異端の武具職人が神の領域を目指すのは間違っているだろうか   作:のん野のん太郎

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誤字報告ありがとうございます。なんて便利な機能なんだ……
評価もありがとうございます。超うれぴー
今回は物凄く文字起こしが難しかった上にしっくり来てません。
不甲斐ない私を許しておくれ……


第4話

 朝に寝たため、起きるのは当然遅くなった。昼飯時が過ぎ、間食を挟む頃に起きた。

 ググッと伸びをしてゆっくりと作業場を出る。

 鍵を閉めもせずに本拠地に戻ると、皆ダンジョンに行ったり売り込みに行ったり、鍛冶場に籠っているようで人がほとんどいない。

 食堂で取ったやたら甘い果物を食べ、主神様の部屋にノックすると少し間を空けて返事が返ってきた。そして部屋に入ると珍しく机に腰を下ろしている。いつもなら大量の書類と睨めっこしているが、今なら時間をとってもらえそうだ。

 

「失礼します。ステイタスの更新お願いできますか?」

 

 そう言うと主神様は少し驚いたように目を見開いた。

 

「珍しいわね。二日連続なんていつぶりかしら?」

 

「昨日頑張ってる子に会って気合い貰っちゃいました。そろそろもう少し下の階層にも行こうかなと思ったので、できるだけステイタスを上げておきたくて。それに、もうレベルアップ圏内ですし」

 

 レベルアップ。それは強敵の打倒などの偉業によって得られる特別な経験値によって可能になる。ベルのやる気に当てられて、俺も早くレベルアップがしたくなったのだ。

 それを聞いた主神様は真剣な表情で語る。

 

「鍛冶師は武具作りで偉業を成し遂げた場合でもレベルアップするのよ? 強敵を打ち倒すのも良いし、多少の無茶はいいけど命が最優先。そこは厳守できる?」

 

「はい。入団して九ヶ月、そこに関しては徹底してます。無理そうなら引き返しますし、無理するなら先輩に付いてきてもらいます」

 

「……ならいいわ。ほら、背中出して」

 

 主神様が一度目を伏せ、そして立ち上がる。

 それに心の中で礼を述べ、上衣を脱いで椅子に座って主神様に背中を向けた。

 そのまま主神様は背後に立ってステイタスの更新を行う。相変わらず迷いのない手つきだ。

 すると主神様から、「え!?」と珍しく驚いた声が聞こえた。そしてその直後に俺は主神様から聞かされた言葉に絶叫することになった。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ありがとうございました!」

 

 本拠地から出て作業場の入り口に着いたときに、ベルが来ていた。どうやら入り口で待ってくれていたらしい。暇な時に来てくれればいいのに、やっぱり真面目だなぁ。

 

「いや、いいんだ。それより体は大丈夫か?」

 

「うん! カルロのくれたポーションのおかげだよ。カルロがいないと僕どうなってたか……」

 

「まぁ、そこは反省しなきゃだよな。ヘスティア神にちゃんと怒られたか?」

 

 そう言うと、ベルはその光景を思い出して顔を一瞬だけ青くして、その後すぐに真剣な表情になった。

 

「うん……神様には絶対心配かけないって決めたよ」

 

 その表情と言葉からはハッキリとした揺るぎない『決意』を感じる。

 

「ああ、それがいい。無茶は厳禁、だな」

 

 ベルが持ってきていたオラリオの常識を書いた紙を指差しながら言う。

 

「うん。心得の紙も本当にありがとう。それにこれ、昨日の払ってくれた分のヴァリスです」

 

 両手で袋を渡された。心なしかちょっと多いような気がする。

 

「コレちょっと多くないか?」

 

「ポーションの分と、お礼の分! 本当に、命を助けられたから……」

 

 やはり申し訳ないという気持ちがあるのだろう。先程からベルが少し弱気だ。

 

「よし、じゃあコレは貰っとく。だからこれで貸し借り無しだな」

 

「え!? いやいや、まだまだカルロには……」

 

「借りは今返してもらったからな」

 

 そう言って無理やり話を切り上げようとするが、それでも何度か食い下がってきた。変なところで頑固だな。

 だがそれでも譲らないでいると、何か困ったことがあったら言ってくれとだけ言って折れてくれた。

 そしてダンジョンの話を少ししてから別れる。

 そうすると時間も過ぎ、空も茜がかる時間になっていた。

 

 今日はダンジョンに潜るのは諦めて、明日にしよう。そう決めて作業場の鍵を開け、ゆらりと中に入った。すぐさま入口の鍵をしっかり閉め、窓も全て締め切る。

 そして一箇所に纏められたバックパックと防具の場所にハルバードを立てかけ、作業場をグルグル回ったり、ソファーに座っては立ち上がったり。

 そして全てを放り投げるようにソファーに飛び込んで突っ伏し、先程の主神様とのやり取りを思い出す。

 

 

 

 

 

 

「え!? ……あなた、もうランクアップ出来るわよ?」

 

「……うえぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!???」

 

 主神様が更新の作業をしているのを忘れて奇声を上げながら振り返る。まさかそんなはずがないという信じられない思いと、知らぬところから出てきた朗報に喜ぶ思いがごちゃ混ぜになって口角を上げながら眉を下げ、目を煌めかせるという半分変顔状態。

 そして主神様も唖然とした様子で、いつもの冷静な表情とは全然違う。

 しかし……

 

「思い当たることがない……」

 

「え? いやいや、そんなハズないわよ? ランクアップするくらいなんだから、何か偉業を成し遂げたはず」

 

「ですが思いつくことが……」

 

 二人して首を傾げていると、突然大きな音を立てて扉が開かれる。

 大きな音に細めていた目を開いていくと、そこには我らが団長が腕を組み、ニヤリと笑いながら立っていた。

 

「それならば手前が理由を教えよう!」

 

 ドン! とでも効果音をつけたくなる登場に、俺は驚きのあまり動くことが出来ない。

 主神様も少し固まっていたが、すぐさま立ち直ってため息をつく。

 

「ノックくらいしなさいよ。というか、理由ってカルロの?」

 

 主神様がそう聞くと、団長は嬉しそうに笑って答えた。

 

「応とも! そしてその理由は……これにある!」

 

 大きな声で言うと共に、団長は手に持っていたハルバード……ってあれ俺の作ったやつ! を掲げた。

 

「何で団長がソレ持ってるんですか!?」

 

「なに、主神殿たちが大声で騒いでいるのを聞いて、急いで持ってきたのよ。ピンと来てな。それにしても鍵を開けていては不用心だぞ? 誰かが盗みに入るやもしれん」

 

 盗んだのはお前だよ的なツッコミはなんとか飲み込む。いや確かに鍵開けてたのは不用心だったけど、ファミリアの敷地内だから大丈夫だと思うじゃん。俺の周りはレベル1しかいないし、ほとんど顧客が来ない。そもそも部外者が来ることなどほぼないのだ。それに入ったところでめぼしい物も特にない。

 ウンウンと頭を唸らせていると、それを無視して話は進む。

 

「これを見ればわかるというものよ」

 

 団長の差し出したハルバードを主神様は静かに受け取り、まじまじと眺める。

 そしてしばらくしてようやく口が開く。

 

「これをカルロが打ったの?」

 

「は、はい」

 

 恐る恐るそう言うと主神様は納得いったように頷くと話してくれた。

 

「このハルバードはレベル2になってようやく作れるような品質のものなの。それは理解できる?」

 

「は、はい。団長から昨日聞いたところです……でもまさかそれが!?」

 

 ニヤリと笑いながらうんうんと頭を振る団長を気にしないようにして主神様に問う。

 

「そうね。レベルの壁を超えて作るっていうのはとても難しいことなの。おそらくあなたが思うよりもずっと、それこそ不可能とも言えるほどに」

 

「確かに越えられない壁みたいな認識ではありましたが、たまに聞きますよ? レベルの壁超えた武器を作ったって話」

 

 そう、俺でもたまに聞こえてくるのだ。会心の出来だ、レベル2レベルの作ってやった、というような叫びがご近所から。

 

「アレは出来のいい武器を作った直後にテンションがハイになってるだけね。人によってしばらく寝てなかったりもするし。だけど実際のところ、見ればレベル1の子が作ったってわかるの。それほどレベルの差は大きい。特に1と2はね。作った子のレベルを上に思ったのはコレで二人目よ」

 

「ほ、ほぅ……」

 

 俺は伸びそうになる鼻と、上がりそうになる口角を抑えることが出来ずみっともない返事が出る。

 

「将来有望ではある。だがまだまだヒヨっ子だな!」

 

 ハッハッハと笑いながら団長が言い、俺の緩んだ心を引き締めてくれた。

 おかげで兜の緒が締まったような感覚だ。

 

「はい。ファミリアを引っ張るくらいの気合いで頑張ります!」

 

「応とも! その意気だ! ハッハッハッ!」

 

 それでも気分は上がっており、団長と共鳴したように盛り上がっていく。

 すると主神様がパンッと手を鳴らし、流れを変える。

 

「じゃあレベルアップするのでいいかしら?」

 

「あ、そうでした。是非、お願いします」

 

 そう言って椅子に座り直し、背中を向けた。

 

「経験値を補正するスキルがあるにしても早いわね。ロキの子の記録を大幅更新なんて、大したものよ」

 

「む? お主はいつ入団したんだったか」

 

「九ヶ月前です」

 

「ほう! それはそれは……!」

 

 またしても盛り上がっていると肩をポンと叩かれる。

 

「発展アビリティに【鍛治】と【神秘】、【狩人】があるけどどうする? 鍛冶師の定石通りなら【鍛治】だけど、あなたのスキルに【鍛治】が適応されるかどうか、確実なことは言えないわ」

 

 そういえばランクアップすれば発展アビリティが発現するんだった。

『発展アビリティ』

『スキル』や『魔法』、『基本アビリティ』とは違い、【ランクアップ】時にのみ手に入れることが出来る可能性がある能力だ。基本アビリティとは毛色が異なり特殊的(スペシャル)、あるいは専門職の能力を開花、強化させる。

 つまり発展アビリティが複数出現するのは珍しい。そして積み重ねてきた【経験値】によって発展アビリティが出る。つまり十中八九【鍛治】は有効だ。

 そして発展アビリティは成長させることが非常に難しい。レベルが上がっても発展アビリティはそのまま、なんてこともザラにあるそうだ。

 そんな発展アビリティの内容は

【狩人】が一度倒したモンスターと戦う際能力に補正。

【鍛治】が作る武器に属性を付与。これで最終的に魔剣を作れるようになる。

【神秘】が奇跡を発現させる。曖昧でよく分からないが、レアだ。

 鍛冶師は主神様が言った通り【鍛治】を取るのが定石。しかし俺はマトモな武具の作り方をしていないため、【鍛治】の能力が武具作成に乗るかが分からないのだ。まぁ選択可能な『発展アビリティ』に出てくる時点で使えることはほぼ確実なのだが。

 

「そうですね……【鍛治】は多分次回も出ますけど、【神秘】って結構珍しいですよね?」

 

 既に【狩人】という選択肢はキレイさっぱり消えていた。

 

「そうね。【神秘】持ちは【ヘルメス・ファミリア】の【万能者(ペルセウス)】くらいね。『レアアビリティ』と言っても過言じゃないわ」

 

 それを聞いて今一度考えた。定石通りに行くなら【鍛治】。魔剣を作らないとしても、不壊属性(デュランダル)武具を作るためには【鍛治】は必須。

 でも、【神秘】というレアアビリティも捨て難い。

 

 

 うんうんと足りない頭を捻り、あーでもないこーでもないと言いながら悩み抜き、ついに結論を出した。

 それは今回【神秘】を取り、次回に【鍛治】を取る、ということだ。

 それを伝えると主神様も団長も異論を唱えることなく、頷いた。

 そして渡されたステイタスの紙は、

 

 

 カルロ・ヴァリ

 Lv.2

 

 力:I0

 耐久:I0

 器用:I0

 敏捷:I0

 魔力:I0

 神秘:I

 

《魔法》

 

【】

 

《スキル》

【武具彫刻】

 ・あらゆる素材、金属の彫刻武具作成可能。

 ・彫刻武具使用による経験値補正

 ・経験値補正は武具の完成度により上昇

 

 

「あれ、ランクアップ前のステイタスとの変化は……」

 

「さっき途中で中断しちゃったせいね」

 

「あぁ、なるほど……」

 

 更新の最中に振り向いてはしゃいでしまったもんだから、更新だけ終わってしまったようだ。

 そして団長からランクアップ、それに加えて最速記録更新について、いくらか注意点や忠告を受ける。絡まれることが増えることや、無駄に客が来ることなどだ。

 それを聞いてから主神様に深く礼をして主神部屋を出る。

 団長も主神部屋から出ると、用事の途中だったようで凄い勢いで去っていった。

 

 

 

 

 

「ついにレベル2か……」

 

 ソファーのクッションに押し付けていた顔を上げ、ハルバードを見る。

 立体的な装飾は控えめで、彫り込みによる装飾は多いが、それ以外は普通のハルバードと何ら変わらない。

 しかし、そのハルバードは昨日と比べて輝きが一層増して見えた。

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