ようキャ   作:麿は星

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 完結後に途中のエピソードを挟むのはなんですが、修正してたらカットしすぎてた2章に思い至って、気づいたら1話分を書いてました。



2章 トラブルな日常(2巻)
31、神社


 

 6月8日の夕方前。

 僕は高度育成高等学校の敷地東端に来ていた。

 この日はバイトがなかったので帰宅しようとしていたらなんとなく嫌な予感がして、調べ上げておいた敷地内唯一の『動かない』退避場所に逃げ込んでいたからだ。

 神社仏閣を探しても学校施設の案内に記述がなくて探すのに手間取ったが、Googleマップの衛星写真から敷地全域を隈無く観察すれば、目当ての痕跡っぽい一つの朱色(神社に付き物な建造物やオブジェ)がかろうじて確認できた。

 あとは実際に足を運んで確定させたのだ。

 

 ゴールデンウィークに天体観測をした広めの公園……の更に奥には敷地の内外を隔てる川があり、川の少し手前の木々が生い茂る小高い場所に、とある神社が建っている。

 もはや置いてあった石碑や神社の名前すら掠れてほとんど読めないほどではあるが、本殿と境内、そして裏手にあった林檎に梅と桜の木々、小さな池、広めのスペースはなかなか良い味を醸していた。ただおそらく、それしかないのがこの神社が閑散としている要因だろう。

 誰が管理している風もなく、非常にアクセスも悪い為、人に会わない寂しげな場所である。まぁ逆にいうと一人でゆっくりしたり、光源も少ないので天体観測などには適した場所と言える。

 見事な古木といって過言でない木もあり、実に風流だというのにもったいない。きっと春夏秋冬、様々な顔を見せて美しくなる隠れた名所になるはずだ。知られていれば、の話だが。

 

 しかし梅の木に注連縄があるということは、天神様…菅原道真でも祀っていたのだろうか? ご利益は学業成就だからあり得なくはない。今は“何も”常駐してないっぽいけども。

 ふと思いついて、僕は朽ち果てた鳥居に刻まれた文字を解読しようと試みた。

 

『博…神…』

 

 2文字目と4文字目は完全に消えていて、とても読めない。3文字目も9割推測だが、合ってるとすれば後半の文字は「神社」だろう。

 そして肝心の1文字目は、かろうじて残っていた「博」っぽい文字の右上から割り出したものなので、合っているか確信が持てない。

 だが、ここまで朽ち果て、ほぼ放置されている神社はむしろ好都合にできる可能性を秘めている。

 

 なぜなら東風谷の神様に恩返しできるかもしれない。

 東風谷は現在、学校の帰り道から僅かに逸れた場所に小さな祠を作って、分社と呼んで毎日手入れしている。

 つまり乗っ取る……というと聞こえが悪いが、名前もわからないし、人もいない神社を何らかの形で譲渡してもらおうということだ。勿論、法律とか権利という意味ではなく。

 またそれができなくとも、東風谷の分社をここに移築することで、人を呼べるように―――信仰を集められるようになるのではなかろうか?

 学校敷地内に唯一の神社(寺はなかった)を押さえれば、充分に信仰を集める何かが実行し易くなり、ひいては助けてくれた恩を返すことに繋がる。起業の件もあるし、なかなかの良案だろう。

 問題は東風谷に話をどう切り出すかだ。何かしらきっかけが発生してくれると好都合なのだが……。

 まぁ、出たとこ任せで最低限のアンテナ張っておけばなんとかなるか。

 

 

 

 う~ん。その最低限に必要なことは……。

 本殿と呼ぶにはいささか小さく、神社っぽい物(鳥居は崩れかけ、賽銭箱もない)も足りていない数段の階段で座って、一つ一つアイディアを煮詰めたり、問題点を洗い出そうと考え込む。

 

「ん……左京夢月? こんなところで何をしている?」

 

 しばらくああでもないこうでもないと思考を巡らせていると、聞き覚えのある声が僕を呼んでいた。見ると、知っている人だったので挨拶を返しつつ、お礼を口に出す。

 

「あ、鬼龍院楓花さん。こんにちわ。先日はどうもありがとう。

 僕はちょっと考え事してただけですよ」

 

 つい数日前に10万をポンと貸してくれた2年生だ。彼女のおかげで佐倉に根強く持っていた『先輩』イメージも完全に払拭できたし、結構恩を感じているとても良い人である。

 特に、一之瀬みたく聖人君子っぽさや陽キャ感もほとんどない点が素晴らしい。ついでに、めっちゃ美女の風格があるし、良い目の保養になる。

 

「考え事、か。

 まさか君が私の最初の男になるとはな」

「ちょっ、意味が違う!? それに聞こえが悪いですって! それに鬼龍院さんの方が先に入学してるんだから、他が来てなければ当たり前でしょう!?」

「ふふっ、冗談だ。私以外をここで見るのは初めてだったので、試しに誂いを混ぜてみたのさ」

 

 ただ男前な笑顔を見せる鬼龍院さんだが、心臓が変なリズムを刻みそうな冗談だった。

 自意識過剰な反応を自覚した瞬間、僕はなんとか強引に自分のペースに引き戻す。

 

「は、はぁ……。でもやっぱり人の来ない場所なんですね、ここ」

「私の知る限りだがな。一人で過ごすついでに稀に手入れをしに来ていたが、これまでに誰かが訪れたことはない」

 

 ああ、人気がない割に本殿や境内はそこそこ綺麗だと思ったら、手入れしていた人がいたらしい。尚更、好都合だ。

 

「へぇ。それは良い事を聞きました」

「ふむ。何か悪巧みをしているのか『後輩』」

「悪いかはともかく、友達への恩を返せそうな計画が形になってきましたよ。改めて、ありがとうございます『先輩』」

 

 それにしても人の悪い初撃だったものの……この人、なんか不思議と話しやすい。

 個人的に嫌な印象が強かったためにあまり使わないようにしていた先輩という呼び方を、後輩と呼ばれて自然に返してしまう雰囲気がある。

 

「ほう? それなら自由に使うといい。元々、私が手入れしていたのは使用料代わりだったからな」

 

 数日前の宴会での件といい、もの凄くドキッとさせられる発言があるけども。

 なぜなら、この話の流れは───。

 

「重ね重ねどうもです。でも、いいんですか?」

「かまわない。なんなら、君が作った『会社』にも融通を利かせてやろうか?」

「……っ。あ、ああ。それで今ここに来たんですね……」

「そうだと言ったら?」

 

 やっぱりか。少し驚いたが、先輩には『4人目』の雰囲気があったからすんなり腑に落ちた。

 

「納得できました。スゲー直感か情報網ですね」

「……ふ、ふふっ。自信はあったが、一瞬しか揺るがせなかったか。わざわざ出向いた甲斐はあったかもしれないな」

 

 あまり繋がりのない女子の上級生がこんな人気のない場所と時間に僕へ接触を図るなら、確かに起業絡みが妥当だろう。場所に関してはたまたまだろうが……雰囲気はあっても所詮相手は高校生だからと、見縊って失礼だった。

 だがまぁ、どっちにしろ今の僕に返せるモノはあまりない。

 

 所作からなんとなくわかってはいた。

 先輩はおそらく良家…それも相当上澄みの出自だ。溢れんばかりの才能を、環境が磨き上げた天才の匂いがする。

 それゆえに四方のような野生の天才とは微妙に雰囲気が異なるものの、知り得る術のないはずの起業を何らかの手段で嗅ぎつけ、投資してくれようとしているという感じか。

……え? でも流石に話が飛びすぎじゃね? 青娥さんもそうだったけど、この先輩にも“恩”パレードされる理由ってなんにもない気がするんだけど。話が早いのは結構なことだけど、不思議な御人である。

 ただリターンを用意できない問題があるので、言いにくいが明言しておく。

 

「あー、でも悪いんですが……本命の申し出に対しては、ありがとうございます。できたらお願いします。としか今は言えないんですが」

「ありがとうございます? そう言ったのか……」

「はい。そのぉ、ほとんどが返せる見込みがまだない計画段階でして。おそらくリターンはかなり先になるかと」

「……」

 

 正直に返すと、先輩は言葉を途切れらせてしまった。口も半開きである。それでも美女なのだからズルいものだ。

 僕の発言が原因っぽいから巫山戯た真似はできないし、可能かはともかく嘘や方便で強引に引き入れる選択も一瞬脳裏をよぎったが、こういう格好良い人を騙したりしたくない。

 僕自身が格好悪いことしか言えないのに、そこまで堕ちるほど矜持を捨てたくないのだ。

 

 なぜなら、そもそも準備段階で声をかけられる想定をしていない。

 当然、返せるモノも絵に描いた餅しか用意できない。

 だから止めとくのが賢いよ、って暗に伝えつつ、ぶっちゃけた話をした。

 ここまで読んでくる以上、先輩にはだいたい承知の上だろうけども。

 

「フッ……フハハハッ!

 気が変わった! そして本当に後輩を気に入ったぞ! アーッハッハッハ!!」

 

 そしたら、人気のない神社に響く美女の笑い声。

 なんの気が変わったんですかねぇ。

 

「―――2000万だ。それを目安にやってみろ。話は通すだけ通しておこう。全ては君次第だ」

 

 誰でも結論だけで通じると思ってるのか、試してるつもりなのか。幸いにも僕には通じるが……。

 

―――意味はわからないがなっ!

 

「おっと、念の為に『私の』手段は用意しておいたから気にするな」

「うぇっ!? なんでそこまで。最近会ったばっかの僕に……?」

「ふっ。勘だ」

「勘、ですか……」

「ああ。私の勘が言っている。後輩にこうするのが最も面白くなる、とな」

 

 こ、この人も青娥さんの同類か。

 なんでこう…いいなって思う女子は、みんな変な方向にアクセル全開なんだ。

 それか、諸行無常の響きありとはこのことか。たった2回でこうも印象を塗り替えられるとは。

 まぁ、話しやすく良い人らしいから、お近づきになれるのは素直に嬉しいけども。

 

「……勘に頼りすぎるといつか痛い目を見ますよ? ソースは僕です」

「ははは。肝に銘じよう。それと後輩にこそその言葉は相応しいと思うぞ? 勘……だがな。ふ、ふははっ」

 

 それから、先輩には『勉学ではない』政治・経済の話題を出された。何かから僕の意識を逸らすかのようにである。

 ある種の問答の皮を被ったそれは、僕がどこまで実現可能かを測っているように思え、更に比較的最新に近い情報と分析を教授してくれているとも言えた。

 クールな外見の先輩に意外にも熱が入ってからは、僕と喧嘩みたいな言い合いになることすらあり、そこそこ長時間に及ぶ議論になる。

 それは夕方が終わって暗くなっても、場所を公園を出てすぐのレストランに変えても終わることはなかった。

 余談だが、先輩オススメのチースフォンデュは非常に美味であり、年齢や立場的に不謹慎・不可能なのはわかってもワインを一杯やりたくなった。やはりこういうの食うと、ちょっと不自由を感じてしまうな。

 

 ともあれ議論自体は、特に先輩の尊敬する鬼島という現総理大臣についての見解を聞けたのが収穫と言えよう。前の人生で例えるなら、安○総理を彷彿とさせる「本気で政治をやっている政治家」らしい。まぁ、この学校設立に深く関わってるようだし、実際に見て知り得てみないと判断は難しいが。

 それでも先輩の熱意は伝わってくる。これほどの先輩が推すのなら、大した人物なのだろう。

 

 反対に、与党・市民党の幹事長だった直江という『政治屋』には、不快感を隠さないのもまた興味深い。むしろあの業界、直江の方がスタンダードな種族なのは明白だ。

 ということを言ったら、何倍にもなって反論が返ってきた。

 偏見かもしれないが、高校生でここまで政経の知識や熱意があるのは珍しい。久しぶりに楽しい政治議論の時間だった。

 学生だと専門にしない限りあまり興味なく、大人になったらなったで話題にすると荒れるからな。弁えた社会人はなるべく出さないようになる分野だ。

 この年齢で条件を満たす先輩は、やはり天才達の一角なのだろう。

 

……ただ口には出さないが、正直なところ。先輩は政治や経済よりも東風谷寄り…研究者向きな気質っぽいな。

 でも政治・経済に興味を持ってる人で素質が僅かでも見えたら、なるべく早くに僕ができるだけの支援はしておきたい。

 悪夢の某政党時代が終わってそう経たない2015年現在はまだしも、最低でも約10年後あたりでヤバい事が連発し続けるかもしれないのだ。鬼島総理がその時に健在、または変わってないとも限らない。嘘だと思いたかった暗殺テロだって、こっちでもまた起こるかもしれない。

 役に立てられるかは別として、自分にできる備えはしておくべきだろう。

 

 全肯定できるような人間などいないとわかっている。先輩自身にも彼女が推す鬼島総理にも、欠点はおそらくあるだろう。その中には、僕が相容れない部分があってもおかしくはない。それにいち学生に過ぎない僕の行動は、世の中に大した影響を齎さない。

 それでも僕は嫌いな事を我慢しなくていい未来を願ってしまう。

 ならキャットルーキー関係なく、いくつかの対策を打っておくのはきっと間違いじゃないはずだ。

 

 ただ穿った見方なのは承知の上だが、どうも日本は歴史的に見て偉業を成した英雄……とまでいかなくとも泥沼の状態から引き上げようとする人物を、逆に引き摺り落とそうとする傾向がある。頼朝しかり、信長しかり……賛否両論ではあっても○倍首相も。

 しかも出る杭は徹底的に打つとばかりに、目の敵にして必要以上に貶める者も相当数が存在する。例えば、他もやりまくってる裏金問題を特定の派閥『のみ』に絞って悪者に仕立て上げる、とか……。メディアの滅茶苦茶な論調に乗って某派閥を解体に追いこんでほくそ笑む後先考えない後任のトップ二人、とか……。

 

 全面的に支持できたというわけでもないが、何故あれだけ『本物の政治』をやろうという意気込みが見えていた……実際にいくつもの功績を残した政治家を目の敵にできるのだろうか?

 しかも死者に鞭打つように死後に至るまで。政治家としてはそこまでじゃない落ち度で。大した功績もないどころか、後ろ暗い部分ばかりの奴らが、である。

 意味不明すぎて怖かったのを思い出す。

 

 反面、どう見てもブラックさ全開な人物が不自然に持ち上げられていることもある。具体例を挙げるとヤバそうな現代の人を除いて代表格を挙げるなら、真っ先に思い浮かぶ有名な歴史上の人物がいる。

 馬鹿げた理論によって、それまでの農業システムを破壊して大飢饉を引き起こす。目安箱という監視システムを構築。財○省にも通ずる好景気になりかけていたのを潰す緊縮財政。

 そう。暴れん坊将軍として名高い徳川吉宗である。

 

 吉宗のヤバさをわかりやすく近代で例えるなら、毛沢東や金日成がほぼ同じ失敗をしているのが思い浮かぶだろう。享保の改革、文化大革命、主体思想の違いは、細かい部分と規模以外にほとんどない。

 吉宗以外は問題視されてる事も多いのだから、似た大失敗をした吉宗を持ち上げるのは道理が通らない。それなのに高い人気や評価ばかりを目にするのは何故なのか?

 

 名君などと謳われることさえあっても、僕から見れば確実に彼らは超級のやべぇトップ達だ。

 別方面に功績があったり、効率といったモノを突き詰めた結果、理由あって非道な行いに至ったヒ○ラーの方がまだその評価にふさわしい。

 例えばユダヤ人の件は、大戦時にソ連とフランスが迫害国だったのをドイツが保護したのに、恩を仇で返すようにユダヤ系メディアがドイツ市民をファシズムへ向かうように偏向報道しつつ、同時にナチスを批判する政治活動を始めたために大量逮捕が発生したのが発端だ。その流れを時系列順に並べて暴露する研究本が戦時中の1944年に出版されたものの、戦後は焚書。なんて歴史を知ってると、どうも変な作為を感じてしまう。

 

 勿論、売り言葉に買い言葉なのか数年後に報道内容を実行したような非道な部分は否定するけど、そりゃ保護されておいてそんな事をすれば迫害対象にされるだろというか……。

 いやまぁ、個人的にすごく似てる気がする『在日外国人』の問題がある日本は他人事じゃないからでもあるが。

 これもまた、自虐史観で有名な某歴史家達が作り上げた印象操作みたいなモノなのだとしたら、恐ろしいモノである。

 

 とまぁ、だいぶ脇道に逸れたがぶっちゃけ、どこかで『そう』ならないか心配でしょうがない。前と酷似している今回だから尚更に。

 

「久方ぶりに楽しい時間だった。

 君が良ければ、卒業後は私に『加担』しないか?」

「あー、すいません。ちょっと理由があって、未来の話はお断りするしかないんですよ。ホントにもったいないですけど」

 

 まぁ当然、そんなネガティブでディープな与太話を美人さんな先輩との食事の場で出すわけもなく、あくまで議論の範囲でお喋りを楽しんだ。

 すると、先輩がどこぞの風祝みたいな事を言い出した。この人相手に断りを入れるのはマジで気まずいがしかたない。

 

「ほう? それは残念だ。後輩と悪巧みするのはなかなか楽しそうなのだがな。

───しかしおそらくまず見込みのない大変な道だぞ、それは。私には成算がほとんど見えない」

「わかってます。なので、これから少しずつ上げていきますよ」

「くくっ……ふふふ。事も無げに言うか。ことごとく規定路線から外れる男だな、後輩」

 

 でも、なんでほとんど一歩踏み出しただけの状態で察せられるんだろうなぁ。才能格差って、マジでどうなってるんだ。

 このまま話を続けると丸裸にされそうなので、勢い半分棚ぼた半分の誘導をかけておく。この先輩に通じるとしたら乗ってくれた場合だけだろうが、なんか乗ってくれそう。

 

「しまった! 僕、またなにかやっちゃいました!」

「安心しろ。そのフレーズを使っておいて、疑問形ではない口の減らなさに全て持っていかれた。応用力もなかなかのもののようだ」

「それほどでも。もし首尾良くいったら『僕の』お誘いにも乗ってください。気分が乗ったらでかまいませんので」

「ふっふっふ。挙げ句、私をデートに誘うとは良い度胸だ。そのお排泄物な度胸に免じて了承と返しておこう」

「……それ、すごい異質なお嬢様風味を感じますけど、一旦置いといて……ありがとうございます。じゃあ、何か楽しそうなことをやる時は先輩にも連絡を入れますね」

「ああ、楽しみに待っておく」

 

 さりげなくおどけつつ、わざと遠回りに神社の話題に戻したら乗ってくれた。クソ度胸の言い換え方が、何気に引っ掛かりまくってるけども。

 話からわかる通り、もはや先輩には色々見抜かれてるみたいだし、恩も飽和状態になってきたっぽいから、いっそ限界まで借りて何があろうと利子付けて返す方針にしたのだ。

 

……うむ。この時の僕はひょんなきっかけで降ってわいた、美女な先輩とのチーズフォンデュ・DE・夜デート(紛い)に舞い上がっていたのだろう。

 気づいた時には、後戻りできなくなるほどの札を借り受けたまま解散した後だった。

 そのせいで、ナニかから視られてる感覚も……神社に退避する要因になった気配からすらも、何故か非常に痛いモノを向けられてるのを感じた。

 

 

 

 

 

 しかし、彼処に足を運んだのはこれで二度目だが、感知した存在は天才一人(鬼龍院先輩)に、おそらく人外ばかり。姿は見えなかったものの、小さな神様の気配もあった。

 まだ結論には早いが、あの神社は魔境的な場所の一種なのではなかろうか。

 先輩が名前を知ってるとかで確定するか、東風谷が管理できる手配が完了するまで、仮の名前をつけても許されるかもしれない。だって博○神社って、僕の印象にそぐわない。特に『博』の文字が。

 それなら、どうせ僕の内心呼びだけの仮称だし、勝手に付けてしまおう。そう───。

 

『───妖怪神社、と』

 

 小さな神様も純粋な神様じゃないっぽいし、パッと浮かんだ名前だけど、人外だらけな神社にはわかりやすくて良いだろう。

 先輩と別れた後、小さくそう独りごちてみたら、どこかから上品そうな笑い声が聞こえた気がした。

 





 修正がてら読み返してたら、東方要素や余談が多くて迷ったせいで入れ忘れていた鬼龍院のエピソードメモを発見。こっそり追加しました。
 それ以外は何話か後と相当後、主人公が動くための着想を得た回…みたいな内容です。
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