ようキャ   作:麿は星

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4、部活動説明会

 

「おはよっす」

 

 登校2日目。

 始業ベルの1分前に自分の席へと滑り込み、四方に声をかけつつ筆記用具などを机に出したりして準備する。そうしていると、すぐに担任が入ってきてホームルームが始まった。

 担任が言うには、今日は初日だから授業は昼までで、昼からは部活動説明会があるようだ。

 

 ホームルームが終わって担任が出て行くと、なぜかまた昨日のように神崎という奴がこちらの方を見ているが、すぐに入れ替わりに1限目が始まる為か特に動きは見せない。

 意図が見えなくて少し不気味だが、人には色々あると思い、意識から外して授業に集中する。といっても、初日ゆえか簡単な説明や紹介程度だが。

 

 関係ないが、この1分前に来るというのがミソで、こうした時間管理が可能で更に応用できるようになれば、手を抜けるところでは徹底的に手を抜けるようになるのだ。

 例えば、授業が始まっても、態度を悪くしたり、寝たり、サボったりという手抜き以前の行為はしないし、むしろ授業はかなり真剣に受けている。

 これは、ここで真面目に勉強することでもうこれ以上はしなくていい、という手抜きなのだ。それは真剣にもなろうというもの。

 

 後ろの四方も基本ノートは取っていない感じだが、真剣に授業を聞いているのは伝わってくる。

 こういう必要な時に必要な分だけやるという性質は、今日発見した僕と四方の数少ない共通点で、だからこそ真剣に授業を受けているのがなんとなく肌で感じられるのかもしれない。

 

 意外だったのは前の東風谷で、こちらはノートに何か書き込んでいるがおそらく他所事を考えている。

 結構真面目そうな印象を持っていたので不思議ではあるが、緑頭が細かく動いていることから少なくとも集中してないのはすぐわかる。

 何かあったのだろうか? と下種な勘繰りを入れて遊ぼうとしたがすぐに飽きて、授業に意識を戻した。

 

 少し違うことは考えたが、基本的には授業に集中していた。

 だからその時の僕は、僕を見つめる視線があることに気づいていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「四方、昼に学食行かないか?」

 

 午前の授業が終了し、部活動説明会を無視するなら帰るだけとなったが、昨日約束した四方との話をしたかった僕は学食に誘ってみた。

 

「ああ、俺も行ってみようと思ってたからいいよ」

「よっしゃ! 昨日は用事があって行けなかったから地味に楽しみなんだよな。ついでにクラスでやった歓迎会の事とかも教えてくれよ」

「わかったよ。でも俺も途中で帰っちゃったから大したことは言えないぞ」

「話の種程度だから、大したことじゃなくいいんだよ」

 

 四方は快く了承してくれて僕らは軽口をたたき合いながら学食へ向かうのだった。

 

 

 

 学食では、ここでも存在した『無料』にまたしても嫌な予感を感じさせたが、時々食べていた山菜がメインの定食ということで試しに注文してみた。四方はBLTサンドのセットにしたようだ。

 

「ここにも無料ってあるんだな」

 

 四方が僕の頼んだ山菜定食を眺めながら複雑そうに零した。

 

「だよな。まだ学食は無理矢理ないこともないか?みたいに思えなくもないけど、スーパーやもしかしたらコンビニにまで無料コーナーあるって、胡散臭すぎてちょっと怖いんだけど」

「タダより高いものはないっていうもんなぁ」

「まぁ、そのタダ自体はかなり好きな概念なわけだが」

「そりゃあ、大体はそうなんじゃないか?」

 

 やはり四方も疑問に思っていたらしく、無料商品について不審がっているようだ。

 

 山菜定食自体は、山菜を食べ慣れていた僕の味覚もあるかもしれないがご飯に一汁一菜とお茶が付いていて普通においしく、節約したいときや弁当を作るのが面倒な時とかにこれからも重宝しそうだ。

 喉に痞えるような無料に対する不安と疑問が解決した暁には、週何食かはお世話になるかもしれない。

 

 ほぼ二人で同時に食べ終わり、ご馳走様と手を合わせる。

 いただきますは世界各国に様々な種類や派生型が存在するが、ご馳走様というのは日本と他数国にしか存在しない概念だ。

 個人的にこの言葉と習慣は、日本らしさと風流を感じるためには欠かせないことの一つだと思っている。

 海外でトラブルシューティングさせられていた遠い過去と、帰国してから最初に日本を感じたご馳走様という言葉と紅葉の赤は生まれ直しても忘れられない記憶だ。

 

 直ぐに思考が脱線するのが僕の悪い癖である。

 今は四方が目の前にいるのだからと、遠い記憶を振り払って口を開く。

 

「そういえば、四方って部活動説明会は行くの?」

「ん。一応行くつもりではあるけど、どこかに入る気は今のところないかな。左京は?」

「僕は天文部目当て。なかったら創部するしかないから面倒臭さそう」

「創部? わざわざ部活を作らなくても活動自体はできるんじゃ?」

「うんまぁ、活動自体はできるんだけどさ。夜に天体望遠鏡や荷物を持ってうろついてると職質が怖いんだよね。だから部活です! っていう言い訳がしやすい肩書きがほしいのもあるというか」

「ああ、なるほど。夜が活動のメインだからこその悩みか。

……でもちょっとそういうの面白そうだな。俺も混ぜてもらってもいい?」

「勿論。ただ天文部さえあれば創部の苦労はなくなるから、あってほしいなぁ」

 

 部活動説明会まで僕たちはそんな感じで駄弁っていた。

 

 

 

 

 

 

 そろそろ時間になってきたので、四方と食堂を出る。

 体育館に向かいながら、四方から昨日の歓迎会では盛り上がっていた話を聞いた。何でもクラスほとんどが参加したボーリング大会のようなものにまで発展したらしい。

 

 四方自身は2ゲームだけ参加して途中から買出しに行ったとのことでそれ以降は知らないらしいが、一之瀬が初対面同士のクラスメイト達とは思えないぐらいにまとめていたから、雰囲気が良くて楽しかったと言っていた。

 

 そんな感じに話しながら体育館まで行くと、既に結構な数の生徒が集まっていた。

 人ごみとか満員状態が嫌いな僕は、空いている空間がないかさっと周りを見渡し、ぽっかりと開けている空間を見つけるとそこへと進むべく四方へ声をかける。

 

「四方、あそこが空いている。すまんが、人ごみが苦手なので早めに移動したい」

「……やっぱりお前すごいな」

 

 四方がなぜか呆れ混じりに僕を褒めてきたが、それよりも優先すべきは広い空間への移動である。

 見覚えある緑髪の東風谷が台風の目になっているかのように空白が出来ていたので、何とかそこに滑り込んだ。四方も後からゆっくり着いて来て、やっと一息つくことが出来た。

 

「東風谷……でいいか。僕は左京、んでこっちは四方で、一応クラスメイトになる。僕達は説明会終わるくらいまで近くにいるかもしれないが、害はないと思うんで気にしないでくれ」

「はぁ」

 

 一応、空白の中心でうつむいて佇んでいるクラスメイトに声をかけ、自分と四方の名前を名乗ってここにいる許可をもらう。

 こちらをチラッと見てため息のような返事があっただけだが、これで説明会の間はここにいても不自然ではないだろう。

 微妙に周囲からの視線は感じるが、僕は集団に混ざって満員状態になるぐらいなら客寄せパンダのごとき道化になるのも辞さない。

 

 少なからず注目を集めてしまいそうで四方には悪いと思うが、東風谷の作り出した空白はたぶんワルイモノが原因ではない。

 そりゃあ、ちょっかいかければ反撃というか苛烈なナニカが返ってきそうではあるが、僕は生まれ直してからこうした不可思議な出来事を何度か体験してきた。

 

 その経験からすると、東風谷が纏っている空気は大分濁っている気はするが、追いまわしたり危害を加えようとしてくるお化け側ではなく、神社仏閣などに逃げ込むと追われないように守ってくれる神様的なそれだ。

 東風谷本人が、神様やお化けと関係あるのかはわからないが、こうして一時、空間の間借りをするぐらいは許してもらえるだろう。

 

「なぁ、ここなんか変じゃないか? 寒いというか圧迫感をかんじるというか」

 

 僕が神様っぽい存在への最低限の礼は尽くしたと安心していると、四方がそんなことを言い出した。

 そういえば四方は陰陽師・阿部清明の子孫だったかで霊感的なモノを持ってて、幽霊系のエピソードもあったっけ、と思い出しながら僕は答える。

 

「うん。四方の気のせいだ」

「いやいや! それは気づいてるけど面倒だからテキトーでいいやって反応だろ左京!」

「おぉう。 こんなに早く僕を看破されるとは」

「はぁ、もういい。こんなとこで言い争うのは東風谷さんに悪いかもだし、説明会も聞き逃しそうだもんな」

「そうそう、今重要なのは空いた場所でゆっくり聞ける事。それ以外はテキトーでいいって、たぶん」

「……知り合ってそう経たないけど、左京が呑気で適当なのは理解したよ」

「…………はぁ」

 

 四方だけでなく、俯いていた東風谷からも呆れたように見られた僕は反論しようと口を開く───。

 

「いや色々『1年生の皆さんお待たせしました。これより部活動説明会を行います。私はこの説明会で司会進行を務める生徒会書記の橘と言います。本日はよろしくお願いします』……もうそれでいいや」

 

───が、口を開いた瞬間に説明会が始まってしまったので、四方や東風谷の視線とかどうでも良くなり、目的を天文部を探すことにチェンジする。

 

 橘と名乗った女子の司会が部活名と役職、名前を言う度に、体育館の舞台上にそれぞれの部活の部長かそれに準ずる人が並んでいく。

 一人ずつアピールしていくのだろうが、思ったよりも数が少ないことに不安が募る。

 

 サッカー、バスケ、野球、バトミントン、ラクロス、テニス等々。体育会系・スポーツ系で有名どころの部活は大体揃っていたと思う。

 野球があったのは四方のあるかもしれない未来図からは外せないのであって良かったと安心した。

 

 だがしかし、だ。

 反面、文化系の部活はかなり少ない種類しか紹介されなかった。

 美術部や吹奏楽、科学部に茶道部などのメジャーなものは一応ある。変り種としてはボードゲーム部や経済学研究会などもあるが、電脳系や趣味を発展させたタイプの部活はあまりなかった。

 個人的にあると思っていたのになかったのは、文芸部や模型部にパソコン部、そして……天文部だ。

 

 そう、天文部はなかった。

 つまり作るしかないということだ。

 

 このポイントという特殊な制度と敷地を持つ高校で、バイトを探しながら、創部手続きは勿論、掛け持ちでもいいから顧問になってくれる先生への交渉や部員集めも場合によっては必要かもしれない。

 何よりないと何も始まらない天体望遠鏡は必須のものに昇格した為、ポイント入手はさらに急務となった。部員集めにも先生との交渉にも、せめて最低限の道具を揃えておくことは説得力が違ってくる。

 

 また行動の早さも重要だ。

 いくら広い敷地とはいえ天体観測できるスポットはそれほど多くない。

 そこを何らかの集団に先にとられたら目も当てられない。定期的に観測スポットを回るためには出来る限り押さえておきたいのだ。

 特に補導確率がほぼ0といってもいい学校屋上の使用許可は、創部ができなかったとしても、大金(大量か?)のポイント使用が必要だとしてもどうしてもほしい。

 

 大きく動くことは、頭も殊更良くなく、仲間作りが苦手気味な僕では思っているところでも思わぬところでも躓くかもしれない。頼めば四方は助けてくれるかもしれないが、できたばかりの友達を早々に面倒事に巻き込むつもりはない。

 しかし問題や疑問が入学以来増え続けているが、やることはやっと見えてきた。

 

1、アルバイト先、またはポイントの入手先を見つける

2、コーヒーとお茶の専門店を見つける

3、天体望遠鏡をはじめ天体観測に必要な機器や情報を揃える

4、天文部の創部と天体観測のスポットを押さえる

5、無料やCPといった胡散臭いものの情報収集

 

 とりあえずこんなところだろうか。

 所詮僕の頭なのでたいしたことは考え付いてはいないが、なんとなく5番目以外はすぐに動き出したほうがいいような気がしてきた。

 

 説明会はだいぶ進んできているようだが、目的のものがなかった僕にもうここにいる意味は薄い。

 偉そうに黙って睥睨してる奴が出てきてなんか静かになってきたことだし、出口までの道も拓いてきてる。帰り道が混む前に去るべきだろう。

 

「四方、天文部はないみたいだし僕はもう行くわ。

 東風谷、場所借りたみたいですまん。それとありがとう。

 それじゃ、また明日」

「はぁっ?! ちょ、まて!」

「……さようなら」

 

『私は、生徒会長を務めている堀北学と言います。

 生徒会もまた、上級生の卒業に伴い、一年生から立候補者を募ることとなっています。特別立候補に資格は必要ありませんが、もしも生徒会への立候補を考えている者が居るのなら部活への所属は避けて頂くようお願いします。生徒会と部活の掛け持ちは、原則受け付けていません』

 

 四方は僕を呼び止めようと振り向いていたが、丁度その時生徒会長の掘北と名乗る人物が話し出した。

 それにすぐ気づいて四方も口をつぐむ。

 一応、着いてくるかと思って少しだけ待ったが動く気配はなかったので、手を一振りしてから僕はそのまま出口に向かって歩き出した。

 

『……………………

―――私達生徒会は、甘い考えによる立候補を望まない。…………汚点……規律を変える

…………歓迎しよう』

 

 出口に向かっている間、堀北生徒会長の話が途切れ途切れに意識に入ってきていたが、僕はそれに対して特に何も思わず締め切られていた体育館の扉を開けて出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

余談だが、出口付近にいた男女二人組の男の方にメッチャ見られたのが微妙に気になっている。あっち方面の人間でないことを祈っておこう。

 




 やっと早苗を出せた。よう実キャラも二人を主人公グループ(グループすら現時点でないけども)に加えようと思ってるけど、このペースだといつになるのやら。
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