昨日、妙な方向に興が乗ってしまって見直しが不十分に感じてたせいか、本編の投稿をし忘れました。
4回目のディスカッションでは、入室した時から戸塚と西さんが言い争っていた。
このまま最後までやりあってインターバル期間に入ると流石に気分が悪いので、柄でもないが強引に仲裁しておくことにする。
「戸塚に西さん。お前ら、いい加減うるさいぞ」
「左京!?」
「左京君!?」
「そもそも僕達はここになにしに来てる?」
「そ、それは、林間学校的な豪華客船旅行の特別試験で……」
「そう。船旅にきてるんだ。ずっと揉めてたら船旅もギスギスになって、少しはあっただろう楽しかったことも塗りつぶされちまうぞ」
「で、でも」
「残りの時間でも、遊びとかで思いっきり楽しめないし、せっかくの食事なんかもまずくなる。お前らはそんな旅行の思い出にしたいのか? 僕は嫌だから止めるし、これからはできるだけ配慮する。だから名ばかりの仕切り役として仕切る。お前らはせめて無視し合え」
「……わかった。雰囲気悪くしてすまん」
「……う、はい。みなさん、すいません」
他にもギスギスが伝染する戸塚と西さんに絞って、無理矢理引き離すよう采配する。須藤や池なども火種を作ることはあったが、明確に対立してるAクラス組を優先だ。火種が常にくすぶっている2人を分離させれば多少マシになるだろう。
でも説教臭いのもまた後味がよくないので、西さんはともかく戸塚に適当な声を出させることで、空気の入れ替えをしておこう。前にエリートを自認していた戸塚には、ブラックジョークあたりが面白そうである。
「しっかし戸塚。お前の目先の感情で目がくらんで間違いを犯す感じは、確かに政治関係のエリートっぽくていいな」
「…………左京はいちいち発言が危ないんだよっ! 何も良くないだろうが!?」
「意外とハニトラとかにも引っかかりそうだし」
「ここぞとばかりに畳み掛けるな!」
「まぁまぁ。将来、もし戸塚が中国美女に議員会館通行証を発行しても、生暖かい目で見守ってあげるから」
「ガチの売国行為じゃねぇか!? 流石にそんな真似するほどじゃねぇわ!」
「そんな事やっても参院で当選したりするんだから、民主主義ってよくわからない」
「だから危ねえっつってんだろうが! なんかリアルに感じすぎるんだよお前!?」
素に戻ってこっちでは起こっていないモノをぶっこむ僕に、僅かに静止してから乗ってくれる戸塚。お互い水に流そうという意図が伝わらなくて、馬鹿にしてると取られなくて良かった。これも葛城と一緒に、たびたびからかってきた集大成というものかもしれない。
てか、こういう話についてくるって時点で、高1から政治や経済の情報集めとかしてるんだな。僕が例に出した松○参議以外も知ってるっぽい。他は結構ポカンとしてたりするし、エリートと言うだけはあるってことか。
まぁなんにしろ、これでわけわからないっぽくありながらも、部屋内がマシな雰囲気に戻ったので良しとしよう。愛里と椎名……あと松下さんには変な目で見られたが。
このディスカッションではこんな風に最初だけごたついたものの、ゲームとかもせずに時間まで…少しオーバーしつつ、そんな風に戸塚を含めて駄弁っていたり、本や端末を見てたりと思い思いに過ごしただけだった。
それから終了のアナウンスが流れてしばらくすると僕に用事が入り、前2回の解散と同じく残っていたみんなに「んじゃ解散」とだけ言い残して退出することになった。
東風谷の所に向かうためだ。
これは僕も彼女にちょっとした用事はあったが、本人含めた何人かから呼ばれたのが主な理由になる。東風谷から来たばかりのメールを見せたら、愛里と椎名も付いて来てしまったけども。
というわけで僕達は兎グループの部屋……ではなく、何故か非常階段に向かっていた。東風谷も妙な場所を指定するものだ。
それと牛グループの部屋を出ると、試験が終わってもうこの2階フロアに来る必要もない四方が出待ちしていたかのように現れた。まぁ東風谷が僕だけにメールを送信するとは考えてなかったから、四方や櫛田あたりは来るかもと思っていたが。
しかし何気に四方が来た点からも、東風谷の誰でもいいから早く来い、という見えない圧力をひしひしと感じるのは気のせいだろうか。
「やあ。夢月達も東風谷のところか?」
「ん。なんかわからんが、安藤さんや浜口、東風谷からも来るよう頼まれててな。ただ今しがた送信されてきたメールを見ると、東風谷だけ急かしてるし、違う用件っぽかったからこっちを先にと思って」
「そうか。俺もだ。あいつがどこどこに来いって言うのは珍しいからな」
「きっと対人関係だろうな。それ以外なら力ずくでどうとでもできるし」
「……夢月君達って、早苗さんの事を信じてるんだね」
四方と話していると、何を思ってか愛里が言わずもがなな事を言い出した。
東風谷をどうにかするのは、誰だろうと相当苦労する。底の見えない腕っぷしや偏った頭脳、なにより文字通りの神様がついてるのだ。消去法で、スパッとやれない人間関係について助力を求めてきたと考えるのが妥当だろう。
「まぁ俺達は仲間だからな。仲間は信じるものさ」
「え? 僕は、あいつならなにかやらかすと確信してたからだけど? 東風谷のトラブルメイカーっぷりにも困ったものだよな」
それを四方は綺麗にまとめているが、実際ヤツが何かやらかした可能性は高いと思う。だってこの試験を例えるなら、ああいう猛獣みたいなのもまとめて狭い場所に押し込んで飼育しようという無理無謀系だ。僕の牛グループみたいな普通の奴だけならともかく、猛獣を混ぜてこんなことしたら当然問題は起こる。
だから僕は東風谷ならいつかヤルと信じていた。
そういう意味で、やはり高円寺の見切る判断は絶妙なタイミングだったといえる。問題が起こる前に速攻で終わらせたのだから。
「またそういう事を……。素直なのは良いことですけど、ブーメランになりますよ」
「うん。椎名さんの言う通り、それは夢月君が言っちゃダメなやつだと思う」
でも心の綺麗な奴から僕までヤツの同類っぽく見られてるのは、なんというか…こう、ちょっと心にクルので、自信を持って東風谷とは違うと断言しておく。
「僕はトラブルなんか起こしたことないぞ。失礼な」
「確かにあんまり自分では起こさないけど、夢月君っていつも問題やトラブルの近くにいるよね」
「むしろ発端が自分じゃなくても、真っ先に飛び込んでくのが夢月だろ」
「…………いえ、自分でも結構起こしてませんかね? 直近でも全クラスのリーダーが牛グループの部屋に押し寄せてきたり、迷子放送とかされていたと思うのですが」
「気のせいだ」
「でも」
「気のせいなんだ」
「「「……」」」
「全て気のせいだとわかってくれたようだな。僕は嬉しいぞ」
真摯な説得により、連れはみんなわかってくれたようでなにより。笑顔で圧をかけた甲斐があった。
ていうか、僕が問題なんか起こすわけないじゃん。面倒くさい。むしろ火種を消して回ってる側だっての。
雑談しながら4人で歩いていると、非常階段の手前のドア付近に2人の男子を発見した。しかも片方はまたしても清隆である。
あいつは、なんでこう何度も先回りしてくるのか。マジで僕って踊らされてないよな? 清隆にも伝えた通り、特別試験とは関係なく、あと1週間くらいは誰かに踊らされるわけにはいかないんだけども。
まぁ考えすぎだろうが。
「や、清隆…とお連れさん」
「夢月? なんでここに……って、考えるまでもなく東風谷か」
「いえーす。なんか事情知ってるん?」
「いや、オレも来たばかり」
「お前は左京っ!」
清隆と挨拶を交わしていると、清隆の連れが僕の名前を呼んだ。
最近、僕が知らないのに僕を知ってる奴が増えてる気がする。アレだな。担任がめちゃクソ怪しい。具体的には放送とか。
「はいはい。左京ですよ~。
で、君は?」
「俺は…Dクラスの幸村だ。まさかこんなところで」
「えっと、悪い。聞いといてなんだが……すまんが話は後にしてもらってもいいか幸村君。なんか急かされてる感じのメールをもらったから───」
幸村が話しかけてきたが、断って先に用事を済ませようとしたところ、開けようとしていたドアの向こうから、ガンッという衝撃が伝わってきた。
それを認識した僕は「え~? あの娘が~? まぁいつかやると思ってましたよ。友達として残念ですけどね」といった少年A的言葉を放つ準備をしつつ、対東風谷用の精神に切り替えた。そのままこの場にいる面子を突っ切り、ドアまで行って開ける。
「「「あ」」」
扉を開けた先は最初、背を向けた東風谷しか見えなかったが───。
「ねえっ!! あんたならわかるんでしょ!? お願いだから手を貸してよ!」
「いい加減にしてくれませんか。図々しく付き纏ってきて鬱陶しい」
「なんでよ!? こいつら、最初から許すつもりなんてないのよ!? 佐倉さんを助けるなら、あたしも助けてくれてもいいじゃない!!」
「軽井沢! あんたふざけんじゃないわよ! 関係ない東風谷さんまで巻き込んで、恥知らずにも程があるわ!!」
「……はぁ。夢月さん、早く来てくれないかし───あら?」
聞こえてきた声で場の状況が明らかになるにつれ、そこは女子5人?のド修羅場だと察知できてしまった。
どうやら僕はどこでもドアを使用して、異次元に来てしまったようだ。一度閉めて180度転進するのが、この場合の対処として最上だろう。
「失礼しました~」
「夢月さん。待ってましたよ」
だから急いでドアを閉めようとしたのだが、振り返った笑顔の東風谷と目が合い、ガッと僕の肩を掴まれてしまった。
ヤバい。笑顔なのに目が笑ってない。逃さない離さないと態度で示しているかのようだ。
これは僕に面倒を丸投げするつもりだと確信し、必死の抵抗を言動に乗せる。
「こんな女子同士の争いに僕を巻き込むつもりか!? このトラブルメイカーが!
つーか、肩から手を離せ! そんなに離れたくないとか僕のこと好きすぎかよ!?」
「ふふっ。そうですね。いつもグッドタイミングに来てくれる夢月さん大好きです。お望みなら愛してると言ってあげてもいいですよ?」
「やめろお前! 鳥肌立ったわ!」
てか、早くこの場を離れないと本当に面倒に巻き込まれる。愛里や椎名の前で、百合の間に挟まる男にはなりたくない。いや、キャットファイトに乱入する男か? どうでもいいわ!
「なんでこんなに人が来るの!? 私達はただ軽井沢をリカに謝らせたいだけなのに!」
「ヤリマンのコイツが呼んだんじゃない!? さっきもマジムカつく事してくれたし!」
「しかも左京君だけじゃなくて椎名さんまでいるよ!? ヤバいって!」
「ちょっと左京君!! 東風谷さんとの喧嘩は後にしてあたしを助けて! こいつらあたしを強引に拉致して暴力も振るってきたんだから! マジ最低じゃない!? ウザいから消えろとか言われたんだよ!?」
「あっ、今度は左京君!? 手当り次第とかマジ最低!」
嗚呼、遅かった。事態は混沌としつつ、騒然としてきており、挙げ句の果てには知らない奴らが僕の名前を呼んでいる。微妙に東風谷からスライドされてきたのが面倒くさすぎる。
いっそ東風谷VS金髪VS女子3人、ファイッ! とかで片付かないかなぁ。流石に無理か。
……というか僕としては、トレイン行為しておいて嬉しげに笑ってる東風谷こそがマジ最低でムカつくんだが。女子達の目線を見るに罵倒も東風谷へは向いてなさそうだし、なんてものに巻き込んできやがったんだよコイツ。
でも今更矛先を戻して愛里達にまで火の粉が飛んだらと思うと、一旦僕で止めておいて最低限の事態収拾は必要だろう。
そこも計算尽くだと察せられるあたり、東風谷は真に邪悪である。
しかたないので嫌々事情を聞こうとしたところ、金髪の女子がこっちに寄ってきたので躱し、いきり立っている女子3人組の近くに移動する。
金髪は陽キャっぽい外見なのに、こんな短い時間でコミュ障を疑う会話能力。冷静に外から見ると、揉めているっぽい3人と全く『会話』していないのが丸わかりなのだ。おそらくコミュニケーション経験自体が少ないとみた。
間違いない。
金髪は高校デビューの元陰キャ……つまり裏切り者だ。
こういう陽キャ系コミュ障は苦手な部類だし、できれば清隆あたりを壁にしてやり過ごしたい。
だから金髪には睨まれても、さっきの応酬も考慮に入れて3人の方を冷静にさせる方を優先する。まして金髪寄りに見られる挑発行為など以ての外。3人の方も金髪を鼻で笑ったりして挑発していたが、まだこっちの方が面倒が少ないと僕の勘は言っている。
それにしても金髪が睨んでいる対象が奇妙だ。
僕と女子3人だけじゃなく、東風谷…ではなく何故か関係ない愛里に視線が行ったり来たりしている。まぁ、普段目立たないようにしてるのに、主に僕や東風谷のせいで姫ムーブに見える時がある可能性は考えていたから、女子で鼻につく奴がいてもおかしくはないが……。佐倉さんを助けるならと言ってたし、金髪から愛里に何らかの隔意がありそう。
しかし、どうして昨日今日と僕はこんな貧乏クジばかりなのか……東風谷のせいだ。
考えてみれば、なんとなく場の流れは話し合いレベルにまで持ちなおしてきたのだから、もう東風谷から事情を聞き出してこっちに巻き戻してやる。当事者のくせに丸投げして1人だけ脱出など絶対に許さん。
僕は内心で華麗に手のひらを返した。
「東風谷。事情説明」
「まず私の問題はすでに片付いてます。今は、軽井沢さん…そこの金髪の人が横暴な振る舞いをしたとかで、そっちの3人が誰かに謝れって迫ってたみたいですね。ちなみに、さっきの私は巻き込まれただけです」
人知れず切り替えた僕が簡潔に尋ねると、ちょっと真面目になった東風谷から情報がもたらされる。
ダウト。とかって、ふざけて言えないのがツライところ。嘘でもなさそうだしな。
「重要な点は別にあります。『軽井沢』は無人島の5日目に、愛里さんを一時クラスの拠点から追い出した犯人です」
「ちょ、ちょっと待ってよ!! あの時は下着がなくなって動転してたんだってば! そんなつもりじゃなかっ」
「軽井沢ぁ~? あんた、やっぱり他でもやってたんだ。これも因果応報ってものかもね」
「うるさい! 東風谷さん、この話は昨日決着したでしょ!? もう蒸し返さないでよ!」
事情を聞いたら聞いたで、また更に面倒くさいことになってきた。
愛里の方を見ると頷かれたので彼女の性格上、説明は正しいけど別に仕返ししたくないし、目立ちたくないとか揉め事に関わりたくないとか考えていそうだ。
ついでに珍しく他人を呼び捨てした上で、東風谷自身でなにかしないということは、先に言われた通りすでに話はついている。もしくは、愛里の考えを尊重しているということ。これは東風谷と愛里を知っていれば、だいたい予想できる。
つまるところ、僕にはくすぶっている部分の解消を求めている……のか?
……マジかよ。女子同士の揉め事とか、僕にどうにかできると思えないんだけど。でも見回しても、解決する案くらいポンと出せそうな友達連中が揃って動く気配もない。
東風谷はともかく、四方、椎名、清隆どころか目立たないようにしてる愛里まで、四方の後ろから僕へ期待するかのような眼差しを向けているだけだ。他は当事者を除くと、苛ついている感じの幸村君だけが浮いてるのがなんとも……。
ていうか、ここから寝覚めが悪くならない為には、ほぼ無関係の僕がなんとか一件不時着程度までは持っていかないといけないのか……嘘だと言ってよ、幸村君(とばっちり)。
「そしてこっちの3人のうち1人は、以前に私に喧嘩を売ってきて返り討ちにしたCクラスの人です」
「ちょちょちょ、私達は東風谷さんになにかする気はないよ!? 軽井沢に謝らせたいだけで、龍園君にも言われてるし、もう東風谷さんや左京君と敵対する気はないから!」
「だそうです。あとさっきも言いましたが、それとは別に彼女達の友人が軽井沢さんの被害を受けたとかで、本人に直接確認させた上で謝らせたいのが今回の発端らしいですよ」
「だからそれはあたしじゃないって言ってるじゃない! 意味わかんないっての!」
「軽井沢! あんた、またとぼけるつもり!? さっき問題にするってなった途端、やったって認めたじゃない!」
僕が頭を抱えたくなっている間も言い合いは進み、東風谷以外がまたヒートアップしてきた。放っておくとキャットファイトか東風谷無双が始まりそうだったので、嫌だが……本当に嫌でしかたないが、割って入って僕にできるたったひとつの冴えたやり方を提案してみる。
「ああ、揉めるのは後にしてくれ。まずCクラス?の……えーと」
「……真鍋よ」
「そう、真鍋さん達に提案したい。
えーと、東風谷は勿論、あっちの金髪の感じだとどうあっても謝らないぞ。なら頑張っても時間と労力の無駄だし、いっそリーダー連中に訴えてしまわないか? アイツのせいで友達が~、とか。謝らせろ~、とか。慰謝料寄越せ、とか。
大丈夫。龍園がどう判断するかわからないけど、少なくとも一之瀬や櫛田なら話くらいは聞いてくれるはずだし、今から……」
「待ってってば! あたし」
「私達、東風谷さんには本当に何もする気はないから!」
「あ、マジでそうなの? 他の二人も?」
僕の提案を遮った金髪の声を更に遮った真鍋さん達の主張に聞き返すと、非常階段にて3人の首ふり人形(縦)が誕生した。
彼女達が東風谷と敵対したくないっていうのは、どうも本心からのようだ。念入りに何度も言っていることから、東風谷への恐怖すら感じられる。
そのおかげで僕にまで従順なのはいいのだが、この怯えっぷり。東風谷はどんだけ恐れられてるんだよ。後々問題にならないだろうな。
まぁ東風谷に敵意を向けないなら、あとはこの3人と金髪の問題だけだ。Cクラスの奴らにも最低限のフォローを入れて、出しかけた疲れる提案は引っ込めておく。金髪が折れれば、それが一番楽だからな。
とはいえ、言った通り金髪が素直に謝りに出向くようには見えない。かといって、この場だけでなぁなぁで済ますと、女子特有の陰湿な何かをやらかすかもしれない。そこへ東風谷が混ざったら確実に面倒事に発展する。
なら次は金髪の方にも話を振り、利益と感情で揺さぶって───。
…………面倒くさい。なんで僕がどうでもいい奴らのために、女子の修羅場で思考回したり口舌を振るわにゃならんのだ。
友達の誰かが問題の中心にいるならまだしも、本当に巻き込まれただけっぽい東風谷から更に丸投げされたというのがわかり、一気に冷めて面倒になってきた。
だからすぐにも言い合いを再開しそうな睨み合ってる女子4人やギャラリーを思考から追い出して切り替え、投了の一手を口に出す。雑に盤面をひっくり返すだけなら、考えるまでもなく簡単なのだ。
道筋が見えた僕は、笑顔で高らかにそれを言い放った。
「よし! 面倒になった!
東風谷―――優待者を指名してしまえ」
そう。東風谷が兎グループの試験を無理矢理終わらせてしまえば、これ以上こいつらと関わることもないという寸法である。
「え゙」
「はい? 誰をですか?」
「誰でもいいけど、お前が確実な名前を知ってるあの金髪のでいいんじゃね? 東風谷と同じグループでなおかつ敵みたく見てたなら、フルネームも覚えてるだろ。確率的にハズレだろうが僕が口添えしてやる。誰でもいいから指名して、兎グループが集まる理由をなくせば全方位オールクリアだ」
「なるほど! じゃあすぐに送ります!」
「「え、ちょ」」
東風谷は本当に決断が早い。普通なら少しは迷うところでも、淀みなく端末を操作して速攻でメールを送ってしまった。
慌てて阻止しようとしたのか、伸ばされた金髪と幸村君の手がどことなく虚しく映る。
「「「「「あ!!?」」」」」
しかし東風谷の決断したら躊躇のない果敢な在り方。マジで尊敬するわ。僕が女だったら惚れてたかもしれない。ドヤ顔するのが目に浮かぶから口には出さないけども。
『兎グループの試験が終了いたしました。兎グループの方は以後試験へ参加する必要はありません。他の生徒の邪魔をしないよう気をつけて行動してください』
多数の通知音に呆気にとられたような声を出す者達を尻目に、僅かなラグの後にみんな一斉に届いたメールに目を通すと、すでに試験終了している猿や馬グループの時に来たのと同じような文面。昨日で知ってたけど、結果3や4はこんな感じにすぐ終わるんだな。
でもこれでBクラスはトータルで-50CPか。ワンチャン金髪が優待者だった場合にだけプラスになる。
まぁ結果4だろうと東風谷に暴れられるよりずっとマシだし、東風谷と四方の自由時間が増えれば、愛里に付いてくれるよう頼むのも容易い。必要経費と思っておこう。
でも…はぁ。一之瀬達への言い訳を考えとかないと……。
「ふぅ。終わった終わった。とりあえず一件落着、と。
どっかのクラスに50万PPと50CPのプラスかマイナスが入るけど、インターバル前に時間拘束がなくなって良かったな東風谷」
「はい! 夢月さん、踏ん切りをつけてくれてありがとうございます! でも約束は忘れないでくださいね」
「一之瀬達に弁解するのを手伝う、だろ? わかってるさ。考えはあるから、泥舟に乗ったつもりで不安に思っていろ」
「そこは安心させるところでしょう? 相変わらず女の子の扱いがなってませんね」
そんな中で東風谷と話していると、昼の牛グループのディスカッションを知らないとはいえ、今の僕にクリティカルに刺さる事を呆れた笑顔で言ってきやがった。
てか、誰のせいでこんな面倒事に巻き込まれたと思っているんだ。やっぱりこの協調性が欠片もないクソ緑には、いっぺん『わからせる』必要があるようだな。
昼にモテなかった事が思い出されてイラッときた僕は、八つ当たりを意識しつつ東風谷へ意趣返しを仕掛けることにした。
「女…の、子? 東風谷が?」
「なにかおかしな点でも?」
「べっつにぃ~。自分で蹴散らせただろう修羅場を僕に丸投げした誰かさんが、あんまり女の子って感じがしなかっただけだ」
「……なるほど。これは私に喧嘩売ってると受け取ればいいんですね?」
「好戦的なことだ。とても女の子とは思えないな」
「は?」
「ん?」
好都合なことに、この場のほとんど全員が静かになっていたので、東風谷へ巻き込んできた意趣返ししようとしたら、結果的に睨み合いになっていた。
ったく。なんでこいつはこう容易く突っかかってくるかね。もっと大人になってほしいものである。
本当は冒頭のブラックジョークを言いたかった奴は戸塚じゃないんですが、下手するとこれからソイツと接する機会がないかもしれないので、ここでネタ消費させてください。
軽井沢って、協調性:E+なんですよね。
これは中学以前までのアレコレでされた評価でしょうが、佐倉や東風谷よりも下『だった』として勝手にコミュ障認定しちゃいました。初期だとそう的外れにも思えませんしね。
方向性は違えど、多分櫛田並に頑張った結果の現時点だと思うと少し心苦しいですが。
幸村君は……2日連続でドンマイですね。残りの日数で、なんかこう上手くリフレッシュしてくれることを陰ながら願っています。