ようキャ   作:麿は星

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 寒すぎて、手がかじかむ。
 そのせいか文字数が安定しない事故が多発してしまう。そうすると、見直しや書き直しで時間がかかり、更新が遅れる。
……はい。昨日見直しも終わって投稿できたのに忘れてた言い訳です。すいません。

 しかし、前にもどこかで零した気がするけど、改めてコンスタントに更新できる人、すごすぎる。



45、謝罪

 

 7月15日は海の日で学校はお休みである。

 それなのに、今日も今日とて僕はお仕事がある。

 ブラック反対と声を上げたいが、停学期間を満喫した僕には何も言えない。

 

 ちなみに、この仕事というのは青娥さんに頼んでいた人員募集―――外で各種業務を行うことができ、ゆくゆくは桜プロダクションの社長を押し付け……任せられる人材をメインに探してもらっていた事を指す。

 僕も学生である以上、学業や学校行事を完全に無視するわけにはいかないので、大人の人員募集は必須だろう。

 

 その人材候補が入社希望とのことだったので、理事長から許可をもらってテレビ電話で面接したのである。

 いい大人が学生の下に付くことになる上、面倒な外部接触禁止の制約があるのであまり期待していなかったのだが、青娥さんはきっちりこれらの条件を掻い潜れる人材を見つけてきたようだ。

 

 松雄と名乗った画面に映った人の第一印象は、なにかで追い詰められ絶望してる人……という感じだったので、どうしようかと一瞬迷った。松雄のようなタイプが、不意に突飛な行動に出る例を知っているからだ。

 ただ逆にうちの会社では、こういう人の方が信用できると勘が働いたので即日採用した。

 一時的で名目だけとはいえ、僕の部下になるのだし直感に従うことにしたのである。

 それに選り好みしていると、夏休みまで働くことになるかもしれないのだ。ぶっちゃけ、条件をクリアできる人材なら、多少の傷はスルーするつもりだった。

 

 採用を松雄に伝えると、目を見開いて驚き、自分が入社する不利益について言ってきたが、正直そんなことはどうでもいい。

 というか、そんな事情を言わなければ、すんなり僕や会社を利用して社会復帰を果たせただろうに、馬鹿正直な男である。

 でも、こういう人は嫌いではない。

 奇貨置くべしでもないが、こういう大人は大事にしておいた方がいい。

 

 それと松雄は前職で綾小路の父ちゃんと関係あったようで、あの馬鹿親の危険性にも言及してきた。

 だが、今度はまとも?なカウンター策も準備しているし、一応は誓約書もある。

 桜プロダクションを潰す事に相当なリターンが見込めなければ、流石に泥沼の戦争までは踏み切らないだろうと説明しておいた。

 

 この上で、もしまた潰そうとしてくるなら、最終的に負けることになっても嫌がらせの限りを尽くしてやろう、と悪魔の囁きを松雄へと贈ってやった。何やら面倒臭い事情がありそうだから、あの手のタイプが最も嫌がる保険を準備していると教えたのだ。

 実際、綾小路への義理はあるから1度は飲み込むが、また僕達へ手を出してくるなら容赦しない。

 青娥さんとともに今度は真っ当な手段で地獄を見せてやる。

 綾小路の今後をある程度考える策も付属することになるので、なるべくやりたくはないが……。

 

 その結果は―――いや、彼の返答やこれ以上のやり取りを明かすのは、誰得であり、松雄の名誉のためにもやめておいた方がいいだろう。なにより無粋というものだ。

 ただ外部に人材を1名雇用した。

 この事実だけがあれば充分である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 このように連休中にいくつか想定外なこともあったが、おおむね平穏な生活が戻ってきた。

 あとは事後処理のような小さい面倒事を順次片付けていけば終了だ。

 打った手はすでに青娥さんや鬼龍院先輩にバレているモノもあるが、ほとんどバレても問題ない手と者にしか勘付かれていないと思う。

 この状況なら、しばらくゆっくりしても罰は当たるまい。

 

 ゲームについても佐倉は手伝ってくれると言ってくれたし、高円寺もスカウトできたので問題ないだろう。それに高円寺が天文部に入部してくれたことで、佐倉にも勧誘できる流れにできたことは棚から牡丹餅である。

 本人は「わたしって入部してなかったの!?」と驚いていたが、手続きしてないんだから部員でなかったのは間違いない。

 うっかりは誰にでもあることなので仕方ない、と片付けてしまおう。

 

 まぁ期せずして、入って直ぐに天文部員(綾小路以外)が真っ二つに割れる結果となったが、改めて僕の視点から考えるとこれはこれで面白そうだ。

 所詮遊びの一種でしかなく、四方や東風谷は勿論、綾小路も本気で叩き潰しにはこないとわかっている状態で、あの3人を煽りまくれるチャンスは僕の何かを満たしてくれる。

 僕がやることを整理してみると意外と多かったので、テンションを上げる要素は必要だろう。

 

 なんせこれからBクラスで謝罪して、龍園に殴り合いの映像を届けて目の前で消去し、生徒会に入部届け2通を提出。その際、忘れずに部室(と一応部費)を許可してもらわなければならない。

 その後、手に入れた部室でブリーフィングしつつ、佐倉と東風谷に期末テストまで四方と勉強教えて、バイトのシフトを前倒しで少し詰めて組む。

 休んだ分の補填と夏休みに入ってからの時間を確保するためだ。

 

……停学明け直後なのに、なんかやること多くね?と愚痴を溢したくなる面倒臭さである。

 

 隙間時間でプログラミングしながら、勉強と弾幕の指摘を教え合う基本計画は悪くないと思うのだが、そもそも隙間時間が作れるのか不安になってくる。

 他にも停学のペナルティがまだ他にもあって、部活に影響を与える可能性を考えると、何らかの対策や準備も必要かもしれない。

 どうするにせよ、やるべきことを一つずつやっていくしかないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

「此度は停学して50ものクラスポイント減らしてしまい、誠に申し訳ありませんでしたぁああ!!!」

 

 というわけで、7月16日の火曜日。

 僕は朝のホームルームにて、Bクラスで開口一番に全力で謝罪していた。

 

「あ、その、左京く」

「遠からず訪れるだろうCPの変動イベントでは、なるべく獲得量が多くなるよう動きます!!!」

「いや、さきょ」

「ですので、皆様! どうかそれまで僕の処分は保留にして」

「いいから! 聞いてっ!!!」

「へぶっ」

 

 勢いのまま謝罪を済ませようという目論見は脆くも崩れ去った。

 あの優しげな一之瀬が何故かハリセンを手に持ち、僕に叩きつけたのだ。

 ちなみに担任は、またしても隅で腹を抱えて笑っていやがる。

 

 しかし、舐めることなかれ。

 連休を含め10日近く休息した僕の引き出しは、一手潰されたくらいでは堪えない。

 一之瀬に二の句も出させない意図で急いで鞄を漁り、念には念を入れて準備しておいた『それ』が壊れていないか確認の後、二手目を放つ為におもむろに顔にかけた。

 

「YEAHHHHH!! 改めて! パリピ左京だぜ~! みんな、お久~!」

 

 これぞサングラスで視界を暗くすることで実現した、セルフ目隠しを応用したパリピの術。

 これは近くにいるハリセン持ちの一之瀬すら、黒い何かにしか見えないほどの濃度のサングラスなのだ。アイマスクの代わりになるかと思って買っておいたのが功を奏した。

 つまり見えなければ恥ずかしくない理論だ。

 

「……一応聞くが、なんのつもりだ?」

「いやっふぅ! 停学しちゃったから顔合わせ辛くて、イメチェンで誤魔化せないかと考えてたら到達したんだぜ~? どうよぉ、これぇ!?」

「この地獄のような沈黙で答えがわかりませんか? っていうか、なんでそこに到達しちゃったんですかね……」

「こだわり……かな? 

 なんてなっ! ひゃっははははっ…はっぐ、ゴホッゴホ。

……ごめん、コレ…想像以上にキッツい。やっぱり…普通に、喋らせて。かはっ」

「勝手にしろよ。全く、心配して損した気分だぜ」

「おお、これは柴田君。僕はなりきれなかったけど、君をイメージした事でパリピ左京は完成したんだ。一応礼を言っておこう」

「お前はどんな目で俺を見てるんだよ」

 

 再度の柴田の問いには答えず、僕はフッと笑って内心で現実逃避に専念する。

 勿論、サングラスはかけたまま……。

 実は思い切り恥ずかしかったのだ。

 なんなら、僕の第一声の直前に近くに来ていた四方と東風谷がツッコミを入れてきた時点で、燃え上がるような羞恥心が僕を支配してわけわからなくなっていた。

 なんとか柴田までは強がりを返せたが、もし更なる追撃があれば開き直るか恥ずか死かの二択だっただろう。

 

 見えなければ恥ずかしくないとか、冷静に考えてあるわけがなかった。

 盛大に滑った現実も認識したくない。

 そうだ、引き篭もろう。

 これから貝のように生きるんだ。

 

……よし。無理だと思っていたが、このネガティブな精神状態ならいける。

 三手目は、号泣会見IN左京アレンジで決まりだ。

 会見でもないし、実際に号泣はできないだろうが、「ゴノよのなかっ! この世の中のぉお、問題を解決したい一心でぇええ!!」とか言って泣くだけ……………………なわけがない。

 想像だけで、前の二手とは比較にならない恥になることが確信できる。

 当然、ボツである。

 

「ふぅ、危ない。

 真面目に謝るつもりだったのに、変なことを口走るところだった」

「嘘でしょ? この人、これまで変じゃないと思ってたの?」

「もう相当変なこと言ってただろう左京」

「でも逆に、この左京が躊躇った変なことって何か気になるな」

「やめてやれよ。このサングラスかけててもわかる赤面具合からは、照れ隠しとしか判別できないんだからさ」

「……ああ、四方。正論はお止めください。サングラスが外せなくなるじゃないですか」

「くくく、そうだったのか」

「あはっ! 可愛いところもあるのねぇ♪」

 

 くっ、殺せ。

 もはやそう言いたくなるのを必死で堪え、言葉のナイフと辱めが過ぎ去るのを待つのみの状態だ。

 忍者とは、耐え忍ぶ者なり。

 僕は忍者じゃないけども。

 

「みなさん、いけませんよ。

 夢月さんがこんなにも落ち込んでいるというのに、笑っちゃうなんて失礼じゃないですか!」

「東風谷…!」

「安心してください夢月さん。私はどんな時でもあなたのみかたっ―――ぶふぁっ!」

「てんめぇ、このっ!!」

「くっふふふふふ。あはははは! くぅっ…パ、パリピさ、さきょう。ふふっ、ひ~ははは!! それで変に見栄張って照れ隠しするとか……あっはははは! じわじわ、くるっ!! ひっひっひ~、げほっ、ごほっ…ぉえ」

「笑いすぎだろ! ピーマンみたいに頭ん中空っぽか!?」

 

 それにしても、なんか東風谷に最近、やけに絡まれているような気がしている。会ったばかりの時にかかっていたデバフが解除されて、イキイキしてる感じでだ。

 誰かがそう変化させているのだと仮定すると櫛田あたりが怪しいが、余計な事をするものである。その誰かがいるのなら、絶対に許早苗……じゃなかった許さない。

 そのおかげでフォローされた時に一瞬だけ良い奴かと勘違いしてしまったが、本当に一瞬で裏返ったではないか。

 ついでにこのクソな緑髪女に、マジでいっぺん『わからせ』が必要なことに気づいてしまった。

 

 即落ち2コマは……法に触れるだけでなく、そんな技術も力もヤル気もないから無理にしろ、例えば嫌ってるっぽい綾小路と仲良くしなければならない、という状況を作って嫌がらせをするなどの策は考え付くのだ。

 または一之瀬あたりと二人きりにするのもいいな。あわよくば浄化させて綺麗な東風谷として、生まれ変わらせてやりたい。

 もう数日しか使えない手札をきってでも、どれかの策を実現させてやる決意を新たに、心を安らげることにした。

 

 僕の肩をバシバシ叩きながら笑っている東風谷と、ついでに笑いに笑っている担任への復讐計画を練っていると、いつの間にやら教室のあちこちでも笑いに溢れていた。

 笑いが伝染してしまったのかもしれない。

 これも全ては東風谷と担任が導火線と火薬を弄んだせいだ。

 だから僕は悪くない。

 

……はぁ。なんで真面目に謝罪して笑われにゃならんのだ。某裸エプロン先輩はいつもこんな劣勢の中で負け続けていたのか。そりゃあ、時には「笑うなっ!」って怒鳴りたくもなるよ。

 

 こうして僕の謝罪の場だったはずのホームルームは、グダグダのまま時間切れまで笑われて終わった。

 関係ないが、ここしばらく笑われることが多い気がしている。由々しき事態である。

 せめてクラスメイト達は、真面目な場面くらいは少し空気を読んでほしいものだ。

 

 ただ教室中が程度の差はあってもほとんど笑ってるのに、唯一、一之瀬だけは感心したような目を向けてくれていて、その事実に少し慰められた。ハリセンで叩かれたけど、やはり根本の優しさは変わっていないようでなによりだ。

 地味に、ホントに聖女かよ、と改めて思わされた次第である。

 

 ちなみに後で聞いた話だが、その聖女にハリセンなどというモノを持たせて僕を叩かせた罰当たり者は、四方と柴田とのこと。

 曰く、何かやらかしたら遠慮なくやってくれ、と言い放ったらしい。

 

 なんてやつらだ。

 僕の謝罪をなんだと思っているのか、小一時間…は面倒だから3分くらい問い詰めたい。終わったら、カップ麺が食べごろでいい感じである。

 しかし綾小路との勝負に相乗りしてきたことといい、最近の四方は一体何を考えているのかわからなくなってきた。

 

 

 

 何はともあれ、理解できない流れでクラスから僕は許された。

 そのまま普通に授業を進め、昼休憩の時に四方や一之瀬からそう伝達されたので、素直に受け入れることができたのだ。言われても理解はできなかったが……。

 

 昼食を一緒にとった時には、ほとんど聞き流したが他にも四方や一之瀬から色々聞けた。

 中でも微妙に気になった話があり、なんでも僕の停学中に東風谷が色々やらかしたらしい。

 といっても、暴力や違反などの罰則が必要になるものではなく、雰囲気を凍らせる類の言動である。

 

 東風谷からも「夢月さんがいないせいで、説教される事が増えました」と文句を言われたので、何かやらかしたのは確実だ。ただその会話を聞いていた四方が僕を見ながら「左京と比べたら、東風谷がマシに見える」と呟いていたのが腑に落ちない。

……こいつらは、本当に僕をどう認識してるんだよ。これではまるで、ほとんど何もしていないというのに、僕が東風谷を超える問題児のようではないか。

 

 まぁそれはともかく、これでBクラスでの謝罪は完了と見ていい。

 僕の地味ポジな地位も守られたに違いない。

 これで明日から、元の空気のようにフェードアウトする日常に戻ることだろう。まだ一抹の不安要素は残っているが……。

 

 次は、龍園に会いに行く約束を果たして、こちら方面も完全な決着をしておくことにする。

 コピーを取っているとかそういう疑いがかかるかもしれないが、佐倉から渡された喧嘩映像を目の前で消去して、少しでも退いてくれた恩を返したいのだ。

 放課後、僕は四方と東風谷に一言かけてから、Cクラスへ向かった。

 





 これで一連の綾小路編(というか彼のバックボーン編?)は、ひと段落のつもりです。
 しかしこの時期は原作にほとんどない部分なのに、後に繋がるエピソードが多く詰め込まれてるって勘弁してほしいです。綾小路や佐倉は前回までにそこそこ出せたけど、その代償に龍園や一之瀬がかなりあっさり流されている気がしてならない。
 しかも、今話は早く無人島へ行きたくて3話分くらいを圧縮したものなので、微妙に抜けもあるかも……。
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