然と考えている」らしいが、これは僕も同感である。だから、あると役立ちそうな南雲を見極めるための材料や無人島前のバスケに巻き込んで、高円寺に対する悪感情を緩和する恩返しを僕は『勝手に』やっていた。
うんまぁ、流石に伝わるわけねーよってたかをくくってたら、昨日会った時に本人から指摘されて悟ったよね。天才を常識で測る愚かさを。
直球で指摘されたわけじゃないが、男を手助け云々言っていた高円寺が意見を変えてアスレチック課題に乗り気になったのは、これも一因だと思う。あと南雲が3年を押さえる方向に舵を切ると美しくないってのもあるかもな。
じゃなければ、高円寺といえど手抜きできない南雲が参加する上に、怪我のリスクもあったあの課題は普通にスルーするつもりだったはずだ。なんせ南雲が勝負とやらに集中できるようにするフォロー要素まであったからな。
つまり僕の勝手な誠意に、正面から誠意を返してくれたってこと。ここまでされて、天才の気まぐれとかで流すなど男が廃るってものだ。
……話を戻そう。
ともあれ、3つの目的をおおよそ達成する道筋は何通りかあった。
龍園と栄一郎、もしくは葛城・戸塚や神崎達に守ってもらったり、四方と一之瀬、坂柳さんなどの手を借りて他学年に対抗するなんてのもある。要は他人や状況・運に頼るプランか。
ただ、これから僕が取ろうと考えているのは、誰にも捕捉されないよう立ち回るだけという自分のみでも達成可能なお手軽プランだ。
時が来るまで、日に20得点…最低10得点を目安に指定エリアの着順ボーナスを主に稼ぎ、誰かと遭遇しそうなら逃走。何人か遭遇した奴らの例を思い出すまでもなく、僕が捕捉されるとしたら天才級の奴くらいだと思う。
これまでの無人島サバイバル(単独時)と変わらない動きをしていればいい上、僕の所持得点でこの動きをすれば、多少は清隆と高円寺への妨害を分散させられる。清隆関係のアレコレもそれほど邪魔しない。なにより重要なことは、僕は楽ができるという点。
三方良しで最高か?
言うまでもなく、最後の理由がこのお手軽プラン最大の売りである。
どれだけの人数が何処へ動員されるかはわからないが、身を隠し逃げに徹することにかけては僕を優越する高校生などいないと信じている。なんせ上司に声をかけられないようステルスし、さりげなく場から離脱する経験とボッチの固有スキルは文字通り年季が違う。更にはこの学校で培った数々の逃走方法まで保有している。
これらを材料に目的達成をそれなりに両立させるなら……よし、似合わないが捕まるまではロビンソン・クルーソー&ランボーで行こう。
何故こうなったか自分でもわからないが、残り日数はロビンソン・クルーソー気分で島の植生レポート作成に全力を傾けるが吉と見た。
もし誰にも捕まらなくとも、ほとぼりが冷めたらサラッと誰かに合流すれば完璧だ。
……まぁ、所詮は僕の浅知恵なので全て上手くはいかないだろうけども。
ということで、僕は10日目から物音や気配を感じるか勘が反応したら即座に隠れ、隙あらば逃げる無人島生活を送るようになったのだが、岩の割れ目に突っ張って隠れていた時のことだ。
「ま、またいない……!」
「GPSサーチはたしかにこの近辺を示してるのに!」
「があああっ! マジではぐれメタルかよ!? 点数消費してサーチ連打しても見つけられるか半々で、発見してもすぐ逃げるってなんなんだアイツはぁ!!」
夕暮れに差し掛かり始めた自然の色を眺めつつ待機する僕の頭上から、数人の声が聞こえる。なんかやけに色んな奴に僕は追いかけ回されていた。
そう、4ヶ所の指定エリアを周回するだけの簡単なことだと考えてたのに、この日はこれで5組目なのだ。ちなみに同一グループの重複を数えれば8組目である。
こんなの僕のデータにないぞ……!? データというより想定だが。
くっ、計算外だ。どこの学年か知らんが、僕なんかを追う暇人がこんなにいるとはな。高円寺は大丈夫だろうか。
でも、それだけあっちは人数が減少してるかもしれないし、僕に引き付けられるなら悪くはないか。
しかたない。少しでも見つかりにくくなるように、ちょっと今夜は崖の影にツェルトを引っかけて寝る挑戦をしてみるか。落ちたら痛いに決まってるし、怖いからなるべく低めにズラした位置で。意味あるかわからないけど腕時計とタブレット、それにトランシーバーを重ねて、と。
桐山や三木谷達3年生が僕の行水を邪魔しに来た時に気づいたのだが、GPSサーチは高低差があるか、あるいは岩場とか密集してたりすると微妙な電磁波が干渉するためか、特定の位置や条件だとズレるようだ。
あと港も、かな。実験で試しに高所でGPSサーチを使ってみたら少し位置ズレが発生しており、電子機器や金属類が多いのが理由か四方の位置も海にはみ出していた。
実は学校支給の端末にも似たようなGPS機能があり、通知をONにしていると電話番号を交換している相手に位置がまるわかりなのだ。なので、学内で追われた時も逆用して撹乱していた。
よって、同じような欠点があると予想していたらビンゴ。今も追手を撒くのに重宝している。
まぁ、思考力か洞察力に優れた奴が気づくまでだろうけど、そういう奴で島を自由に動ける奴は限られている。僕に構いすぎる悪手は打たないだろう。
そして新たにわかったこともある。
1年生が追手に加わってることだ。つまり『清隆への』妨害はかなり分散してると見て大丈夫だ。
パッと見は1年生が清隆、3年生が高円寺、2年生含む全学年の少数は……何故か僕を探してるっぽい。
よくわからん。わからんが、清隆にしろ高円寺にしろ、全ての余剰人員を割くことはできない。意思の統一を分散させる誘導をしてきたのが多少でも効果があったのではなかろうか。
ともあれ、南雲以外はなんとかなる目が出てきた。清隆も高円寺も集中的に狙われなければ、アイツら自身でどうとでもするはずだ。
というわけで、無人島サバイバルの10~11日目(上位・下位10組が表示される最終日を除き)の僕は、誰とも接することなくボッチで過ごした。
時折、追っ手のような奴らを撒くのに手こずりはしたものの、目撃程度までに抑えることができた。
当然、指定エリアだけは毎回踏んで得点を獲得するのも忘れない。生存報告代わりである。
点さえ増えてれば僕が無事な証拠になるので、指定エリア予測であらかじめ付近に潜伏し、時間になったら踏んで即離脱。勿論、決して無理はしない。
ここまでデータが揃ってくれば、休憩を充分に取っても高確率で着順ボーナス1位も狙える。
実際、追い回されて時間を浪費しすぎた時以外は、このやり方で着順ボーナスを得られたから間違いではないだろう。
また移動の際も、生徒が通って道っぽくなってるルートを避け、道なき道のみを選定して進むよう徹底した。食料は最後までもつよう用意したし、水も携帯浄水器で事足りる。
植生レポートや天体観測も順調に進み、植生レポートについては島全域を大雑把に網羅する出来だ。
11日目の夜に見た上位10組も想定通りに僕と高円寺と…南雲グループが1位~3位を争ってる。ちなみに僕は一応この時点で3位だが、1位の高円寺とは4点しか差がない。なんなら“4位”の清隆とも30点差。そして上位10組も50~80点くらい。
200点後半は上位4組だけだが、点数の上昇幅から考えてこのままだと南雲には確実に突き放される。本気で点数獲得だけに南雲が動けば最終的に400点越えもありえる。清隆は意味わからないから放置決定だけども。
あと何気に、1年代表なのか宝泉と石上君のグループが合流して7人グループができていた。そして2年代表とも言える龍園と一之瀬の7人グループや、桐山のいる3年の6人グループと抜きつ抜かれつのデッドヒートを繰り広げている。
これなら高円寺や清隆への妨害はかなり減少するだろう。
なんにしろ、3日目あたりから妨害や独占への事前対策を打ってきた保険は無駄にならなかった。
多分、僕関係なく、坂柳さんや椿あたりが人を操ってるのが大きいだろうが、天沢と龍園というキーマンを動かせた要因である八神には、意趣返しが過去のモノとなった今となってはホント感謝しかない。
それと八神の断罪ごっこのキーマンと見せかけて、南雲対策を押し付けちゃった龍園達にはホント悪い。気づいてるか知らんけど。
いやまぁ、僕のグループ順位だけは計算外にも程があるから、『清隆』にも無駄な頑張りをさせたしな。これも足を引っ張り合う奴らが多すぎたせいだ(責任転嫁)。仲良くやってくれ。
だが、ふっ───ふはははっ! 我こそは岩窟王・左京夢月!
岩窟王と僕に共通点はないけど、岩場かその付近で寝泊まりしてたことが多いので過言ではない。それに策を弄した小細工をリスペクトしているって意味である。
強い者が勝つのではない!
勝った者こそが強いのだ!
策略はブレインだぜ!
なんちて。この点を踏まえると、目的を達成させる気はあっても勝つ気がない僕は、やはりありふれた普通の凡人である証明ができたな。
しかし、高円寺達とのアスレチックなどで消耗した体力は回復・温存できて、これなら最後まで走りきれる。
あとは策など必要ない。
予定外がここから更に重ならなければ、なんとかなるだろう。いつか誰かが言ってたケセラセラってヤツだ。
さて、そろそろ狩るか…♠️
じゃなくて、そろそろ寝るか。もう僕を追う奴は少なくなっただろうしね。まだ朝だけど、目の前に出現した指定エリアを踏んだら、ボチボチ行こうか。
では、それまでおやすみなさい。
しかし12日目は…なんというか雰囲気がそれまでと違った。勘が変に反応してくる。
まず、朝に寝てた崖で目を覚ました瞬間に気づいたのだが、僕への追手が残らず消えた。ただ、これは無駄だと悟ったのもあり、稼ぎを優先する方がまだ建設的だからでもあるんじゃなかろうか。
そして12日目の指定エリア1回目からランダム指定で、H3に飛ばされる。明らかに今までの指定エリアのアルゴリズムとは全く別物だ。勿論、その朝はE5にいた僕は予想を外し、急いで向かった。
また朝に断言はできないが、課題も多くが島の北側に集中し、残りも西側でしか出現しない。結果、南や東は課題の『ほぼ』ない空白地帯同然だ。
夕方頃まで順調に北方に出現し続けた指定エリアを回ってから試しに1点消費してGPSサーチをすると、ほとんどの反応が北と西に集中していた。
ということはつまり、これは月城さんのあからさまなサインだろう。
僕には何をするかも明確な場所も予想しかできないが、島中央の山岳地帯か南東の浜辺、J10の岬。このあたりに誘き寄せるってヤツじゃなかろうか。
清隆もおそらく承知の上で、以前に僕が野営したH7の山裾あたりに反応がある。今夜はその近辺で野営して、翌日に備える気だろう。
そしてこの日の僕が野営している場所は12日目最後の指定エリアであるI2……ではなく、G4の谷間。いや、最初はそのまま海沿いで休もうと思っていたのだが、なんか夜営しやすそうな場所には凄い人数がいて、人がいる場所を避けてたらこの谷間に追い込まれてたのだ。数日間も人と喋ってないせいか何故か人に話しかけられるのが怖い。
それは最初からだって? それはそう。
≪……夢月。お友達からのトランシーバーまで切って音信不通になってると、また後で怒られますよ?≫
うん、それはわかってるんだけどね。
なんかこう、最近は色んな奴と接しすぎて、しばらく1人で大自然を満喫したいなって。僕がやるべきことはもうあんまりないはずだし、最後まで英気を養っても罰は当たらないって。
≪…………無駄に植生レポートや天体観測データとやらだけが充実してきてるのはそういうわけですか。もう2冊のノートはほとんど埋まってるのがまた……≫
はい。白状すると、意外と植生豊かな島で熱中してしまい、半分試験を忘れてました。
天体観測も、夜でも明るさのある港の方でさえなければ、素晴らしい夜空が広がってて試験とかよりずっと興味深くてさ。
誰かといると、こういう趣味は好きにできないからね。そりゃ、夢中になっちゃうよね。
≪……………………夢月。本当にそういうところですよ≫
小さな神様まで四方や南雲みたいなこと言わないで?
ほとぼりが冷めたあたりで、隠れるのが好きな清隆と一緒に船に戻れば、平穏なエンディングにできるよ。
≪断罪イベントなんて起こした上に、数日音信不通になっておいて平穏に終われるんですかねぇ≫
大丈夫だろ。今日を除いてあと2日あるとはいえ、最後にランキングを確認したら南雲も上位1位に返り咲いてるし、僕のことは見切ってるはずだ。点数的にまだ封殺する用のマークは外せなくても、能力から察せられる優先度はおそらく高円寺や清隆が上だよ。点数だけはまだ僕も上位4組に並んでるけどな。
≪はぁ……。やるだけやって雲隠れしている現状、他ではとんでもないことになってそうですが≫
他は他、うちはうち。
何も気にすることはない。
僕がやっておくべき役割はだいたい完了済み。
だったら、残り時間は趣味に走ってもいいじゃないか。
≪……処置なし≫
失敬な。問題はきちんと処置してきたからこそ、今はのんびりできるんだろ。
≪お友達を心配させておいてのんびり過ごすのがどうしようもないんですがそれは≫
……そうかも?
い、いやぁ。それにしても、エア友を創造しなくてもこうして小さな神様達と話せるっていいね! ミシャグジ様を貸してくれた早苗には改めて感謝である。
≪30点。誤魔化し方が雑すぎます≫
キッツー。
でもさ、僕ってやっぱりこう、自然の中で1人でいるの好きなんだよな。人の中に混ざるのは嫌いじゃないけど、苦手でもあるし。この学校にいるとあんまり独りになれないから、こういう機会は逃せない。
≪わかりますけどね。夢月って人の中にいても信じられないくらい浮きまくってますし≫
浮きまくっ……え? そんなわけないだろう。ちょっと1人の時が好きなくらいは普通だよ。僕の友達連中も多かれ少なかれそうだろ?
≪彼らがすでに浮いてますからねぇ。むしろ浮いてない人は夢月と付き合うのが難しいんじゃないですか?≫
そうかなぁ。でもまぁ……もうそれはいいかな、と。
≪いい、とは?≫
ここ数日、1人でサバイバルしててつくづく思ったんだけどさ。
僕は僕が友達と思ってる奴か貸し借りがある知人以外は、マジでどうでもいいんだよ。どう見られても、ビックリするほど何も思わない。
≪何も……≫
うん。だから、この構想は実行するよ。
何を考えてるのか清隆や月城さんも上手い具合に進行すれば乗ってくれるっぽいし。
≪ですが、賭けに負けたら退学にもなりかねないんじゃ≫
んー、南雲か月城さんのどっちかは多分『用意』してるんじゃないかなぁ。
元々、僕は1位を狙ってたわけじゃないからアレだけども。
≪用意がなかったら?≫
その時は、僕が高く見積もりすぎてたんだなってキッパリ諦められる。
何度か直接話したし、軽くやり合うこともあったが、少なくとも南雲にはこのサバイバル中に2回負けて、そういう備えをしてそうだって印象は得られたしな。
≪……そんなだから、昔から夢月は浮きまくってますし、周囲に常識に囚われない外れ者ばかり集うんです。いい加減、無意識に『平等』に振る舞ってるのを自覚してください≫
なんて不吉なことを。
僕は悪くない。ソイツらを集めてる奴がいて、ソイツこそが諸悪の根元なはずだ。類は友を呼ぶとも言う。
予想では、早苗か清隆、あるいは四方が元凶だろう。高円寺や鬼龍院先輩の線もあり得るかもしれない。でも愛里や椎名ってのはなさそうか。
≪全員、夢月が呼び込んでるじゃないですか≫
だから、友達に関しては諦めてるだろ。
特に、親しみを感じているこの友達連中はもはや切れない。一蓮托生とまではいかなくとも、何かあれば助けを求めるし、向こうが困れば駆けつけるだろう。その覚悟はできている。
≪そこまで考えておいて、最終地点が『ささやか』すぎると言っているんです≫
気にするな。餞別みたいなモノだよ。
色々と世話になったからな。できる時にできる奴全員に借りは返しておきたい。
≪試験中ですが≫
僕は一向に構わん。
真面目にやっても勝ちの目はほぼないようなものだし、それならこう利用する方がお得だ。
≪もうちょっと欲張ってもいいと思うんですけどねぇ≫
いや、やりたい奴は結構いるし、八神の件とかでは必要だったけど、本来そんなの僕は欲しくないんだよ。下手すると、愛里や椎名との夢とロマンや癒しの一時が削られるじゃん。
愛里が寄ってくる前に遠慮か何かで距離を取られるの断固として嫌だね、僕は。
≪はぁー。言っても無駄ですか……。天秤にかけてそちらを取るのは夢月らしいですけどね≫
うん、らしいってのは楽しむのに必須だよ。取り繕っても疲れるだけだ。
ま、モノによるが、おそらく最終日はものすごく疲れるだろうから、充電期間に設定したここで小さな神様と話せたのはよかった。
≪私は何の助けにもなりえませんよ?≫
適当に駄弁るのが、すでに思考を煮詰める助けになってるさ。
いつも頼りにしてるよ、相棒。ありがとう。
≪……そういうトコロですよ、夢月≫
なんのことやら。
ともかく12日目の夜は人知れず谷間にある狭いスペースで天体観測しつつ、こうして小さな神様とただ脳内会話していただけだ。
だが、それでいい。
孤独と孤高の境界で、実行する未来を明確に描き出す助けになったからである。
リザルト8(10~12日目)。
9日目までに232点。10~11日目の指定エリアは7回到達。
到着得点が7点、到着ボーナスが1位3回、3位2回で計36点。12日目は到着得点3点、着順ボーナスが1位1回、2位が1回で計15点。GPSサーチを2回でマイナス2点。
12日目終了時点で夢月の総合計は291点で上位3位。
余談ですが前話の宣言通り、南雲はここで上位1位となってます。
流し気味の説明回的な話なので、EXらしく名前は出てても微妙に珍しい存在と脳内会話してるだけという。ただ、無人島で最速の時間の進みだと思われます(1話で3日間も進んだので)。
しかし、よりによって200話がほぼボッチの話になるとは。ラストでしてた会話?が、3日間で唯一のコミュニケーションなのはどうなのか。
あ、GPSサーチに関しては独自設定ではなく、1年生編2巻の佐倉の件でたしかそういう機能があったはず。記憶違いだったらすいません。