異端の武具職人が神の領域を目指すのは間違っているだろうか   作:のん野のん太郎

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第22話

「じゃあ、サポーター君救出作戦、作戦会議だ」

 

 幼い女神と様々なファミリアの混合部隊がテーブルを囲んでいる。ヘスティア神に【タケミカヅチ・ファミリア】、【ミアハ・ファミリア】のナァーザ、【ヘファイストス・ファミリア】の俺という集団。

 

「これが【ソーマ・ファミリア】の本拠地の地図です。内部構造はわかりませんが、リリ殿のいるのはここ、管理塔と思われます。その前にある十の建物は酒蔵。ここは無視でいいでしょう」

 

 命が広げた地図の四角を指さしながら言う。

【ソーマ・ファミリア】は主神、ソーマが作り出した『神酒』で名を馳せたファミリアであり、知名度はそこらの中堅ファミリアよりも高い。そしてその分ファミリア構成員も多い。

 そんな【ファミリア】が今、警戒状態になっている。

 

「忍び込むってのがベストだが、見張り番が多すぎて厳しそうだな」

 

「だが戦闘すればすり潰される。一人一人の強さは大したことないが、なにぶん数が多い。やるなら短期決戦だ」

 

「じゃあ、囮使えばいいんじゃない?」

 

 それぞれが意見を出していく。人数も出せる手札も少ない分、出来ることは限られている為結論は大まかに二つに分けられた。

 一つは戦力を一箇所にまとめて一点突破。前方の敵を薙ぎ倒して管理塔に突撃する作戦だ。

 そしてもう一つは二手に分かれて片方は囮、もう片方は潜入という作戦。

 俺達冒険者だけで突入するのであれば前者の一点突破になっていただろうが、 ヘスティア神がリリルカの主神ソーマと直接話をつける為に同行する危険性を考えて後者の囮潜入作戦となった。

 

 

 

 

 

「時間だな。よし、じゃあ暴れるか」

 

 時を告げる鐘の音と共に『可変・大鉈』を握り直して小声で言う。

 路地裏に出来た小さく開けた空間には装備を固めた冒険者が集まっており、全員が穴の空いた麻袋を被って顔を隠していた。こんなショボイのは顔を隠す仮面やらを作る時間が無かったからだ。

 まぁこの程度の抗争ならギルドも大きなペナルティを課したりしないらしく、それを聞いても被るのはぶっちゃけ俺の気休めだ。

『落陽』は正真正銘一発屋だから今回は使わない。普通の剣としてなら使えるが。

 潜入組は命とヘスティア神、ヴェルフの三人で、派手に暴れる組は命以外の【タケミカヅチ・ファミリア】の助っ人とナァーザ、俺。

 

 小声で三、二、一、行くぞと言い、路地裏から飛び出して【ソーマ・ファミリア】の本拠地に向かって走り出す。思っていた通り警戒してる奴らが多い。

 バックパックから武器の柄が飛び出した針山のような見た目で麻袋を被った武器を振り回して突っ込んでくる俺に固まった【ソーマ・ファミリア】の構成員だったが、来たぞと叫びながら応戦してきた……いや、我ながら凄い格好だな。

 四人が真っ先に俺に向かって来たが、どうやらヴェルフの外見が伝わっているらしい。赤髪の長身というワードが耳に入ってくる。

 突っ込んでくる四人を余裕をもって躱し、鳩尾を蹴りつけて気絶、残り三人も顎を掠らせることで沈黙。

 それでも次々と襲いかかる構成員を大鉈形態で峰打ちし、次々と襲いかかってくる奴らを気絶させていく。

 

「くそっ! 囲んで数ですり潰せ、コイツレベル2だ!」

 

 俺を指さしてそう叫ぶ奴も、手頃な石を投げつけて武器を持つ手を砕いた。

 桜花たちと別々に戦う、なんてことはしない。二手に分かれると敵の視野が広がるからだ。

 

「よし、じゃあ派手派手にいくぞ!」

 

「頼む!」

 

 近く寄ってくる敵が減ってきたあたりで、大鉈から蛇腹剣に変形させる。

 ガイン、ガインと鉄と鉄が弾かれる鈍い音を周囲に響かせ、蛇のように、生物のようにうねりながら伸びていく。鉄の塊同士を繋ぐ鉄糸は薄く緑色に光っており、宣言通りの目を引く長大な見た目だ。

 その武器の見た目に【ソーマ・ファミリア】の構成員は怯んだ様子を見せるが、幹部のような人物から厳しい言葉を受けて向かってくる。

 

「減らせば減らすほど、増援が来れば来るほどあっちが楽になる」

 

「ええ、任せて……閃光弾」

 

 ナァーザが小さく呟き、クロスボウで閃光弾を射出する。

 それを聞いて俺たちは全員目を伏せ、地面に反射する光を受けてから見上げると目を抑える構成員が何人も。数人は防げたみたいだが、ほぼ全員が隙だらけ。

 当然そんな隙を見逃すはずもなく、蛇腹剣で纏めて吹き飛ばす。強かに酒蔵の壁に叩きつけられた連中は潰れたカエルのような声を上げて地に伏せた。

 桜花達をちらりと見れば確実に一人一人気絶させている。一つ一つの動作が洗練されており、襲いかかる構成員を次々と捌いて気絶させた。

 武器を正面から受け止めるのではなく受け流し、足を払って床に転がす。対人戦の経験値の差を強く感じるな。

 一通り倒したのを確認してから大鉈形態に戻す。幹部っぽい奴は倒さない。増援を呼べるのはアイツだけだろうし、なまじ連絡網を麻痺させると警備に揺らぎが出来ない。

 

 そしてレベル1の連中を倒しきる頃には桜花たちの息は切れ、俺も小さなダメージが蓄積されて万全とは言えなくなっていった。そして【ソーマ・ファミリア】の本拠地方向からかなりの数の増援。いいぞ、狙い通りだ。

 

「ここが踏ん張りどころだ。やるぞ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

【ソーマ・ファミリア】の本拠地は大通りには面していない。路地裏の先にあるその場所は悪どいことをしても露呈することはなく、隠れ家のようだった。

 そんな路地裏には酔い潰れた数人よりも明らかに多い倒れ伏した人々。オラリオの住人ならば厄介事の気配を瞬時に察知して逃げるであろう光景だ。

 そしてその奥では未だに金属がぶつかり合う音、戦闘音が鳴り響いていた。

 明らかに疲弊した様子の麻袋を被った集団を取り囲む冒険者たち。

 ふらついた女を狙った一撃は大柄な男に防がれ、獣人に足を射抜かれる。

 そして唯一と言っていい程珍しい武器、蛇腹剣を振り回す男は周囲の敵を次々と叩きつけ、吹き飛ばして気絶させた。

 戦闘が始まってから変わらず屋根の上から観戦に徹してした男は変わらず、忌々しく睨みつけるだけ。

 

 

「どうした? 【ソーマ・ファミリア】は構成員が多いって聞いていたが、大した事ないんだな?」

 

 息を切らしながら挑発するが、それを受けた男は大きく舌打ちをし、顔を歪ませて笑った。

 

「息が切れてるぞ? お前はもう少し戦えるかもしれんが、お仲間は満身創痍。あと一押しで崩れるぞ?」

 

「……ハッ! この程度、大した事ない。武術を欠片も知らない連中なんざ、何人来ようが、話にならねぇよ!」

 

 息を切らしながら返す桜花に、そうだと息巻く【タケミカヅチ・ファミリア】の面々。闘志が再燃し、もう一度衝突しそうになったその時。

 

「やめろ。もう、終わった」

 

 低い声が響き、双方が立ち止まった。

 その場にいる全員が声の発生源に顔を向けると、短髪で髭を生やした大柄なドワーフが不機嫌そうな顔で立っていた。

 

「チャンドラ! どういう事だそりゃあ!?」

 

 幹部っぽい奴がチャンドラと呼ばれたドワーフに吠える。

 

「言葉の通りだ。リリルカ・アーデは改宗した」

 

「なっ……チッ! ちゃんと仕事しろよテメェ」

 

「否定はせん。だが、これ以上戦って被害を増やすのも馬鹿な話だ」

 

「……ハッ、そうかよ。普段偉そうなザニス様も役に立たねぇなぁ!」

 

 意識のある【ソーマ・ファミリア】の構成員は悪態をつきながら去っていき、俺達とチャンドラ、そして気絶した構成員だけが残った。

 

「……ではな」

 

 そしてチャンドラは何も言うことらなく、ただ一瞥してから踵を返し、本拠地へと帰っていった。

 

「……ふぅ、とりあえず、作戦成功か」

 

 麻袋を脱ぎ捨て、新鮮な空気を大きく吸い込みながら言う。

 

「ああ。上手くいったようだ」

 

「はぁ、割に合わない仕事だった」

 

 続いて桜花、ナァーザ、千草と麻袋を外していく。その誰もが汗だくで、顔に髪がピッタリと引っ付いていた。

 その様子に少し気恥ずかしくなり、目を逸らす。

 ゆっくり歩いて合流地点に向かうと、既にヴェルフやリリルカ、命にヘスティア神がいた。

 潜入組は全員がほぼ無傷で、ピンピンしている。

 警備がかなり手薄になっていたらしく、後ろから気絶させるのは容易だったそう。

 

 合流してからリリルカやヘスティアから礼を言ってもらい、小さな打ち上げをしてから『落陽』をヘスティア神に渡して作業場に戻った。

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