クソ運営のvtuberだけど相方と百合をしながらアイドル目指す 作:響木ウルフ
「翠ちゃん......あたし横アリに行きたいよぉ......人気者のアイドルになりたいよぉ......」
私の相方が泣きながら言う。
「なれるよ、2人でなら」
「でもぉ......ファンのみんな怒ってると思うし......」
「大丈夫だよ。きっとまた仲良くなれる」
「うう......翠ぢゃあああああっんっ!!!」
彼女は号泣しながら私に抱きつく。
あんなことがあった後だから無理もない。それでも、私たちは前を向いて進まなければならない。『最高の時を過ごしたい』という目標が諦めきれないから。
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私は《目黒翠》という28歳の女性だ。
一応声優だけど、これと言った仕事はほぼない。まあ顔も声も可愛くないし、仕方がない。あと貧乳だし。
事務所で休憩していると、スタッフが声をかけてきた。
「目黒さん、今月から入ってきた後輩ちゃんいるじゃん?」
このスタッフが言っている後輩とは《赤松優》さんのことだ。私より8つも若くて可愛い。あと巨乳。羨ましい。ただ滑舌が悪いから稼ぎには期待してない。
「いますね!」
高めの声で返事をする。不仲だと思われると面倒だから、少なくとも表向きは興味のあるように振る舞う。もっとも彼女のことはまだよく知らないけど。
「で、最近vtuberってやつ流行ってんじゃん?」
「そうですね。コムケの広告で見ました」
vtuberとは、バーチャルな動画投稿者もしくは配信者のことを言う。昨年の年末あたりから流行り始めている。《親分》という名のvtuberが1番人気で、ほかに数十名親分に似たような存在がいる。
あんまり詳しくはないけれど、コムケの広告でも登場してたし今後ますます人気になっていくんじゃないかなぁ。
「ゆーやってみない? 後輩ちゃんと」
「マジですか!?」
「人気者になっちゃうかもよ、キミ」
「えっ......そりゃ......えへへ......」
まさかvtuberになれるとは。これでも一応オタクだし、もちろん興味は大ありだ。人気にもなりたい。なりたくなかったらこんなところにいはいわけで。
「やる気アリみたいだね」
「で、でもお高いんじゃないっすか!?」
「そうだねぇ多少は予算かかるけど、知り合いにモデル作って貰えばうんびゃく万円で始められる。これは他所さんの半分くらいだよ」
「なるほど......(よくわからん)」
「じゃそうゆうわけで手配しとくから」
「よろしくお願いします!」
行ってしまった。急な話ではあったがまたとないチャンスだ、乗らないわけにはいかない。
そういえば後輩はもうこの話を聞いているのだろうか。
チャットで聞いてみよう。
『ねえ赤松さん、質問があるのだけど』
『なんでしょーか?』
『vtuberやるって話スタッフから聞いた?』
『聞いてます! 今度の日曜日に作戦会議があるそうです!』
『えっ!? 私それは聞いてないんだけど』
手配しとくとは言ってたけどもう会議の日程決まってるのね。ならそれを教えてくれよとしか思わない。
『そうなんですね! 嫌われてるんですかね???』
『あのねぇ......馬鹿にしてる?』
『してません! 気に障ったらすみません!』
この後輩、天然だ。無意識に敵とか作ってそうで不安だ。
『もういいけど......それって何時からよ?』
『やなや』
『え?』
『すみません! 飲酒してたので手が......』
『昼間から飲んでるのね......』
『欲望には素直がモットーなので!』
『ダメな大人ね』
『す、すみません! 調子に乗りました!』
『別に気にしてないって。馬鹿だなって思っただけ』
『そ、そんなぁ......』
馬鹿だけど、弄りがいはある。まだ少ししか話したことがなかったけど、何となく彼女の性格がわかってきたかもしれない。
『で、時間はいつなの?』
『そうですね〜朝8時ですね』
『やけに早いわね』
『そうですよねぇ......ダルいですよね......『
『まあvtuberやるの楽しみだし楽しみにしてましょう』
『vtuberってみんな可愛いですよねぇ......』
日曜日朝の8時か、早いけどワクワクせずにはいられない。
私はすかさずカレンダーアプリに予定を登録した。
ここであることに気がつく。バイトだ。あと30分でバイトが始まる。声優の仕事だけでは給料は足りないため、バイトをしなければならないのだ。ちなみにデータ入力のバイトだ。楽だけど、残業はそこそこある。
事務所からバイト先は徒歩での移動になる。そこそこ遠いので、走るしかない。さて忘れ物はないし走ろうかなと思ったその時、チャットの通知音が鳴った。これから出るという時にチャットが来るのは少々イラッとするものだが、重要な連絡だったら困るので確認をする。
『目黒せんぱい』
赤松さんからのチャットだ。何だろう。
『何?』
『飲み過ぎで吐きそうです......』
ば、馬鹿じゃん......。
どうでもいい話なのが理解できたので、無視して私はバイト先に向かった。
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日曜日、私は早めに事務所に到着した。
部屋には既にいつものスタッフがいる。それと見慣れない女性もいる。低身長でゴスロリ風服装だ。マジで誰なんだ......。
「おはようございます」
「よー目黒さんおはyo」
「スタッフさん、あの方はどなたですか?」
耳打ちで聞いてみる。
「あの人はイラストレーターの《トモヨ》さん。超有名絵師ってやつ」
な、なんとトモヨさんだと!?
あの逆立ちするかまぼこのイラストでバズった若手女性イラストレーターのトモヨさん!?
素顔はネットに晒さしてないから初めてみたけど、とても色白で綺麗だ。
ふと顔を見ると笑顔を見せてきた。
我々声優は常日頃から笑顔でいることが徹底されている。もしかしたら、他業種でも笑顔であることを指導されている人もいるかもしれない。今トモヨさんがした笑顔はそのような笑顔だ。
トモヨさんの前職は営業だったのかもしれない。
「目黒せんぱいおはようございます!!」
振り返ると後輩がいた。余計なことを考えていたから気づかなかった。
てか遅刻せずに来るとは思っていなかったのが正直なところだ。
「おはよう。来るの早いね」
「朝スタッフからライブやるってメッセージきたんですけど、その事って聞いてました?」
え、ライブ???
またしても未知の情報である。
スタッフよ、もう少しまともな情報共有ができるようになってくれ。