【完結】たそがれより世紀末まで〜98×99三強カップリングがイチャイチャしたりするかもしれないしドロドロするかもしれないしの幻覚話〜   作:春華ゆが

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なんか急に文字数増えてきましたね(前回)
というわけで今回は反省して三分割します
すみません!


スペシャルウィークとアドマイヤベガとハンバーグ作り前

 きっと、たまたまなのだと思う。深い意味はなくて、偶然で。だって今までは滅多になかったことだから、これからも滅多にないことのはず。だからきっと、たまたまだ。

 けれど、もしそれがたまたまではないのだとしたら。アヤベさんの方から、私に話しかけてくれること。それがもし、単なる気まぐれではないのだとしたら。

 そうやって伸ばしてくれた手を、私は離したくない。そう、思うのだ。

 

「ふぅ……これ、ご飯時までに終わるかなあ……」

 

 そんな弱音を吐いた午後五時ごろ。寮のキッチンにて、私スペシャルウィークは一つの大仕事に取り掛かろうとしていた。ずばり、料理である。

 もちろんトレセン学園の食堂は食べ放題かつ絶品で、そこで朝昼晩を済ませることにはなんの不都合もないのだけど。それはそれとして、今日は自分で作りたい気分なのである。これには深ーい訳がありまして……。

 

「何してるの、スペシャルウィークさん」

「うわっ、アヤベさん!?」

 

 そんなふうに食材の前で唸っている時、だった。アヤベさんが私に声をかけてきたのだ。おそらくはたまたま通りがかって、たまたま見かけて。そしてたまたま、話しかけてきた。うん、まあ確かに気になる光景ではあるだろう。改めて、買ってきた食材を順に見ていく。

 ひき肉、玉ねぎ、パン粉、牛乳に卵、そしてにんじん……その他諸々。それぞれ結構な量を買ってきてしまった自覚はあるが、私のお腹にはこれくらいないと足りないのでありまして……うう、それをまじまじと見られるのはこう、恥ずかしい。

 

「あなた、料理なんてするのね。いえ、意外とまでは思わないけど」

「そうなんです、久しぶりにというか、実家ぶりにというか……」

「なるほどね。それでどこから手をつけていいかわからない、と」

「はい……。作り方は覚えてますよ、何度もお母ちゃんと作ったにんじんハンバーグですから!」

「にんじんハンバーグなら、食堂でも出ると思うけど」

「それはそうですけど! でも、たまにはそういう懐かしい味、みたいなのが食べたくなる時あるじゃないですか」

 

 我ながら、食へのこだわりは強い。アヤベさんは反対に、あまりそういうのへの関心はなさそうな感じではあるけれど。けれど個人的に思うのは、そういう人でも美味しいものを美味しいと思わないはずがないということ。つまり食べることの楽しさは、誰にだってわかるはずのことだ。

 

「……懐かしい、ね」

「はい! もちろん完全にお母ちゃんの味を作れるわけじゃないですけど、それでも食べれば思い出せるかなって思いまして。なので、今日はちょっと気合を入れて、具材までは揃えたんですけど」

「そこで最初に戻るわけね」

「はい……」

 

 そう、そういうことである。買ってきて初めて分かったのは、私のような大食らいのために毎日料理を作ってくれていたお母ちゃんはとんでもないということ。買ってきてようやく分かったので、買うことは止められなかった。さて、どうしましょう。ほんとに。

 そんな私の後ろ姿から、露骨にてんてこまいなのを感じ取ったのか。見かねて、という感じで、アヤベさんが口を開いた。

 

「食材、無駄にしたらもったいないでしょうし。手伝いましょうか? 私でよければ、だけど」

「ほ、本当ですか!?」

 

 通りがかって目に留まったからというだけなのに、若干かなり申し訳ないけれど。その申し出を断るわけにはいかなかった。確かにアヤベさんの言う通り、食材を無駄にするわけにはいかないし、それに。

 

「なら頑張りましょう! よーし、けっぱるべー!」

「急に元気になったわね、あなた」

「なりますよ、そりゃ」

「よくわからないわね」

 

 だって、あなたと同じ時間を過ごせるのだから。恥ずかしくてこそばゆくて、絶対口には出せないけれど。大切な人と何かを分け合えることは、きっととても素敵なことだ。私にとってだけじゃなく、私たちにとって。

 

「さあ、じゃあ作りますよ! まずは玉ねぎ! これ全部切りますから、分担してやりましょう!」

「あまり詳しくないけれど、玉ねぎ三個はハンバーグ何個分なの」

「本来なら……六個くらい? でも大丈夫ですよ、全部食べますから!」

「何というか、恐ろしいわね……。止めはしないけど」

「はい、じゃあ切りますよ!」

「分かったわ、やるわよ」

 

 そうして、とんとん、とんとんと。玉ねぎのみじん切りといえば、もちろんハンバーグ作りには欠かせない工程なのだが。そこには当然のようについて回る問題が一つある。文字通り、いくら切っても切り離せない問題が。

 

「うぅ〜、沁みます、目がぼろぼろです、アヤベさあぁ〜ん……」

「これ、すごい来るわね。……ぐすん」

 

 玉ねぎといえばの涙腺刺激で、二人で涙と鼻水まみれ。アヤベさんにまでそんな格好をさせてしまうのは、なんというか若干許されないことをしてしまった気がする。

 ……とはいえ、アヤベさんの涙を見るのは初めてではない。一緒に服を買いに行ったあの日、可愛らしいロリィタファッションを、勇気を出して二人で着たあの日。あの日、アヤベさんは自分の姿を見て泣いていた。何故かはわからない。似合っていて嬉し泣き、という雰囲気ともまた違っていた。私はきっと、まだアヤベさんのことをよく知らないから。だからあの時は、そばにいることしかできなかった。

 でも、と思う。もしも、と思う。きっと、次にアヤベさんが涙を流すことがあるのなら。今の玉ねぎとは、別枠だけど。その時こそ、私は。私はあなたの手を握って、その痛みさえ分け合って。楽しいことも辛いことも、分け合えば、きっと。

 

「あなた、手が止まってるわよ」

「あっ、すみません! 考えごと、してました」

「……包丁を持ちながらは危ないわ。気をつけるのよ」

「はい。ありがとうございます」

 

 そんな少しの気遣いも、何だかとっても嬉しい。アヤベさんと私の距離は、きっと前より縮まっている。そしてこれからも、もっと。そうであって欲しいというのは、私の一方的な考えだろうか。でもそうであったなら、やっぱり私は嬉しいのだ。

 そうしてなんとか、玉ねぎを切り終えて。みじん切りの山は見ているだけで泣けてきそうだ。別の意味で。なのでさっさとフライパンで炒めよう。どでかいフライパンがあればよかったけれどそういうわけにもいかなかったので、玉ねぎの山を二つに分けて二人で炒める。並んで、じゅうじゅう。そんな待ち時間を有効活用しようと、私はアヤベさんに話しかける。

 

「そういえばアヤベさんって、料理なさるんですか?」

「サンドイッチくらいなら。外に持っていくのにちょうどいいのよ」

「なるほど、外に。散歩とかですかね」

「そんなところね。サンドイッチだけは手慣れてしまったかも」

 

 機能を重視した食事っぽいのは、流石にアヤベさんらしいというか。けれど外に出かけることがあるというのは、今までのアヤベさんからは教えてもらっていないことだ。そりゃもちろんインドア派だとしても、全く外に出かけないわけはないと思うけど。

 

「何かしら、その笑みは」

「別に、何でもないですよー?」

 

 顔に出てしまっていたか。そんなふうに私の知らないことを、少しずつ少しずつ新しく教えてくれる。それはきっと親愛の証。前よりずっと、仲良くなれた証拠。やっぱり、そう思いたい。

 きっと、私たちはもっと仲良くなれるのだ。




アヤスペの幻覚はそろそろ市民権を得てきたのではないかと信じているのですが皆さんは見えてきましたか?
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