虫食べる系配信者が退廃未来へタイムスリップ! 〜魔物化したゲテモノを食べて超絶バフで生き延びる〜   作:フーツラ

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どわーふ

 コメント:おぉ、ドワーフだ!

 コメント:なんでこのドワーフ髭を三つ編みにしてんだ?

 コメント:めちゃくちゃ細かい三つ編みだな。

 コメント:作画コスト高ーな。このドワーフ

 コメント:めっちゃこっち睨んでる!

 コメント:顔でかくね?

 

 コメント欄、好き勝手言ってるな……。スマホから目を離すと正面のドワーフに睨まれた。

 

「何をチラチラと見てやがるんだ?」

 

「どわーふさん! 髭、オシャレだね!」

 

 ドワーフの厳つい顔が一瞬緩む。しかし直ぐに鋭い眼光に戻った。

 

「ふん! いくら儂の髭を褒めたって無駄だぞ! 人間がこんなところまでやってきて、何のようだ?」

 

「ルーメン、髭かっこいいね!」

 

「あぁ。そうだな。羨ましい」

 

 ──ニヤ。またドワーフの顔が緩んだ。こいつ、意外とちょろいぞ。

 

「そ、そんなに儂の髭、かっこいいか?」

 

「カッコイイ! カッコイイ! カッコイイイ!!」

 

 ──ニヤニヤニヤ。

 

 ニコが止めを刺すように連呼し、ドワーフは完全に相好を崩してデレデレになってしまった。ニコの奴、分かってやっているのか? それとも天然の人たらしなのか?

 

「まぁ、いい。とりあえず中に入れ。話はそれから聞こう」

 

 ニコのお陰で掴みは成功だ。俺は上半身裸のまま、ドワーフの棲家にお邪魔することになった。

 

 

#

 

 

 巨大土管の住居は天井の窮屈さはあるものの、妙な安心感のある空間だった。背の低いドワーフにはさぞかし落ち着くことだろう。

 

 定位置なのか? 木製のロッキングチェアに腰掛けたドワーフは自分のことを「パンダモンド」と名乗った。

 

 それを聞いたニコがまた「カッコイイ」を連呼したもんだから、完全に緊張感は無くなってしまった。なんでも話を聞いてくれそうな雰囲気だ。

 

「ほう。アンスラからの使いだったのか? どうだ? あのババアは元気だったか?」

 

「ババア!?」

 

 ニコが驚き声を上げると、土管の住居の中で反響した。

 

「見た目からは分からんだろうが、もう五百年は生きているぞ。奴はとんでもないババアだ」

 

 そう言いながらパンダモンドは自慢の髭をしごく。ゆらゆらと揺れながら。

 

「エルフってのはイメージ通り、長命なんだな」

 

「そうだぞ。見た目に騙されるなよ」

 

 ……うーん。完全に見た目を優先して水着配信をお願いしてしまったが、まぁいいか……。

 

「それで、壊れた魔道具ってのは?」

 

「この中に山と入っている」

 

 パンパンになったリュックを叩くと、パンダモンドは眉間に皺を寄せた。

 

「あのババア。モノを大事に使うってことをしらんのか。全く」

 

 そうは言うものの、パンダモンドは心の底から嫌がっているようには見えなかった。きっと長い付き合いなのだろう。今回と似たようなことが過去に何度もあったのかも知れない。

 

「そこのテーブルに並べて置いてくれ」

 

 諦めたように言うパンダモンドは相変わらず揺れている。

 

「なぁ、わぁもその椅子に座りたい」

 

「駄目だ。ここは儂の場所だ」

 

「座る!」

 

 そう言ってニコはロッキングチェアで揺れるパンダモンドの上に乗っかった。

 

「こら、やめんか!」

 

「にひひひ! 揺れて面白い!!」

 

 二人分の体重で限界まで揺れるロッキングチェア。ニコはひたすら楽しそうに笑っている。一方のパンダモンドは迷惑そうにしながらも、その顔は緩い。まだあどけなさの残る鬼っ子にデレデレのドワーフ。

 

 この様子は勿論配信され、それ以降、パンダモンドはロリコンドワーフと呼ばれることとなった。


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