ようキャ   作:麿は星

43 / 198

 説明回のような何かになってしまった。

 そのせいか会話がほぼ皆無です。



38、悪辣

 

 個人的に注目している歴史に、インパール作戦というものがある。

 

 日本では愚かとか無謀とか判断ミスだとかの散々な評価だが、英国では高い評価になっている戦だ。

 ぶっちゃけて簡単に説明すると、後世の日本視点だと無謀な作戦と無様に負けた部分だけで評価されているからこその酷評だろう。

 一方、英軍視点では日本軍の勝利寸前でなぜか日本側が撤退していった夢でも見ているのか? といった不可思議な結末の戦なのだが、そこら辺は関係ないので割愛しよう。

 ともかくこのインパール作戦は、戦略など広い視界で見るか、戦術や結果など狭い視点で見るかで評価が激変する、と言いたいだけだ。

 

 さて、この作戦で僕が感銘を受けた部分なのだが、日本が戦自体は負けてもいいからとインド兵を最後尾に配置した点だ。

 つまりインド兵を前線に出さないことで「日本は本気で西欧の植民地を独立させようとしている」「植民地兵を矢面には立てない」と周辺国へのアピールしていたのである。

 モンゴル帝国でも、大英帝国でも、多くの近代国家でも。前線に出されるのはまず植民地等の異民族の部隊だった事を考えると、これは他と一線を画す戦略だと思う。後に米軍も、このやり方を部分的に採用して徴兵をやめた点も見逃せない。

 

 残念な事に、一般には負け戦や悲惨さだけに注目が集まっているが、もしもこの戦略通りに当時のインドで独立運動が始まっていたら、イギリスという国は消えていた。という論文を前の人生で読んだことがある。

 戦自体もさることながら、東のスターリングラードと呼ばれるのは伊達ではないのだ。

 

 こうした『負けて勝つ』戦略は、戦史を見る限り日本のお家芸といってもいいのだが、僕は一学生でこれがどこまで応用可能かの実験を目論んでいた。

 それで肝心の何のためかという理由についてだが―――。

 

 時代や場所のズレはまだいい。

 だが、四方の苦手分野をピンポイントで狙い打つ、騙まし討ち上等な校風。

 CPを含めた敵味方の蹴落とし合いを誘発するかのようなシステム。

 東風谷や綾小路など、どこかで物語に登場しそうなイレギュラーっぽい異才・天才のような存在。

 次々に起こる問題やトラブル。

 仙人や神様といったよくわからないが存在するナニカに、それらに伴ってなのか僕自身の転生などの起きている不思議な現象。

 

 これらの要素は僕に、本当にキャットルーキーの世界にいるのか? という疑惑を再燃させるには充分だったのだ。

 何故ならキャットルーキーでの四方の高校時代が、これほどの特殊性を持つ学校だったとはどうしても思えない。今の僕は、何もしなければ四方がプロ入りどころか野球を始めるかすら怪しく思えている。

 

 だからおそらく四方の最初のターニングポイント、体育祭などで野球部の奴から四方が「足の速さ」に目をつけられ野球部に入部する、という最低限の布石の準備だけはしておきたい。

 その布石の為の手札と選択肢を増やす一環として、東風谷とその神様達、綾小路というイレギュラーは勿論、佐倉や櫛田含む友達には、僕に付けば美味しい思いができるとなんとか思わせておきたいのだ。

 

 この友達連中については、僕の普通の外見や低い対人能力を考えても好かれているとは思わない(特に思考のわからない女子連中)が、それぞれ一定の利用価値と友好の感情は感じてくれていると信じたい。

 最低限、頼った時に交渉できるならそれで充分ではあるが、僕が感じている友情の半分程度はあると思って接したほうが日々が楽しいからだ。

 

 だからというわけでもないが、友達との交渉などの際、僕に利益がなくても想定と違っていても、目的達成に繋がるならかまわない精神で、全力で恩を売ることに決めていた。

 それはまさにインパール作戦の戦略のように、負けて勝つことで少しでも友好度を上げることに願をかけてだ。

 以前に何かで綾小路や一之瀬から行動理由を聞かれた時に、「自分の為以外の何物でもない」と返したのはまさにこのことだったというわけだ。実に利己的だろう。

 

 だが、それをしたいくらいに、僕はキャットルーキーという物語が今でも好きなのだ。

 頭が良い四方や綾小路に櫛田……いや他の奴らにも。きっと僕の行動原理は不可解に思われているだろう。

 しかし、少なくともこれから体育祭前後までの数ヶ月だけは、望む未来の為に思いつく手は全て打ち尽くすつもりだ。

 なので、もう諦めて僕の船に強制乗船していてくれ。悪いようにはしないから。

 と、内心言い訳がましくしても止めない程度には見たい未来があるのだ。それは面倒事に自分から飛び込んででも、実現させたいくらいに……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Cクラスに訪問した時からしばらく。

 僕はそれなりに忙しく過ごしていた。

 ただ一之瀬や担任にはあれ以来なにやら目をつけられたのか、なにかと説教やら雑用手伝いやらをやらされ、逃げると一度だけだが会長を召喚してくる禁じ手まで行使された。無駄に手回しの良いことである。

 おかげで放課後以外は逃げ回る日々になっていた。

 

 当然、そんな中でもガチャ機本体やカプセルの仕入れや守矢の分社の移設等々、それ以外にもやることはいくらでもある。なので、四方と佐倉、時々暇そうな綾小路に裏方を頼み込んでこなすことで、何とか達成条件をクリアしていったのは、むしろ当たり前の対策であろう。

 

 そして何よりも重要なことは、成功の鍵になり得る者をスカウトすることだった。

 それは瓢箪から駒的に発見した龍園ではなく、僕には元々目星をつけていた人物がいたのだ。

 ただ僕自身は何度か愚痴を聞いただけでさほど親しくない相手だったので、ここでは東風谷を頼った。綾小路か佐倉でもコンタクトは取れたかもしれないが、下の名前を呼び合うほど親しい東風谷が適任だったのだろう。

 もったいぶる意味もないので明かすが、その人物は櫛田桔梗という。

 

 結果から言えば、最後こそ出荷直前の豚を見るような目で見られたが、全体的には色よい返事をもらえた。

 これはおそらく東風谷の影響が大きかったに違いない。

 

 なんせ櫛田には探して会いに行ったのだが、間が悪かったのか櫛田と一緒にいた女子がなんか怒って帰ってしまったのだ。

 実は僕はあの時、交渉失敗を覚悟していた。

 

 あの可哀想な娘が綾小路に一番心を許してると理解できた瞬間に、一歩引いてアドバイスを送ったのだが、どうも行き違いが起こって怒らせたのである。

 それからは東風谷に倣って、なるべく場が落ち着くまで彼女を見ないようにして口数を減らしたのだが、食い下がられて口を出すたびにヒートアップさせるという悪循環。

 櫛田は笑っていたが、交渉前に彼女の慈善事業をぶち壊したかも? と、正直諦めムードだった。

 

 それが何とか持ち直したのは……意味不明に笑いすぎてふらついていたのを、東風谷に回収してもらってからだ。なんとそれだけで櫛田の機嫌が良くなったのは奇跡だろう。

 それからはとんとん拍子に話がまとまったから、東風谷がいなければこう上手く事は運ばなかった可能性が高い。

 

 しかし東風谷との友好度だけで帳消しにして、引き受けてくれたと考えるには腑に落ちない部分が多いので、何らかの不測の事態も起きていたのかもしれない。

 歩けないほど笑いまくったせいで脳に酸素が足りてなかった可能性や、一番近くにいた東風谷や交渉の場に着いてきた綾小路がなにか見えない援護をしてくれた等々。

 櫛田が笑った原因や、綾小路が疲れた雰囲気を醸していた事など、他にも僕にはわからない事だらけでもうお手上げだった。

 あれら一連の出来事は未だに原因不明ながら、このように考えてしまう程の失敗だろう。

 

 ただまぁ、改めて色々考えても真相に迫れそうになかったので、綾小路に丸投げするつもりで思考停止したのだ。彼ならあの娘の友達っぽかったし、やってくれるに違いない。

 それに比較的簡単に櫛田を引き入れられたのは圧倒的僥倖である。

 これ以上、わからないことで藪を突いて蛇を出すつもりはないので、シンプルに東風谷のおかげだと片付けて、僕は忘れることにしたのだ。

 

 

 

 そんな経緯であったが、櫛田が引き受けてくれてからは進捗の遅れていたビジネス方面が恐ろしい速度で進み始めた。

 打ち合わせで詳細を詰めていき、具体的なビジネスプランにするとともに、恋人ガチャに入れる恋人募集の紙、恋募札を記入してもらう場所について、まずはっきりと狙いを絞った。

 学食ではなく、4月に戸塚お勧めということでも行ったお洒落なカフェ、パレット。

 ここ一本である。

 今では女子の人気スポットになっているらしいので、ここが適所だと櫛田は推していたのだ。

 

 すでに挙げたとおりいくつかの情報は櫛田提供だが、宣伝も生徒会や教師に頼らない生徒間のネットワークと口コミをメインとした。ポイントに余裕がないと思われる1年生は端から諦めて、2・3年生に狙いを定めていた元々のプランも相性がよかったのだろう。

 

 その他いくつかの変更点を現実に落とし込む為の会議でも、櫛田と四方によって整える事ができたのは良い誤算である。僕だけで立案・実行していたら、穴だらけになるところだ。

 本当にスカウトできたのは幸運である。

 

 また櫛田の功績はこれだけではない。

 パレットで独自のポイントカードを発行してもらい、恋慕札1枚書くごとに1ポイント、10ポイントで500PPの割引券と交換というアイディアの提案も、店側にスムースに受け入れられたことだ。

 

 これは櫛田と一緒に交渉に行ったら、これなら宣伝効果と来客アップを見込める企画ということで、月2万という格安価格で請け負ってくれた。それは櫛田の猫かb……愛想良い交渉スタイルに、パレットの交渉相手が絆されたようにすら見える手腕だった。

 

 

 

 それとガチャの設置場所だが、東風谷が守矢の分社を移設した神社には神主や巫女などの管理人がいなかった。なので、下準備しておいた手筈をもって坂柳理事長にコンタクトをとり、東風谷が仮の巫女をできるように手配すれば、あとは思うがままだ。

 程無く神社の隅にガチャを設置することができた。

 基本巫女に資格は必要ないというのもあるかもだが、苦笑しながら許可を出してくれた理事長にも感謝である。

 

 学校からの許可を得た僕達は、次に東風谷と相談の上で参拝客を迎える準備にかかる。

 その『名前のわからない』神社は最初、電子マネーが支払い手段の街な為か、ガランガラン鳴る鈴や賽銭箱、手水場もない、鳥居と社(と分社)、それに小さな池だけの神社だった。

 

 だが、それらがない神社は流石に寂しくまた人も来ないと思い、青娥さんの伝で手に入れてもらって色々配備した。そして入れる賽銭がなければただの箱でしかないので、5円玉と10円玉も何本か仕入れて絵馬やお守りとセットで販売することに。

 ついでに青娥さんや会社関係のビジネスも展開して円を確保できたのは僕にとっても一石二鳥で、学校や神社でのポイント稼ぎにも影響しないように調整してもらった。

 

 ちなみに、境内で販売する絵馬やお守りは東風谷がどこからか調達してきて、費用も東風谷持ちとすることにした。というか、「設備はともかく、小物は任せてください」と申し出られた。

 

 ガチャ機本体も当初は当然1台だったのだが、運営を始めて1週間を過ぎるころには、1台2台と増設できるくらいには繁盛をしている。

 きっとそれだけ恋人を欲していた男が多かったのだろう。

 

 ああ、そうそう。

 櫛田にやらせようと言ったエロく食べさせるパフォーマンス屋台だが、場所・仕入れ・申請の煩雑さ・雰囲気が壊れる、などの理由により櫛田・東風谷の両名から無事却下された。本当に採用されていたら問題だったので、特に東風谷から却下されてホッとしている。

 あれはそれらしい理由を作って櫛田を引き入れやすくしつつ、佐倉を人前に出さなくてもよくする理由作りの一環なので、公序良俗に反してまでどこかからの攻撃材料を作るつもりはなかったのだ。

 

 

 

 あとこれは余談なのだが、本格オープン前日に暇な友達何人かで参拝して、みんなで賽銭や絵馬のお試しをしたら、そこで事件?が頻発した。

 

 綺麗になった鳥居を見た東風谷は何故か無駄にうろついた挙句に佐倉に抱きついて固まって動かなくなるわ、櫛田はいきなり高笑いを始めて四方と佐倉と偶々来ていた椎名に凝視されてるわ、そのせいか佐倉や綾小路まで挙動がおかしくなるわで大変だった。

 それも普通の常識人たる僕と四方がいなければ、事態収拾ができたか怪しいレベルでだ。

 こいつらには勿論感謝しているけど、唐突な奇行を集団で起こすのはやめていただきたいものである。

 どうでもいいが、通りすがりの変人である椎名と、もう佐倉と同じ準天文部員だと勝手に思ってる綾小路は、笑ったり見ているだけで役に立たなかった。

 

 

 

 

 そしてオープンから16日後、6月29日の土曜日。

 この頃になると、ガチャや櫛田の宣伝の成果もあってか、アクセスの悪かった神社にもカップルが多く来るようになっていた。ほとんど2・3年生だが、カップルで参拝してお賽銭を入れたり、絵馬を書いてたりと、まるでデートスポットの様相だ。

 

「うおおお! またハズレたぁああ!」

「量産型、量産型、量産型、量産型、量産型、量産型、量産型」

「可愛い子、きてください! 神様仏様可愛い子様お願いしますぅうう!!!」

 

……隅に並べてあるガチャを、悲壮な顔と声で回しまくっている哀れな男達を見ない振りすれば、だけども。

 

 そんな中、東風谷と櫛田は来客対応をしたり、掃除やガチャの補充、絶望状態に陥っている男達を洗脳……もとい慰め気味に励ましたりと、八面六臂の大活躍である。

 

「先輩っ♡ 残念でしたね。でも先輩かっこいいし、次がありますよ!」

「……すいません。当たりを出せればいいんですけど、私達にも入れた後は操作できなくて……」

 

 主に櫛田の本気で惚れられないように甘言を弄する特殊技能が、この神社では猛威を振るっていた。

 甘言とは、心折れた時こそ最大限の効果を発揮するので、この役を櫛田中心に回すのは繁盛の必須条件といってもいい。むしろ、ここでお互いポイントと評判を得て、東風谷への見本的な形にできる点が、櫛田を最良の人材としてスカウトした最大の理由だ。

 

 そして僕は販売業務をしつつ、東風谷さん、櫛田さん。一思いに、信仰とポイントを落とすリピーターへと変貌させてあげなさい。とか某宇宙の帝王みたいな事を思いながら、その極悪コンボを眺めているだけである。

 個人的には、櫛田の上目遣いを含んだ演技と怒らせない程度の微妙に無神経な発言が絶妙に惚れないバランスで、しかも男が他から孤立したタイミングを見逃さない計算高さが空恐ろしいと思う。

 

 しかし、流石に人の中に潜り込む手腕に定評がある櫛田。

 予想通り、1番人気は間違いなく彼女だった。

 東風谷はまだぎこちないが櫛田からその技術を教えてもらったり盗んだりすれば、実家や神様達の事を抜いても役立つはずだ。少なくとも容姿はお墨付きなのだし、これからは普通に信仰を増やせるように工夫すれば目的も達成できるだろう。

 

 

 

 販売には今日は、ガチャコインを僕が、絵馬を四方が、お守りやおみくじは顔を髪で隠し気味な佐倉が担当している。賽銭はコイン以外を買うことで5円玉・10円玉の4枚セットが付いてくる仕組みだ。

 

 販売は一応一人でも可能なのだが、折角広めなスペースでもあるし、裏方だけじゃなくてこっちもやってみたいと言われたら断る理由はない。

 コイン以外でこちらに来るのは大抵カップルで、防犯用の監視カメラも設置してあるから、今までに問題は起こっていない。

 ただコインは基本男子相手なので、僕か四方、綾小路が売り手をするようにしているだけだ。

 

 それとここには極稀に会長・橘書記の生徒会組や鬼龍院先輩が、レア枠で葛城達や椎名が協力してくれる時もあり、友達連中+αなども来た事があるので、運次第で珍しい遭遇ができると妙な評判も立ち始めているようだ。

 個人的には、奇妙な服を来た“少し変な”状態(森近と名乗っていた)のにーちゃんに色々尋ねられた結果、この神社の正式名がおそらく博麗神社じゃないかとわかったのは僕の好奇心を満たしてくれた。

 ともあれ、他のSRである会長達と鬼龍院先輩は一度ずつしか来ていないが、人気者なのかやたらと上級生の来客に驚かれていたのも印象的だった。

 尤も、会長や橘書記は協力しに来たんじゃなくて、お客だったチャラそうな2年の副会長とやらのけん制?に来たらしい。

 なので、すぐにその先輩と連れを引っ張って帰ってしまったが、珍しく説教をしてこなかったので助かった。その為、あのチャラ男先輩と彼女さん?には影ながら感謝していたりする。

 

 また肝心の収支だが、これは成功といってもいいだろう。

 半月ほどで、すべてひっくるめた売上は40万近くに上り、パレットとの提携費用やガチャ機本体、監視カメラなどの経費を差っぴいても、純利益は20万を超える。

 残り2週間ほどがあれば、売上50万は確実に超えるだろう。

 主要人物がB・Dクラスともに3人ずつなので分け前の計算も楽だし、これならDクラスの3人に多めに分配したりもできる。

 

 先生や生徒会から度々注意や監視染みた視察がなかったら、1ヶ月ならずとももっと続けたかったが、こうしたアングラ系の商売を規制する校則を各方面から要請された結果、来月の中ごろには規則違反になってしまうのだ。

 まぁ、元々それほど長くはできないとは思っていたし、バイトがある僕と佐倉は予定の調整が大変だったので、続けられたとしても誰かに任せることになっただろうが……。

 

 ともあれ、神社の本業だけはそのまま東風谷が引き継げるように理事長や会長と交渉したし、恋愛成就の評判は定着しつつあるので、しばらくは廃れる事もないはずだ。

 東風谷の反応も悪くはなさそうだし、だいぶ回り道したがこれなら神様達への恩返しはそれなりにできたと考えてよさそうである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ところで関係ないが。

 

 僕は東風谷や櫛田とは別口で、ガチャというビジネスを目的の為に利用していた。

 実はこっそり桜プロダクション名義で佐倉、いや雫の広告を作って外の企業に恋人ガチャのビジネスモデルを売りつけ、他のアイドル業やプロデュース料の収入同様に、青娥さんに円で預金してもらうように頼んでおいたのだ。

 

 最初は、この預金から僕や佐倉のバイト代支払いの足しにしてもらう程度だったが、雫の人気があったせいか今では予想以上の収入源となっている。

 それにビジネスモデルも思っていたよりも高く売れたらしいし、それだけ青娥さんの手腕かコネ、もしくは雫というアイドルは価値が高かったのだろう。

 おかげで万が一の時に切れる札が一枚、どうにか使い物になる最低レベルに達した。

 

 初対面時に会長から説教を受けた際、ポイントの動きが学校に即座にバレると知った以上(当時は匂わされただけだが)、このように別方面の力を考えておくのは凡人として当然の対策だと思う。

 この初動なら、たとえ似たようなことをしている天才や秀才がいたとしても、僕が凡人であっても、そう遅れ取らないはずだ。

 

 しかし遅れを取らないのは一回だけなので、この他にも経験や知識で想定できる問題の対処法・回避法は、これから何通りも準備していくつもりだ。

 そしてその中には当然のように、卑怯・卑劣といえる用意もある。

 

 これらは誰かに指摘、もしくは気づかれるまでとても人には言えないが、もし知られたら……そうなったとしても、できるだけ友達に嘘はつきたくない。

 嘘を貫く行為は僕には高難度過ぎるのだ。

 なら最初から極力しないほうがいい。

 だから僕は嫌われる可能性が高くても、きっと気づいて聞いてきた『ソイツ』には答えてしまうだろう。

 なんとなく何人かの候補を頭に浮かべてみると、僕はそうする予感がある。

 

 ただまぁ嫌われる覚悟の上で止まらずに実行して、話しぶりから色々気づいているっぽい鬼龍院先輩や青娥さんと笑い合えてしまうあたり、僕は自分で思うよりも悪辣なのかもしれない。

 





 ようやく守矢神社(の分社)が出せた。
 早苗は巫女っぽいことしてる方が『らしい』と思ってたので、神様方への恩返しついでに仮とはいえ巫女にできてよかった。
 かなり無理矢理だとわかってるけど、とりあえず満足です。

 それと蛇足。
 最後の方、ガチャビジネスを任せようとしていた人材の有力候補が龍園なのは言うまでもない……だろうか?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。