異端の武具職人が神の領域を目指すのは間違っているだろうか 作:のん野のん太郎
『大樹』の試し斬り、そこで俺はその圧倒的な威力に打ち震えていた。
ステイタスの上昇と新調した主力武器。その全てが威力を底上げし、振り下ろされた斧刃はオークの骨身を容易く掻き分け両断した。
頭頂部から股まで、魔石ごと斬られたオークは断末魔を上げる隙もなく灰に変わる。
シルバーバックやハード・アーマード相手でも上から力で捩じ伏せることが可能となり、ステイタスと武器両方の成長を実感した。
先端よりの重心を活かし、体の捻りと遠心力によって繰り出される一撃は相当な威力だ。
高い攻撃力を得た分取り回しが難しくなり、中層序盤の小さな敵や素早い相手には『始天』よりも難しくなっている。
ダンジョン内は上層、中層共に通路が狭く、長柄武器が扱いづらくなっていて使用者も多くない。直剣の扱いやすさを考えれば当然とも言えるが。
その為長めのハルバードを担いでいる俺は多少注目を集める。へー、あんな武器使うんだ、と言ったように。
その後13階層で魔石を稼ぎ、14階層までは自力で行けるようになったことを確認して帰還する。もう少し進めるような感触はあるが、今回は『大樹』の試し斬り。ポーションの準備も十分でない為今日はここまで。
そうして階層を上がっていくと、ベルとヴェルフ、リリルカ・アーデと出会った。丁度ハード・アーマードと戦っている最中で、ベルの素早さと手数の多さを生かした戦いはミノタウロス戦よりも一段上の強さを感じさせる。
ランクアップしたての筈だが、俺よりも速いんじゃないかと思う程速い動きだ。当然危なげなく躱し切りつけ翻弄しており、攻撃も上層最硬の防御を貫く。
少し迷ったが、戦闘が終わったのを確認してから声をかけるとベルとヴェルフは明るく返してくれたが、リリルカ・アーデはどこか警戒した様子。そういえばあの時気絶してたし、起きてもベルに夢中だったから一方的にしか知らないのか。
「カルロ・ヴァリです。よろしく」
相手にとって初対面ということもあり、少し丁寧に言ってしゃがんで手を差し出す。
すると少し戸惑った様子でベルの方を向き、ベルが笑顔のままはてなマークを浮かべているのを見ると溜息を吐いて握手に応じてくれた。
「リリルカ・アーデです。カルロ様はベル様とはどのように?」
どうやらまだ警戒を解いていない様子で色々聞いてくる。それに対して俺が答えたり、ベルが答えたり。どこで会ったとか、何か売りつけられていないかとか。
「もう良いじゃねぇか、リリスケ。カルロは良い奴だ」
「ヴェルフ様は黙っていてくださいっ!」
何でも信じるようなベルとはうってかわり、非常に疑り深いリリルカ。ベルのお目付け役としては最高と言えるだろう。
その後何度か質問を投げかけられ、正直に答えると警戒レベルが下がったようで、謝罪をした後普通の態度に変わった。俺が書いたオラリオ常識メモを見たことと、その後ベルを連れ帰ったことが決め手となったようだ。
そしてベル達も帰るところだった為、話しながら地上に戻る。
ヴェルフはベル争奪戦に無事勝利したようで、ベルを顧客にした上でパーティにも入れてもらったそうだ。武器を作ることを引き換えに、パーティメンバーとしてレベルアップの手伝いをしてもらう。『鍛冶』目当てだな。
ちなみに俺は顧客を持っていない。作る武器にムラがある上に、顧客の求める条件通りに出来上がる場合が非常に稀なためだ。申し出はあったのだが、その旨を説明すると皆口を揃えて「やっぱりやめておく」と言う。
リクエストに応えられる武器を作ること、それが俺の今後の課題だ。
その為俺は売るのを【ヘファイストス・ファミリア】に任せている。
有難いことにほぼ全て売れているが、お得意様はまだいないのが悔しいところだ。
ヴェルフがパーティに入った経緯を話した後は中層についての話となった。
まだ中層に足を踏み入れていないベル達は中層の様子などを聞いてくる。
ベルはモンスターの強さやどんなモンスターがいるか。
リリルカは警戒すべきことや今のパーティでどこまで通用するか。
そしてヴェルフは中層の時に見た『雪鋼』について話した。
正直なところベル達のパーティに中層はまだ早い。ベル一人で逃げながら戦うとかなら大丈夫だが、リリルカやヴェルフがいて、向かってくるモンスターを全て捌かなければならないとなると話は別。
ヴェルフは大剣を使う為そもそも相性が悪く強さ半減といった具合で、リリルカはほぼ非戦闘員。そんな状態ではモンスターを捌く前に次のモンスターが現れ、逃げることすら出来ずにジリ貧になるだろう。
ベルとヴェルフの他にあと一人戦える奴がいれば安定するだろう。欲を言えばモンスターの注意を引き付けられる、タンクが欲しい。
そう言うとベルはヴェルフやリリルカに何かを聞く。ヴェルフの「あいつ……ソロ……」みたいな声が聞こえる。そしてこちらを向くベル。
「あの、さ。カルロ、僕達のパーティに入ってくれないかな!?」
「あぁ、確かに中層のガイドは出来るな……」
「ならっ!」
目を輝かせるベル。
「だが断る。すまんな」
「そ、そんな……」
今度は顔を青くするベル。
「いや、な。俺としては時間の制限無しに武器を作って、好きな時にダンジョンに潜りたいんだ。パーティに入って好きな時に武器を作ってメンバーに気を使ってもらうみたいな中途半端にはなりたくないんだ」
そう説明する。パーティに入れば少なからず制限が増える。探索メインのベル達ならば尚更だ。
好き勝手に動きたい自分勝手な俺にとっては今のところソロが一番。どこかでパーティに入った方がいいとは思うが、今はそのときでは無い。
「まぁ、中層の
俺としても将来の為兼興味本位の為、パーティの立ち回りの勉強をしてみたいし、win-winってやつだ。
そう言うとベル達は少し考える様子を見せた。臨時でメンバーを増やすことに抵抗があるのだろうか。
初挑戦の際、臨時でパーティメンバーを増やして戦力を上げるのはよくあることだし、【ファミリア】によっては上位レベルを連れていくことを義務にしているところもある。
あまり気にすることでもないと思うが。
そうしているうちに地上に出た為、返事は了承するときだけでいいと言って別れる。
次回、『臨時パーティ結成!四人で中層初挑戦!』絶対見てくれよな