>>1「すべてのポケモントレーナーは孵化厳選をやめろ」 作:一宮 千歳
この世界におけるでんじふゆうはかなりの人権技である。
この世界の技は使い込み鍛えることで付随効果が増していく。
これがまず大きい。
使い込んだでんじふゆうは、前世の本家ゲームで言うと
「じめん弱点打ち消し、素早さぐーんとアップ、回避率ぐーんとアップ」ぐらいの技に変貌する。盛りすぎじゃないかって?
でも浮くことによる三次元機動ができることにより相手の技への回避率と自分の技の回転率が上がっているので、原作ターンバトルに直すとそのぐらいになるんよ。
バカみたいな話だが、これがこの世界で現実なのでしょうがない。
その上で覚えられる技枠が4枠より多いポケモンがいること。
この世界がターン制でなく、アクションゲーム寄りのバトルを行うこと。
この二つにより手数を増やす、という行為の価値が重い。故に人権技。
「メタグロス! たたみかけろ!」
「スターミー! 回避優先! チャンスを待て!」
さて、今はとある男のメタグロスと、我が手持ちであるスターミーが対峙している。
メタグロスが振るうのは、
バチバチと電撃が迸る音を鳴らしながら迫るかみなりパンチ、
無音の高速パンチであるバレットパンチ、
そして本命の大振りながら的確に急所を狙ったコメットパンチ。
先ほど述べたでんじふゆうを惜しげもなくボールから飛び出すと同時、いわばゼロ手目から繰り出し、重力の軛から解放され上がった回転率での3種のパンチ技の乱射。
それが「たたみかけろ」の一言で実行される。
トレーナーの意を汲むポケモン、いい話だなァ〜敵じゃなけりゃよぉ〜ッ! ここは地獄か!?
なお前世だとメタグロスでオーソドックスなのは物理型だが、この世界での公式戦で相手がよく使うのは特殊型のはずで、まずそこを読み負けた。
あとこの物理型メタグロスも技枠が多い場合、しねんのずつきとかだいばくはつが仕込まれてる可能性があり、頭が痛い。
生まれつきの種族差や個体差よりは後天的な育成方針、前世でいう努力値の影響が大きい世界のようなので、通常種族値の暴力による蹂躙劇とはならない。
しかし技枠が多いことによるつよい種族×つよい技=つよつよ個体、みたいな頭の悪いグッドスタッフで殴りかかられるとそれが最もたまったものではないわけで、この相手とポケモンバトルする時はどうしてもこの技枠6つのメタグロスでの被害をいかに抑えるか、というのがまず第一に考える部分となる。
「これは…厳しいか。 スターミー! 粘れるか!?」
「!」
独りごちたあと、持久戦を指示。スターミーは指示を受けいれてくれた。
今回のスターミーは実際特殊型でんじふゆうメタグロスにメタを張ったつもりであり、こうそくスピンによる機動性アップとじこさいせいでの耐久で対抗できないかという考えからきた技構成と育成方針なのだが、
もともとの先制技効果に加えて命中させやすい効果(必中効果ではなさそうだ)があると思われるバレパンと、
バチバチと紫電を撒き散らし追加効果発生率と見かけより大きく回避しないと余波ででんきタイプダメージを受けるであろう進化を遂げた雷パンに相性が悪すぎ、じわじわと削られてしまっている。
「じこさいせいで回復しながら、でんじはで磁場を崩す狙いだろうね」
「まだこっち何もやってねえだろ、読み切らないでくれよ、なんなんだお前。しかもそっちの技との相性メーチャメチャ悪いわ」
相手……もういいや、対戦相手のトレーナーはダイゴである。ダイゴさんマジパネエっすわ。
さてでんじはにより磁場を破壊しでんじふゆうキャンセルを狙う、これは一般にも「できる」と知られている作戦なのだが、本命の麻痺効果が電気ポケモンに効かないため、でんきタイプを持たないでんじふゆう持ちに限られた対策でもある。まあメタグロスはその適用範囲内なので予測できる、と言われればそうなんだが、それにしたって普通に考えて専門外のはずのスターミーが電磁波を覚えるという情報をきちんと持ってるのはさすが本家でチャンピオンやってるだけのことはあるというか……(なお、この世界の今の時間軸ではまだチャンピオンではない)。
あー、そうこうしてるうちに雷パンチの追加効果で麻痺の傾向が見られる。本来狙ってた持久戦に勝ち目はなかったか。グッドゲーム。
あとこうそくスピンによる移動はどうしてもコアが天を向いてしまうが、本命の武器として採用したハイドロポンプは相手に正面を向けて撃つのがスターミーの正規の使用方法。なのでこうそくスピンで動き回る作戦中はメインウェポンがろくに打てないという欠点も新たにわかった。なんだ俺の作戦ガバばっかじゃねえかよ。
麻痺で動きの鈍ったスターミーに向かって、キャプチャービームを放つ。アレね、アニメで戻れ!〇〇!ってやった時に出してるやつ。
「終わりかい?」
キャプチャービームをスターミーに放った瞬間、終わりを察したダイゴが声を掛けてきて、メタグロスも止まる。
「初手メタグロスの崩し方が知りたい、で1on1付き合ってくれてありがとな」
「いやいや、君の頼みなら暇な時は応えるよ」
「そこは世辞でもいつでもって言ってくれよ悲しいだろ……」
大体君もエスパーポケモンの適性があるんだからメタグロスを使えばいいだろうに、などというダイゴのおせっかいをハイハイと受け流す。鋼かエスパーに適性のあって見込みのあるやつにだいたいダンバル配ってるからなこいつ。俺ももらったが育成予定が今のところない。
本家ゲームでは存在しなかった概念として、トレーナーのタイプ適性、というものがある。
これは字の如く、トレーナー自身がどんなタイプを育てるのに向いているか、を示す。
トクサネのジムはエスパータイプを専門にするジムであり、そのジムに長年貢献してきたエリート家系である自分はエスパータイプに対する適性だけを持つ。
ちなみにダイゴさんははがね・いわ・じめんのトリプル適性(これ自体はまあゲームにおけるやまおとこと似たようなもんである)だと思うが、メタグロスやネンドールがやたらイキイキしてるあたり、トクサネ住み補正かなんかでエスパータイプも持ってやがる。インチキか?
ちなみに会ったことないけど、ゲームでの使用タイプがぐっちゃぐちゃなシロナさんの手持ちがゲーム通りだともっとやべえ、ってことになるが果たしてどうなんだろうな。
あ、本家で御三家と呼ばれる連中はこの世界では適性関係なくよく懐くため、駆け出しトレーナーによく与えられる。そしてどんな作品でもチャンピオンロードによくいる御三家使いエリトレは、この世界の仕様に当てはめると「タイプ相性を鑑みた結果、自分の適性は置いといて御三家を使ってる」ということになるんですね。
閑話休題。
一応自分の適性(エスパーと、エスパーを複合に持つポケモン)で使える中ではアローラライチュウ、もしくはマフォクシーあたりがメタグロスメタの可能性があるとは思っているが、まあこの二体ホウエン地方出ずにてもちにする方法が無いねんな。進化前がエスパーついてないからジムの育成業務の対象外だし。
「俺はメタグロスを使わずに技4枠のポケモンでお前をボコボコにして発言力を得るんだよ……!」
「発言力というのも変な話だと思うけど……」
だってどうせチャンピオンなるだろお前。その時にぶっ倒してやれば俺にだって発言力(世界的に孵化厳選をやめさせる)が付くんだ…! 多分!
自分から相手のポケモン指定して仕掛けた勝負にピンポ対策ポケモン育てるとかいうガンメタ張った上で相手の型を読み負けてミリダメージも与えられずに降参するクッソ情けない主人公くん。
原作キャラのエースの格を落としたくなかったのもあるんですが、
お互い友人と認めてると言っても物語開始段階の実力は上澄みから見たらそんなもん、という回です。(ダンバルもらった時は「センスある認定」なのでめちゃくちゃ喜んだ)
次回、不甲斐ないので修行に出ます(とうぜんのながれ)