ちょっと忙しい時期に入ったのに加え、あの毎年襲来する春っぽい病もあって、中途半端な部分で止まってしまいました。すいません。
ですが少しでも気を逸らそうとちょいちょい書いてたら、1話分書き上がったので投稿します。
……こんな状態なんで、あまりにアレだったら後日修正を入れるかもしれません(修正してない前科2犯ですが)。
高円寺は泳いでくるという目線だけ寄越して去っていった。
ただ思いのほか話し込んでしまったことに気づいたこともあって、僕達もとりあえずそれぞれの拠点や集合場所まで移動しながら綾小路から話の続きを聞くことにした。
高円寺については間違った解釈をしているとも思えないし夜の約束はできたので、佐倉をDクラスから連れ出すことは安心して任せられるだろう。
ともあれその綾小路と情報交換した情報と自分達の探索結果を基に、現在の各クラスの分布・勢力図を僕は頭の中で整理していく。
後で四方達と地図などにする為だ。
南側のビーチと林・井戸一帯のスポットはうちのBクラス。
北側のビーチや島唯一の山、そこにある洞窟周辺はAクラス。
島の中央西を流れる川の周辺をDクラス。
同じく島の中央東、客船が停泊する近辺の砂浜やビーチで留まったままというCクラス。
まずBクラスは、僕という足手まとい付とはいえ東風谷が電撃的に南側をほぼ占拠した。
だがAクラスは、それを読んでいたように中央よりやや北辺りのスポットをまず押さえたようだ。要はラインだけを押さえ、最低限北のスポットをゆっくり取れる作戦にしたのだろう。
Dクラスは、須藤他数人が川方面に向かってくる姿が見えた事と聞こえた歓声から割り出した。水場で生活しやすそうな優良な拠点スポットでもあり、東風谷達と見つけた時にもあえて占拠せず残しておいたので、当然あそこを取るはずだ。
Cクラスは、高円寺お勧め絶景スポットの時の話に推測を加えたものである。
これで他クラスになにか用ができても、行き先に困ることはないと思う。
どこかのクラスが1週間という無人島滞在期間を舐めれば、それなりの一般リタイア者が出てしまうと僕は思っている。
一之瀬や四方、それに出る直前に女子を纏めていた網倉さんがいるからうちでは滅多なことにならないだろうが、不運な何かが起きた場合に他のクラスと連携がとれるようにしておきたい。
つまり僕が考えるこの試験の要は、競争ではなく適所での協力である。学校や頭が回る奴はそう考えないだろうが。
纏めた情報で気になった部分はAクラスあたりだろうか。
綾小路と佐倉が占拠された洞窟から出てくる葛城と戸塚を“偶然”見たと言っていた。この情報だけで考えると、Aクラスは僕達みたいな方針のクラスにスポットを独占されないようにする方針……か?
なんか違和感があるけど、全員が集まっていた場であれだけブッこんだら、少なくとも葛城の初手は防御に偏ったものになるだろうことは予想はしていた。
あれはリーダー的な立場の奴ほど焦って冷静さを失い、そいつの特性に沿った行動をとりやすくなる学校の誘導を僕が利用しただけだ。だから賛否に関わらず、学校にノセられた奴はそのまま自分が考える最適解―――葛城であれば保守的といえる縄張り確保戦略―――を採る可能性が高かった。
まだ龍園やDクラスの有力者あたりと組むオプション案の可能性も残っているが、基本将棋の穴熊のような方針を採るだろう。
ただあちら視点で見ると、準備時間を与えないで動くかもしれない僕達という不確定要因がいるし、最初に少しだけ無茶をしてでも縄張りの確保に動くのはわからなくはない。
ついでにいえば、多少なりとも対抗心があっておかしくない同じ生徒会役員の一之瀬がいて、CP的にワンチャン逆転される可能性さえ生える(この試験だけではまず無理だが)うちとは組もうとしないはずだ。
尤も、このリーダーがバレるリスクのあるやり方自体は葛城ではなく、戸塚かもしくは急進的な奴の案のような気がする。事実、偶然?とはいえ綾小路や佐倉に目撃されているのだ。
話だけでは、どちらがこの試験のリーダーかはわからない(どちらかというと戸塚が濃厚か?)が、慎重で真っ直ぐな葛城なら欲をかいて誤魔化し前提の攻撃的ともいえるような回りくどい手にはならないのではなかろうか。ミスリードを誘う目的だとしてもあまりに性格的にそぐわない。
Aクラスの誰かが焦っている、もしくは葛城達を焦らせている奴がいる……とかだったら馬鹿馬鹿しい事をする奴がいるものだが……。
……いや、それ以前に、本当に綾小路と佐倉が目撃したのは偶然か?
四方と同等クラスの洞察力・思考力と見ている綾小路なら、葛城や戸塚の行動を読みきって先回りした上で、確認の邪魔にならないと割り切って佐倉や高円寺を同行させた可能性もある。
綾小路からは、同じ天才でも四方と違って、目的の為なら手段を問わない者特有の匂いを感じるので、何らかの『理由』さえあれば最高効率を狙いそうなのだ。
そしてDクラスのポイント事情からすれば、それだけで一応理由には充分である。
勿論、他にも理由はあるかもしれないが僕にはわからないし、ぶっちゃけどうでもいい。これは頭の片隅に置いておくだけにしておこう。
まぁ、これはただの想像でしかないので、葛城達へ会いに行った時にでも聞けばそれなりに判明するだろう。
ちなみに綾小路に聞いても、佐倉がわからない部分でとぼけるかブラフを撒かれることが明白なので時間の無駄だ。案外本当の事を言うかもしれないが、それはそれで彼に不信感全開の東風谷以外に迷いが発生する。
触らぬ神に祟りなし、とばかりに深い部分のスルー安定。
これが綾小路と対する時の最適な手の気がする。普段ならともかく、騙し合いありのサバイバルとかいう非日常な状況なら特に。
何はともあれ、今はやる事をやってしまわないといけない。
四方筆頭に他の面子の記憶力に頼りきりだと、綾小路以外の落とし穴に落としてきそうな奴にやられるかもしれない。心当たりもある。
それに自分で地理含む状況を把握してない結果、必要な行動ができないとかなったら僕の矜持が許さない。流石にそれは格好悪すぎる。
僕がそうして考えを纏めたり、必要箇所を覚えておこうとしていると、四方や残ったDクラスの二人が高円寺のことを話しているのが聞こえてきた。
「しかし、左京って時々ハッとすること言うよな」
「オレはてっきり、あいつは暑さで頭をやられておかしくなってるかと……」
「うん。わたしも高円寺君がおかしいのは当然だと思ってて、何か意味があるかも? なんて全然頭に浮かばなかった」
「……お前ら、高円寺に失礼すぎだろう。わからないでもないけどさ」
あれは本当は勘頼りの当てずっぽうな憶測ばかりだったのだが、そう言われるとなんか1を聞いて10を知った気分になれるので気持ちがいい。高円寺も乗ってくれてたみたいだし、イキれるようなことじゃないけども。
ただ柴田や安藤さんは、あれだけでは不完全燃焼っぽい。再度聞いてきたら面倒だし、暇ができたら適当に誤魔化しておくことにしよう。
それにしても、天文部関係者は回数こそそうないけど高円寺とは何度も話しているのだから、綾小路や佐倉が言うおかしい奴扱いはあんまりではなかろうか? 正直、綾小路や東風谷よりはまともな奴だと思う。
それにあいつはイロモノではあっても、あまり意味のないことはしないタイプのように見えるので、信用はできるだろうに。
「…………それにしても、一体どういうことなんだ。
なんか初っ端から2クラスのリーダーがいきなりほぼ判明してしまったり、高円寺の言動に真意?があったり、月見に誘われたり、事態の展開が速すぎないか?
もしかしてオレは何かの岐路に立たたされてるんじゃないかと思えてきたんだが」
「お、落ち着いて綾小路君! そんなわけないから! 少なくとも左京君はこれで平常運転だからね!」
「いや、オレは慌てているわけじゃ」
「うふふ。疑うことが多すぎて大変そうですね、綾なんとかさん!
どんな気持ち? 先手を打たれすぎて早々にやれることも限られちゃった嘘つきさん? ねえどんな気持ち?」
「早苗さん! それ、ホントのことでも今言っちゃ駄目なやつ! 綾小路君は嘘つきっぽいけど、目が優しいから、たぶん、きっと良い人だよっ!」
「……」
「……佐倉。フォローのつもりかもしれんが、むしろお前のほうがダメージ与えてるからな?
綾小路、今夜の月見は楽しもうな。それと疑うのもほどほどにしておいた方が、平穏に近づけると思うぞ」
おぉう。僕も思ってたけど、意外と思ったこと言うな佐倉。黙り込んじゃったじゃん綾小路。
一応助言っぽくフォローしたが、反応が読みにくくていまいち効果があるかわからない。新しくわかったことはあるが、勘9割で確信には至らないしな。
東風谷は……まぁ隙が見えたらなんかやると思ってたけど、前に僕をからかってきた時よりかなり攻撃的というか挑発的だ。
単純に嫌いというよりも、東風谷にとっての譲れない一線で反復横飛びする綾小路が目障りに見えているのかもしれない。
一方、佐倉は綾小路に内弁慶モードを適用できるくらいには心を許してるみたいだし、櫛田と違って友達認定はしてそう。
櫛田に対しては多分同族嫌悪に近い感じがするから、これからも一定以上仲良くなるのは難しいだろうし、綾小路や高円寺と友達になれそうなのは佐倉にとって大きな一歩……になるといいな。
綾小路は『演技』で揺らしていた外側にダメージを食らって押し黙ったが、元はといえば高円寺がいた時からの混乱が噴出した結果……の演出だろう。
ただ微動だにしないほど精神が安定して見えて、彼は予想外の何かが溢れてこぼれると、いきなり崩れるタイプと見た。
尤も、全部ではなく一部がほんの少し崩れて、それを修正・適応などする僅かな変化にしかならなそうだが。
これは外側の能力だけを見て頼りすぎるのは、綾小路の為にもやめておいた方がいいな。
勘だが、彼はどうも妙なバランスの元に成り立っていて、下手に頼りすぎると地雷的な部分に触れてしまいそうな気がしてならない。
「でもまぁ、それはそうと。
東風谷の為、ひいては僕の安寧の為にも、佐倉は今夜の月見に強制参加なんで、改めてよろしく」
「心配してるのに、夜の無人島を出歩かせるってどうよ?」
「ふっ。行きは高円寺、帰りは東風谷という磐石のボディガードを手配してあるんだ。心配などする余地のない布陣だろう。綾小路も来てくれるだろうしな」
「やっぱりオレも組み込まれてたか。まぁ暇になりそうだから、かえってよかったかもだけど……」
なぜなら、ほら。
気にせず話していると、即座に平常運転に切り替えてくる。
一見だと全て混乱や気落ちした演技だったかとすら思えるが、綾小路の頭の回転や切り替えが速すぎて凡人の目からはそう見えるだけなのだろう。
ちょうどよく月見の印象が薄くなってたので試しに話を戻してみたら、いつも通りの綾小路の反応になったのがその証拠だ。
つまり、言動やおそらく内心にも本物と偽物を混ぜ合わせた上で、目的達成の為だけに動くのが基本になっているのだ。
これは確かに、信仰を求める東風谷から嫌われてもしかたない。
僕が見るに、綾小路は絶対に神や奇跡を信じない超絶リアリストの類いである。
どおりで、半分幻想に足を突っ込んだような東風谷には相容れないはずだ。
「ということで夜までもうやることないし、寄り道してしばらく遊びに行かね? 高円寺と話してたら、僕もひと泳ぎしたくなったんだけど」
まぁ、ただの勘だし、これで印象や態度が変わるわけでもない。
東風谷の標的をズラすついでに、叶ったらラッキー程度のささやかな希望を述べて誤魔化してみた。当然、Bクラスの奴らからは総ツッコミされるわけだけど、これが手っ取り早い着地点になる。
「左京って時々アホになるよな」
「なんでだよ。拠点整備しろって一之瀬に言われてただろ」
「ここでサボるのはないでしょ。一之瀬委員長に言っちゃうよ?」
「さっきまで疲労困憊だったのに、泳いだら危ないですよ。それに水着はどうするんですか」
「ふぅ。
バレなきゃサボりにならんだろ。泳ぐのだって野郎ならパンツだけで充分だ」
「「「「いやいやいやいやっ!!」」」」
よし。思惑通り、とりあえず話が流れて全員再び歩き出した。
心配事もほぼ片付いたし、僕はさっさと拠点や海でのんびりしたいのだ。
野放図な発言は、時と場を選べばRTA的な短縮を可能とする。
今回でいえば、綾小路に突っかかる東風谷イベントをスキップ……というか柴田達が上書きしてくれたとわかればそれでいい。あとは誰かが、それぞれの拠点へ帰る流れに戻してくれるだろう。
「おいっ。なんで満足げに頷いて歩き始めたんだよ!」
「ねえ、本当に泳ぎに行かないよね? というか、なんで急に無言になったのこの人!?」
「……あー、多分色々メンドくなったんだろ。流石に泳ぎには行かないと思うから、このままついて行っても大丈夫…だと思う」
柴田と安藤さんはまだ騒いでいるが、四方がフォローしてくれてる。
東風谷はマイペースに佐倉を引っ張ってるし、大丈夫だろう。
満足したらさっさと帰って休みたくなり、電池が切れたように眠気が襲ってきているのだ。
月見の為にも、体力の回復と温存しておくのは必須といえよう。
「愛里さん、西回りなら途中にDクラスが拠点にしそうな川とスポットがありましたけど、夢月さんについて行くと東周りになっちゃいますよ。どうします?」
「動じないね早苗さん。
……えっと、拠点?とは別に確か集合場所が左京君が向かってる方向だから、私達も途中まで一緒に行っていいかな?」
「勿論ですよ! 道中危ないかもですし、手を繋いで行きましょう!」
「わわっ」
「……………………え? あれ? もしかしてオレ、煽られ損? なんかもう最近、喧嘩ポイントでも導入されようものなら、東風谷と他数人は即買いになりそうなことの連続なんだが?」
「……一人でなに言ってんだ綾小路」
なので、もう話さないで拠点まで戻るつもりだったのに後ろの変人があまりにおかしいので、つい突っ込みをさせられてしまっていた。
綾小路がまるでみんなの輪に入れなくて拗ねてる子供みたいだったのである。
これは突っ込まざるを得ない。
でなければ吹き出して煽ってしまう。
折角、東風谷のターゲットが佐倉に移っている好機だったというのに、わけのわからない生物に笑いと哀れみが向いて乗せられてしまった。綾小路はやっぱり侮れないな。
しかし冗談とわかっている(冗談……だよな?)が、綾小路の言葉選びは相変わらずだ。それを独り言で漏らすあたりも芸が細かい。
「さきょ…いや、む、夢月……と呼んでもいいか?」
……それにしても、綾小路は何故に時々乙女?っぽいモードになるんだ?
スイッチもわからないし、それまでの流れから考えても、自ら黒歴史を作る方向に進む精神性がまったくわからない。
てか、呼び方なんぞ変に意識すると気色悪いし、なにより野郎同士なんだから好きに呼べよと言いたい。
が、眠いし疲れているのでスルーする。
鬼龍院先輩か橘書記ならお祭り気分になるレベルで大歓迎だったのだが、今の僕には遊ぶ余力があまりないのだ。
「帰還場所は違うけど、いいから行こう。何気に僕はめっちゃ疲れてんだよ」
「……スルー、か」
「あー?」
「いや、なんでもない。
……ただ………………なんだかんだいって幸運だったな、と」
「ああ、それには同感だな。
まず佐倉が探索に出てくれてたのが幸運で、その上で綾小路や高円寺と遭遇できたのは奇跡的な幸運だったよ。ご都合主義万歳とでも言いたいね」
「ははっ。なんだそれ」
それに、あんなに振り回されて幸運と思えるメンタル。
普段から周囲のいろんな奴から振り回されているのを偲ばせる。
口に出すとおまゆう案件にもなりそうだから誤魔化したけど、綾小路も何かを誤魔化してる感じがするからお互い様だろう。
まぁ、そこらへんの究明は誰かにぶん投げておこう。
何気に今の会話が聞こえてたっぽい奴も綾小路に微妙な視線を向けているので、色々察することができる奴はそれなりにいるはずだ。
なにはともあれ、この時の僕はあと少しで休めることに目が向きすぎていたようである。
綾小路に関しての妄想。
私は彼を基本的に『信じない』天才だと思ってたり。
その範囲は多岐にわたり、自分の計画や友達はおろか自分自身すら全面的には信じておらず、彼にとっての目的の為に成功率が最も高い策を上から順に機械的に打っているだけ……なんじゃないかなぁ、と。
だからこそ多少なりとも心を揺さぶられた相手には、それぞれで違った特別な対応になっている気がします。
という妄想設定でした。
断っておくとこれは正解とかじゃなくて、この作品の早苗みたいな『信じる』ことを重視する奴が綾小路にあんな態度になる理由の一つ……な風に見てくれれば。