ようキャ   作:麿は星

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51、結成

 

 目を閉じて休んでいると、また遠くで一之瀬が僕の名前を叫んだような気がした。

 今度は気のせいとかでなく、こちらを疲れた顔で見てクラスごと近づいてくるので、おそらく実際に呼んだのだろう。

 ようやく言い争い?が終わったようだ。

 一之瀬の悟ったような顔がそれを証明している。

 

 それから集まったBクラス全員で話し合いの流れになり、最初の方針を決めることになった。

 ここで僕は、これしかないという案を真っ先に出しておくつもりである。

 僕の考えには速度が重要だからだが、他になんか一之瀬から何か言いたげというか、節約に関してや説教をしてきそうな不穏な気配を感じるからでもある。

 だから注意を逸らし、分散させたい。

 そこを勢いで力押しすれば、説教からは逃れられないかもだが、少なくとも節約貧乏生活の方向にはいかないだろう。

 

「さあ、話し合いで方針を決めるよ! みんなどしどし意見を言ってねっ」

「ヨシッ! これで方針が決まったも同然だな!」

「え、何も決まってないよ? むしろ何も話し合ってないよ!?」

「いやいや、うちには東風谷という機動力があるんだから、東風谷かあるいは柴田をリーダーにしてひたすらスポットを取りまくる! ド派手にな。これしかないだろ?」

「ええっ!?」

「そんなことしたら他のクラスから間単にリーダーを当てられてしまうだろ!」

「そうだ! 指名されてしまえばスポットのポイントはなくなるんだぞ!」

 

 四方と神崎から反論されたが、そんなことはルールブックを流し見た時に把握している。

 一之瀬や四方、神崎はクラス間競争も視野に入れているのだろうが、それはおまけでいい。この異常なゲームを制する鍵はいくつか想像できるが、スポットの掌握が最も安全性が高いのである。

 A~Dクラス全員で遊びまくる案ができなくなった時点で、まず真面目に生き延びる方法を模索しなければならないからだ。

 

 それを踏まえた上で、重視すべきは残すポイントでもリーダーでも他クラス対策でもない。

 ある程度生活を快適にした上で、楽しんで試験を終えることだ。

 その為には、先を考えた投資は無駄ではない、的なことをみんなに言っておかないと、あらぬ方へ向かって……最悪詰む。

 ここで手を抜いて、苦しいだけでストレスを貯めるサバイバルになってしまえば、僕は耐え切れなくなって勝手にリタイアしてしまうに違いないのだ。せめてそれだけは避けたい。

 

 つまり僕は、リーダー当てのことは所詮オマケと割り切り、ポイントを最大限稼ぐのは東風谷か柴田に丸投げしつつ、大多数で楽しむ案に切り替えたのだ。僕自身がその大多数の中に入れれば、非常に楽もできる。

 尤もただそれだけでは賛同を得られないので、少し頭を捻れば誰もが思いつく対策を前面にして押し切る方法も考えてあるが。

 

「ふぅ。四方、神崎。相変わらず君らは頭が良い癖に固いな。

―――担任! リーダーを当てられてもペナルティが発生しない権利は、試験ポイント、あるいはPPやCPでいうといくらで買えますか?」

「あ、ポイントか……。それは盲点だった」

「また試験を根底から覆すようなことを。

 あのね左京君、試験には守らないといけない最低限のルールがあってね……」

「そういうのはいいですから。やれるかやれないかでお願いします」

「はぁ。私がやった人を知らないから断言できないけど、できるとしても多分最低50万PPはいくと思うよ。試験ポイントとCPでは無理だね」

 

 それがこれ。

 駄目でも二の手三の手への変更も容易で、想定される問題対処に適任な担任も都合がいいことに一之瀬が連れてきていた。

 で、一之瀬が引っ張ってきた担任なら答えを持っていると見て聞いてみればビンゴ。

 確認ができたら、あとは餌を撒きながら食いつくのを待つだけである。

 

 できないとは言わず、対価を提示するということはできるということだ。

 特別試験とやらの攻略法は、各種ポイントとインスピレーションでどうとでもできる場合があると思っていた。今回はその適用できる場合なのだろう。

 端末を没収されてすぐ使えないからと、ポイントを度外視しなくてよかった。

 

「50万PP…多く見積もって4倍の200万PP程度までなら、生徒会での出費を除いてもまだクラス貯金が残ってるはずなので問題ないですね。得られるCPを考慮に入れれば、最短1ヶ月弱で取り戻せる。

 一之瀬、この案ならどうだ?」

「……確かに、これができるならそこまで節約せずに、しかも他のクラスとも争わずに1位抜けを狙えるかもしれない。支払いは試験後でいいんですよね?」

「支払いはそれでいいけど……でも試験の前例では」

「前例なんて作るためにあるようなものでしょう?

 それに、うちがAクラスに達するとボーナスだから頑張れとか言ってましたよね? ほら、これが目の前にある好機です」

「好機……」

 

 これは特別試験への一手でもあるが、餌としても布石としても担任への踏み絵(というほど大層なものでもないが)にもできる。

 僕は一之瀬やクラスメイト達ほど優しくも善人でもない。

 ついでにやられたことも、覚えていたからきっちり仕返ししてやるつもりだ。

 

 まぁそれはともかく。

 担任が難色を表に出している理由は、おそらく新しい何かをすることに面倒かリスクがあるということだろう。いくつか推測もできる。

 だが僕……いや、僕達を利用するつもりなら、担任にもそれなりの対価をベットしてもらう。それが後々、四方や一之瀬が後ろから撃たれない最低限の保障になるのである。

 

「ちなみに僕はAクラスの特典に魅力とか感じてないので、卒業間近でワンチャンあったら狙ってみようかな、程度にしか考えてません。だから担任ができない・やらないなら、好機を逃すことも軽く許容できます。

 ですが……一之瀬達大多数や担任自身はどうでしょうね?」

「う……」

 

 更にハッタリで当たりをつけて、弱みを見つけたらそこを突いて突いて突きまくる。

 勿論、エロい意味ではない。

 このように、これまでに得られたピースがあれば、動かすように誘導する話の組み立ては容易という意味だ。今なら一之瀬達の視線も担任を追い詰める一助になるだろう。

 追加で―――同調圧力をかけられながら欲望と労力の天秤を揺らしている担任に―――ダメ押しで担任含めた先生達に言ってやりたかった言葉を囁いてやった。

 

「さっきまで先生方が生徒一同にやっていたことを、自分にやられる気分はどうです担任?」

「!」

「今、着いているのは生徒と同じ席。立場は対等です。

 まずはそれをわかってもらえましたか?」

 

 目を見開いてこちらを見る担任。

 教師はかなりの確率で世間知らずとは言うが、ここに至るまで自分に主導権があると思って踊る担任の姿は実に滑稽だった。

 言葉の戦場で、言葉を途切れさせる失態は見逃せない。

 

 それにしても、不意打ちしたとはいえ、冷静なら「そうはならんやろ」となるところを、まるで交渉慣れしていない新人のような反応。

 煽り耐性も低いし、担任は本当の意味で実社会に出ていないのかもとさえ思える。

 流石にこれは失礼すぎて口に出せないけども。

 

「―――さ、状況を理解したなら、リーダーカードの発行ついでに、キリキリ上と交渉して判断を仰いできてください。今回は早ければ早いほど。安ければ安いほど有利になるんで、好機を生かすも殺すも担任の動きが鍵の一つになるんです」

「ぐ……」

 

 正直、生徒に騙まし討ちを繰り返してブラック環境に陥れてくる教師陣の信用は、もはやストップ安で暴落を続けている。

 だから、あちらがそういうやり方で来るなら、こちらも利用し尽くすスタンスでいかせてもらうことにしたのだ。NDK風だったのは、底を見せないように態度をころころ変えるただのかく乱である。

 

「うぅぅ。私、担任教師なのにパシリ扱い……」

「そんなこと「あっはっは。僕は担任をパシリ扱いできて、とても爽快な気分ですよ。

 おっとそうだ。カードの名前は基本東風谷でお願いしますけど、もし柴田や他の人になる場合は、外から僕か誰かがひと叫びしますんで、反映よろしくです」……左京君」

 

 腐っても大人ということか、一応早期に言葉を取り戻した担任。

 その子供っぽい演技を嗤いつつも、想定していた一之瀬のフォローをインターセプトする。

 ここで担任に持ち直されると、折角組み上げた一之瀬や四方の保険に支障が出る可能性がある。

 

「ふぇぇ、左京君の担任使いが荒いよぉ~」

「ことあるごとに僕を笑ってた報いじゃないっすかぁ? ざっまぁ! ぷーくすくすっ。

 おっと失礼。つい本音が。担任はお早く行ったほうがいいんじゃないですかね? じゃないと、被ってる猫を剥がされるまで煽られることになりますよ」

「……覚えてなさい」

「負け犬の遠吠え乙! それともう忘れました!」

「メッチャ良い笑顔だなオイ」

「……ふふっ。それでこそ夢月さんですよね」

 

 まぁそれはそれとして。

 悔しそうに捨て台詞を吐いていく担任を、胸がすく思いの笑顔と言葉で見送った。呆気に取られているか、呆れた感じのクラスメイトとともに……。

 全部が担任のせいではないが、八つ当たりにちょうどいい位置にいるのが悪かったのだ。代わりに生徒である僕を良い気分にさせてくれたのだから、教師冥利に尽きるというもの、ということで片付けておこう。

 

 

 

 

 

 ついでにこの良い気分の間に、保険の一手も打っておく。

 まごまごしていると、一之瀬含むクラスメイトが担任に何をしたとか酷いとか言ってきて、面倒になりそうな気がしてならない。

 後で聞いてくる奴がいたら、説明は解説キャラっぽい神崎にでも聞いておけ、と丸投げすることに今決めた。解説できるのか知らんけど。

 僕は半分なんとなくで打った手なので、人に説明でき……ないわけじゃないけど、面倒なのだ。

 

 それに今は巧遅よりも拙速が重要。

 話や議論や説明で時間を引き延ばすのは、入手ポイント減少を招いてしまうという大義名分もある。

 時は金なり万歳である。

 

「さて、担任が行ったところで保険の策も提案しておく。

 つまり権利を買えなかった場合だな」

「買えない場合?」

「ああ、この学校なら充分ありえる話だ。

 この場合、僕が思いつける対策としては、最終日付近でリーダーを船に突入させる、リーダーを何らかの方法……例えば故意に不調にしてリタイアさせる、などの手がある」

 

 こちらは通常なら提案する必要もないのだが、今の僕は停学分のCPを稼ぐ償いをすることをクラスに約束している。

 なので、稼ぎが無駄にならない程度に適当な他クラス対策も言っておく必要があるのだ。

 

「要は失格にしてもらってリーダーを不在にしてしまえば、指名されたとしても他が損をするって寸法だ。

 個人的に不調にする方は論外として、このルールブックには乗船は禁止、勝手に乗船した者は強制失格と書いてあるからできるはず。リーダーにも適用されるかはわからんが。

 あとリタイアと強制乗船のペナルティーで合わせて-60ポイントだが、これだけなら計算上東風谷や柴田が稼ぎ出すポイントの方が圧倒的に多いため問題ない」

「ええ!?……だけどこれって、いいんでしょうか?」

「よくもまぁ、そうポンポンと出てくる……」

「知らん!

 だけど面倒臭くて回りくどい他クラスの裏工作対策とか真剣に考えたくない。このクソ暑い中、無人島での男女合同集団生活の時点で大変なのに、他所事や些事まで気にしていられるか。それに違うことしたいなら、他の案を出せばいいだけだ」

 

 これだけ駒を進めてしまった状況で、他の案と言われてすぐ出てくるわけがない。

 しかもここは木陰とはいえ全員がギリギリ収まる広さの為、思考を乱す暑さもあって、なるべく早い決断が求められる。

 これは反対できない方向に風が吹いているな。

 

「うっ、こんなすぐに他の案とか思いつかないよ」

「まぁ、決めるのは一之瀬だ。僕の案にするにせよ、違う案を出すにせよ、なるべく担任が戻ってくる前に頼む。特にリーダーを東風谷のままか、柴田など違う奴にするかの決断にはもう猶予がないぞ」

「ここで私にくるの!?」

「なに言ってんだ。方針決定はリーダーの仕事だろう。僕はあくまで提案して、後戻りできないところまで進めただけだ。今回の僕はCPを稼がなければならないからな」

「…………左京君。イイ笑顔でポイポイ私に投げてくるけど、会長にもあれだけ言われてたのにまた好き勝手に行動起こして、今どんな気持ちなの?」

 

 その風に乗って一之瀬に次々丸投げしていると、恨めしげに脈絡もなくあの地獄を連想させる問いをされた。

 一応考え―――考えるまでもなく、正直な気持ちが口からこぼれた。

 

「うんまぁ……悪いとは思いつつも、少しだけ気持ち良さを感じている」

「聞いた私が馬鹿だった……。そういえば左京君って、こういう人だった」

「いやぁ」

「照れないで! 正直ならいいってものじゃないからね!」

「帆波、ともかく落ち着いて!」

「そうそう。落ち着いて指示を頼むぞ。学級委員長」

「ぐ…くっ。こ、この人、誰のせいで落ち着いてないと……!」

「ナイス変形くっころ! やっぱ一之瀬は芸風が広いなぁ」

「ああああっ!

……ふ、ふぅ。おちけつおちけつ。左京君はこういう人。左京君はこういう人」

 

 親指を立てて笑顔で一之瀬をおちょくると、新たな芸風を見せてくれた。

 サービス精神旺盛で結構なことだ。

 

「ほ、帆波ちゃん? 大丈夫ですか?」

「左京、お前……もっと他にかける言葉とかあるだろう?」

「ふっ。僕は煽りけしかける言葉しか持たない!」

「威張って言うことじゃないだろ」

 

 なんか一之瀬の挙動がおかしいが、前みたいに沈んだ感じはしないので気にしなくてもいいだろう。

 それにしても、メスガキの素質といい、聖人的性格といい、あざとい猫語といい、巨乳ムッツリといい、くっころといい、属性てんこ盛りの女子である。

 もし僕が精神的にも同世代だったら、何をおいても関わらないか、あるいはうっかり惚れて性癖を狂わされていたかもしれない。恐ろしい奴だ。

 

 ともあれ以前に一之瀬達へ言った提案したいことは言うという行動を、有言実行できてすっきりした。どういう結果になろうとも、これでクラスへの義理は果たしたといえるだろう。

 一方、少しして冷静さを取り戻した一之瀬は、そんなすっきりしている僕を何か言いたげに見てきていたが、周りに諭されてもいたのでなんとか切り替えられたようだ。

 

「……………………はぁ。わかったよ。

 最初の基本方針は星之宮先生待ち。戻ってきたら東風谷さんにリーダーを頼んで、スポットを廻ってもらう。結果がどっちになっても、リーダーはバレていいんだし、少数でなるべく多くのスポットを確保してほしい。

 残る私達は拠点を作って整備する班、探索して島にあるはずの食料を集めたりする班に分かれて、手が空いたら自由時間! とりあえず、これでいってみよう!

 みんな…特に負担が大きくなる東風谷さん。この案でいいかな?」

「カードが届いたら、ひたすらスポットを廻ればいいんですよね? 軽いものですよ」

 

 学園の不敵な巫女様は、自信満々のご様子。

 東風谷がこうなっている時は全面的に信じられる。

 きっと彼女ならやってくれるでしょう。

 

 しかしこれでなんとか、できる範囲で理想的な采配に落とし込むことができたな。

 僕のできる初動はこれぐらいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ところで、蛇のようにスルリと腕に巻き付いてきたコレは如何なる意味を持つのだろう? 非常に察したくないのだが、何も言わないわけにはいかないので、疑問を口に出す。

 

「あの、東風谷? なんで僕の腕を掴んでるの?」

「言いだしっぺの夢月さんは、私のスポット巡り班だからに決まってるじゃないですか。先生が戻ってきたら、すぐに出発しますよ!」

「待て待て待て待てっ!

 僕は拠点整備を希望する! 野営知識とかもあるし適任だろ!? な? 一之瀬! 四方! 君らからも東風谷に言ってやってくれよ! 適材適所を考えろって」

「で、左京君の本音は?」

「東風谷についていく大変さの回避と、拠点整備の合間にのんびりする事が目的だろお前」

「なんで僕の内心がわかるんだよ! 四方はサトリ妖怪なの!?」

「左京はこういう時すぐに顔に出るんだよ」

 

 東風谷が明らかに面倒かつ大変な真夏の無人島走破に巻き込もうとしてきやがったので、一之瀬と四方に助けを求めたら、僕の内心を読んだかのような連携と暴露に阻まれた。

 この分だと、大変な部分を丸投げしていたことすら割れていても不思議ではない。

 また四方からのツッコミを聞いて、一之瀬が嗜虐的にも見える笑みで口を開いたことも不安要素でしかない。

 

「にゃははは。左京君は本当にしょうがない人だにゃあ。

 そんなに拠点整備したいんだったら、東風谷さんと帰ってきた後にやってもらおうかな? 野営知識がある人は確かに必要だろうしね」

「ちょ、それって僕の労力半端ないだろうが!

 てか、一之瀬のそのわざとらしい猫語と意地悪そうな笑顔が全てを物語ってるんだよ! これ以上、無駄に属性を増やすような真似するな!」

「属性ってなに!? それに、わざとらしいとか意地悪そうとか人聞き悪い!」

 

 萌え系各種に妄想癖っぽい片鱗の次はS属性か。

 くっ、イロモノ枠で数少ない希望がこんな属性過多になるなんて……なんたることだ。夢も希望もない。

 最近、聖人キャラ崩壊の兆候も見受けられる一之瀬は、すでに手遅れの可能性があるかもしれない。

 

 しかし本格的にラノベなどでたまに見る負けヒロイン染みてきたな。

 それでなくても将来(「あの人には私がいないと」みたいな?)ヒモとかに入れ込みそうなハイスペック善人なのに、他人事ながら先行きに不安を感じさせる奴である。主に、喪女の素質的な点で。

 

「はい、そこまで!

 夢月さん。話を逸らそうとしても無駄です。私と行くことは確定事項です。

 神様のご加護がありますし、私も助けますから大丈夫ですよ!」

「お前は、色々強引!! そして歪みがねぇ!

 てか、大丈夫なのは元々疑ってないんだよ! ただキツイのが確定的に明らかだから、僕は行きたくないの!」

「え、疑って……いない…んです、か?」

「なに当たり前のことで驚いてんだよ!? 友達や神様は普通信じるだろっ!」

「……ぁ」

「あっ! もしかして関係ないこと言って、なし崩し的に僕を走破班にしようとする算段か? その手には乗らないからな!」

 

 一之瀬に気を取られていると、次は東風谷が論戦を仕掛けてきた。

 しかし経験不足のせいか、当然の事を言っただけで言葉に詰まり押し黙った。

 東風谷は別に言い合いに弱いわけではないのに、突然意味不明な言動になることがあるのだ。この時もそうで、何故か口を開けて静止していた。

 おかげでたやすく論破はできたが、できれば掴んでいる僕の腕を離してから行動停止してほしかった。

 

「まあまあ。俺もついて行くし、左京もいい加減諦めて一緒に行こう。

 あと他に何人か運動に自信がある奴も来てくれると助かる」

「あ、じゃあ俺も行っていいか?」

「そうなると女子もいた方がいいよね。私ならバレー部だし、足手まといにはならないと思う。

 あっ、知らないかもだから一応自己紹介しておくと、私は安藤紗代ね。よろしくっ!」

 

 その動けない間に、僕がみんなに思い直してもらうことも逃げることもできないうちに、四方が勝手にまとめに入っていたからだ。

 メンバーは、東風谷、四方、柴田、安藤―――そして僕。

 東風谷をリーダーとしたBクラス走破班結成の瞬間である。

 

 

 

「……ところで、気配を消して途中から発言もしなかった神崎。今からでも僕とポジション交換してくれてもいいんじゃなかろうか?」

「俺を巻き込むんじゃないっ! この空気でできるわけないだろうが!!」

「左京君って良くも悪くもブレないよね……」

「いや、もう諦めろよ」

 

 和気藹々とした結成の片隅で、固まっている東風谷に腕を掴まれながら。

 担任を待つ間、クラスのトップにポジション交換を持ちかける僕の存在を除けば、美しき青春の一幕となったかもしれない。

 





 リーダー指名のペナルティ解除(まだ内容半分しか出してないけど。デメリットについては次以降に)と強制乗船に関してでっち上げました。

 それと星之宮先生ファンの方、すいません。
……でも「ぐぬぬ」ってなる彼女はいい味出しそうな気がしません? 私はそんな気がしていたのでやりました。反省はしていますが後悔はしていません。
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