異端の武具職人が神の領域を目指すのは間違っているだろうか 作:のん野のん太郎
誤字報告めちゃ助かる。ありがとうございます。
文字数が安定しねぇ……ちょい長めです
「……ぃ……おい! 生きてるか!?」
ぺちぺちと頬を叩かれて意識が浮上していく。そして目を開けると目の前には人間にしては珍しい、主神様と同じ赤髪をツンツンさせている男。そいつが俺の事を心配そうに覗き込んでいた。
「あぁ、大丈夫、大丈夫……」
防具を完成させてから倒れたのを思い出し、ゆっくりと体を起こしてキョロキョロと辺りを見回す。すると使った器具や完成した防具がまとめてソファーの上に置かれていた。男はそれどころじゃないといった具合に水を差し出してきており、有難く受け取って一息に飲み干す。
「ふぅ、ありがとう」
大きく息を吐くと、目の前の男は豪快にニカッと笑う。
「いいってことよ。今日の見回り番は俺だったからな」
見回り番。鍛冶をしていて今回の俺みたいに寝食を惜しんで作業を進めてぶっ倒れる奴は一定数いる。
そして誰にも気付かれずに病院送りになるほど衰弱したという事件があってからは一日に一度、作業場の外付けの鍵から中の様子を確認する見回り番という役割ができた。
見回る時間はいつでもいいが、見回り番になった日は必ず一度見回らなければならない。
そして今日の見回り番がファミリア内で浮いている男筆頭のヴェルフ・クロッゾだったという訳だ。主神様とワンチャンあると噂されている。
敬語を使われるとむず痒いらしく、後輩で年下の俺に敬語禁止と言ってきた人だ。その結果すごく軽い敬語になったんだけど。そして多分俺以上に同期の友だちが少ない。
まぁそれも妥当と言えば妥当。彼はクロッゾという『魔剣を作れる一族』であり、レベルや特殊アビリティ関係なしに『魔剣』を作ることが出来る。その才能は大きなアドバンテージであり、羨む者も多い。
しかし彼は多くの鍛冶師が目標とする『魔剣』を作れるのに作らない。才能があるのに、それを活かさない。
才能を持っているから許せないのではなく、才能を活かさないから許せない。しかも事情は他人からの評価と来た。
家名の評判で足踏みするくらいなら鍛冶師じゃなくて冒険者にでもなれと思った者もいたらしい。
対抗心を持つメンバーからの印象は当初そんな感じだったが、魔剣を作らない頑なな態度と本人の性格によって険悪ではなくなったらしい。今もよくは思っていない者が多いようだが。
しかし先輩方は違い、事情を抱えた世話の焼ける奴という認識で親切にしている。だがやはり勿体ないとも思っているようだ。
それは後輩の俺も変わらず、勿体ねぇなという思いと不器用な人だなという思いがある。
魔剣作れば素材集めも捗るだろうし、ランクアップする機会も増えただろう。そうすれば鍛冶師としてのスキルも上がるし、至高の武具へ近道出来る。
普通の武具に拘るのは別にいいが、もう少し器用に立ち回ればいいのに。
そういう微妙な感情は俺にもあるが、悪い人ではないから邪険にするのは忍びない。
今もニカッと笑いながら俺のランクアップを祝ってくれている。
そして俺の体調が万全だと確認すると、安心したように座り込んだ。
「それで、だ。これからダンジョンに潜るつもりか?」
そして、ズイと体を近づけてきた。
立ち上がり、少しジャンプをしたり首を回したりして体調を確認すると、久しぶりに爆睡できたからか絶好調だ。
「ああ。今日は面白そうな武器が作れたので試し斬りに行くつもり」
手をグーパーさせながらそう言う。
「階層は?」
「13階層の入口でちまちまと」
どうしてそんなことを聞くんだろうかと頭にハテナを浮かべながら返すと、ヴェルフは弾かれたように素早い動きで手を合わせ、頭を下げる。
「頼む! 俺も連れて行ってくれないか!?」
「…………はい?」
間の抜けた声が出た。
「つまり、ランクアップして『鍛冶』アビリティが欲しいということ?」
「ああ。そのせいで同僚にも実力を離されていってる。だから頼む! 礼なら俺に出来ることなら何だってする!」
必死そうな顔で訴えかけてくる。まぁそれ自体は
そんな人が俺に手を合わせてお願いするとか、正直見たくない。
「……まぁ、いいぞ。いいからそれやめろ。お礼は今度武器作ってるの見せてくれたらそれで良いから。ただし、中層にも着いてきてもらうから結構キツいと思うぞ?」
「当然、そこは覚悟の上だ! だがお礼はそれだけでいいのか!?」
拳を胸に当てそう答える。
それに対して頷くと感激したように手を掴んでくる。鍛冶をしないといっても、武具を作っているのは同じだ。何かインスピレーションを貰えるかもしれない。興味もあるし。
「恩に着るぜ!」
掴まれた手を何とも言えない顔で見つめながら、今から準備するからダンジョン前集合と伝えると、了解だと言って物凄い速さで作業場を出ていった。
準備をしてダンジョン前に向かう。手甲は機構が完璧に機能しており、手を通して装着するのではなく、蓋を開けるように手甲が開き、腕の形ピッタリに閉じる。中のクッションもその役割を十全に果たしており、装着感はかなりの好感触だ。
バベル前に着くと既にヴェルフが待っており、大剣の柄が口からはみ出ているバックパックを背負っている。
俺に気づくと嬉しそうに笑いながら手を振ったので、少し恥ずかしいと思いながらも軽く手を上げる。
「よし、じゃあ行くか!」
「俺も一人じゃないのは久しぶりだし、ペースを探りつつ行きますか」
「応! 頼むぜ!」
いつもよりはペースを落としてダンジョンを潜り、ヴェルフの目的の11階層に到着した。
そして今はヴェルフが戦っているのを横で見ている。
ヴェルフは戦える鍛冶師を自称しており、大剣を用いて戦う。戦法はとても堅実で、攻撃を確実に受け、その後の隙に攻撃を仕掛ける。
少し前のめりではあるが、オークを倒したヴェルフは十分戦えているし、戦える鍛冶師、というのに間違いはないようだ。
そんなことを考えていると、横からオークが数体向かってきているのを察知する。
三体か。その旨をヴェルフに一声かけて三体の方に向かう。
今回はオークだし、ナイフは使いにくいだろう。並んでやって来るオークを見ると、一匹先行しており、浮いている。
すぐさま近づいて『始天』と銘打ったハルバードを両手で握りしめ、オークが攻撃を仕掛けてくる前に頭に刃を叩き込む。
格下であるオークは当然受け止めることも避けることも出来ずに首の付け根まで割られた。当然即死。瞬く間に灰に変わってハルバードの刃先のすぐ傍から魔石が落ちる。
後ろのオークたちはそれを見て怒り狂い、いつも以上に大きな声を上げながら突っ込んで来る。
先に突っ込んでくるオークに合わせてハルバードを横に薙ぐと一体目のオークは上半身と下半身が泣き別れしたが、二体目のオークには当たらずに地面に突き刺さる。
そして振り抜いた体勢の俺に好機を見出したオークはそのままタックルを仕掛ける。
レベル2に上がったから当たったとしても致命傷にはなり得ないが、ポーションを使う羽目になるだろう。万年金欠の駆け出し鍛冶師の感覚が強い俺にとってはポーション代もバカにならないため、攻撃は喰らいたくない。
瞬時にそれを考えるとハルバードを手放し、腰に装着しておいたナイフ『雪鋼』を抜く。
そして背面跳びのように跳んでオークを跳び越えると、オークは止まること叶わず勢いのまま地面に転がる。
その隙だらけな背後に走り寄り、すかさずナイフで首チョンパ。
灰に変わるオークを横目に『雪鋼』を見つめる。すんなり刃が通ったし、斬れ味はいい。だが、確実にこれだけでは無いはずだ。斬れ味以外の、普通の武器とは違った性能が。
考えるが、わからない。普通の攻撃じゃない特殊攻撃……そう、例えば魔法とか、毒とか……?
若しくは敵を倒すほど強化する、的な?
頭の中で膨らむ期待。だがその途中で警戒していたセンサーがオークの再来を告げる。
ヴェルフを見ると、まだオークとタイマン中。いや、あれは次の個体か。
ハァとため息をついてハルバードを抜き、やってきたオークがヴェルフの戦闘に乱入しない為に走る。
「よし、じゃあこれから中層入口に行くから、離れないように」
肩を揺らしてゼーゼー言ってるヴェルフに告げる。あれから常にオークとタイマンしている状態にするように調節していた為、ヴェルフは息絶え絶えと言った様子だ。まぁ実力が近い敵と戦いまくった後だしな。
危なくなれば休憩、回復してきたら再開。それを繰り返していると遂にヴェルフの限界が来たのだ。
だがここで帰るほど俺は優しくない。キッチリ守るから、ちゃんと着いてきてもらう。俺のメインの目的は中層モンスターだしな。
ヴェルフの息が整うと、行きよりもペースを落として進んだ。
「よ、よし……着いたぜ……中、層……」
息も絶え絶えといった様子で階段の横に座り込むヴェルフ。少し休んだとはいえ、流石にまだキツかったようだ。俺はヴェルフにポーションを渡し、その傍にバックパックを置く。
「よし、じゃあこの近くで試し斬りしてくるから、荷物任せた!」
そう言って走り出す。
やっと出来る試し斬り。オークではやはり物足りなかったあたり、俺も立派なレベル2と思っていいのだろう。
心を弾ませながらも深入りしないように、いつものように引き付けて戦うのを心がける。
まず見つけたのがアルミラージ。手斧による攻撃も見慣れたもので、いつものように盾で受け止め、弾かれて丸見えになった腹に攻撃する。今回はナイフで。
だがやはり、うんともすんとも言わない。模様は変わらず虹色に揺らめき、刃は銀青色のまま。斬れ味も変化なし。
オークも何度かナイフで倒したし、やはり敵を倒すことで発動するようなものでは無いか。魔法に期待が持てる。
そして大本命のヘルハウンドを遂に見つけた。吐き出す炎は魔法由来。今までの敵とは明確に違う、魔法を扱うモンスターだ。ここで『雪鋼』の真価を見る。
ヘルハウンドはこちらに気づくと口に炎をため、火炎攻撃を繰り出そうとする。
それを俺は放つのをナイフを構えて待つ。
そしてヘルハウンドから炎が放たれた。
目で追える速さで迫るそれを躱し、炎を斬るようにナイフを沿わせる。
すると炎がナイフに、ナイフの模様に吸い込まれていく。まるで風呂の栓を抜いた時の水のようにみるみる炎が減る。
そして終には火炎球全てを吸収し、『雪鋼』だけがそこに残った。
その現実離れした光景に俺は唖然とし、ヘルハウンドは動きを止め、後ろの方にいるヴェルフも大きな声で驚いている。
そこに居る全員が動きを止めている中、俺はナイフの模様を覗き込む。
模様の三割ほどが赤く染まっている。
「すげぇ……」
ポツリとそう零すとヘルハウンドがハッとしたように動き出し、今度こそはと連続して何発も火炎球を放つ。
この模様が全て赤く染まればどうなるのかはわからないが、先程の光景を信じてもう一度炎にナイフを突き立てる。
すると先程と同様に炎がナイフの内に収まっていく。
一つ、そして二つとナイフで炎を受け止めると、魔法など無かったかのように掻き消える。
だが放たれた四つ目の火炎球にナイフを差し込むと、途中で吸収が止まり、残った炎がナイフを素通りした。
ナイフを見ると、銀青色だった刀身が赤熱した鉄のような色に変化し、模様を見ると全てが赤く染まって揺らめいている。
この状態のナイフがどうなっているのか、それはまだ分からないが予想はつく。
残りの火炎球を避けた後に、ヘルハウンドに向けてナイフを振り抜く。10M離れているため、普通なら絶対に当たらない距離だ。
するとナイフから炎が放たれる……なんてことは無く、何も起きない。空振りだ。
ビームとか出るかと思ったが、出なかった。
もう一度ナイフをチラと見ると、模様の赤が少し減っている。じっくり見ると、徐々に減少しているようだ。
今度はヘルハウンドに近づいていき、直接攻撃する。
火炎攻撃を止めて襲いかかってくるヘルハウンド。その体を盾で受け止め、隙のできた横っ腹をナイフで刺す。
すると焼けるような音と臭いがヘルハウンドの横っ腹から広がった。受け止めている左手を横に流すとヘルハウンドはそのまま投げ出され、地面に叩きつけられる。
そのままナイフの傷を見ると、やはり焼けている。悶えている隙に首を斬ると、ナイフが通った後に小さな炎が纏わりついて傷を燃やしていた。
そしてしばらく経って模様の赤が全て無くなると、先程までの斬れ味のいいナイフに戻っていた。
それから何度かヘルハウンドを使ってナイフの機能を試す。火炎を吸収して溜め、赤熱した色になれば攻撃する。
繰り返すことで確信へと変わった。
このナイフは、一定時間吸収した魔法の属性の武器になる。炎しか試してないから分からないが、おそらくそうだ。初めて作る、普通じゃない武器……!
ヴェルフの元に戻ると信じられない様子でナイフを見ている。
そこで俺はこのナイフについて尋ねた。
「これって、魔剣……?」
その言葉にヴェルフは一瞬顔を顰めるが、今回はクロッゾが何も関係していないため、すぐに戻り、少し考えるような様子を見せた後にこう答えた。
「いや、『魔剣』ではない。魔剣ならチャージする必要が無いし、見た目が変わることもほぼ無い。それに、『魔剣』というよりも『属性武器』って見た目だった。あんだけ使って壊れてないしな。少なくとも俺は見たことがない」
「なるほど……じゃあ『
『魔剣』ではない不思議武器なんて聞いたこともない。こういう時は武器のエキスパートの団長か主神様に聞くに限る。
「ああ、それがいい……ってか、カルロお前『鍛冶』取らなかったのか!?」
ヴェルフが驚いた声を上げる。そういえばステイタス言ってなかった……てか口が滑った。俺もベルに説教出来ねぇな。まぁ、ヴェルフだし問題ないだろう。
「いや、『神秘』って珍しいから次は出ないかもしれない。でも『鍛冶』なら次でも出るだろ?」
そう言うと、ヴェルフはキョトンとした直後に笑った。
「ハッハッハッハ! いやなるほど。それもそうだ。レベル2の次は3もあるからな!」
笑いながら背中をバシバシ叩いてくる。どうしたんだコイツ?
それからしばらく『雪鋼』について話し、ダンジョンから帰る。
しばらくオークを狩っていたし二人だった為、得られたヴァリスはいつもより少なかったが中々に充実した探索だった。
作業場に荷物を置いて本拠地に戻ると既に日が沈んでいた為、ヴェルフと共にいつもよりも美味い夕飯を食べた。
ヴェルフはほんの少しだけ原作よりも強くなりますが、ぶっちゃけ誤差。ベル君の伸び方ヤバすぎる。
アンケートは明日の投稿が終わったあたりで締め切り、明後日の18:30の投稿で結果を言います。
アンケートの結果通りの時間で投稿するのは明明後日、6月30日からになります。