ようキャ   作:麿は星

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 この展開を考えておきながら停学中になにをやるのか知らなかったので、この学校っぽい感じに無理難題気味な課題としてでっち上げました。
 なので、停学中はこうなんだよ、って知ってる人がいてもスルーをお願いします。

 それと……今回、投稿するかめっちゃ迷いました。
 理由はあとがきで言い訳してます。



3章、非日常サバイバル(3巻)
43、誓約


 

 

 

 小東方高育桜。

 

 

 

 これは停学中の空き時間に考案した綾小路用のシューティングゲーム企画である。

 自機は、綾小路・東風谷・四方の選択式で、道中ステージを潜り抜け、次々現れる6体のボスを撃破すればクリアというシンプルなシステムだ。ちなみにタイトルに関しては、それぞれの苗字から良さ気な一文字を拝借しただけなので他意はない。

 

 つまり、比較的プログラミングが楽なシューティングに鬼畜な弾幕を加え、仮想プレイヤー・綾小路に敗北をプレゼントするつもりである。

 遊びとはいえ、やるからには完璧に勝つつもりでやる。

 それが美学に沿った心意気というものだろう。

 

 何気にまだ構想段階だというのに、ラスボス(予定)『佐倉愛里』の猛攻の前に沈む綾小路を想像すると、いくらでも煽り言葉が浮かんでくる。格上にイキる楽しさを知ってしまったので、なるべく早く完成させたいものだ。

 交流あるかは知らないが、あの内弁慶に「桜の下で散ってください、綾小路君!」とか煽られる綾小路の反応が今から楽しみで仕方ない。

 

 尤も、シューティングはパターンの組み合わせだ。

 反射神経や操作技術だけでもある程度クリアできると思うが、安全地帯や要領を学習されれば綾小路には通じなくなるだろう。

 だからその対策に、四方と東風谷にテストプレイを頼んで、クリア不可能ギリギリを攻めることで可能な限り余裕を削る設計でいく。

 

 更に難易度変更とは別に、当たり判定と火力が小さめだがホーミング性能のある四方機と、火力特化の東風谷機という選択肢を作ることで、スタンダードな綾小路機との差別化を図り、初見なら陥る可能性が高いお試しプレイで、後半部分の試行回数をここで少しでも削る。

 おまけにこの思惑通りにいかなくても、僕や佐倉のような一般人が遊ぶのにも楽しい機能なので付けておいて損はないという計算だ。

 

 無理をすれば夏休み中に完成させられると思うが、折角ならクオリティやイラスト・音楽も凝ってみたい。

 この企画、じっくり煮詰めてVS綾小路の第2弾に採用しよう。

 

 しかし細かい勝利条件は作ってから考えるが、話しぶりからゲームにあまり詳しくなさそうな綾小路に鬼畜難易度をぶつける企画。

 もうこの時点で勝ち確といっても過言ではないのではなかろうか?

 自分で言うのもなんだが、この狡猾な対綾小路戦略を思えば心の底から笑いがこみ上げてくる。

 

「ふわぁーっはっはっは!!! これは勝った! 第2部完!! 皆様、お疲れ様でしたーーー!!」

「おいっ!!! 何時だと思ってんだ!! うるせえ!!」

「ご、ごめんなさい~」

 

 怒・ら・れ・た。

 

 勝ち確妄想で思わず高笑いをしてしまい、当然のように隣人からクレームが入った停学初日の夜。

 この寮、防音がしっかりしてると思ってたけど、流石に窓を開けて深夜テンションの高笑いはダメだったか。

 これから気をつけよう。

 

 

 

 停学が執行される7月4日。

 担任と手続きした次の日から停学期間に入るとのことだったので、なるべく外出は控える為にバイト先へ寄って休暇申請をしてきた。

 ついでにノートパソコンやポケットWIFIも借りて、停学中の過ごし方などをググっていたら、不意にアイディアが湧き出したのだ。

 

 罰則的な位置づけである課題は、本来高1の生徒だけでは不可能な数Ⅲやベルヌーイの定理などの問題がいくつかあったものの、量自体はそれほど多くなく、数日午前の時間を費やせば達成できるモノだった。

 少し時間がかかりそうなのは、アステカ文明滅亡時についての小論文くらいだろう。コルテスの手腕は色々面白いので、改めて調べながら書いてみるつもりなのだ。

 

 そしてこの課題なら、救済措置と思われる教師の手助け(補習的な講義か?)がなくても問題ないと判断できたので、対綾小路へのサブ案を考えていたらこの企画を思いついていたというわけだ。

 

 まぁ負けてもいいのだが、やっぱり勝った方が気持ちがいいのである。

 だからつい夢中になっていたら、深夜テンションも相まって失敗してしまった。

 窓も開けたままだったので、下手したら上級生や職員の寮にまで響き渡っていたかもしれない。

 この学校に新たな怪談とかが生まれたらどうしよう。むしろ積極的に作りに行くのも面白そうである。

 

 とまぁ、初日にそんなちょっとした失敗をしてしまったが、午前はその日の分と決めた課題をこなし、昼以降は調べ物をしたりコードを打ち込んだり、と充実した停学ライフを過ごした。

 1週間なんて、あっという間だった。

 なんなら期末テスト直前まで停学でよかったかも、と楽観までしていた。

 

 そんな舐めた考えのまま迎えた、停学明け前日の7月11日夜。

 唐突に部屋に現れた青娥さんが興奮しながら齎した情報と届けてきた書類を確認してしまった事で天国から地獄に落ちて、より混乱状態を悪化させてしまうことになる。

 

 ところで関係ないが。

 状況把握後にどうでもよくなったものの、青娥さんが現れる時に大穴を部屋に開けて、去ってしばらくすると跡形もなくなった穴。

 元に戻って本当によかった。

 とある情報を聞いた上で書類を確認して混乱した状態のまま、部屋に人が通れるほどの穴が開いてたら寝られなくなっていただろう。

 無駄にテンション高くなっている青娥さんには、二度と訪れてほしくないな、と穴の開いていた壁を見ながら強く思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 7月12日。

 停学期間の最終日だが、僕は緊急で理事長と話すことができたので、アポを取って昼過ぎから理事長室で話していた。

 その結果、薄々気づいていた気が重くなる事態が確定した。

 綾小路に謝らなければならなくなったのである。

 

 しかもこの時は、生徒達がほぼ下校して、戸締りも終わっている19時現在。

 それなのに理事長の秘書?から教えてもらった情報では、綾小路もDクラス担任に呼び出されているとのことでまだ校舎に残っているらしい。

 その情報どおり、進路指導室から出てくる綾小路が見えた時は、「不幸だー」とか某上条さんのごとく嘆きたくなった。

 せめて濁流のようになっている心の整理をしてからにしたかったが、綾小路はそんな甘えを許してくれないようだ。金曜の夜に部屋へ訪れるよりはまだマシだったけども。

 

 約1週間ぶりに直接見る綾小路は、何かあったのか荒れた雰囲気に見える。

 とはいえ、これは停学期間中に綾小路に作ってしまった僕の負い目のせいで、そう見えるだけかもしれない。

 正直、話すのは嫌だが素直に打ち明けて謝罪しないと、後でバレた時に終わると確信しているのだ。

 

 なので軽く挨拶し合ったところで、まず話し合いの状況を作るために切り込んだ。

 

「ところで綾小路。少し真面目な話があるんだが、今から時間あるか?」

「?……珍しいな、左京がそう言ってくるなんて」

「うっ、自覚はしてる。だけど、それくらい重要な話なんだ。だからというわけじゃないけど、僕の部屋で落ち着いて話したいんだが……」

「ああ、別にいいぞ」

「……ありがとう。重ね重ね恩に着る」

「……?」

 

 僕の部屋に不思議そうな綾小路を伴い、座布団3枚を全て綾小路に回して、いそいそと謹製の冷茶を淹れる。

 そしてお茶請けに昼に弁当用として作ったものの食べる気にならなかった焼きおむすびも添えて、できる限りのもてなしでこれからに備える。

 気休めのもてなしをした僕は、味がわからないのでもったいないが冷茶を一気飲みして、覚悟を決めると前振りから話を切り出した。

 

「最初に言っておく。これから、綾小路にとって……その、不快だったり…僕をぶっ飛ばしたくなったりする…かもな話をする。

 言い訳するなら、けしてわざとじゃなく本当に後戻りできなくなってから発覚したから、どうしようもなかったという事を考慮に入れた上で、落ち着いて聞いてほしい」

「本当になんなんだ? 左京が歯切れ悪い言い方になるのを初めて見たぞ」

 

 興味を持ってくれたのはありがたいが、こちらは前置き時点で、ドキドキが止まらない。勿論、悪い意味で。

 この状態はすごく心臓に悪そうなので、もう覚悟を決めて一気に言ってしまうことにした。

 

「あー、その……だな。

―――あ、綾小路の父ちゃんを学校から出禁にしてしまった! すまん!!!」

「………………………………は?」

「本当にすまん!!!

 謝って済むことじゃないと思うが、知らなかったんだ。僕の停学…の少し前、強引な買収を仕掛けてきたのも向こうだったし、やり方は企業秘密だけど防衛機構的なモノで撃退しちゃったから、送られてきた誓約書の名前でようやく綾小路の父ちゃんじゃないかと気づいて、理事長に確認を取ったらビンゴだったっていう……」

 

 本当は青娥さんの不思議パワーで潜入&洗脳に近い逆撃をしたらしいが、詳しくは知らない。その上、術やら不思議パワーやらは勿論、青娥さんがやったという事まで口外禁止なので、無理にもほどがあるレベルでぼかしてしまった。

 こんなやり方で、ストーカーの件での裏約束を利用してくるとは夢にも思わなかった。

 

 ホワイトナイトもまともに頼めないどころか、株式すらないも同然でできたばかりの会社に、一学生と顧問、アイドルだけの社員3名構成。

 この状況で、政府との繋がりがあると思われ、かなりの規模が想定される組織を撃退とか説得力がなさすぎる。

 無理無謀に加えて、無茶振りすぎてつらい。

 

 そりゃ、理事長も電話越しにもわかるレベルで呆然として、速攻で綾小路の父ちゃんに確認の連絡入れるよ。

 あっちの分野も規模もわからないけど、外からこの学校に介入できる時点で相当な金か権力を持ってる者なのはわかる。それを金も権力もない学生2人と一応大人枠(仙人)1人が作ったばかりの会社が、返り討ちにしたのだ。

 

 しかも理事長から裏も取れてしまったので、笑うしかないことにこの現実味がないことは事実だと確定してしまった。

 この事実は、明かせる情報だけでは信じてもらうことすら困難だろう。

 そして証拠を見せて信じてもらえたとしても、それはそれで敵対しかねないのだ。

 

 それでもなんとか動きを止めずに、恐る恐る綾小路の父ちゃんが送ってきたというその証拠、誓約書(署名捺印付き)の写しもちゃぶ台に出してみるが、怖くて綾小路の顔が見られない。

 億が一の確率を引いて「名前が違うから別人だぞ」とか言ってほしい。

 

『私、綾小路 篤臣は高度育成高等学校の規則を遵守し、敷地内に入ることをいたしません』

『桜プロダクション及びその社員への手出しをいたしません』

 

 誓約書には他にも何項目か書いてあるが、綾小路に多少でも関係あるのはこの2項目だろう。

 道理を引っ込ませていきなり無理を通そうとしてきたので自業自得なのだが、不可侵の誓約書を書かせてしまっているのだ。

 これを見ているだろう無言のままの綾小路が怖い。

 

 ここは元々外部との接触は禁止の場所ではあるが、政府などの権力ある組織や仕入れが必要な商業関係など小さい抜け道はいくつかある。

 この誓約書にも自分以外にやらせるとか、明確な期間や今後などの文言もない(抜け道がある)ので、綾小路の父ちゃんや学校のこともそれほど言えないが、普通に桜プロダクションをスルーしてくれてたらなと思う。

 

 ちなみに、例えば佐倉がアイドルとして活動するのも、こうした抜け道を利用して青娥さんが取ってきた仕事で稼いでいる。

 何らかのメッセージになりそうな部分は佐倉と僕で消したり編集している成果か、外部との接触禁止事項的にはグレーゾーンと目こぼしされているのか、今のところはこれでお咎めはない。

 

……この抜け道と理事長へのコネがあれば、桜プロダクションへの手出しは行きがけの駄賃程度の意味しかなかっただろうに。と、今更だが強く言いたい。

 

 まぁ端的にいうと、綾小路の父ちゃんはその抜け道を使って息子に接触しようとしていて、ついでにな・ぜ・か桜プロダクションを攻撃。

―――そして、理の外側の仙人から返り討ちにあったのだ。

 

 もうアホかと。

 そんなことができるなら、普通に理事長を通して接触しろよと。

 鳶が鷹を産むどころか、馬鹿が天才を産んだのかと。

 まぁ綾小路の父ちゃんが鳶か馬鹿かはともかく、普通の会社だったら確実に潰されていたこのやり方は強引にもほどがあるだろう。

 

 しかも回りくどいことをした上で、他人である僕や青娥さん含む桜プロダクションに面倒事を振りまき、挙句返り討ちにした後も友達の綾小路へ負い目を持たせるとか……。

 もうマジで、はた迷惑な馬鹿親にしか思えない。

 権力者であるのはほぼ確実なのだが。

 

 ふぅ。落ち着け。

 息子には関係ないし、なんなら綾小路はもう友達の一人なのだ。その親族が馬鹿親なのは、いっそ生暖かい目で流してしまおう。

 権力者だろう綾小路の父が、何でこんなできたばかりの小企業に攻撃をしてきたのかを含め色々不明点もまだ多いが、理由も伝達せずに攻撃してきて返り討ちにあったのだから、この結果は当然だと納得するしかない。

 

 しかし、その結果によって父と息子の接触もできなくなった。

 もし家族が危篤とかの緊急性がある理由で焦って綾小路に接触しようとしていたのなら、謝っても謝りきれない。

 勿論、息子小路のみにだ。馬鹿親のことなど知ったことか。

 

 

 

「…………ま、待て待て待て待てっ!! どうしてそうなった!? 何故こんなことになっている!?」

「ともかくお茶でも飲んで落ち着いてくれ。きちんと1から話す」

 

 沈黙を破って綾小路が慌てるのも無理はない。

 規則違反を犯してまで自分に接触しようとした父と、それを阻止した僕(ホントは僕じゃないが)。綾小路家がどんな関係かはわからないが、良好な仲だったら僕を敵視してもおかしくはないのだ。それに仲が悪くても何があったのか気になる事だろう。

 まぁ、この無表情で「パパ~、お願い❤ 誰々を消して?」みたいな綾小路は僕の想像限界を超えているので、大好きな父ちゃんに甘える綾小路とかは考えたくないわけだが、流石にそんな事はないはずだ。

 

 ともかく少しでもいいので綾小路にいつもの冷静さを取り戻すよう促し、自分も喉の渇きを癒すためにお茶を注ぎなおして一息に飲み干した。

 あれだけ取り乱しても、その頃には表面上は平静っぽくなった綾小路はやはり流石といえよう。

 

「あー、まず前提として中間テスト後に佐倉の件で会社を作ったんだよ」

「……この桜プロダクション、というやつか?」

「そうそう。この時は警察を動かす後押し目的で起業したんだ。それであの時は結局必要になる前に終わらせちゃったけど、話せない事情もあって続けて運営してたというわけ」

「その会社にあの男が圧力か買収を仕掛けた?」

 

 あの男? 家族仲が悪いのだろうか?

 まぁ、それはいいや。

 混乱はしてるみたいだが、一応正しく認識はできているみたいだから、僕は頷いて続きを話す。

 

「最初は先月末だったかな。あの赤髪に蹴り食らわせて停学になる少し前、会社の業務や事務処理してたら、何者か―――綾小路の父だったが―――にいきなり営業妨害と強引な買収にしか見えない攻撃をされたんだよ」

「それでどうしたんだ?」

「うんまぁ。さっきも言ったけど、企業秘密に触れないように話すとふわふわしてるんだが……少しなんやかやでごたついた後に、その…返り討ちに」

「……」

「そんで、その誓約書が届いてすぐ理事長に確認を取ってみたら、綾小路の父ちゃんだったという罠が発動。ちなみにそれが昨日のことだったりする」

「……」

 

 我ながらふざけてるかのような言い分だが、僕は真剣である。

 邪仙(もう、こう呼んでもいいんじゃないかな)が陥れてきた面倒事に話せない箇所多数の中で、なんとか繋げようとしたらこうなったのだ。

 それでも知った時期だけは後付だが、一応嘘ではない。

 

 だが、この色々バレバレでガバガバだろう言い分なのに、誓約書という明確な証拠はあるのだ。

 この不自然さ全開っぷりのせいで、無言で考え込んでいる綾小路に敵対されたら邪仙認定を確定させてやる。

 

 実際の停学中は、青娥さんがほぼ運営していた期間なので、この辺も又聞きと推測が混じるが、僕が作成した覚えのない誓約書(僕の署名捺印付き)や理事長への確認では本当に驚愕したのだ。

 驚愕というか、やられちまった感が溢れすぎてて、しばらくどうしていいかわからないくらい混乱した。というか未だに混乱してたりする。

 主に、裏約束があったとはいえ、青娥さんの偽造技術と僕に全てを丸投げしてやりたい放題した上で、『企業秘密』とやらで言えない事を増やしまくってくれやがった奔放さに……。

 

「―――改めて本気で謝る。

 反撃した事自体は悪いと思ってないが、もし綾小路への家族内の緊急連絡目的とかだったら洒落にならないから、これからなんとか用件や理由を探ってみる。万が一にも、手遅れにならないうちになるべく早く父親と接触できるよう手配を……」

「左京、謝罪も手配も探る必要もない。むしろオレが感謝したいくらいだ」

「は? え、深入りするつもりはないけど、緊急性があるかもしれないんだぞ?」

「それはない。

……詳しくは言えないが、オレは父親と確執があってな。この学校に来た理由の一つも、外部との接触禁止が使えると思ったからなんだ。だからこれ以上、接触したり探りを入れたりしないでくれ」

 

 とはいえ、仙人や大人の事情は綾小路には関係ない。

 なので誠心誠意謝って許しを請い、言えない部分はそのままに、望んだらなんとか綾小路の父ちゃんへの連絡を取れるようにしなければならない。

 このことは理事長に交渉してもいるし、「本人が望むなら」と意味深な許可のようなものももらってある。父ちゃん側の都合が合えば、直接会うことすら可能かもしれない。

 

 だから、こう申し出たのだが―――。

 綾小路は思いのほか穏やかな声で連絡を取ることを断り、何故か感謝?までしてきた。

 僕としては奔走しなくてよくなるので助かるが、本当にいいのだろうか。確かに綾小路からは、僕に対して怒りなどの負の感情を感じないが……。

 

 しかし、どんな家族なんだ?

 僕がそんな疑問を持ったことに気づいたのか、綾小路は露骨に話題を変えた。

 思うこともあったがなんとなく深く触れてほしくなさそうだったので、それに乗る。僕の方も深掘りされるほどボロが出るのはわかりきっているので、好都合ではあるのだ。

 

「ところで左京に聞きたいんだが、あの男とはこの学校で直接会ったのか?」

「へ? いや、理事長がテレビ通話はしたらしいけど、僕はメールのやり取りを数回しただけだ。

 理事長が言うには、忙しくて動けないので入校許可を貰う手間が惜しい。だから適当な場所を乗っ取るとかして、敷地内の足場を作って何らかの正当性を得よう、って理由らしい。んで、そんな理由なら、そもそも学校には来てないんじゃないかな」

「……そうか。来ていない、か」

 

 関係なさそうな質問をしてきた綾小路の表情は変わっていない。

 しかし、僕が返答したあたりから怒ってるっぽい空気が滲み出てきていた。

 

「ど、どうした? やっぱり怒ってたりするか?」

「いいや。“左京”には怒っていない。

―――ま、ちょっとした思い出し怒りってやつだな」

「?」

 

 だめだ。

 やっぱり、綾小路は内心が読みにくい。

 僕の勘というか感覚が罪悪感を伴って誤作動を起こしてるのか、いつも通りのわけわからない奴……に見えて、それなりに怒っているように見えてしまう。その対象が僕じゃないのが嘘ではないと、なんとなくわかるだけだ。

 

 ただ、思い出したかのように普通に焼きおむすびを食べ始めたし、適当なおかずも作って謝罪代わりにすることにしよう。

 この話も終わらせたいようなので、難しい話はやめて切り替えることにする。

 

 なにより、綾小路がパクついているのを見ていると僕まで腹が減ってきた。

 一応、和解?したことに安心したからだろう。

 昼を食べられなかったツケがここで回ってきたのだ。

 綾小路に待ってもらうように一声かけてから、僕は台所に向かい、残っている食材から手早く食える物を作り始めた。

 

 

 

 この後は食事を挟んで、二人共自然に話題を変えていた。

 なんかこの流れに覚えがあるなと思ったら、初対面の青娥さんに勧誘された時となんとなく似てたからだった。僕が青娥さんポジションっぽかったけども。

 ということは、お互い目の前の面倒事に対して現実逃避していたのかもしれない。

 

 まぁ、盛り上がることこそなかったが、ちょこちょこ描いていた絵を見せたり、小論文用の読み終わったテスカトリポカを貸したり、電気を消して天体観測したりと意外と普通に楽しめた。仕事関係、ガチャやクラスのことすら話に上らなかったからかもしれない。

 そうして過ごせた為か、今では綾小路は本当に怒っていなかったような気がしている。

 だって怒ってたら、雑談とかせずに帰ってるだろうし……。

 

 だけど、綾小路の父ちゃんの件もだが、須藤の停学でも。そして言えないが少し先の未来の事でも。

 今、口に出す謝罪は必要だと思い、帰り際にもう一度、誠心誠意を込めた感謝と謝罪を伝えておいた。

 最後の最後だったからか、綾小路は珍しく目に見えるほど動揺してるようだったが、なんとか正しく受け取ってくれたと思う。

 複雑な家庭っぽい一面が見えたし、彼にも色々複雑な事情があるのだろう。

 





 ちょっとした言い訳。

 今話は、おそらくこの作品において最初で最後のチートを存分に使った(使用者は左京ではないですが)大幅な原作改変になります。
 どう構成を組んでも綾小路父がネックになってきて鬱陶しかったので、ハッピーエンドの布石にする為に、青娥無双→左京への無茶振りを実施しました。

 裏話ですが、青娥をあんな序盤で出してがっつり関わり、左京に起業までさせて巻き込んだのはこの為です。
 この辺の一般学生がどうしようもない問題を丸投げして、最低限1年生の間を綾小路ともギスギスしない関係に保つ方法は、青娥のチート利用しか思いつきませんでした。
 まぁ、綾小路父のバイタリティなら早期に立て直して、遅くとも2年時以降は原作のようにしてくれるでしょう(綾小路父と未来の自分に丸投げ)。



 ちょっとした言い訳2。

 冒頭のゲーム、小東方高育桜について。
 このゲームを作中で出すことをかなり初期から考えていたので、綾『小』路と『東』風谷と四『方』、佐倉=桜は名前的に初めから出演が確定していたり。本当は東方から出すなら菫子とマミゾウ、キャットルーキー要素なし、の方が時代や物語がスマートになるからよかったんですけどね。
 とはいえ、ゲーム勝負自体は(話数でいうと)少し先になる予定です。まだ人が揃ってませんので。よう実、登場人物多すぎるから……。

※いうまでもなくこれは架空のゲームです。東方Projectとは全く関係ありませんので、ご了承ください。
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