ようキャ   作:麿は星

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 今回は、キャラ崩壊の第3段……と言えるかも。
 苦手な方は気にしないでください。



81、覚醒

 

「こんばんは左京君!」

「お、おう。こんばんは?」

 

 高円寺と別れて自室に戻ると、完全復活を果たしたと思われる一之瀬が訪ねてきていた。

 復ッ活ッ。一之瀬帆波復活ッッ! とかは僕のキャラ的に言わないほうがいいだろう。ドン引きされる確信がある。

 ただ夜だというのに彼女の方から陽キャバワーいっぱいで元気よく挨拶してきたので、僕は軽く引きながら挨拶を返す。

 

 しかし向こうから声をかけてきたのに、一之瀬は何故か通り道で固まって邪魔してきた。なので僕はしかたなく彼女の横をすり抜けて、自分の荷物があるベッドへと移動する。

 まぁ不可解な点はあれど、この程度の嫌がらせなど早苗や清隆に比べれば可愛いものだ。やろうと思えば、一之瀬を素直になれないツンデレ美少女に脳内変換して愛でることすら可能である。

 

 なんにしろ、調子が戻ってなによりだ。

 きっと担任か網倉あたり(白波や神崎は息抜きの面では信用がないので)が上手く一之瀬をリフレッシュさせたのだろう。朝に見た時より格段にスッキリした顔色になっていたので、懸念はとりあえず解消されたと見ていい。

 

 内心安堵しながら他に目を向けると、同室者3人は揃っていて、何気に一之瀬以外にも網倉と白波も来ていた。

 ん? あっ! 僕を含めて室内に男4人、女3人。そして元気(意味深)になった一之瀬。

 これはもしや、前の林間学校の時に発生したアレなトラウマ場面の再現では? なんか速やかに撤退するのが良策な気がしてきた。

 知り合いの濡れ場から逃げたくなるのは人情だししかたない。うん。ちょっと誰と誰が組みなのか知りたいけど、知ったところで気まずくなるだけだ。スルー安定だろう。

 微妙に自身の混乱を自覚しつつも、小心な僕がこの判断をしたくなる気持ちは理解できると思う。

 

 そうと決まれば……でも、ちょっとシャワー浴びたい気分だし、また一晩部屋に戻れないとなると疲れと汗は流しておきたい。

 僕は少し考えて、断りを入れてひとっ風呂浴びておくことにした。一応存在する消灯時間まではまだあるし、短時間なら待ってもらえるはず。

 

 僅かな時間を我慢できずに誰かが盛る可能性も考えたが、速やかに部屋を出ることを意識の中心に置いておけば、友達のエロシーンを目撃しても対応が遅れない自信はある。

 また念の為、乗船初日と無人島後にも持ち込んだコンドームの在庫を男子全員で確認してるし(数に変化はなかった)、特に入念にチェックしていた神崎がいれば、避妊に関しても問題ないだろう。

 

「悪いけど、ささっと風呂入ってくるわ。そしたらすぐ出てくから、安心して20分ほど待っててくれ」

「出てくって……夢月、お前またなんか変なこと考えてるだろ」

「変なこと? 今の僕はさりげない気遣いしかしてないぞ」

「左京の気遣いって、アレな予感しかしないんだが」

「……」

「……女子が来てるのに、帰ってすぐシャワーに駆け込む左京君の気遣いっていったい」

「帆波ちゃんをスルーしたことといい、この男は本当に……」

「シャ、シャワー……」

 

 四方が訝しげに、神崎と柴田がどこかハラハラと、網倉と白波がブツクサと、一之瀬はウロウロと……って、さっきから何やってんだコイツ? ポンコツ聖人型奇行種は復活してもわけのわからない生態である。

 ともあれ僕は手早く着替えを掴んで、どこか妙な雰囲気を醸し出した室内から浴室に逃げ込んだ。

 

 だが、湯を貯めている時間で服を脱ぎ、身体を洗おうとした時に気づいた。

 タオルを忘れたことに。

 なので、ちょっとお見苦しいモノを見せることにはなるが、取りに戻ることにした。当然のことながらチンコも戦闘態勢に入ってないし、一之瀬や網倉なら見慣れたモノだろう。白波はアレかもしれないけど、フォローが入れば特に問題でもないはずだ。

 そう考えていたのだが―――。

 

「え、もう出て」

「あ」

「い、いぎゃああああああああっ!!!」

「何やってんだお前ェ!!!」

「なんで全裸のまま出てくる!!?」

 

 浴室から出ると、振り返って僕を目にした網倉が真っ赤になってしゃがみ込み顔を覆った。同じく白波は力の限り騒ぎ出す。柴田と神崎は怒り出し、四方と一之瀬は固まって凝視してくる。

 結果は、男子も女子も慌てふためいている組と固まってる組に分かれ、阿鼻叫喚の大混乱である。

 

「ああ、ごめんごめん。タオル忘れちゃってたから取りにな。一回服を脱いじゃったから面倒くて」

 

 一応、柴田などはル○ィのモノマネする余裕があるようだが、どうやら僕は軽く考えすぎていたみたいだ。

 特に儚げな容姿とは裏腹なクッソ汚い悲鳴を上げる白波にはすまんことをした。どう見ても、そんなキャラじゃなかった……いや、元からイロモノ100%だったわ。内心とはいえ、謝って損した。

 

「じゃあ……えぇっと、アデュー?」

 

 幸い進行方向には無言で凝視してくる一之瀬しかいなかったので再度すり抜け、僕はなんとか自分の荷物からタオルを取り出すと、這々の体で浴室へと舞い戻った。

 

 てか、あいつらってこれから彼氏彼女でヤルんじゃないのか? たかが背景に過ぎない僕の全裸程度で、なんでここまで大きな反応が起こる?

……もしかして、ただクラスの用事とかで来てただけで、僕の穿ち過ぎだったりするのではなかろうか。

 そうだとしたら、仮面も付けない変態仮面がこの地に降り立った奇跡を無駄に顕現させてしまったこととなり、僕は奇跡を起こした現人神ということになる。

 ふっ。早苗のお株を奪ってしまったか。悪いな。緑の巫女様を神の才能で上回ってしまって。

 浴室にいても聞こえる外の声だけでわかる混乱から目と耳を逸らし、身体を洗った僕はゆっくりと湯船に浸かって現実逃避に勤しんだ。

 

 風呂から出ると女子達は全員いなくなっており、僕が部屋を出て放浪する必要もなくなっていた。

 どうやら本当にヤル予定ではなかったようで助かった。安心できた僕は、またもや方針を切り替えて寝ることにする。

 その為、だいぶ早めではあるが安眠できた。

 あと些細なことだが、僕が本格的に寝る体制に入った時に神崎や柴田がなんか騒いでたが、白波の絶叫ほどではない。まぁこれくらいの騒々しさなら、若さゆえに仕方ないことだろう。かなり眠気も来てるし、寝るまで我慢できればどうということはない。

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝、船上の試験最終日。

 僕は朝食をとった後に、風に吹かれたい気分になったので第2展望台に赴いている。

 柴田は昨夜のことをまだ怒っていたが、友達と約束があるらしくいなくなった。だが、何故か呆れた感じに見てきていた四方と神崎も付いてきた。

 すると今日も今日とて、最近の日課のごとく一之瀬が説教しに来る。四方か神崎が居場所を知らせているのだと思われる。これもいずれは、どげんかせんといかんな。

 それと網倉と白波も離れたところに来ているが、ダークサイドに落ちた雰囲気の白波を網倉が宥めているだけっぽいので、僕には関係ないだろう。

 

「左京君! ついに私だけじゃなく他の子にまで、あんな凄く大きなチ……いんっ…えっと…ブ、ブツを見せびらかして! 部屋内だったとはいえ、女の子になんてモノを見せるの!? それに大事なア、アレなんだから、人前であんな風にブラブラ揺らしちゃダメだよっ!!」

「ほう……色々曖昧だが、まずアレとは? 僕がナニを揺らしていたと?」

「ななな何ってそれは」

「具体的に言ってもらわないとわからないなぁ。知ってんだろ? なあ一之瀬」

「そ、そういうのがダメなの! セクハラで捕まりたくないでしょ!?」

 

 ふむ。一之瀬が説教してくるが、冷静ではないことが見て取れる。

 証拠に赤面したままはっきり口に出せないのに言い募ってくるところや、僕のゲス煽りをまともに受けているところなど、隙がいくつか見受けられる。今なら更にゲスく引っ掻き回せば、謎に包まれた彼氏の情報を落としてくれるかもしれない。

 それにしても、相変わらず彼氏がいるにしては不思議なほどのウブさである。

 無人島でズボン越しとはいえ、最大化してる時に見られたのを何度かスルーしてくれたのだから男慣れはしてると思うのだが。

 

「いやでも、白波とー、あと網倉さんはどうか知らないけど、一之瀬は戦闘態勢に入ってるチンコだって見慣れてるだろ? ましてや通常状態のチンコ程度、見比べる余裕すらありそ……」

「左京君は今とんでもないこと言ったよ!!?

 ていうか、見慣れてるわけないじゃない! あんまり変なこと言うと本当に怒るからね!?」

「はぁ? でも一之瀬だったら彼氏の何人かはいるだろ。それなら野郎の全裸くらいは、いくらでも見てるんじゃないか?」

「なん、かっ……ぜん…」

 

 だからさりげなくその一件を思い出させようとしたのだが、こうした方面から攻められるのは一之瀬的にはとんでもないことだったのか結構な衝撃を与えたようだ。過呼吸みたいな事になっている。

 僕がやったとはいえ、折角昨日休ませたんだから、しょうもないことで体力を使わないでほしい。

 

「ちょっと待って下さい!!! 帆波ちゃんに彼氏!?」

「あっ、こら千尋! あんたが絡むとまたややこしくなるから、ちょっと離れてなって!」

「あぁ……左京が綺麗に火種をつけていく……」

「おい神崎! 巻き込まれる前に退避するぞ。こういう時は触らぬ神に祟りなしだ」

「あ、ああ。そうだな。ここならチン…騒いでも問題は少ないだろう」

 

 良い機会なので一之瀬の彼氏についてさり気なく探りを入れてみたら、外野にも飛び火して一時的に騒がしくなった。

 白波が復活し、網倉がそれを抑え、四方と神崎がそそくさと去っていく。

 女子ばかりになってしまったし、僕も四方達について行っては駄目だろうか……駄目っぽい。何故か一之瀬にロックオンされている。

 てか、白波が一之瀬の彼氏を知らなさそうって……。

 相当上手く隠蔽しないとあの狂信者は誤魔化せないだろうに、どうやって掻い潜ってるんだよ。ここまでくると、存在自体が怪しくなってくるんだけども。

 まぁなんだかんだで、周囲も少し静かになってきたし、もう少し落ち着くまでゆっくりとテイクアウトしておいた食後のコーヒーでも楽しみながら……。

 

 バシィッ!

 

「……っ、何を!?」

「じゃないから! 関係ない顔して呑気に寛ごうとするとか……!

 というか、大人っぽい気遣いを感じた端から、ことごとく自分でぶち壊していくのは何なの!? 最近の私が憧れかけてた左京君のかっこよさをどこにやったの!?」

 

 と思ってコーヒーに手を伸ばした時、一之瀬が持っていた鞄からハリセンを取り出して僕に叩きつけてきた。

 コーヒーも溢れなかったし、被害もなく痛くもなかったが驚いた。

 ところで、かっこよさと言われても、僕の目に届く場所には落ちていないのだが、一之瀬の気のせいではなかろうか。言われたこともないし、憧れとか大袈裟すぎてかえって馬鹿らしく思える。

 てか、それ以前に。

 

「そもそもなんでハリセンなんか……。まさかわざわざ学校から持ってきたのか?」

「そんなわけないでしょ! 新しく作ったの!」

「なあ一之瀬。お前、やっぱ頭おかしくなってるって。いったい何を想定してそんなもん作ったんだよ」

「……っ。な、お……くっ!」

「あ、彼氏とのプレイ用か? だったら僕に使うなよ。一之瀬の彼氏が嫉妬して、僕に闇討ちとか仕掛けてきたらどうする。普通にその美少女フェイスとエロい乳だけで満足させてやれって。性癖歪むぞ? 手遅れかもしれんが」

 

 ここまで隠蔽に長けた奴なら実行には移さないだろうが、妙なヘイトを買う可能性はある。なので一応、ストップをかけてアドバイスしておいた。

 すると、一之瀬は突然俯いて震え出す。そのまま、いつものようでいてそうではない乾いた笑い声を響かせる。

 

「……にゃははは」

 

 それにしても今日の一之瀬、なんかいつにもまして変なんだが。

 しかも微妙に僕に近寄って来てないか? だってこの距離でハリセンを振り上げられたら狙いは僕しかいない―――。

 

「ちぇすとおおおおお!!」

「おわぁっ!」

 

 再度、バシィという音が、それまで僕の座っていた椅子からした。勘が働き、僕に向かって振り下ろされたハリセンを間一髪回避したからだ。

 

「な、なん。い、いちのひぇ?」

 

 最初に食らった時で痛みがないことはわかっていたが、普段温厚で優しさの塊な一之瀬が薩摩武士みたくなったのに面食らって、驚天動地の神回避である。あまりのことに驚きすぎて呂律が回らなかった。

 しかしハリセンなら鬱陶しくはあっても、いくら叩かれようとダメージはない。だから即座に精神を立て直した次撃目以降は、適当に受け入れることができた。

 バシバシ叩かれながら、僕は落ち着いて椅子に座り直す。高1女子の唐突な八つ当たり?を数発受けても怒らない度量くらいは僕にもあるのだ。

 

「私に、私に彼氏なんているわけないじゃない…………この……このっ!

―――悪かったわね!!! 男の子に恐れられてる面倒くさい女で! 恋人どころか男子の友達にだって一歩引かれるような女で! そのせいか好きな人すらできたことなくてっ!」

 

「あ、帆波ちゃん気にしてたんだ」

「ね。ちょっと意外かも」

 

 一之瀬、心からの主張。

 ハリセンの連打を受けながらではあったが、それは確かに僕まで届いた。喪女予備軍の方だったか、と。

 白波達が零すことから察するに、気にしてる部分を突いちゃったみたいだし、僕は数発叩かれたことを許し、できるフォローと助言をしておくことにした。

 いつまでもこれが続くのはごめんだし、ここは切り替えて優しく励ますのが大人の男というものだろう。僕は連打されるハリセンを見切って掴み、一之瀬へ心からのアドバイスを送る。

 

「い、いや。そんなことまで言ってない。

 それに、その、ドン引いてたのは否定しないけど大丈夫。一之瀬くらいにドエロい女子なら普通にモテモテだから。ほ、ほら、さっきも言ったけど、子供ながらその乳はもはや兵器と言えるだろう? それ使えば大抵の男は落とせるって」

「……落と…させ……せんよ」

「うっわ。帆波相手にして、よくここまで子供扱いしつつセクハラかませるわね。もはや逆に落としにかかってるような……」

「うわああああんっ!! ドエロいってまた言われた! 全然褒め言葉じゃないし、引いてるのも否定してくれなかった! それどころかセクハラ重ねられた!」

 

 そう思い、頑張って一之瀬のアピールポイントを推してみたが、口調が幼さを感じさせるほど退行するとは思わなかった。やっちまったかもしれない。

 白波と網倉はあまりこういう一之瀬を見たことなかったのか、繰り広げられる彼女の痴態に呆気にとられたまま何事か呟きあっているのは幸いか。一之瀬シンパ筆頭と親友にまで参戦されなくて助かった。

 

 てか、聞き流しちゃってたけど、一之瀬ってマジで彼氏いないどころかできたことないの?

 じゃあ、誰から調教されてるんだ? エア彼氏? それ変態レベルが高すぎて、普通の同年代では御せないんじゃ?

 ああ。つまり早熟にもこの歳で処女を拗らせた結果、現実の彼氏を作れるスペックを変な方向に無駄にフル活用。自分の脳内に高性能なエア彼氏を創り上げ、そのエア彼氏からセルフ調教を受けちゃってたのか。

 ところどころ穴があったのは、一之瀬自身の知識や経験にないからだろう。

 

 そりゃ、これでは現実の男と付き合うなんて難しくなるわけだ。

 一之瀬の優秀な頭脳が創造した『彼氏』と比べれば、大抵の野郎なんぞハズレ同然。2次元オタクが現実に興味なくなるのと同じアレである。いや、全方位に聖人だった一之瀬がそうだとは違和感ある推測だけども。

 でも、これで僕としては謎が少し解けた。

 にしても、なんか喚いてる一之瀬は―――。

 

「―――面倒くさいな。

 言われてみると確かに、一之瀬ってモテない要素もふんだんに盛り込まれてるかも。それでも美少女な上にエロボディな容姿的に作ろう思えば簡単そうだが、拗らせてる部分が深く付き合うほどどこかでネックになってきそう」

「うぐぅっ! め、面倒くさい……拗らせてる……うぅ」

「なにより美少女なのは疑いようもないけど、どうしようもないポンコツ臭も漂ってるからなぁ」

「……」

 

 改めて考えると、これでなんで恋人がいるって勘違いしたのか。僕も外側のスペックに幻惑されて、イロモノである存在の本質に目を向けてなかった可能性が浮上してきた。

 言われて一之瀬の認識を更新してみたら、これだけ面倒くさいと恋人側にも相当な要求がありそうだなと深く納得できたのだ。そのせいで、つい言わなくても良いことが口からこぼれ落ちてしまった。

 

 ただ、ここで一之瀬が覚悟を決めたような目になったのは理解できない。

 昨日休ませて体力・精神力共にMAX近くで、今も曲がりなりにも僕ができる限り励まし助言したので、そんな流れではなかったはずなのだ。

 しかし一之瀬は、そこそこ沈黙の時間を挟んでどうにか引き吊った笑顔を作ると、彼女らしからぬ目をしたまま口を開いた。

 

「にゃはぁ。

……………………覚悟してね左京君。好き勝手した上で、散々乙女にデリカシーのないことをやったり言いまくってくれたお返しをしてあげる」

「なんだいきなり。僕としては、ご遠慮願いたいが」

「はい。却下。もうまとめて返すことを決めちゃったからね!」

 

 でも僕は一之瀬のこの雰囲気に覚えがある。

 言うなればこれは、何かが許容量を超えたことによるヤケクソ的態度である。なんでわかるかというと、僕自身で経験済みだからだ。

……こんな自爆テロに巻き込まれてはたまらない。回避&断固抗議しかあるまい。

 

「返すも何も自分から自爆したんだろ!?」

「うるさいよ。こうなったら死なばもろともだね」

「僕を巻き込むんじゃない! リーダーだからって勝手がすぎるぞ!」

「……あはは。にゃはははは。にゃ~はっはっは!

 左京君がそれ言うんだ。思わず笑っちゃったよ!!」

 

 だが、本格的に議論誘導を開始しようとする矢先、一之瀬が壊れた。

 なんかいきなり笑い出した。それはもう、高飛車な感じにイロモノ溶液を混ぜ、金髪縦ロールが似合いそうな勢いで笑い出した。あざと女子を変に取り入れた猫語混じりなのが、残念さを助長させている。

 心当たりはないが、一之瀬がこんな急変するとか、もしかして僕はどこかで読み違えていたのか?

 

「巻き込むも何も、何度も自爆させられた私に怖いものはないよ。だからもう遠慮もしない。でも左京君には私から返すものがあるんだよねぇ。

 だから……ねえ、やっと捕まえた左京君? 哀れな子羊の左京君? 神様にお祈り済ませた? ここまで私の心をかき乱した贖罪の覚悟はいい? 私の準備はできてるよ? にゃはははっ!」

「どこの吸血鬼だ。そういうのは龍園だけで間に合ってんだよ」

「まだそんなこと言う余裕があるんだ? じゃあそんな左京君へのご褒美に、要望を一つだけ叶えてあげる。勿論、逃げる関係はなしでね」

 

 僕だけでなく白波達の前でもあるという事を忘れ、ぶっ壊れたテンションのまま黒歴史を量産していく一之瀬。

 問題は僕に矛先が向いている点だ。逃げ道がありそうで存在しない。褒美とか要望とか言ってるけど、これの真意が僕の出方を伺う一手であることと、網倉と白波に警戒を促す言葉になる計算で放たれたことだと割れている。

 こんなにアレになってるのに、無駄に周到である。

 僕が活路を開くには、多少ギリギリの線を攻める必要があるだろう。

 

「じゃあ、えっと…………できれば終わった後、一之瀬がよくこれみよがしにバインバイン揺らしてるエッッッ! なおっぱいで僕の顔を挟んで、パフパフ付きで慰めて欲しいかなって」

「……にゃはは。左京君がそのふざけた口を聞けなくなるまで、しっかりお説教してあげるから」

 

 しかし、少しは慌てふためいて話が逸れないかなと振った無理めなセクハラも。

 一之瀬とは思えない凶悪に見える笑顔で軽く流され蹴散らされた。

 何をやっても通用しないと、僕の勘も警鐘を鳴らしている。

 

 これは壊れたと言うより―――覚醒。

 

 ふと脳裏をよぎった物語の主人公とかに発生しそうなイベントが。

 何故か、今この時。

 一之瀬に訪れてしまったような気がした。

 

「―――いつものように楽しんでね」

 

 そういう経緯で、僕は逃げられないようガシィと肩を掴まれたまま。

 漫画だったら目がグルグルしてそうな笑顔の美少女に至近距離から囁かれ。

 どうしてこうなった? と、これからの時間を思いながら1人で途方に暮れるのだった。

 





 今話と前話は蛇足だとは思ったんですが、Bクラス所属の主人公的に高円寺と一之瀬には早めの爆弾対処をしておくのが無難と考え、少し強引に推し進めました。
 特に一之瀬関連を、これまで妙な勘違い・下ネタだったと見ていた方がいたらすいません。一之瀬の過去抜きで早めの半覚醒を狙うと、どうしても強引な展開しか思いつかなかったです。

 ともかく、『自爆』や『自然』、あるいは感想返信のどこかですでに述べてたかもしれませんが、これが私が考える一之瀬の別の可能性です。あり得るんじゃないか? 僅かでもそう感じてもらえたら幸いです。
 何気に、無人島ラストのあとがきであげた一之瀬との対決・敗北√がこんな感じの予定で、一之瀬が吹っ切れるのは必須フラグとまでいかなくとも、それなりに今後の展開に差が出そうだったので再構成してやってしまいました。
 私的には、完全に無駄にするにも惜しいネタでしたしね。
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