異端の武具職人が神の領域を目指すのは間違っているだろうか 作:のん野のん太郎
日間ランキングにおりました。踊り狂う程嬉しいです。読んでいただいている方に感謝を。
『雪鋼』、別名ゲーミングナイフ
『雪鋼』の試し斬りをした翌日の朝。
主神様、若しくは団長に会いに行く前に気づいた。手甲の銘を打っていない。そういえば完成してすぐぶっ倒れたから、完全に忘れていたな。
手甲を作業台に置く。これは『雪鋼』とは異なり色が変わることもピカピカ光る部分もなく、使った鋼鉄と同じ色だ。
盾の形は手の甲に近づくほど先細りになっており、先端は爪のように三つの山が出来ている。そして反対側はシンプルな三角状。盾の表面は腕と平行に鱗のような模様が彫られており、手甲部分は機構以外はその辺にある手甲と変わらない。
そうだな……この手甲は、【
盾の裏に【鱗手】と彫り終わるとそのまま装着してナイフを持ち、本拠地に向かった。
最初に主神様の部屋に行くが、何も反応が帰ってこない。どうやら出かけているようだ。
ならば、と団長の鍛冶場に向かう。
団長の鍛冶場は扉が開いており、中からは話し声が聞こえてくる。様子をちらりと見るとロキファミリアの団長、フィン・ディムナが団長と話していた。あの酒場以来か……
団長は俺に気づいたようで少し待てと言ったため、扉のそばの入口で立って待つ。
しばらく経つとフィンが出てきて、団長からもういいぞと声がかかる。フィンとすれ違う時に軽く会釈して部屋に入った。
「どうした? お主が手前に訪ねてくるとは珍しい」
「あ、はい。この前作った武器なんですけど、面白い能力があって……」
ナイフがヘルハウンドの火炎攻撃を吸収し、ゲージが溜まると赤熱して炎の属性武器になったことを覚えている限り説明した。当然『神秘』が出たことに原因があるのではないかという推測も加えて言う。話が進んでいくと共に団長は興味深そうな顔をした。そしては説明を終えるとナイフを団長に差し出す。
「ほう! ほうほうほう! これがそのナイフか!」
団長ははしゃぎながらナイフを受け取り、ナイフの虹色に揺らめく模様などをじっくりと観察した。
「どうですか……?」
そして喉の渇きを自覚し始めた頃。
「分からんな、これは!」
ハッハッハッと笑いながら俺に告げる。
俺は予想外の返答に驚きつつも微かに安心していた。酷評されなかったことに。そして直ぐに大きな疑問が浮かび上がる。
「団長でも分からないなんてことなんてあるんですか?」
そう聞くと団長は少し難しい顔を浮かべた。
「このナイフは武器として見ればレベル相応。そこまでは分かるが、そのような機能が付いている理由が分からぬ」
そう言うと団長は鍛冶場の奥にある箱をガサゴソと探り、中から白銀のカッコイイブーツを取り出した。
「……それは?」
「『フロスヴィルト』という武器の試作品だ。これには魔法を吸収して威力を高める能力がある。そう、そのナイフと同じような能力だ」
まじまじとブーツを見る。見蕩れそうになるほど美しい。それに俺が扱ったこともないような素材だ。オリハルコンとかか……? だが……
「それならこのブーツと同じなんじゃ?」
「いや、『フロスヴィルト』はそういった機構を作り、そう機能するように作ってある。手前が作ったからというのもあるが、どうやって魔法を吸収して威力を高めているかの説明ができる。だがそのナイフはてんでわからん。手前からするとただの光るナイフだ。『神秘』については主神様に聞くのがいいだろう。行くぞ!」
団長は立ち上がって歩き始める。遅れないようについて行きながら、主神様は部屋に居なかったと告げると方向転換してバベルの方に向かい始めた。
そしてバベルにあるヘファイストス・ファミリアの店に入ると主神様がいた。
「あら? どうしたの」
「うむ。主神様に是非とも見て欲しい武器があってな。手前ではよくわからん」
「あなたでも?」
「ああ。『神秘』については手前の専門外だ」
それを聞いてから俺の方を見て、主神様は納得したような顔をする。
「なるほどね。じゃあ店の裏に行きましょうか」
主神様と団長、俺でバックヤードに入る。
そして団長は握りしめていたナイフを主神様に差し出した。
そしてそれを受け取ると、主神様は軽く眺めた後に少し笑う。
「これは『人の武器』と言うよりも『神の武器』に近いわね。技術も奇跡もまだまだちっぽけなものだけどね」
それを聞いて目が飛び出るのでは無いかと思うほど驚く。団長も少なからず衝撃を受けたようだ。
俺たちの反応を見ながら主神様は続ける。
「『神秘』は奇跡を発現させ、この武器にはその“奇跡“が捩じ込まれている。『神の武器』というには素の性能も奇跡の質も比べるまでもないけど、本質は『神の武器』の方が近いわ」
団長は意外にも目を輝かせており、俺はその衝撃を受け止めきれずに固まった。
正直『人の武器』だの『神の武器』だの言われてもハッキリとは分からないが、『神の武器』が俺たちの言う『至高』とは別ということは分かっている。
『至高』は鍛冶神が純粋な技量のみで作成される、まさに神業の結晶ともいえる到達点を指すものであり、俺たちが目指すものだ。だがその先があった。
「主神様! つまり『神秘』があれば神の力を使って造った武器に到達しうる、ということか!?」
「ええ。そうね。レベルを上げて技術を極め、『神秘』も最高レベルに到達して、その上で奇跡を起こせば可能性はほんの少しあるわ」
子どもの頃に想像した、まさに御伽噺や英雄譚の世界。それを徐々に理解していく。そして高揚していく心。
「おおっ! まさに手前が目指す高みのその上! 道が示されたような気分だ!」
「よし、絶対に極めてやります! 至高も超えて、神も超えてやります!」
団長も俺も、目を輝かせて子どものようにはしゃぐ。蒙が開かれたかのような、狂気を孕んだ哄笑。
主神様はすかさず団長と俺の頭にチョップを落とす。
ダメージは無いが、その衝撃によって団長も俺も我に返った。
「はい、もう大丈夫?」
「う、うむ……何やら精神が揺さぶられたような感覚だった」
「高揚感が凄まじかったですね……」
「ふぅ、それだけ高みへの憧憬が強烈だったのね。そこに魅入られると危険よ。ゆっくり休んで落ち着かせなさい。わかった?」
「はい……」
「了解した」
膨らんでいたテンションはチョップによって穴が開き、みるみる低くなっていった。
俺は下がったテンションとは対照的に武具作りへの熱意が大きく上がり、言葉少なに作業場に帰った。
それからのこと。『至高』の更に上を知った俺は狂ったように武器を作った。
武器を作り、防具を作り、道具を作る。そしてダンジョンに潜る。
その頃は周囲の声も耳に入らず、ただ上を見つめる求道者へと変貌していた。安全第一の探索は何処へやら。鍛える為の乱暴な探索になり、命の危機に陥ったのは一度や二度では無い。しかし記憶は薄ぼんやりとしており、どこか夢の中を歩いているような感覚だった。
それが三週間ほど続き、遂に武具完成による魔力消費で『
そして目覚めると、取り憑かれたように武具を作っていた頃が嘘のように晴れやかな気分になっている。
身体はボロボロだが、自身でも分かるほど成長を感じられる。なんというか、力が漲るような感じだ。視野が広がり、周囲の状況がよくわかる。
隣の鍛冶場の構成員に聞くと、俺は話しかけても返事をしないし、目が血走っていてそれはもう怖かったらしい。
そんな話を聞いて団長が心配になり、すぐさま鍛冶場へと向かう。俺と同じように無茶をしているかもしれないし、大怪我を負うかもしれない。
団長の鍛冶場に駆け込むと、鉄を打っている背中が見えた。
「団長!?」
大きな声で呼びかける。すると、団長はゆっくりと振り返る。
「なんだカルロ? お主、作業中に話しかけるのは非常識じゃぞ?」
いつもと変わらない顔だ。少し不機嫌な顔なのは、邪魔をしてしまったからだろう。
「え、あ……無事なんですね。あの、この間のナイフの」
安心して大きく息を吐く。どうやら俺みたいに精神汚染じみたことにはならなかったようだ。
「あぁあれか……手前は気合いが入ったが、お主は違うのか?」
不思議そうな顔で言う。本当に団長は何ともなかったようだ。
「あぁいえ、なんでもないです。邪魔してすみません」
「そうか? ならばまたな」
「はい」
ペコリと一礼して鍛冶場から出る。
外は雲ひとつない快晴であり、今日はダンジョンを潜る気にも武具を作る気にもならない。
大きく伸びをして作業場から魔石でパンパンになったバックパックを持って出かける。
そして買い食いをしながら散歩をして、陳列された高価な素材を眺める。
あんな状態でも魔石を回収していた自分の意地汚さに苦笑してしまったが、正直有難い。
いつもよりも高い、鋼とミスリルの合金さえ買える程の金が手元にあるのだ。しかもギルドに預けている金もある。
久しく味わっていなかった富豪気分に足取りを軽くしながら散策を続けた。
なんかやべぇ感じになってしまった。
18:00~19:00投稿希望の人が一番多い(100/205)ので、今まで通り投稿します。締め切り時点で結果わかったので言っちゃった