終わり無き異世界への旅路   作:ユキネコネ

5 / 25


 

 

 

集中していると、時間が短く感じる事がある。

 

 

「はあ、やっぱりもう少し大きいお店の方がいいのでしょうか?」

 

 

立ち寄った武具店の資料を勝手に読み進めていた雪音は、もう用はないとばかりにそっと

顔を上げた。

場所は、偶々見つけた武具店の奥の資料室。様々な武器の伝承などがあるが刀の資料は

少なかったのである。

 

(そろそろ出ますか)

 

剣を買う気も無いのにのさばり続ける客程邪魔なものは無い。ただ、雪音には古紙一枚

買い取れるような金も無いのだ。資料を元に戻して店員にバレる事無く外へ出た。

空は暗くなりかけており、陽光は見えない。道行く人々も疎らとなっており、この街に

来た時とは真逆とまでは言わないまでも様変わりしていた。

 

(さて、この後はまた散歩でもしましょうか?)

 

誰にも感知される事無く、雪音は道を歩く。

動きやすいようにスパイクに和服という装備の彼女だが、石畳を歩けば普通に音が鳴る

筈だが、やはり彼女の足音はしない。小石を蹴る音もしなければ、衣擦れの音もしない。

前から歩いてくる獣人を躱した雪音だが、当の躱された獣人はその接近に気づいた様子

は無かった。

まるで透明人間だ。いや、単に透明化しただけでは匂いなどでばれてしまうのだが。

とにかく、雪音は誰にも気づかれる様子が無かった。

 

 

 

閑話休題

 

 

 

石畳の道や路地を進んでいた雪音は、大きな噴水のある広場へとやって来た。そして、

 

 

「あれ?聞き覚えのある声がしますね」

 

 

ある騒ぎに気付く。

遠目から見てみれば、カラフルヘッドな一団が噴水の前で騒いでいるではないか。

周りでは通行人が足を止めて、人だかりができている。ここで雪音は、

二つの選択肢。声を掛けるか、否か。

無論、状況的には声を掛けるのが一番だろう。だが、彼女が考えるのはその流れ。

 

(・・・・・・少しめんどくさいですね)

 

だが、彼女は一旦考えるのを辞めて合流する事にした。

まずは、今自分で行っている透明人間まがいのコレを止める。そして何食わぬ顔で、

 

 

「さっきぶりですね、皆さん」

 

 

片手を挙げて挨拶をした。

自然な動作であった。それこそ、最初からそこにいたのではないかと思われそうな程に。

 

 

「・・・・・・ゆ、雪音さん、だっかかしら?どうしてここに居るの?」

「ここに居たら、何か悪いんですか?」

「・・・・本物よね?」

「生憎、私はドッペルゲンガーでは無いですよ。」

「お前、テレポートでも出来るのか?」

「テレポートに近しい事なら出来ますよ?やりませんが」

「ヤハハ、出来るのかよ。それならこの場で種明かしはしてくれねぇのか?」

「何故ですか?」

「気になるから。種を明かすか、さっき口にした事をやるか、二つに一つだぜ?」

「・・・・・・・・はぁ」

 

 

いい笑顔で詰め寄ってくる十六夜に、雪音はため息をつきついて声を掛けた事を少し後悔

しながら今一度披露する。

 

 

「なっ―――――!」

「・・・・・・・・・うそ」

「ど、どうなっているの!?」

 

 

すーっ、と雪音の姿は空間に溶けるように消えていき、気配が完全に霧散してしまう。

これに驚くのは、問題児三人。一挙手一投足見逃さないようにしていたのに、次の瞬間には

目の前で消えて追いかける事すら出来なかったのだから。

思わず、十六夜は手を伸ばすがその指先が対象を掠める事は無い。耀が鼻を動かしても

匂いはたどれない、耳にも音が響かない。飛鳥が周囲を見渡しても、何処にも彼女の姿は無い。

そして、この光景を見ていた二人、黒ウサギとジン=ラッセルもまた目を見開いた。

 

 

「ジ、ジン坊ちゃん。黒ウサギは夢でも見ているのでしょうか?」

「・・・・・・・・えっと、僕の目にもあの人が消えたように見えたんだけど」

「ですよね!?ま、まさか透明になれ恩恵でも持っているのでしょうか?」

「だったら可笑しいよ。耀さんは鼻が良いみたいだし、只透明になっただけなら黒ウサギの耳

 でも追えるんじゃないかな?」

「残念ながら、完全に見失っています。・・・・・・く、黒ウサギの耳も無効化するなんて!」

 

 

ジンはともかくとして、黒ウサギは己の力には一定の自信があったのだが、その上で彼女は雪音

の動きを追い切れていなかった。

意味が分からないと思う。だが、次の瞬間に更に驚くことになる。

 

 

「満足はしましたか?」

「「「「「!?」」」」」

 

 

なんと、雪音が再び目の前に現れたのだから。それでも、最初に立っていた場所から殆ど動く事無く。

驚く五人に、しかし当の本人は肩をすくめるだけ。そして口を開いた。

 

 

「何でしたっけ、確か・・・・・圏境でしたね。音を消して、気配を周囲に溶け込ませることで

 相手に視認されなくする技術です。無理やりに覚えさせられましたが、疑似的な透明人間です

 ね」

 

 

事もなげにそう語った雪音だが、相当なことを言っている自覚はないらしい。

再起動を果たしたのは、十六夜。

 

 

「・・・・・・・ハ、だったら俺にも出来るのか?」

「まあ、単なる技術ですしあなたなら出来るのでは?その代わりに時間が掛かると思います」

「へぇ・・・・・だったら今度教えやがれ!」

「うるさいですね。圏境の仕組みは教えたので後は自分でしてください」

「チッ、ペラペラしゃべると思ったんだがな」

「人に聞いたらだめですよ。まずは自分でやらないと意味ないですよ」

 

 

ここでようやく残りの面々が復活してきた。

その中でも詰め寄ってきたのは、黒ウサギであった。

 

 

「ちょ、ちょっと待ってください!」

「おや?どうかしましたか、ウサミミさん」

「ウ、ウサミミ!?私は黒ウサギです!―――――じゃなくて!今まで何処に行ってらしたんで

 すか!?」

「あぁ、ちょっとした野暮用ですよ。」

「だからその内容を―――――」

「それは言えませんね。まあ、私も用がなくなれば旅を続けますよ」

「・・・・・・その用とは、恩恵ですか?」

「そうなるのかな?私は受け入れているけども、別の問題を解決しなくちゃいけなくなったからね」

「そ、そうでございますか・・・・・・そうでした!お名前を聞いても?」

「ああ、名乗っていませんでしたね。私の名は皐月雪音です。雪音、もしくは雪と呼んでくださ

 い。短い間ですがよろしくね!黒ウサギ」

「はい!よろしく・・・・・・え?どうゆうことですか!?」

「私はこの刀の問題を解決できなくともできたとしても、旅は続けるつもりだからね、また縁が

 あれば会えるかもだけど」

 

 

少し悲しそうに言った雪音だが、彼女の過去を知れば皆引き留めようとするのだろう。

 

 

「私の話はもういいでしょう?それより、皆さんどこかに行くのでは?」

「あ、そうでした。これから”サウザンドアイズ”に行くところでした!」

「千の瞳ィ・・・・・・?なんだよ、それ店か?」

「YES!瞳の恩恵を持つ商業系のコミュニティですね!コミュニティと言うのは―――――」

 

 

 

黒ウサギ説明中・・・・・

 

 

 

「つまり、ゲームするためのギルドですか。ソロプレイは不可能と」

「そうですね。一定の期間ならソロも可能ですが・・・・・」

「まあ、それは現状むりそうね」

 

 

そうして五人は歩き出す。ジンは先に帰ってしまい、雪音も便乗しようとして、首根っこを掴まれ

とりあえず行くことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。