ようキャ   作:麿は星

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 今更言うことでもないですが、PP・CPはpr・clのことです。
 個人的にこっちのほうがしっくりくるので、勝手に変えてます。



39、友達

 

 6月の末日は僕がバイトに入る日なので、ガチャはお休みだ。

 佐倉はシフトに入っておらず、青娥さんもやる事ができたと外出していったので、久しぶりに昼からずっと一人でゆっくりできた。

 ここは、客が来ない上に僕にとってフェイバリットな物に溢れた最高の喫茶『室』である。

 一応これから、佐倉…というか雫の画像・動画を編集や加工したりチェックしたりもするが、掃除と在庫チェックで本日しなければならない業務は終わりだ。

 

 ちなみに、佐倉とは基本的に一日シフトをズラしているだけなので、明日は二人、明後日は佐倉だけ、明々後日はどちらも休み。といったローテーションになる。

 ただ、月13日さえ守れば日を空けるスケジュールも大丈夫だし、今日のように青娥さんが不在になるなどの理由で昼前~夜の2日分になったり、佐倉の撮影条件次第(朝や昼の写真を撮る為)で日時の変更・延長もできたりと、結構自由な感じになっていた。

 

「あ~~~。終わった~」

≪夢月~、青娥に言われた分はもう終わったのか~?≫

「終わったぞ~。これからお茶飲んで一休みしたらPC作業あるけど、とりあえず終わった~」

≪お~、じゃあ青娥からの伝言だ~。棚の羊羹食べていいらしいぞ~。いるか~?≫

「いるいるぅ。あんたもいるか~? お茶も淹れるぞ~」

≪私は~~、ここから出られないから~、いつものように気にするな~≫

「りょーかいだ。伝言サンクスな~」

 

 在庫チェックしていると、偶に声をかけてくる顔も名前も知らない通称『冷蔵庫の人』。

 冷静に考えるまでもなくおかしいのはわかっているが、僕や青娥さんの名前を知っているし、害もないので普通に話す仲になっていた。青娥さんが不在の時しか話しかけてこないところを見ると、真に留守を任されているのはこの冷蔵庫の人っぽい。

 こういう時、ここは本当に世間一般の常識を投げ捨てているとつくづく思う。

 

 

 

 お茶と羊羹で一服して平穏を満喫した後は、ガチャビジネスの畳み方を自分の整理の為に文書化しながら、東風谷が困らないように事後処理マニュアルを作った。

 勿論、こちらは副業みたいなものなので佐倉関係の作業が優先なのだが、友達のアイドル顔を画面越しに見続けていると飽きる。なので区切りがいいところで、始めた商売の畳み方に浮気するのは仕方ないことなのだ。

 

 ガチャはほんの少しもったいない気もしているが、規則のこともあり、ここが引き際だと思う。先生や生徒会が出張りだしている今、欲をかくべきではない。

 それにもう僕の元々の目的である小銭は充分すぎるほど手に入ったし、へそくりもできた。

 ポイント支給日も明日だし、Bクラス組とバイトやアイドルをしている佐倉には必要ないので、これ以上無理に稼ぐこともないだろう。

 

 それと忘れてはならないのが、稼いだPPの分配だ。ここを疎かにすると関係悪化の要因になりやすいので、決してケチらず太っ腹なところを見せるのがいいだろう、

 結果、話し合って、功績が高くポイントの使い道が多い櫛田に一番多く6万を。ポイントの入手経路が少ない綾小路に二番目に多く4万7千を配分することになった。ちなみに僕を含めた他4人は4万ずつで、綾小路の額は端数分である。

 

 とはいえ、これはその日ごとに割り出した純利益から次の日に分配している総計なので、ポイントが枯渇寸前だった僕はそこそこ使って今では2万数千程度に目減りしていた。

 それに本当は櫛田と綾小路には、他にも承諾を得た上であと2万ずつ乗せるつもりだったのだが、怪しまれたのか初日に現在の配分を主張・決定された。なので櫛田と綾小路の取り分は、こっそり四方に協力してもらって貯金してある。

 

 これは思い切って経費として使うか、残ったらガチャ期間終了後にまとめて二人に送りつけるつもりだ。

 僕自身のポイントは、明日になれば久しぶりに10万近くになるので、ぶっちゃけそれで必要充分である。余りは欲しいだろう奴に渡したほうが有意義だろう。

 

 CPも中間テストの結果が反映されていたのか、確認したらいつの間にか753CPとなっており、3万のクラス貯金を抜いても大分余裕が戻り、バイトの給料も10日後くらいに入る。しかも残ったガチャの運用期間もまだそれなりにある。

 基本、中2日でやっていたこれまでから逆算して、単純にガチャ開催はあと5~6回。

 これだけあれば急に失速しない前提だが、持ち金は20万ポイントを超えるに違いない。

 

 そうなったら、お祝いに最高に気分の良い夏の星見へ行こう。

 最近はくそ暑くなっているし、今度は南の池なんて涼しげで楽しそうである。

 ああ、自分で始めたとはいえ、この仕事の多い期間が終わるのが待ち遠しくてしかたない。

 そんな感じに“僕”の6月末は、バイトしながら極めて平穏に過ぎていった。

 

 

 

 

 

「みんな~、ごめんね。ちょっとトラブルがあって1年生のポイント支払いが遅れてるけど、解消次第支給されるから心配しないでね」

 

 7月1日の朝。

 担任が何故か“僕の方”をチラチラ見ながら、ポイント支給の遅れやCPの変動について説明していた。

 

 そういうところだぞ、担任。

 意味ありげに何度もこちらを見るものだから、四方をはじめクラス中に「左京が何かやったか?」みたいな雰囲気が漂いだした。

 後ろから二番目の席だから注目こそされてないが、注意のベクトルが僕に向かって流れ出した事くらいはわかるのだ。

 

 まったく、事実無根の言いがかりで人畜無害・地味ポジの僕にヘイトを向けないでほしいものである。そんなだから、腹黒だの胡散臭いだのと言われるのだと声を大にして言いたい。また説教を食らうかもしれないから言わないけど。

 

 それに四方や柴田も、少しは東風谷を見習うべきだ。

 特に柴田は、振り返ってまで遠くの僕を見るんじゃない。

 代わりに東風谷を見ろ。

 

 その東風谷は、担任がこちら方面に向ける視線に動揺を隠せていない。

 いつになく緑頭がフラッフラしてる。

 まるで自分が原因だと思っているかのような仕草だ。

 逆に言えば、僕が原因だとは頭の片隅にもないだろう。

 友達とはかくあるべしである。

 

 ともかく、ガチャで稼いだからポイントがすぐ支給されなくても僕に問題はない。

 クラスメイト達も浪費家は一度痛い目を見ているし、まだ余裕があるだろう。

 となれば、一応確認しておくべきは変動したCPだ。

 あまり重視していないが、もしも他のクラスとのCP順位が変わっていたら、折角慣れてきた『B』の自己紹介ともお別れになる。ころころ変わってもらうようでは座りが悪いので、しばらくはこのままでいたいものだ。

 

 さて、そのCPはといえば。

 

 A 1044

 B 763

 C 526

 D 90

 

 これだけくっきり分かれていれば、いきなりクラスが入れ替わることはないだろう。

 ただ担任の背後に張り出された紙を見てそう安堵しつつも、これから本格的な何かがある予感がする。

 理由としては佐倉達Dクラス組に不利すぎるので、挽回というか状況打開のチャンスが早いうちにないと、学校が重視している『実力』を発揮する下地ができない為だ。

 それならポイント大量獲得系のテストや他クラスとの勝負や賭けみたいなイベントが、少なくとも年1回くらいはあっておかしくはない、と思う。

 

「そのトラブルとは何か質問してもよろしいですか?」

「今は言えないかな」

「今は、ということは」

「う~ん。学校の判断だから、いつになっても言えないかも? ごめんね、私にはどうすることもできないんだ」

 

 考え事をしている間に神崎が担任に質問していたが、いつぞやのように言えないの一点張りだ。

 その対応に、他の生徒達も口には出していないけど不満そうな奴はいる。

 給料っぽいものが出る日に出なかったのでみんなの不満はわかるが、Sシステムの説明時からわかるように見た目によらず部分的なコンプライアンスを遵守する担任に正面突破だけでは無理だろう。こういうタイプは、切り口を変えて隙を作り出すとかしないと伏せた札を開示しない。

 しかも仮に担任が口を割って原因がわかっても、ポイントが支給されるわけではないので意味がない。

 

 多分神崎はそれをわかっている。

 一之瀬が黙ったままなのも、クラス内の役割分担をしっかり把握した上で神崎に任せているのだろう。

 言ってみれば、これは神崎が不満を持つ生徒の代弁しているだけなのだ。

 そして予定調和で必要な茶番は、僅かな謎を残して恙無く終了した。

 

 

 

 担任から受けた謂れ無きチラ見のせいで午前の教室内の居心地が悪かったので、今日は青空弁当の気分になり屋上に向かっていると、階段の上り口で落ち込んでそうな雰囲気の綾小路を見かけた。

 コイツ、いつも一人でいるな。

 

 ちなみに四方は柴田や神崎他男子に呼ばれて、東風谷は昼休みのいつも行っている水路方面へ向かった。

 一応どちらからも声はかけられたのだが、面倒事の匂いを僅かに感知してしまい、逃げ腰になったのだ。

 まぁ他クラスの綾小路なら気楽に話せそうなので、昼食に誘ってみる。

 

「しかし昼に綾小路と会うのは珍しいな」

「いや、ちょっとビックウェーブに乗り損ねてな……」

「綾小路、海を眺めてるだけじゃ乗る乗らない以前の問題だぞ?」

「なんで左京もわかるんだよ? お前は堀北か」

 

 そして了承も曖昧なまま自然に同行の流れになったので軽口を叩くと、相変わらず妙なボケを放ってきた。なので、適当にありそうなことを喩えて返したら思わぬ反撃を食らった。

 念の為、階段の方を確認してみるが、当然そこに会長はいない。

 でもいるかと思って肝が冷えたので、綾小路に注意喚起をしておこう。

 

「そんな黄昏た雰囲気してれば誰でも想像つくわ。あと名前を呼んではいけないあの人の名前を呼ぶんじゃない。呼ばれて飛び出てきたらどうする」

「ハリポタかよ。てか、左京が言ってるのって生徒会長のことだろ? オレが言ったのは妹の方なんだが」

「妹? 会長って妹がいたのか……」

「お前……マジか? 一度、オレや櫛田がいる時に一緒に会ってるだろ。次の日、大変だったんだぞ」

「ふ~ん、そうだっけ……でも、まぁいいや。それは置いといて、せっかく来たなら昼飯食ってかね? 昨日の残り物だけど、そこそこ量が多く「食う!」て?」

 

 面倒くさい地雷的なモノを踏んだと感じて雑に話をそらしたら、なんかすごい勢いで了承された。

 なんで綾小路は、こんな食料なさそうな場所に来ておいて飢えてるんだ?

 内心ちょうどいいと思いながらも、腹減ってるんなら素直に学食行けよ、とも思っていた。

 

「お、おう。じゃあ、そこの椅子2つ持って来てくれ。僕はテーブルな」

「了解だ」

 

 ただ今日の弁当が結構な量あるのは事実なので、正直助かる。

 すでに3食連続で、ほぼ同じメニューなのだ。

 これで持ち帰ってまた夜も食うのはかなりキツイ。

 昨日はバイトが早めに終わったから、調子に乗って作りまくってしまったのである。

 自分だけだと絶対また残るので、是非とも消費しきってほしい。

 そんな事を思いながら準備を進めつつ、綾小路の胃に向けて僕は期待に胸を膨らませていた。

 

「なあ、今更だが残り物って何だ?」

「ハンバーグとヴィシソワーズだけど、パンとパスタもあるからそこはお好みで。あ、知ってるかもだけど、ヴィシソワーズは冷製スープだ。最近は暑いからな」

 

 ハンバーグとかコロッケって、自炊だとつい作りすぎてしまうよね。

 あるある―――って、ねぇよ。

 百歩譲って、あっても20個は超えねぇよ。

 ヴィシソワーズやパスタ、パンで誤魔化しても、もはや飽きと胸焼けを抑えられないくらいだよ。

 途中で気づいて止めろよ、僕。

 

「なんでそんなものが残り物に……」

「下手に時間があると、ついやっちゃうことってあるよな?

……うん。朝でようやく半分ちょい消費した分量を、昨夜作っちゃったんだ。味はそう悪くないと思うから、マジで遠慮とかするなよ」

「どんだけ作ってるんだよ。少しは自重しろ」

「その返し、反論できないから勘弁してくれ」

「お前は5分くらい前のオレか」

「何のことだ?」

「……いや、なんでもない。彷徨っていたオレに向けられた冷ややかな目を思い出しただけだ」

「へぇ」

 

 暑いので、朝に広げておいたパラソルと建物の影で食事の準備をしながら、綾小路に軽く事情を説明した。

 するとまた変な言葉を返されて、意味がわからなかったのでスルーする。

 話すたびにだいたい思うが、綾小路はわけのわからない奴である。

 まぁ、これはきっと彼流の軽口のようなモノだろうし、食事して話してれば徐々に慣れていけるだろう。

 幸い、冷めてもおいしいハンバーグと冷製スープなので、食事自体は満足できる質と量だから話の種にはなるはずだ。

 

 

 

 そして食べ始めてしばらく経った頃、綾小路がおもむろに口を開いた。

 

「なあ」

「あー?」

「なんか予想外に美味いんだけど」

「そりゃ、残り物とはいえ友達に不味いものは勧めないだろ」

「……友達。オレと左京は友達なのか?」

「んなもん自分で決めとけばいい。僕は友達と思ってるんだから、綾小路がどう思ってようが僕は友達対応するだけだ」

「…………………………そうか」

 

 実際、綾小路がどう考えていようと、すでに僕は彼を面白い友達と認識してるので対応も結果も変わらない。

 それに現在、僕の飽きが限界にきているハンバーグの山を美味いと言いながら崩していく綾小路は、某国民的アニメの名台詞「おお! 心の友よ!」と言いたくなるくらい頼もしい。これで友達だと思わないなどありえないだろう。

 

「ちょっと聞きたいんだが、左京にとって友達の定義とかあるのか?」

「綾小路、お前……それ、友達がいない奴の台詞だぞ」

「そ、そうなのか……?」

「まぁいいけどさ。

 ああ、定義といえるか知らんけど、僕にとっての友達は信頼できる奴…かなぁ」

「信頼?」

「うん、あえて誰がどれとかは言わないけど……。

 よくわからん奴、変わった奴、性格終わってる奴。こんな風に色々アレな要素があっても、信じて頼った時に応えてくれる奴は友達だと思ってるってこと」

「アレなって、お前……」

「僕からすると、綾小路はいまだによくわからん奴だけど、佐倉の時や、最近だとガチャや今日も助けてくれたから友達なのは確定だな」

「よくわからん奴……。素直に喜べないんだが」

「好きに思えばいいさ。さっきも言ったが、僕は好き勝手に友達だと思ってるからな」

「……」

 

 つい指摘してしまったことで、なんか綾小路の悲しい過去を発掘しそうになったので、急いで話題を戻した。

 何気にこれは僕にも効果抜群な話題なのだ。

 発掘を続けて、僕と綾小路の食欲を減退させるようなことがあれば、誰の得にもならない。

……危うく綾小路諸共、無駄に自爆するところだったぜ。

 

 でも綾小路が、物思いに耽ってるというか考え事をしてるというかで、影響が少なそうなのはよかった。

 尤も、彼のポーカーフェイスはいつも僅かしか崩れない。

 なのでいまいち読みきれていないが……多分、喜んでいる?っぽい気はするから、発掘しかけたことは許されたと見ていいだろう。

 

「しかし、そうか。オレと左京は友達だったのか。

―――いや、待て。それなら、もっと一緒にどこかに遊びに行ったり誘ったりがあってもいいんじゃないか?」

「あのなぁ。なんでいきなり面倒臭い彼女みたいなこと言い出したんだよ。野郎同士の友達なんて、自然に集まって適当に遊ぶくらいでちょうどいいだろ」

「……そういうものなのか? でもクラスの友達は、ほぼ毎日一緒に昼飯や遊びに行ったりしてるぞ」

 

 そうして安心していると、綾小路は何を思ったのか、野郎相手にすれば黒歴史確定の言葉をこぼしてきた。

 その余波で勢いあまって僕の黒歴史である以前佐倉に放った「寂しい」発言の傷まで開いていく。

……後で転げまわって、癒しつつ忘れ直す予定を入れておこう。

 それにしても―――。

 

 これは重症ですわ。

 ある意味、僕や東風谷よりヤバい領域に至っているように見える綾小路。

 僕の見たところ、友達への憧れか何かに幻想を抱きすぎ、浮き足立ってもはや浮遊してるんじゃなかろうか?と思わせるレベルだ。

 なのでここは一つ、地に足を付けさせる指摘でもしてみよう。

 

「う~ん。そもそもなんだけどさ」

「ああ」

「綾小路って、そういう奴らの中に入って楽しめる? 僕も似たようなものだけど、なんか綾小路がそういう風にパリピに混ざって騒いでる想像が全くできないんだけども」

「え? パ、パリピ?」

「party peopleの略。たくさんの人達で盛り上がるのが好きな奴ら。例えば、櫛田みたいに人の集団こそが居場所みたいな奴? 実は内面的に櫛田にこの例えは微妙なんだけどな

 こういう何処にでも一定数いるだろうパリピな奴らの中に、お前は本当に入って行きたいのか?」

「うっ! た、確かに…あの中にいるオレを想像してみると、楽しそうだけど凄く疲れそうだ。というか、すでに何度か似たような体験してた気もする。

 つまり、イメージトレーニングは完璧なはずなのに結果に結びつかなかったのは、もしかしてオレがパリピに向いてなかった……からなのか?」

「イメージトレーニングって……。色々重く考えすぎだろ。綾小路は何がしたいんだよ?」

「……………………何がしたいんだろうな? 自由で、平穏で、友達と楽しくやりたい……とかだろうか?」

 

 適当に指摘をした結果、浮遊していた綾小路をはたき落とす事になった件。

 ま、まぁ、内面を吐き出すことで楽になれる事もあるだろうし? 元々雑談だったのに、相談とか愚痴に変わってたから適当に答えたくなったなんてよくあることだし? そもそも僕相手にする話としては不適切だし?

 

 僕がそうして自己弁護の理論武装で固めている間、綾小路は自身の内面を再構築して立て直そうとしているかのようだった。

 お互い、ハンバーグは口に運びながらだから、いまいち深刻さは感じられないが……。

 だから欠片も罪悪感はないけど、傷口を自覚させたところに塩を塗りこんでしまった気がしたので、フォローっぽい事もしておくことにした。

 

「それって佐倉の件や守矢神社の商売に関わってる時点で、全部達成してるようなものじゃん。それで納得できないなら、僕と四方を除いた我がイロモノ集団、天文部の仲間入りすることで手を打ってみないか? 綾小路のイロモノ指数ならトップも狙えるぞ」

「オレがいつも間にイロモノに!? ていうか、謎の指数を俺に適用させないでくれ!」

「そうすれば友達と遊んだり、イベント参加もできてWINWIN! やったねっ!」

「聞けよ!?」

「櫛田と東風谷は微妙だけど自動的に最低3人も友達できるお得さに、一応綺麗どころも揃ってるから目の保養もできる! うわー、断る理由なくない?」

「それは……悔しいが、冷静に考えると魅力的な提案だ」

「クックック。いい加減観念するんだな、綾小路。

 さあ、これからは僕の手のひらの上で踊るがいい。尤も、綾小路ってこういう踊りスゲー下手そうだから、むしろ踊らせる側に回りそうな感じだけど」

「お前はどういうキャラなんだよ!? 話や喋り方がころころ変わりすぎて、逆に素直に承諾できないだろ!」

「すでに僕の友達認定はされているのだから、準や候補といったものが外れて正式部員になるだけさ。意味不明でわけわからない奴だからって、怖がらなくてもいいんだぞ?」

「そして唐突なディスり! 勧誘してたんじゃないのか!?」

「うん。でも飽きた。違う話題にしよう」

 

 しかしフォロー中に飽きたので、あえて会話にしない適当な雑談に連続でシフトしてみた。

 綾小路はいつになく騒いでいたが、飽きて面倒になったので仕方ないことだろう。

 打てば響く綾小路相手なら、やはりこうして遊んでるのが気楽である。

 

「こいつ、自由すぎる! これだけ露骨だといっそ清々しいわ!」

「おっ、ナイスツッコミ! その調子で楽しそうな話題プリーズ!」

「またか、その無茶振り! 早くもツッコミすぎて頭と喉が痛くなってきた」

「それはいけない。昼食を食べ終えたら、保健室で胡散臭い保健医から診てもらうといい」

「胡散臭い保健医ってなんだよ。それに昼食を食べ終えたらって……」

「いや、うちの担任なんだ、それ。あと昼食優先なのは、綾小路の胃に期待をかけてるからだな」

「胃に期待……そんなの初めて聞いたぞ」

 

 そう零すと、なんか疲れてそうな綾小路は、ヴィシソワーズを一気飲みすると大きく息をついた。

 喉のためかもしれないが、それならお茶やコーヒーもあるのだからそっちにすればいいのに……。

 

 

 

 その日の昼休み。

 僕となんだかんだで言い合いながらも、綾小路は期待通りにしっかりとハンバーグを平らげてくれた。

 なので細かいことは置いとくと、僕は肩の荷が降りて、綾小路は腹を満たせた。

 これぞWINWINの友達関係というものだろう。

 と、綾小路と別れる際に言ったら、彼は悟ったかのように儚い笑顔を浮かべ一言。

 

「ご馳走様」

 

 と、告げてきた。

 勿論、その礼に対して僕が返す言葉は決まっている。

 「お粗末様」と。

 

 親しき仲にも礼儀あり。終わりよければすべてよし。

 最後の最後でこれらの要件を満たすとは、やはり綾小路はわかっていると再認識する時間だった。

 





  というわけで、よう実2巻最初の綾小路・堀北の会話……昼~放課後の間にあたる昼食時でした。



 ついでにポイント関係の設定も追記。

 1年時の7月クラスポイント。
 括弧内は前月からの加増分。
 前提として、各クラス+100CP

 A 1044 (+94)
 B 763  (+73)
 C 526  (+36)
 D 90   (+90)

 Bは、元々原作より少しCPが高かったところに、龍園が慎重になる要素ができたのでトラブル自体が減り、一応の和解もして減点の原因がなくなった。そこに前回のCP加増分40が乗ってこの数値。

 Aは、主に葛城派閥に微妙な変化(油断の減少など)があり、テストでの加点と原作からの加増分も10CPあったので大幅増加。

 Cは、Bクラスへの攻撃は途中で止めたが、その分A・Bクラスより的にしやすいDクラスに実験的挑発&確認をした為、原作から微増。

 Dは、とある加点と減点があった為に微増。何気にこの加点がなかったら、唯一原作よりも減少するクラスだった。



 参考として5・6月時点のポイントも載せておきます。
 こちらの括弧内は原作からの増加分。

 A 950 (+10)
 B 690 (+40)
 C 490
 D   0
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