異端の武具職人が神の領域を目指すのは間違っているだろうか 作:のん野のん太郎
ゲームや映画などの他作品を参考にした武器が登場すれば、注釈を用いて解説するつもりです。
どうやら俺が暴走していた三週間の内に様々なことがあった。
大きなもので言うと、【ロキ・ファミリア】との『遠征』が決定したようだ。
そのせいでバタバタしていて、俺を止められる奴の手が空かなかったそう。
そして遠征メンバーなのだが、俺はほぼ100%選ばれない。立候補しても、恐らく無いだろう。
武器の手入れなど、【ヘファイストス・ファミリア】に求められることは『鍛治』のアビリティが無ければ出来ないためだ。
武器を素材に見立てて新たな武器を作り、初期化することは出来るが、【ロキ・ファミリア】レベルなら俺の武器はいらないし、他の鍛冶師と用具を共有できない。
まぁそれはいい。俺にとっては『遠征』よりもこっちの方が重要だ。
それは、三週間で作った武器や防具の数々。
大量の投げナイフと胸当て、そして最後の、倒れた時に作った小さなクロスボウ。
15
鈍色のシンプルな胸当て。
そしてクロスボウの弓は小さく、弦受けと台尻の距離が非常に短いため、全体的に小さくなっている。おそらく射程もかなり短めだろう。
そして見たことも無い球もいっぱいあった。半径1C程度の小さな球。材料は鉄で、彫られている模様が緑色に薄く光っている。
この小さな球には一つ一つ、俺の名前がイニシャルのみ彫られていた。
いや、イニシャルだけで仕上げられるのか!?
これは今後も小さな物を作る時に使えるな……
というかこの球をひたすら作った日があった記憶がある。
それにこれをダンジョンで投げて使っていたことは覚えている。どんな効果があるかは覚えていないが。
記憶の俺はそれらの武器を自在に使いこなしていた。一つの群れ程度なら余裕を持って捌けていた光景を薄らと思い出す。球も投げてたようだが、どうなっていたか……
何はともあれ、あの技術と安全な立ち回りの両立出来ればソロでもっと深く潜れる。
ステイタスが成長すれば18階層の『
投げナイフの入ったホルスターを両脇に、球の入ったポーチを右側の腰に巻き、胸当てを着ける。そして左側の腰にクロスボウを着けようとして気づいた。矢が無い。
仕方がない。ダンジョンに行く途中で買っていくか。
『始天』を右手に持ち、『雪鋼』をバックパックに取り付けたホルスターに挿して作業場を出る。
どこかスッキリした気分のままダンジョンに潜っていき、ハルバードでモンスターの首を斬り、腹を突き、横殴りにして吹き飛ばす。
やはり前よりも手に馴染んでるような気がする。前はハルバードの斧刃で攻撃するばかりだったが、今は自然と刺先や柄、穂先の横面すら使うようになって攻撃に様々な色が出た。
目の前のオークの顔を横殴りにして怯ませ足を突き刺し、膝をつかせてから一回転してハルバードを加速させて首を飛ばす。
そしてヘルハウンドには火炎攻撃を仕掛けようとするタイミングで口の中に投げナイフを投げ込む。
すると高い器用の恩恵を受けたナイフは狙いを外すことなく口に吸い込まれていき、深深と刺さる。火炎攻撃は魔力の供給が止まって掻き消え、そのまま灰になって魔石と投げナイフが落ちた。
13~14階層では記憶のまま、投げナイフと『雪鋼』を主軸にした戦闘をする。ハルバードはバックパックに固定して『雪鋼』を構えながら戦う。
中層のモンスターはすばしっこく、小さなモンスターが数多く出現する為、ハルバードでは不利なのだ。それに加え、中距離攻撃をするモンスターがいる為中距離攻撃が出来ることで戦闘が非常に楽になる。
だが投げナイフの扱いは記憶のものと比べるとなっていない。
狙ったところに投げることは出来るが、ナイフを使うタイミングがまだまだ。回収が間に合わず、投げナイフが尽きて近接戦闘のみになってしまうことが多かった。
特にアルミラージの群れが相手だと、すぐに投げナイフが無くなる。
だが、アルミラージの群れ相手には謎の球が非常に有効だった。
謎の球は使い切りだが、投げつけて強い衝撃を与えると球を中心に球体状に暴風が吹き荒れる。
アルミラージのような軽いモンスターは吹き飛ばされて球体内でシェイクされ、目を回す。そしてその隙にトドメを刺す。
しかしヘルハウンドやオークのようなある程度重さのあるモンスターは動きを阻害され、球体内に閉じ込められる程度。そんな実験をしていると球、名付けて『暴風球』は残り二つになってしまった。
記憶では13階層を踏破出来ていたが、今日は途中で断念。やはり投げナイフの扱いに慣れていないのが大きく、群れ相手になると最終的に今まで通りの逃げながら削る戦法になってしまう。
そうしていると投げナイフの回収に手一杯になり、気がつけば12階層への階段近くまで押し戻されたのだ。
それに、クロスボウだって使えていない。ゴブリン相手には試したのだが、装填に時間がかかるため使い所が分からなかった。
そうしてしばらくは新たな武器と立ち回りの練習をしていった。
遠征間近ということもあって主神様も忙しく、遠征組しかステイタス更新を受けられないのは非常に残念だが、次の更新でどれだけステイタスが伸びるのかが非常に楽しみだ。
遠征までダンジョンに潜っては投げナイフを練習し、投げナイフや暴風球を複製する。頭の中に浮かぶ設計図通りに作るのではなく、以前作った物を見ながら彫るのでも作ることが出来るのが知れたのは大きな収穫だろう。
そして団長を含め、主力メンバー殆どが遠征に出る日になった。
今日もダンジョンに潜ろうとバベルに着くと、【ロキ・ファミリア】団長のフィン・ディムナが演説をしていた。遠征組はこれから何組にも分かれて複数班で潜り、下で合流するのだ。最近ランクアップした【剣姫】もいる。お、丁度演説が終わったようだ。
彼らの横を通り過ぎ、見知った顔と目が合えば軽く会釈し、そのままダンジョンに入る。
ヴォオオオオオオォォォォォ!!!!!
いつものように階層を下りていると、迷宮内の壁がモンスターの雄叫びによって震えた。今まで聞いたことが無い程迫力がある咆哮に驚き、一瞬体が硬直する。その威圧感から、13階層や14階層に出てくるようなモンスターでは無い事がわかる。ましてやここ9階層にいる訳がない。
尋常な事態ではない。それを確信して咆哮の聞こえた方向に走り出す。
すると道中でパーティと出会う。基本的にダンジョン内では不干渉だが、そのただならぬ様子に声をかける。
「おいアンタ! 何があった!?」
「ヒィッ!? な、なんで……なんでこんなところにミノタウロスが!!!」
「ミノタウロス!?」
ミノタウロスは15階層で初出現する、中層のモンスターの中でもレベル1では絶対に勝てないと言われているモンスター筆頭だ。
レベル1ならほぼ確実に強制硬直させられる
「それはヤベェ……おい! 他に誰かいたか!?」
「白髪のガキと……小人族が!」
「わかった! お前らは逃げとけ!」
すぐさま走り出す。幸いこの先は一本道、迷うことは無い。
邪魔なバックパックを放り投げ、全速力で走る。
そして広間に出ると、怪物が待ち構えていた。
広大な長方形の空間。モンスターも同業者も存在しない場所で、彼は一人、悠然と立っていた。
背が低い訳では無いはずの俺が大きく見上げる程の身の丈に、鋼鉄と見紛う筋肉で編まれた強靭な四肢。その上に最上級の防具。
錆色の短髪からは獣の耳、獣人の、その中でも獰猛と知られる猪人の証が見えている。
【フレイヤ・ファミリア】団長、オッタル。【
その両の目は閉じていたが、全身から溢れ出す圧倒的な存在感と『武』の気配に、俺の足は知らずのうちに完全停止していた。
だが、その先に命が危うい奴がいる。止まる訳にはいかない。
道を塞いでいる訳では無いことを祈りながら再び歩みを進めると、腹を響かせるような低い声が目の前の怪物から放たれた。
「引き返せ」
ただ声を掛けただけなのだろう。だがそれだけで足が止まり、震える。
「その先に……ミノタウロスがいる。そしてミノタウロスに襲われてヤバい奴がいるはずだ……」
「承知の上で、ここは通さない。それでも進むというのなら、相手になろう」
そう言うと【猛者】は威圧感を体から噴き出した。その瞬間、【猛者】の体が何倍にも大きくなった。実際は違うのだろうが、それ程までに実力の差を感じられる圧だ。
「……だがなぁ。命あっての物種だろ……それを危険にさらされている奴がいるなら…………やるしかねぇだろうが!!!」
大声を張り上げて自分を鼓舞する。実力が遥かに離れた相手だ。手加減を間違えるだけで簡単に命を落とすだろう。
だが、俺と【猛者】、ミノタウロスとレベル1の冒険者ならば俺の方がマシだ。実力差ではなく、命の危険という意味で。
歯を食いしばって走り出す。暴風球を投げ、そこに投げナイフをありったけぶち込む。
【猛者】は暴風球を避ける素振りも見せずに受け止め、そのまま暴風域に包まれる。そしてそこに投げナイフが巻き込まれ、鎌鼬が頻発する超危険空間に進化した。思い付きから生まれた一対一の切り札を初手に繰り出す。
すると【猛者】が持っていた袋が破られ、辺りに寄せ集めのような質の大剣が大量に散らばった。
その非現実的な光景に驚くが、そんな場合ではない。
暴風域が解除されるタイミングに合わせて『始天』を体ごと回転させながら最大威力の攻撃をぶつける。
それで多少でも怯んだのなら、通り抜けて暴風球で即席の壁を作る。そうすればミノタウロスの元に行ける、助けられるはずだ。
そして高速で流れる景色の中で、見た。
投げナイフを全て掴み取り、空いた手でハルバードを受け止めようとする豪傑を。
その直後、凄まじい力でハルバードが完全停止して、勢いのまま柄が体にめり込む。
腹が目を疑うほどめり込み、持っていた手が砕ける。そしてそのまま地面に叩きつけられた。
胃から血が逆流し、息を吸うことすら難しい。
【猛者】を見るが、傷一つ無い。先程と変わらず、無表情でこちらを見向きもしない。
相手にされていなかった。
「ぐっ…………く……っそ……!」
道の先にいる冒険者を助けたいという思いは、まだある。だが、それ以上に羽虫のように払い落とされたことに怒りを覚えた。
「て……めぇ!」
息絶え絶えといった感じだが、無理やり体を動かしてボウガンを撃ち、ナイフを足に突き立てる。
超至近距離で放ったボウガンは避けられたが、ナイフは足に突き刺さっていた。
「ほう…………」
ようやく、こっちを見た。
それを見てざまあみろと笑い、意識が暗転した。
オッタル戦、こんなの勝てるわけない
今日は書き終わったのギリギリだったので、誤字脱字やら変な部分が多いと思います。許してヒヤシンス