ようキャ   作:麿は星

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 誤字報告ありがとうございます。
 初めて使ったけど、すごい便利で助かりました。


8、美少女

 

 4月7日は何も予定のない日曜日である。

 まだ少し早いが、軽く振り返ってみる。

 これまで入学してからというもの忙しく動き回っていてあまり余裕などなかったが、以前立てた目標である5つ。

 

1、アルバイト先、またはポイントの入手先を見つける。

2、コーヒーとお茶の専門店を見つける。

3、天体望遠鏡をはじめ天体観測に必要な機器や情報を揃える。

4、天文部の創部と天体観測のスポットを押さえる。

5、無料やcpといった胡散臭いものの情報収集。

 

 この5項目の達成率はというとだいたいこんな感じ。

 1はほぼ達成。あとは書類を事務所と生徒会に提出するだけ。

 

 2も青娥さんが仕入れたものを安く分けてくれる約束をしているので達成。

 

 3は昨日の物色中に、中古ショップで目星をつけておいた4万ほどの天体望遠鏡を購入しておいた。確認した限り多少古い型ではあるものの、僕が実家で使っていたものと大差ない性能なので、部活動には問題なし。

 

 4は佐倉と事務所に行った時に、抜かりなく創部申請書と入部届け数通を貰ってきている。顧問の問題はまだあるが、説明会前に話した感じ四方は入ってくれそうであるし、必要定員は3名とのことなのであと一人。もし四方が駄目でも最低二人を集めるだけでいい。何なら佐倉やその友人(いるなら)に頼み込むという選択肢すら存在する。

 

 5は何に関係があるのかは不明ながら、CPが少しずつ減少しているのを確認している程度で今のところ無料商品やPPとの関連性も不明。なにもわからない現時点では、CPがカレッジポイント・クラスポイントなどクラス単位・学年単位・学校単位・進学系統の何かを取得・購入するためのポイントではないかと推測している。

 例えば、資格取得などの為に学外に出る、休んだことで取れなかった単位を取得するなどだ。

 僕で言えば今は980CPとなっているが、登校した2日で20CPを何かで消費したということだ。僕はこの何かをバイト許可ではないかと睨んでいる。このようにCPを消費してPPを稼いだり、逆にCPとPPで売買・トレードしたりして何らかの許可を得るために使うポイントなのではないだろうか。その推測があっているなら一つ考えていることがあるのだが、実現するかはその時になってみないとわからない。

 ここら辺の検証は一人では限界があるので、四方や佐倉にも聞いてみれば少しは見通しがよくなるかもしれない。

 

 このように5つの目標が、この短期間に5番以外はほぼ達成しているのだ。ほとんどの達成に深く絡んでいる青娥さん様様である。

 何が言いたいかというと、今日は余裕を持ってくつろいでいい日曜という最高の日であるということだ。小難しい考察など最高の日曜にするものではない。

 では、何をするのか?

 決まっている。

 

───全裸だ!

 

 新しい部屋、一人旅や出張でホテルに泊まった時、実家や自宅で誰もいない時。

 こうした場合の僕は、まず風呂に入り、全裸のフル○ンでアイスコーヒーを嗜み、ぐうたら寝転がりながら気が向けばお茶を飲み、今は無理だがいつもより良いタバコで一服する。そして1日中ひたすらごろごろして過ごす。

 これらは禊のような儀式の一種ともいえる神聖なる行為なのだ。

 裸になった時の僕の気分はまさに神そのものである。その領域の全ては僕のものであり、咎める者も水を差す者もいないし、むしろ自分以外誰もいない。そうして支配欲と征服欲を満たして自己満足することが最高の日曜にふさわしい過ごし方といえるだろう。

 僕は風呂にお湯を溜めながらいそいそと服を全て脱ぎ去り、僕の考える最高の休日を演出するのだった。

 神にふさわしい安らぎの一時である。

 

 

 

 

 4月8日。

 僕が神になった次の日は当然だが月曜日である。学生・社会人の多くが、聞いただけで気分が悪くなる地獄の曜日とも言えるだろう(偏見)。

 しかし、こんな日にも必要な行動というものが存在している。それはずばり、天文部勧誘と創部だ。

 一応、佐倉とともにアルバイトの申請書を事務所と生徒会へ提出する用事もあるが、事務所と生徒会にも書類を提出するだけなのでこちらは問題ないだろう。生徒会についてはついでに聞いておきたい事もあるので、それと勧誘が上手く行けば一気に創部まで持っていける可能性もないことはないと見ている。

 後から振り返ると、僕はこの日、目的をとんとん拍子に達成できていたことと前日のリフレッシュで調子に乗っていたのだろう。

 凡人が調子に乗ると碌なことがない。

 僕はこんなことも忘れてしまうほど、浮かれに浮かれて浮遊しているくらいだったに違いない。

 

 

 

 いつもとは違い、授業時間から少し早めに登校して教室に四方がいるかを確認し、四方の周囲から人が去っていくのを見て近寄っていく。

 取り込み中だったら機会を待つことになっていたと思うので、僕が教室に来た時に話していた友達らしきクラスメイト達が離れていったのは僥倖というものだろう。

……僕が嫌われているわけじゃないよな?

 脳裏をよぎったそんな考えを切り替えがてら消し去り、四方に声をかけた。

 

「おはよっす」

「左京? おはよ。今日は少し早いんだな」

 

 自分の席に座りながら後ろを向いて四方と挨拶を交わす。

 四方は少しだけ意外そうにこちらを見たが、構わず本題を切り出していく。

 

「今日はちょっと四方にも用事があってな」

「俺に?」

「天文部の創部に最低3人部員が必要なんだが、前に話したように良ければ入らないか? 勿論、嫌なら断ってもいいし、なんなら名前を貸してくれるだけでも十分ありがたいが」

 

 こうした勧誘は意外と勇気がいる。

 四方は説明会の前に前向きな事を言ってくれていたが、それでも会ったばかりで性格もつかみきれていないから、気が変わっていないとも限らない。それに判断材料としては弱いが、キャットルーキーでは天体望遠鏡を買っていたぐらいだから興味はあるかもしれないが、もし本人だったとしても僕の知る四方は数年後の姿なのだから現在の興味が違ったとしてもおかしくはないだろう。

 そんなわけで、断られる可能性はあると思っていた。

 

「ああ、もう行動してるんだな。勿論いいぞ。その入部届けに名前とクラスを書けばいいのか?」

「お、おう」

 

 そう思っていたのだが、普通にOKしてくれた。

 僕が差し出していた入部届けにさらさらと書き入れ、返してくる四方に安心しつつ驚きながら入部届けをクリアファイルに入れる。

 

「それと連絡先を交換しておこうと思うんだが、どうだろう?」

「そうだな。ちょっと待ってくれ」

 

 そう言うと四方は鞄からスマホを取り出し、こちらもあっさり交換できてしまった。

 

「受けてくれてありがとう。正直、すごく助かった」

「まぁ、俺も左京に毒されて天体に興味が湧いてきたし、説明会の時に約束したしな」

「毒とはこれまた手厳しい」

 

 あまりしつこく感謝するのは僕の趣味ではないので、わざとおどけてみたが四方には伝わっているだろうか。最初の勧誘を乗り越えられたのは四方のおかげといっても過言ではないので、四方に何かあったら必ずこの借りを返すことを内心で決める。

 

 

 

 四方の勧誘に成功し、時計を見てみるとホームルーム10分前を指していた。

 これぐらいの時間があればもう一つの用事も実行できるだろう。

 僕は四方に最後にもう一度感謝と断りを入れると、今度は前の席の東風谷に声をかけた。

 

「東風谷、おはよう」

「さきょ……」

 

 声をかけた時に、いつの間にか近くに来ていた一之瀬と神崎(たぶん神崎のほう)が僕の名前を呼んだような気がしたので、そちらを見てみると数歩先で固まっていた。僕かあるいは東風谷のどちらかに用があるのかと思って少しだけ待ったが、動かなかったので改めて東風谷の方に向き直る。

 

「東風谷、いきなり声をかけてすまん。話があるので少しだけいいだろうか? それほど時間はかからないはずだ」

「……おはよう、ございます。かまい……ません」

 

 東風谷は緩慢な動作でゆるゆるとこちらを向くと、挨拶と承諾の言葉を返してくれた。

 彼女のことはほとんど何も知らないが、説明会の時や今の言葉を聞く限り、変でもあるが良い奴だと思う。この前のお化けの時には助けとして思い浮かんだ数少ない存在で、佐倉に聞かれた時の(聞かれたわけじゃなかったっけ?)友達枠でもある。

 葛城や戸塚と違って折角クラスメイトで席が前なのだから、女子である為に声をかけ難いという点を考慮に入れても勧誘しようと思っていた。勇気の貯蔵も四方が成功したことで十分とはいえなくともある。

 

「さっきから後ろで話してたから聞こえてたかもしれないんだが、今は天文部の部員を勧誘している。良かったら東風谷も入らないか?」

「……なんで、私……なんですか?」

「なんとなく?」

「……」

 

 ところで関係ないと思うのだが、東風谷に声をかけてからなんか視線をえらく感じる。そんなに僕が女子に声をかけるのがおかし……もしかしてナンパか。ナンパだと思われていたりするのだろうか? 見てる奴らは僕が変な動きをしないか監視しているのかもしれない。

 思い当たった心当たりに気分が落ち込むのを感じながら、今は東風谷の勧誘だと無理やり切り替える。

 

「あ、あらかじめ言っておくと、馬鹿にしてるとかナンパとかじゃないぞ。……この学校に来てまだ短いけど、なんとなく縁のようなものを感じるというか、勘だけど友人になれそうな気がするんだよ」

「……天文部。……なにを、する……つもりなんで、しょう?」

「お? 興味でてきた?」

「……少しだけ」

 

 東風谷に言うと同時に周囲へも言い訳するテクニックを披露していると、東風谷が興味を持ったのか質問してきた。

 

「まだ創部できてないから確定じゃないけど、月1回か2回、夜に屋上や公園で天体観測するだけの予定だよ。月や星の薀蓄が聞きたいなら喜んでするし、天体望遠鏡ももう買ってある。あとは長時間の観測をするような場合は夜食も作ったりする、くらいかなぁ」

 

 もっと必要な事はあるかもしれないけど、一言で言うなら夜空を眺めるだけだと思っている僕がいた。僕にとっての部活動は、あくまで名目と対策手段でしかないのだ。

 

「あと一応、活動実績が必要かもしれないから文化祭の時とかは誰かにカメラを借りて撮影したりそれを展示はするつもり。それと四方にも言ったけど、ぶっちゃけ僕だけでも最低限の活動は出来るから、最悪名前貸してくれるだけでも充分助かる。勿論、一緒に活動できるならそれに越したことはないけどな。……こんな感じだがどうだろう?」

 

 文化祭の際、僕が佐倉のカメラを当てにしているのは、言う事でもないだろう。

 東風谷は渾身の勧誘トークを吟味しているのか静かな目を僕に向けているが、言いたいことは全て言ってあとは東風谷次第であるので、こちらとしては入部届けを出して期待を込めながら見つめ返すだけである。

 

「…………お誘い、ありが、とう、ございます。……よろ……しく、おねがいします」

「こちらこそありがとう。よろしくな、東風谷」

 

 僅かな時間見つめあった後、東風谷は入部届けを記入して承諾の返事をしてくれた。

 てか、改めて見るとかなり整った容姿だな、東風谷。

 そんな女子に話しかけた男が警戒されるのはしかたないことなのかもしれない。

 

 ただ勘違いされたままだとアレなので、最後に朝っぱらからナンパした野郎だと思われていた事を払拭できたかと周囲を見回すと、一之瀬と神崎がまだ固まったままこちらを見ていたので、僕はフッと笑ってこう言い放つ。

 

「一之瀬、神崎。そろそろホームルームだぞ。早く席に戻った方がいいんじゃないか?」

 

 人の話を堂々と立ち聞きして変な監視してるから、僕などに反撃を許すんだぞ?

 不思議そうにこちらを一度見て素直に自分の席へ戻っていく二人を見送りながら、しばらくは調子に乗りまくって謎の上から目線な僕の内心だったが、よりによってクラスの中心人物的な美少女へ偉そうな言葉で注意してしまった事にホームルームの最中やっと気づき、やっちまったと後悔することになった。

 





 人物設定②

 東風谷 早苗(こちや さなえ)。
 158cm。48kg。

 学力   C+(64)
 知性   D (22)
 運動能力 A (95)
 判断力  B+(83)
 協調性  D (24)

 担当官評価
 運動能力に類まれな素質を持つ生徒。学力は理系と文系で落差があり、また面接では問題発言すれすれの勧誘を面接において敢行し、受け答え全般についても内向的な面が目立っていた。
 ただ偏りがあるとはいえ基礎学力は十分であり、これまで大きな問題も起こしていないためBクラスに配属して緩やかな注意対象とする。

 作者メモ(前半)
 東方プロジェクトの自機組の一人。原作では守矢神社の現人神だが、現時点では神の力は使えないほぼ人間の風祝。
 ダイスによって知性(優等生っぽさ)と協調性が失われた低テンションな早苗。振りなおそうかとも考えたが、よう○べで見た『サナエさん』という歌動画の後半に出てくる早苗を見て、これはこれでありか、と思い直してしまった。

※作者メモ後半はネタばれ要素があるので省略。
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