クソ運営のvtuberだけど相方と百合をしながらアイドル目指す 作:響木ウルフ
情報共有ほど大事なのは無い。
私は事務所所属の声優だ。ありがたいことに雑務はスタッフがやってくれる。それはどこの事務所でもそうかもしれないが。
しかし、ここのスタッフはとにかく雑だ。やってくれて何様のつもりだと思うかもしれないが、ガチでひどい。
具体的には......。
「え!? メッセージ来てないって本当ですか!?」
この人は赤松優さん。私の後輩声優。身長は低めだが、ポニテが象徴的で人混みに紛れてもわかりやすい。露出が少ない服装だがボディラインはそこそこ確認しやすく、胸の大きさが目を惹く。
「来てない」
「先輩大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫よ......」
そんな可愛い後輩から告げられた未知の情報。
どんな言葉が聞けるかと思えば、スタッフの無能さを改めて思い知らされるだけであった。
けれどまあ今回の打ち合わせに関するネタバレのひとつ、と考えると大したことはない。はずである。
「えー皆さまお集まりください」
スタッフが集合をかける。
「スタッフの吉田です。よろしくお願いします」
「お願いします」
一同礼をする。
「そしてこちらの方が......」
「トモヨです」
ゴスロリ衣装の女性。身長は私の後輩よりさらに低い。148cmくらいだろうか。
某同人シューティングゲームで登場しそうな帽子を被っている。髪はショートの黒。
肌は色白で若々しい。脚も細く、身長以外は非の打ち所がない。
いや、私が評価できる立場じゃないけど。まあ、このように特徴的な外見なのである。
「イラストレーターをしています。いつもかまぼこの絵を描いています」
知っている。何故かトモヨさんはかまぼこの絵をよく描く。ゾオッターでよくバズってるし。
「目黒翠です。声優です。よろしくお願いします!」
「まあ元気な挨拶。前職で営業をやってた頃を思い出すわ」
やはりトモヨさんは前職営業だったかー!
「あ、失礼したわ。それで隣の子は?」
トモヨさんは私のやや右後ろにいる後輩に目を向ける。
「赤松優です! よろしくお願いします!!」
「あら可愛いわねぇ」
「えへへ......ありがとうございますっ!」
赤松さんは確かに可愛い。とにかく若いし、若いし、エロ......いや、なんでもない。
しかし私には何も言わないは少しあれだ。
一応私も声優だし、承認欲求は少なくない方。やはり評価されないとなると気分は良くない。
「えーこれからふたりはトモヨさんとヒアリングをしてもらいます。Vtuberとしての姿を創造するのに必要な話し合いです。真剣にやるように」
「はいっ!」
「僕はマーケティングと予算的なツッコミをいれます。まあうるさくはしないからまずは自由に話し合ってください」
というわけでヒアリングが開始した。
「まず、Vtuberってご存知ですか?」
トモヨさんが私らに問う。
「ええ知っています。モーショントラッキングを利用してキャラクターを動かすものですよね」
私がこう回答したら、トモヨさんは残念そうな顔をした。
「失礼ながら、全然わかっていませんね」
トモヨさんはなにかのスイッチが入ったかのように、強い口調でこちらを見る。
「いいですか目黒さん。私は辞書的な回答を求めているのではありません。もっと根本的な問いかけをしているのです」
「すみません」
「Vtuberという概念はふわふわとしています。はっきりと決まってはいない。しかしそれ故に柔軟で個性豊かな存在が多く出現しているのです」
「わかります」
「ですから、魂の礎となるキャラクター設定が大事なのです」
親分というVtuberはAIを自称している。もちろん201x年の現在でAIなんぞ存在していない。
Vtuberはモーショントラッカーを人体につけて、3Dキャラを動かすものだ。
演者は動きと声を担当する。
演者は俗に"中の人"、もしくは"魂"と呼ばれている。中の人はストレートだが、魂は言い得て妙である。
無機質のキャラクターに命を吹き込むのが魂である。
「トモヨせんせぇ、今回はその~設定をゼロから構築するんですか?」
「あら赤松さん、いい質問ね」
「どうゆうことでしょうか?」
質問の意味がわからないので聞いてみる。
「Vtuberの設定を、ゼロベースで創るかそれとも魂から生やすかって質問よね赤松さん?」
「はいっ!」
「設定を演じるのが我々のお仕事じゃないんですか?」
「確かに声優さんはそうですね。Vtuberの演者には変身願望を満たしたいが故になった人もいるでしょう。ただ、それはVtuberが持つ役割の一面に過ぎません」
「と言いますと他にもVtuberになる目的はあると」
「ええ。Vtuberは美男美女揃いで外見では差別化しづらいです。だからこそ内面とブランド力での勝負になるんです」
「内面とブランド力ですか?」
「それについては後述しますが、Vtuber......Vの者になる目的は匿名性がひとつあげられますね。他にも、肉体的には男性でも性自認が女性の方は女性Vtuberとして振る舞うことで苦悩から解放されるかもしれません」
Vtuberにそんな役割があったとは興味深い。
「奥が深いですね」
「そうなんです。Vtuberは仮想空間の単なるアバターではなく、潜在意識を抽出した新人格と私は思っています」
「はぇ~」
「そうそう、赤松さんへの質問に答えていませんでした」
「ど、どうするんですか?」
「今回はあなたたちを人格を、好きなものと合わせて発展させていきます」
トモヨさんに好きなものを聞かれた。
私は、ゲームが好き。食べ物は......ハンバーグとか?
微妙に男っぽいと、別の声優やスタッフから言われることがあることがある。
そんな私だけど、一応女っぽい好みもある。
魔法少女アニメである。
幼い頃に魔法少女アニメを見て、ドハマリ。そのまま声優を目指すことになった私にとって魔法少女は魂の根源である。
この他にも思想や性癖などをトモヨに聞かれた。
中には「それ聞いてどうする」というものもあったけど、仕事なので我慢。
「それで、赤松さんは?」
「私はアイドルが大っ好きです! 目標に向かって困難を物ともしない少女たちを見ると興奮します!」
「わかるわ。良いわよねアイドル」
それを聞いたトモヨさんがタブレットを取り出し絵を描き始めた。
「赤松さんは努力家だったり?」
「お恥ずかしながら努力はあんまり得意じゃないです」
「そう。ところでどんな外見のアイドルが好きかしら?」
「えーと......キリッとしている娘が好きですね」
「ほう、自分にはあんまり無い要素がある子が好きなのかな」
「そうですね! あ、脇が見えてる娘が好きです。そっちの方がえっちなので!」
「反映させるわ」
「ありがとうございます!!」
そうゆう性癖なのね、赤松さん。
「はい、描けました。ラフですが」
トモヨさんがタブレットを見せる。
いかにもアイドルらしい少女が描かれている。胸が大きく、身長低めでポニテなのはまんま赤松さんの特徴だ。
ただ、肉体のバランスが二次元キャラらしく良くなっている。
それに、脇を大胆に見せつつも可憐な少女さを象徴させるアイドル衣装が美しい。
キリッとした表情は赤松さんには無い魅力だ。
フリフリなスカートもグッド。
これをものの数分で描くなんて、流石イラストレーターだ。
「わぁっ! 可愛すぎて直視できません! ありがとうございます!!」
「いえいえ」
赤松さんがラフを見て絶賛しているが、トモヨさんは構わず次のラフを描き始めた。
「はい、目黒さん」
ラフには、魔法少女が描かれていた。
少しダウナーっぽい見た目で、身長は高め。
髪は私のものより長く、ロングヘアー。このキャラも魔法少女と同じくスカートだが、少し長めになっておりシックな感じだ。
胸も大きく私には似ていないが、このキャラを見て私の深層心理から浮かび上がってくるものがある。
そうだ、私はこのような魔法少女に憧れていたのだ。
いかにもな、女っぽすぎる衣装は好みじゃない。それ故に可愛い服を着こなせずにコンプレックであった。
そんな時に見た魔法少女は、クールで大人っぽい子だった。
クールな魔法少女はメインキャラではなかった。たまにしか登場しない。でも本人は「たまにつるむのが良い」というスタンスの持ち主で、気にしていない。
敵キャラから「男っぽい」と悪口を言われても、「これでイイ。いや、これがイイからボクはこうしている!」と堂々としていた。
そんな魔法少女が大好きだった。
「目黒さん」
「トモヨさん......」
「どうかしら?」
「すごく......良いです......」
「でしょう?」
「じゃあ、これから設定を考えるから意見を出してね」
「はい!」
キャラデザが大まかに完成したので、みんなで意見を出し合ってキャラ設定を構築した。
その話し合いは、絶妙に恥ずかしがったが同時に気持ちよさもあった。
そして、キャラクターが完成した。
あとは今後の方針と、初投稿の動画撮影が待っている。
あ、でも何か忘れているような......。
「あ、僕抜けて田村呼んできます」
「はい」
スタッフの吉田さんが途中退室をする。
何だろう?
「こんにちは田村です」
代わりのスタッフが入ってくる。
「ではこれから早速ライブの練習をしようと思います。話は聞いてますよね」
「え、私聞いてないんですけど!?」
いや、後輩からは聞いてるけど。それにしても正式には聞いていない。
「はあ。じゃあ動きやすい衣装とかもない感じですか。そうですかじゃあトモヨさんと一緒にその辺で見学しててください」
「ええ......」
思い出した、ここのスタッフはクソだったと。この人たちが運営になって本当に大丈夫なのだろうか。
不安は拭えないままである。
☆幻夢・翠(げんむみどり) 演者:目黒翠
17歳の魔法少女。
高身長でスタイル抜群も良い。
闇魔法で敵をビシバシ倒すクールな魔法少女の先輩的存在。
闇の組織のプロパガンダに対抗すべく、アイドル活動をしている。
好きな食べ物はハンバーグ。
☆モモカ・アミリ 演者:赤松優
16歳のアイドル。
身長が低めだが、健康的なポニーテールと胸が目を惹く。
好きな声優ユニットが横浜アリーナでライブをやっていたので、横アリでライブをすることを目標にしている。
好きな食べ物は桃。
◆まどる!!
幻夢・翠とモモカ・アミリのVtuberユニット。
主な活動は歌動画の投稿と、ライブ活動。