誤字報告ありがとうございます。
あとどうでもいいだろうけど、誤字を直してる時に小説情報見たら、UAがぴったり10万。思わずスクショしてしまった。2023/9/2.12:00
読んでくれている皆様、ありがとうございます。
新しい夕方が到来する。
昼下がりの大恥を記憶から消去した結果、もういくらも経たないうちに美しさと希望に溢れた夜が訪れる夕方だ。
問題点は、諸般の事情により逃亡者となったことで、面倒と絶望の未来が待っている夕方でもあること。
だから神も言っている(錯覚)。
―――今日は厄日だ、と。
逃亡を果たした僕は、部屋に同室者がいないとわかっているうちに、自分の荷物からディスカッション中の時間潰し用にもなる本を数冊持ち出していた。勿論、連れ去られる前まで持ち歩いていた荷物やパソコンもそのまま持ってきた。少し荷物が多くなっても、最悪部屋に戻らなくていい状態にはしておきたい。
ただ鳴ると鬱陶しいし端末は置いてきたかった。だが、櫛田の件があるので持ち歩いていないと何を言われるかわかったものじゃない。つくづくタイミングが悪いものだ。
『本日も高度育成高等学校所有船にてお楽しみのところ申し訳ありません。
迷子のお知らせを致します。
高度育成高等学校学生寮にお住まいの1年Bクラス、左京夢月くん。『迷子』の1年Bクラス、左京夢月くん。同じく1年Bクラス、保護者の一之瀬帆波さんがお待ちです。この放送をお聞きの際は、早めの連絡または端末の電源を入れることをお勧めします」
そうして首尾よく事をなしてしばらく経った頃に、担任の声で船内放送が流れてきた。どうやら一之瀬は、担任を頼ったようだ。
ただ逃げ出した時点で、この手もあるだろうと読んでいた。勿論、僕は先手を打っている。リスクを犯してまで自室へ寄り道したことだ。ここで道具や材料を持ち出せたことは、選択肢を増やすのに一役買ってくれる。
それに、速さこそなかなか迅速な対応と言えなくもないが……ふっ。青いな。本物の子供の迷子と違い、僕が気にしなければどうということもない平凡極まりない手だ。後で役立つかもと必要以上に迷子という言葉に反発して見せて誘導していたとはいえ、東風谷や櫛田ならそれをしない場合のペナルティっぽいモノも付け加えて追い込んできていただろう。
それができない事実こそが、正攻法に寄りすぎて成果を逃してしまう一之瀬達の弱点である。
『繰り返し放送致し―――ブッハ!!! もう、ダメっ! さっきょうく~ん? こんな放送流されてどんな気持ち? ねえどんな気持ち~? 担任を任されるようになってそう長くないけど、うぷぷ…私、生徒の迷子捜索放送なんて初めてよ~。ぷ~くすくすっ』
それを思えば、一之瀬に加担してテンション高く煽ってくる担任が憐れに思えてくる。
同級生が保護者などと言って誰が信用するのか。せいぜいがクラスメイトだけだろう。
僕にスルーされる想定をしていない担任や一之瀬は、可哀想なくらい視野が狭かった。
『星之宮先生! 左京君を煽ってどうするんですか!? 船内放送で探して欲しいって、頼んだだけなのに!』
『だって~…うふっ。迷子とか保護者とか聞かされて、もう私おかしくておかしくて」
『おいっ、星之宮! まだマイクのスイッチが入ったままだぞ!?』
『あっ、ヤバ』
最後はグダグダな会話とともに、ブツリと放送が終了した。
着想はともかく、突発事態への対応が弱すぎるし、なりより善人的対応に縛られている。言ってみれば、ずる賢い立ち回りの警戒をしなくていいのである。四方や葛城、堀北会長にもそういう節があるが、一之瀬はより顕著だ。
ただ僕の経験上、こうした善人が本気になった時が最も恐ろしい。
流石に一之瀬レベルは初めて見たが、稀にいて類似する葛城タイプは最重要の目的が定まった時に、とんでもない推進力を発揮する場合があるのだ。基本性能も高い奴らだし尚更注意が必要になる。特に一之瀬は、予想外に想定外で不思議生物Xというべき確定変人でもあるので、敵対したくない者(するつもりもないが)堂々の首位である。だから、なるべく刺激・接触しない方がいいと思っていた。
具体的な想定はできなくても、色々ぶっ壊れた奴の企みを真に打ち破る者がいるとしたら、一之瀬が最有力だと僕は見ている。尤も、スイッチが入っていない今は、ただのハイスペック善人お化けなわけだが。
一之瀬の言動から推察できる思想の「みんな仲良く」という言葉は、聞こえは良くても基本的に戦争と差別を生む呪いだ。そのせいで海外ではバブル景気あたりの頃から禁句とすらされているが、ブラックな人達には譲れない常套句らしく日本で強く否定する奴はあまり見ない。
『みんな』は自分の仲間で、他は『自分と関係ない人』。結果、仲間内だけで群れて、周りと諍い、対立を深めていく事になる。これを主に主張する脳内がお花畑な連中の矛盾と言ってもいいほどであり、この学校のシステムにも合致する呪いだろう。
ただ―――勘だが、一之瀬のあの「みんな仲良く」は多分養殖モノだ。
なんらかの事情で元々善良だった性質に、更に過度な善良さが上乗せされた結果だと思われる。男女差があると言っても、葛城を上回る善良さを得ている事には相応の理由が必要になるはず。そうでなければ『ああ』はならない。
そう考える要素が、一之瀬のセルフ罰ゲーム的な考えと、今のところ学校が押し付けてくる「みんな仲良く」とは別物な点。本来の『それ』とは違うから、ブラック思考に寄っていかない限り、僕が一之瀬を本気で避けることはないだろう。
よし。理論武装の弾作成はこの辺にしておこう。最近の一之瀬や神崎はいまいち想定しづらい場合があるので、いくつかの言葉を用意しておくと後で楽ができるのだ。
「呼ばれてますよ。まったく。夢月さんは事あるごとに問題ばっかり起こしちゃって」
「―――っ!
……ふ、ふぅ、なんだ東風谷か」
ともかく、あれなら心配することないと、一応周囲の警戒だけしつつ、僕はあまり人がいない船首方面へと足を向けていた。そんな折に死角から声をかけられたので少し驚いてしまったが、東風谷だったので事なきを得た。
ただ不機嫌になる要素があるせいか、僕はともかく東風谷は無駄に突っかかってきそうな雰囲気だ。こうした時、東風谷とは言葉のドッチボールになりやすい。お互いに八つ当たりだとわかってるから、本気で険悪な雰囲気はないけども。
ちなみに一之瀬達に連行された場に居た安藤からの情報では、よりによって東風谷に加え清隆とも同グループになり、空気が最悪になったらしい。島ではいつも元気だった安藤がひどく疲労して終始突っ伏していた。
「なんだとはご挨拶ですね。迷子の迷子の夢月さん?」
「ハンッ。またなんかやらかしたらしいお前が言えたことか? 聞いてるんだぞ? どっかのグループで清隆と睨み合ったとかなかったとか。お前こそ問題ばっか起こしやがって。なぁ? さっきまで品行方正な僕が説教を受けてたんだから、今度はお前が受けろよ」
「お断りします。というか、夢月さんが品行方正とか冗談も休み休み言ってください。私こそ真に品行方正・容姿端麗という言葉がふさわしいでしょう」
「東風谷にそんな言葉が似合うわけ無いだろ。冥府魔道とか潜影蛇手とかにした方がいいんじゃないか?」
「はい?」
「あー?」
「「……」」
一難去ってまた一難。
案の定、僕と東風谷はほんの少しの言い合いの末、額がくっ付くくらいの近距離で睨み合う。このクソ緑だけは調子に乗らせてはいけないと、僕の中の何かがささやくのだ。
しかし、いつまでもこうしているわけにもいかない。
どちらともなく目線を外した僕達は、無言のままそれぞれ進みだした。奇しくも同じ方向に……。
船首デッキに来ると、予想通り人は“ほぼ”いなかった。見覚えのあるピンク髪が、隅の柱に隠れるようにして独り言?を零してるのが見えるだけだ。
僕はなんとなく東風谷と顔を見合わせ、折角の機会だしと目で意思疎通が行われ、瞬時に和解した。東風谷も考えていることは同じようで何よりである。
意思の統一がなされた僕達は、背を向けてなにかボソボソ言っている愛里にゆっくり近づいた。
「……夢月君」
「おう。なんだ愛里」
すると気づいていたのか、背を向けていた愛里に名前を呼ばれたので、返答を返した。
「とぉおおおおお!?」
返答を返すと愛里は奇声を上げ、猫背のままウルトラマンのように飛び上がった。これはいつもの奇行だろう。
「……ジュワッ?」
「あ、やっぱりそれ?」
「い、いい、いつ、いつの間にそこにぃ!?」
「いつって、ちょっと前に愛里がエア友と話してた時くらい?」
「エ、エア友ぉ……!?」
愛里は着地と同時に振り返り、その豊満な胸を押さえて叫ぶように呻くように言葉を絞り出した。
周囲には誰もいないし、鳥や動物など話しかけられる生物は存在しない。神様やお化けの気配もない。ならば合理的に考えて、ぼっちの固有能力を発動させていたと見て間違いないだろう。
「愛里さん。今ならいいですが、あまり目立った奇行は控えたほうが」
「そうだな。否定するわけじゃないが、一般的にウルトラマンごっこは女子高生として微妙なんじゃないかと思う」
「違うから!! なんか変な方向に勘違いされている!?」
「恥ずかしがらなくていいから安心しろ。僕も東風谷も同じ穴のムジナだ。聞いたところ東風谷がスーパーロボット系で、僕は戦艦系だからエア友の方向性は違うが」
「本当に違うからね! わたしはただ夢月君を名前で呼ぶ練習してただけだから!!」
下手な言い訳である。
そこそこの付き合いと友好感情のある友達を名前で呼ぶのに、練習が必要なわけがない。愛里も我ら社会不適合者5人衆の例に漏れず、嘘や言い訳が下手なのは周知の事実である。なによりタガの外し方が甘い。
よし。それなら、この内弁慶が開き直る為だ。ここは僕が一肌脱ごう。
「うんうん。猫背のまま虎になりたいから力を溜めてたんだよな? いいじゃないか」
とりあえずウルトラマンよりは、虎やギターヒーローに誤解された方がいくらかマシだろう。面白いし。
「おお。俯いていたことにそんな意味が……。流石、独特なセンスですね愛里さん!」
「ああああっ!!? どんどん明後日の方向に誤解されていくぅ!」
照れたり慌てたりといった愛里の素直すぎる反応の横で、僕と東風谷はご満悦になった。さっきまで不機嫌だったのに、ニヤニヤ笑いが隠せていない東風谷の笑顔が全てを物語っている。
そう。これは最初からある程度察しててからかっただけである。つまり愛里の癒やし成分を摂取して、東風谷のついでに僕も癒やされようと企て、その為にからかった。ただそれだけだ。
突如として始まった東風谷との共謀劇だったが、互いの狙いを瞬時に把握し、息の合ったコンビネーションで愛里の反応を楽しめた。おかげで有意義で心安らぐ時間を手に入れることができている。
東風谷早苗……相変わらず味方ならば頼もしいからかい仲間である。
愛里がワタワタするのを見て僕達は笑顔を取り戻し、互いの手を取り合ってガシッと握手した。
こんな性格な奴が友達なんて、愛里の苦労が忍ばれると思ってしまったのは考えちゃいけないのだ。そのように僕は素早く自分を棚に上げ、内心で東風谷に全てを押し付けた。きっとあっちも似たようなこと思っているから、実質ノーカンなのは間違いない。
というわけで、僕と東風谷は献身的な愛里に消耗していたMP回復をしてもらった。癒やし枠として充分な働きだったと言える。楽しそうに笑う東風谷を見るに、彼女にも異論はないようだ。
ただこれ以上やりすぎると嫌われる可能性を上げてしまうので、愛里を軽く落ち着かせた後に二人に一言断って、僕は展望室奥の小部屋へと行くことにした。こういう時は、大抵東風谷の方が上手くやる。僕はそろそろPC作業の続きを始めよう。
そうしてゲーム制作を開始してから3時間近く経っただろうか。
外が暗くなってきたあたりで、まだ居た(また来た?)愛里と東風谷が部屋へと入って来た。僕とはいえ、自ら野郎だけが居る部屋に入ってくるとは、一之瀬と同じく警戒心が薄い奴らである。青少年的には、薄い本的な展開を望んでいるんじゃないかと期待してしまうではないか。
まぁ冗談はさておき、その後は会話少なく適当に駄弁っていただけなので、彼女らにとって暇つぶし程度なのだろう。逃亡中の身ゆえに目立つ多人数での行動は控えたかったが、この二人ならば問題ない。存在感のなさやボッチ体質、人を察知する能力は僕をも凌駕する逸材達だ。事実、2回目のディスカッションまで一緒に居ても、彼女ら含めて通報どころか話しかけてくる奴すら出なかった。そもそも人がいる場所を避けて移動したりもしていた、というのもあっただろうが。
時間になったので、別グループの東風谷とは部屋前で別れた。
ああ。雑談中に東風谷がどんな問題を起こしたのか本人に聞いたところ、清隆と同じグループなのは間違いないが、そちらはほぼ無視で通したらしい。でも、どこかのクラスの女子3人組に前に殴られたと絡まれ、威圧して返り討ちにしたのが真相のようだ。
……これって、以前に僕とCクラスに乗り込んだ時にぶちのめしていた女子も、兎グループに混ざっていたのではなかろうか? 名前は知らないけど、もし絡んできた奴がCクラスだったらその可能性が高そうである。
まぁ東風谷曰く、もう目も合わないくらい怯えているっぽいし、他にも注意が向いていたとの事で、もう東風谷が絡まれるような問題は起こらないだろう。東風谷にギスギス兎の雰囲気を悪化させない判断力が残っていて何よりである。清隆や安藤は大変かもだけども。
東風谷のことはともかく僕と愛里は、牛グループの部屋に入室した。
すると入るやいなやディスカッション前に、堀北さんから結果3にする指名メールを出すよう要請された、と開口一番に須藤や池に相談された。なんでも今より先を考えて、なるべくCPを取れるところから取っておきたい的な事を言われたらしい。いや、こんな事を僕に相談されても困るのだが……。
ただ結果3にすると、敵対まで行かなくとも他(他のクラスだけじゃなくタダ働きになる愛里と松下さんも)からの印象悪化に加え、二人で山分けしても入手ポイントが半分になってしまうのでそこは考えとけよと返したら、ちょっと考えとくと言われた。
それにしても、なんというか堀北さんはこの要請からも滲み出ているように、意識が高すぎて足元に目がいってない印象。ぶっちゃけ自分中心とした天才や秀才だけで全てを決めたいのかもだが、この学校とクラスの総人数でそれをやるのは非現実的だ。僕のような我の強い凡人や愛里や一之瀬などの善良な奴を相手にそれを通そうとすれば、どこかで失敗に繋がるだろう。
しかし何らかの事情で彼女がこのまま失脚せずに兄のような立場に立ち、その時に利用もできない凡人以下だと彼女に見られたらどうなるのか微妙に心配になってくる。正直、何故堀北さんがあの各クラスのリーダー格が集まった中にいて、須藤達に要請を出せるのかわからないが、もしもこの先でリーダーとして頭角を現してくるようなら注意しておいた方がいいかもしれない。
なぜなら意識高い系かつ多くの才能を持つ者がリーダーの集団には、僕のような凡人のいる場所がなくなるのだ。となれば、クラス的に愛里がかなり苦しい位置に立つことになる。堀北さんの人を見る目はわからないが、金を軽視しているかのような発言からすると、はっきり言って彼女から愛里が凡人以下に見られる可能性は高い。念の為、対抗策は打っておくべきだろう。
あとその愛里は、僕と須藤達が会話している隙に、無駄に洗練された無駄のない動きで無駄に存在感を消しつつ、座席に座って空気のように振る舞っていたのを僕は見逃していない。この内弁慶は意外と肝が太いのか何気にいつも平常運転である。
「さて。そろそろ真面目に、記念すべき第2回目のグループディスカッションを始めていくぞ。みんな、今日もよろしく」
「なんで2回目が記念なんですか?」
「2回目に限らず、全てが僕達の記念日だろう」
「絶望的なセンスのなさ」
「ダッサ。無理して言ってるのが丸わかりで気持ち悪い」
「…………ふぅ。椎名はともかく、松下さんに姫野。お願いだから、僕の心を抉るのはそのくらいにしよう? 2回目が無い事に賭けてたから、やることを考えてなくてつい言っちゃっただけなんだ」
とまぁ、堀北さんについてはさておき。
このグループディスカッションの場は2回目にしてすでにやることがなくなり、ゆるく話すだけの場と成り果てていた。
僕は今のところそれほど重要度の高くないリスクを考えながら、一応僕が仕切り役(まだ効力あるかは微妙だが)だったのでその役割を切り出しつつ、返された言葉の切れ味に泣きそうになっていた。一之瀬達がいかに優しかったのかわかるエピソードである。
ともかく今の状況には、D以外の各クラスリーダーからお許しが出た影響もあるだろう。そうでなければ、僕が誰かに指名されて終了だったはずだ。愛里は難しいにしろ、椎名に確認を取れば僕が本当の事を言っていると龍園にはわかる。しかも以前の引き際を考えると、あいつには決断力もある。そう思えるくらいには僕は龍園を『信頼』していた。葛城は言うまでもない。
だから牛グループで2回目のディスカッションが開催された事自体が、まだ確定してはいないが、とりあえず結果1を目指す意思を結論づける状況証拠となる。
……個人的には、それでも誰か…橋本を呼んだ西さんとか、愛里以外のDクラスの誰かとかがやると思ってたんだけども。
「やることないんだったらさ。なんかゲームでもしねえ? 1時間もじっとしてるのってメッチャ暇じゃん」
「……そうだな。俺『は』賛成する。左京はどうだ?」
「……うん。私『は』賛成。左京君は?」
そんなゆるい空間にも、微妙に緊迫感のある数人はいる。
池が提案したなんらかのゲームをするのに、いち早く賛同した戸塚と西さん。揃って僕の方を向いて聞いてくる。近くに座ってるというのに、Aクラス同士では目も合わせない徹底ぶりだ。
なんだこれ。面倒くさい。
「んー。じゃあ希望者はゲームでもして時間潰すか。あっ。てか、道具あるならいいけど、誰か持ってるか?」
「部屋にはトランプとかUNOとかあるけど、今は持ってきてないよ。みんなは?」
誰とはなしに聞いてみると、松下さんがフォローしてくれた。ありがたい。美人っぽい雰囲気があって、気遣いやそれなりの頭の良さまで感じるとかなかなかの才色兼備である。
ただ本を持ってきていた愛里や椎名は、みんなでやるゲームには反対のようで首を横に振っている。僕も内心ではその意見に賛成だ。また他にも何人かはやりたくなさそうだ。
でも所詮は暇潰しなんだから、個人個人好きに過ごせばいいんじゃね、と僕は思っていた。しかたないから、最低限グループ内をまとめるけども。
ちなみに愛里の持っている本はさっき僕が貸した物で、少し変わった作風の群像劇?のような推理物だ。作者の“かみないつし”は無名に近いが、アレッサンドロ・バリッコを彷彿とさせる雰囲気が好みで最近のマイブームになっていて、何冊か購入していたのである。
またバリッコ作・海の上のピアニストも持っていたのだが、東風谷が持っていってしまったので、今は手元にない。おかげで僕の手元に残っているのは、夏川草介作・神様のカルテだけになっている。なのでディスカッション終了までに、椎名から何冊か借りれないかな。なんて、目論んでたりもした。
暇潰しの案については、そうして話し合いが行われた結果、全員がゲームなどの道具を持っていない事が判明し、その日はなにもなくてもできる即興怪談大会が開かれた。
これなら参加したくない奴まで順番が回らない可能性も高く、会話の苦手な愛里や椎名にも優しい。苦手そうだったり嫌そうにしている奴がいたら、僕や……なんか反発し合ってる戸塚・西さん、ムードメイカー気質が見受けられる渡辺や池へと振って誤魔化せば、仕切り役特権でどうとでもできるはずだ。
あと意外……でもないが、個人的にはこの怪談で最もみんなを震え上がらせる語りをしたのは松下さんだったと思う。河童は水子の暗喩だという事前知識があった僕でさえ、彼女が語った「河童の池」という怪談にはゾッとするモノを感じた。高1の子供とはいえ、クール系の美人に怪談は相性抜群である。
尤も、語り部としての参加をしなかった椎名が本気だったら、どうなっていたかわからないが。椎名は何故か愛里の持っていた本に気を取られていて、珍しく興奮気味になっていた事は怖がりな奴にとっておそらく僥倖となったことだろう。
櫛の日(9月4日)に因んで櫛田回……にしたかったけど間に合わず、櫛田の出番すら次回に持ち越し。やっぱ小説書くなら、プロット?みたいな計画とか作った方がいいのかなぁ。
かみないつしに関しては、私が2年生編5巻までしか原作を読んでいない(しかも2年生編はかなり曖昧)のと、たまたまよう実のひより解説で見かけただけの知識なので、ほぼでっち上げです。
間違ってる部分があったらすいません。
また最後に出てきた「河童の池」という怪談は、昔リアルの旅行で先輩がしたモノを参考にしました。内容は出しませんが本筋には関係しないので、何人かが松下が怖い怪談をした印象を持った…程度の認識で。