ようキャ   作:麿は星

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 なんか最近暑すぎて頭が上手く回ってない気がする。
 もしミスや齟齬があったらすいません。



25、力押し

 

 交渉により、佐倉のストーカー対策の重要部分を青娥さんに投げることに成功した。

 交渉材料と安全マージンの為に起業することにはなったが、後々のことを考えるとやっておいた方がいいのは間違いないので、諸々の問題には目をつぶろうと思う。僕は青娥さんを術とかの反則技以外を利用しようと交渉に臨んだのだから、代わりに彼女の退屈を紛らわすのは妥当な対価になると思いたい。僕の想像があっているなら、長命もしくは不老な存在の最大の敵は退屈なのだから。

 

 しかし別の面倒はできたが、これで僕と佐倉の安全以外に憂いはもうないだろう。

 それにも万が一の為にまず東風谷を配置した。そして追加で佐倉と同クラスの綾小路やメンタルケアに橘書記と一之瀬、権力を持つ会長にも話を通して、何人かが了承してくれて佐倉の身を各方面から守ってもらう事ができればある程度の安全は確保可能である。

 ちなみに既に東風谷には昨日僕と佐倉から頼み、今は二人でいると連絡を貰っているので土日だけ外出を我慢してもらってその間に打てる手は打っておくつもりだ。

 

 ひとまず防御はこれでいいとして、攻撃には僕と承諾を貰ってある四方を配置し、手助けに柴田と神崎、綾小路、葛城と戸塚にも一応メールを送っている。テスト結果が出ていない現状でクラスのリーダー格が承諾してくれる可能性は低いが、DクラスのPP事情を考慮するとそれなりの高確率で綾小路なら動いてくれると見て、5万の報酬を全員に提示しておいた。

 

 攻撃役の役目は、佐倉に送られていた手紙と写真以外の証拠を集める事だ。例えば佐倉の盗撮写真を撮影した機器などである。洞察力に優れた四方なら隠しカメラなども探し出せるに違いない。これを見つけて学校所有かを先生や生徒会に確認すれば不正に設置したかは明白で、中身を確認できればさらに明確な証拠の一つにできるだろう。

 もしもこれらの証拠を入手できないか、入手できても警察を動かせなかったとしても、青娥さんがストーカーと『遊んで』くれるように話を誘導した時には乗ってもらえているので、手続きと交渉を終わらせる時間さえ稼げばどちらに転んでもおそらく大丈夫なはずだ。

 

 まずなるべくこちらの対処に気づかれにくく嫉妬心を煽らない同性の東風谷の防御を100積んで、僕と四方の攻撃で100。更に知らない人間にはおよそ予測不可能な青娥さんの100を別方向から。これを基本に、他に連絡を取った者達が助けを承諾してくれれば、ストーカーと対面する機会を最小限に、上手くいけばもう出くわさずに完封できるほどに優位を積み上げることができるだろう。

 特に会長や橘書記の生徒会が学校を動かしてくれるか、生徒に付き纏うストーカーがいる事を知って学校が自発的に動くかすれば、最低でも学校の敷地からの追放・進入禁止措置は取れる。佐倉の心情的にはストーカーが警察に捕まる結末の方が安心できるかもだが、実は釈放以降など先の事を考えると学校との繋がりを切られた後に青娥さんの玩具兼実験体になるだろうこちらの処置の方が安全なのだ。

 

 つまるところ僕がしたことは、起業という餌に元凶であり実験材料とでもいうべきストーカー本人をふりかけてメインを青娥さんにお任せし、自分含めた友達や知り合いで攻撃と防御の手はずを整えたただけだ。

 あのストーカーがどうなるかはわからないが、適度な暇つぶしの材料を提供した青娥さんなら、佐倉が安心できるようにきちんと安全が確認できる決着をしてくれると確信している。なぜならそうした方が、いずれ僕や佐倉で遊ぶ時により深い享楽を味わえるからだ。

 

 正直、問題の先送りどころか別の負債で負債を返す事になる可能性はかなり高いと思うが、ストーカーへの対策と危ない仙人の遊びの二択なら僕は後者を選ぶ。更に起業という餌であり枷でもある一手を最初に提示した事により、よくわからない術やらお化け関係で僕と遊ぶような事は青娥さんの中で優先度が下がっているはずだ。それならまだ僕が対処可能な遊びになる……してくれると思う。してくれるといいな。してください。お願いします青娥様。

 

 

 

 ともかくそんなわけで、土日を使って僕と四方は寮~学校間のルートを探索しながら歩いているのだが……。

 四方の観察眼が凄まじすぎて僕の出番が全くない。四方ならできそうとは思っていたが、ここまでとは思わなかった。

 次から次へと隠しカメラを発見し、一旦通り過ぎた後に死角から忍び寄って隠しカメラを端末で撮影しているのだ。もし学校の備品だったら勝手にどうこうするのはまずいという判断から、週明けに教師に画像で確認するつもりだろう。今日僕が唯一できたことは、少しでも早く事態を収められるように探索が終わったら会長に撮影した画像を送信して、教師とは別方面の裏取りするようにしただけである。

 しかしこれを見てると、もう四方一人いれば僕とか要らない子なんじゃなかろうか? そんな疑問すら浮かんでくる手際だ。

 

「……それにしても、改めて確認すると多いな」

「そうだな。もう10近いんだが、このいくつかが個人の物だとすると怖くなってくるぞ」

「それもそうなんだが、校舎に入ってから隠しカメラの数が多すぎて、いちいち一つずつ確認していられない」

「は? 校舎にそんなに監視カメラがあんの? むしろ減ると思ってたんだけど」

「ほら、あそことあそこ。それにあっちにも」

「本当だ……確かにこの数と密度は面倒だな。

……うん。校舎はパスしよう。今は登下校ルートの方が優先だ」

 

 寮から学校までに結構な数のカメラを発見して、逆に撮影しながら校舎まで来た時に四方が面倒そうなことを言い出した。教室や廊下にもいくつか設置されているのは気づいていたが、防犯とCPの査定に必要な数台を要所に設置してある程度だと考えていたので、確認が大変になる数があるとは思わなかった。これは後回し案件(後でやるとは言っていない)にしよう。

 

「もしかして左京は教室にあるカメラに気づいてなかったりするのか?」

「うんにゃ。僕らの席の上方と四隅にあるのは気づいてたけど、流石にあれは学校が設置したんだろうし、どうでもよかったからな。校舎にもそんなに数があるとは気づいてなかったけど」

「校舎のもほとんど学校が設置している可能性が高いから今回の件には関係ないだろうけど、玄関ホールから教室までで30近くの監視カメラ。この学校、やはりどこかおかしいぞ」

「でもそれこそ今更じゃないか。一発退学のテストやクラス間の争いを煽るような担任の言葉もあったし、この学校では基本的に正面からじゃなくて裏口から人や制度の隙を突いたり騙し合う事を奨励してるんだろ。カメラはその手段や道具に応用する為と、設置見本のような感じじゃね?」

 

 ただ予想外なのはカメラの数だけで、四方にきな臭さを言われても驚く事はなく、入学からこれまでの印象を補強して「ああ、やっぱり」となるだけである。

 

「騙し合いか……俺の苦手分野だなぁ。学校のシステム的にこれから他のクラスの奴とやりあう事になると考えると、俺も変なところで騙されないように気をつけないとまずいかな」

「苦手ならいっそ、そういうのが得意そうな奴らに投げちゃえばいいんだよ。例えば東風谷や神崎あたりに。四方や一之瀬みたいなエース級は持ち味を活かせればそれだけでも充分だろう」

「……なあ、その時にもし左京に投げたらどうする?」

「騙し合いとか僕も苦手分野なんだが……そうだな。その時の状況次第だけど、凡人には凡人のやり方がある事を教えてやるよ。別名、人頼みとか力押しとか言うかもしれないが」

「人頼みに力押しねえ」

「奇策が正攻法に勝るとは限らないように、騙す事が信頼に勝るとは限らない。要は最低限の数があって味方のアベレージが高いなら、単純に内を固めて外を適度に攻めるだけで大抵は問題ないって事さ。余裕があれば追加や遊びの一・二手も打てるしな。現在の状況みたいに」

 

 実際、何かが起こった時にこれを基本方針にして、しっかり自分と自分の周囲を把握しておけば、本当の意味での予想外や怒りや恐怖などの感情由来の混乱を起こされない限り、僕のような凡人でも対処はそう難しくない。勿論、起こされる何かにもよるだろうが、このトラブルシューティングやクレーム対応の経験を応用した考えが通じる場面は意外と多いのだ。

 

 

 

 あまりに監視カメラの数が多かったので、僕達はとりあえず見切りをつけて校舎を出た。

 これから僕は四方と連携しながら今度はスーパー・コンビニ経由で寮に向かい、行きと同じように端末で監視カメラを撮影していくつもりだ。

 本来ならカメラの入手先が近いショッピングモール経由を先にするべきかもしれないが、予め佐倉に最近の外出先や下校ルートを聞いてみたところ、スーパー経由での帰宅、校舎とは学生寮をはさんだ反対の端にある大きな公園(GWに僕が星見をしていた公園)、その手前のバイト先の3つが主な行動範囲だそうで、ショッピングモール近辺には入学直後以外は行っていないと返ってきたのだ。見せてもらった佐倉の盗撮写真もそのあたりのものしかなかったので、あっち方面の裏取りは動いてくれた場合の警察に任せる方が楽だし効率的だろう。

 

「左京!」

 

 探索しながら進んでスーパーが見えてきたところで、綾小路が僕を呼んでいるのに気づいた。四方に軽く綾小路を紹介しながら合流する。

 

「あいつ、誰だっけ?」

「綾小路。佐倉と同じクラスの男子だったから声をかけといたんだ。屋上にも来たことあったんだが、四方は初めてだったか」

「ああそういえば、流しそうめんの話をした時に聞いたような……」

「んで、簡単に今回の件を打診したら手伝ってくれるっていうから、スーパー経由ルートの探索を頼んでた。僕らが予定よりだいぶ早く移動したからここで合流になったけど、本当は学校で合流してそのまま一旦は寮に戻るつもりだったんだよ」

「……驚いたぞ。昨日唐突にメールが来たと思えば、5万でバイトしないか? の一言だからな。その後に内容詳細が来なかったら、迷惑メールの類だと勘違いしていたぞ」

「大丈夫だ。今、綾小路はここにきて、僕らに声をかけてきた。ということは頼んだ仕事の半分は大体終わったんだろ? きちんと払うから安心しろ」

「いや、そこじゃない。そういうことじゃないんだが……どうすればいいんだ、こいつ」

「綾小路、でいいのか? 左京に関しては色々諦めた方が楽になれるぞ」

 

 初対面から早々に、カメラ探しの影響か疲れた雰囲気を醸し出す綾小路とそれを慰める?四方。東風谷と違い、比較的友好的な出会いとなったようでよかったよかった。この様子の二人ならとりあえず一緒に行動してれば勝手に関係を築くだろうから、僕はこれ以上何かしなくてもいいだろう。

 

「でも流石にやりすぎじゃないか? 綾小路はまだお前に慣れていない感じなんだから、もう少し気遣いくらい……いや、ちょっと待て。綾小路にこっちのルートを頼んだってことは、ひょっとして公園方面も誰かに頼んでないか? そういえば朝に柴田や神崎がなにか……」

「頼んでるに決まってるじゃん。そっちはテスト直後な上に高確率で釣れる材料がなかったから、Bクラスの何人かと、Aクラスの葛城と戸塚って奴にダメ元で頼んでた……んだが、校舎らへんにいた時になんか了承のメールが来てた。いやぁ、あっちは範囲がやばそうだからホント助かったよ」

 

 代償は直近だけでも綾小路、葛城と戸塚の3人合わせて15万とけして安くはないが、やるからにはできる限り徹底的にやっておく。佐倉は勿論、僕自身が狙われる可能性もついでに低くしておく為には、ここでPPをケチってもしょうがない。

 次のバイトの給料日やPP支給日には、Bクラスの神崎に一之瀬、橘書記や会長へと順々に払っていく予定なので、しばらくギリギリのPPで生活することになってしまいそうなのが難点だが。

 柴田? 四方や東風谷にも報酬出せないのに、柴田に出すわけないだろう。ある程度以上の付き合いの友達には借り1で統一である。

 





 上手く本編で出せるか不明な為、本作における大雑把な地理設定を。
 これはこの学校の敷地マップとかが見つけられなかったので、私が勝手に設定したものになります。

 まず敷地の端に、最初のバス停、校舎、図書館、運動場や体育館などの教育関連施設。
 次に敷地中央部には学生寮。学生寮を挟んで反対側の端に、公園や小川、畑・林(竹林はここの一部)などの自然区。
 最後に学生寮を挟んだ両翼には、ショッピングモールや娯楽施設などの商業区、商業区の反対側にスーパーやコンビニ、ホームセンターなどの生活区。
 ちなみに主人公のバイト先は、商業区と学生寮と自然区の間くらいのイメージです。

 もし原作のどこかに地図やマップがあっても、既に何度かこの設定で書いた部分があったと思うので変更はできません。あとアニメは全く見てないので、あちらに地図があったらすいませんが無視させてもらいます。
 ご了承ください。
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