「あー楽しかったー」
気の抜けた声でFクラスの教室の戸を開ける。そこにはまだ雄二達が留まっていた。
「ようマリ。どうだった初陣は?」
「最高っす!」
これ以上の言葉が他にあるだろうか?いや、無い。楽しみが増えたし、ついでに一人討ち取って何人かは罠にハマったし、脳汁がドバドバァ!
「浦方よ。他人には見せられぬ顔になっておるぞ」
「女の子がしていい顔じゃないよねそれ」
え?あ、失礼。ついつい気持ちよくなってしまっていた。我ながら良くない。ありがとう秀吉君、美波。
「で、どうするの?CクラスがBクラスとグルだと分かった以上、万が一この戦いに勝ってもそのままCクラス戦とやり合う羽目になるよ?」
「それについては問題ない。万が一の為に秀吉をここに残しておいたのが功を奏した」
万が一?秀吉君を使って何をするつもり?
「なに、明日になれば分かる。今日の所は解散だ。明日もよろしくな」
そう言うと雄二は鞄を持って教室から出て行った。何を企んでいるのか分からないけど、お手並み拝見と行きますか。
「じゃあ私も帰るわ。バーイ」
「あ、あのマリちゃん!」
「ん?どうしたの瑞希?」
何か潤んだ目でこっちを見てる。
「あの……あの時は助けてくれて、ありがとうございました!」
突如瑞希が頭を下げた。お礼は嬉しいんだけど、何かさっきの潤んだ目の後だと何か心なしか罪悪感に近い何かを感じる。
「え?!あ、いや……そりゃあ友達なんだから助けるのは当たり前だっての!」
私も何ツンデレみたいな事言ってるんだろ。
「とにかくさ、助かったんだからそれで良いじゃん!」
何だか瑞希が相手だと調子が狂うなぁ。何でだろ?
「あの……今度よろしかったらお弁……」
「だああぁぁーーーしゃしゃぁぁーーい!!わっしょおぉぉーーーい!!あ、もうこうなじかんだ!私そろそろ帰らなきゃ!というわけでまったねー!」
今まで出したことない奇声で聞こえないふりをして、全力で教室から逃げ出した。
あんなT-○○ルスもビックリなバイオテロ兵器を食べさせられては命がいくつあっても足りないわ!
「何か疲れた……」
急に疲れがのしかかって来た。夕飯はカップ麺でいいか。どうせ今日はお父さんもお母さんも帰って来ないだろうし。
ピロピロリン♪
ん?メール?雄二からだ。何だろ?
『お前の制服が欲しい』
何言っちゃってんだコイツ?雄二、お前さ疲れてるんだよ。きっとそうだ、雄二は疲れているんだ。
まあ私も疲れたし、カップ麺食べて寝よ。
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次の日
さあて、試召戦争二日目がそろそろ始まるぞ。と張り切っていると、ケータイのランプが点灯している。何だろ?
不在着信が10件?!こんなに来たの初めてなんだけど!一体誰が……
あ、雄二だ。
こんなに着信して……どういうつもり?
「おはよう雄二。今日もいい朝だね」
『何を呑気に言ってやがるんだ?昨日メールしたってのに返信も来ねえし、8時から電話してるってのに出なかったろ?』
「もうとっくに寝てた。仕方ないじゃん疲れたんだから」
『ったく、まあいい。昨日のメールは見たんだよな?』
「メール?あ……」
お前の制服を貸してくれ。
あ、思い出した。
「あのメール何?もしかしてそういう性癖に目覚めたの?」
『違う。今回の作戦に必要なものだ』
「作戦?」
何考えてるのか知らないけど、まあ良いか。
まあそんなこんなで予備の制服を持って学校に来た。けど、雄二ってば言い出しっぺのくせに遅いな。とりあえずお腹空いたからパン達でも食べるか。
まずはチョコデニッシュ。うん、チョコが甘くて美味い。とりあえず牛乳を一口。あ"あ"あ"ぁぁ!最高この組み合わせ!
「よう、マリ」
あ、雄二が来た。
「遅いよ雄二。朝からパン何個食べさせるつもりだったの?」
「お前も人を待たせすぎだ。例のものは?」
「当然」
鞄の中から予備の制服を出した。
「よし。お前ら、昨日言っていた作戦を実行する」
「作戦?でも、開始時刻はまだだよ?」
吉井君の言う通り、開始時刻は午前九時。まだ午前の八時半だ。
「Bクラス相手じゃない。Cクラスの方だ」
「なるほど。そんで何をすんの?」
「秀吉にコイツを着てもらう」
そう言って出したのは私の予備の制服。なるほど、これを着たら姉の秀吉君のお姉さんである優子さんそっくりになる。
あれだけそっくりって事は、木下姉弟は一卵性双生児なのかな?
「それで優子さんを装って、Aクラスの使者としてCクラスに喧嘩を売りに行くわけ?」
「その通りだ。っていうかお前木下優子を知ってるのか?」
「うん。こないだ少しお話した」
「そ、そうか。とりあえず秀吉、用意してくれ」
「う、うむ……」
まあそういう反応になるよね。けど何だかんだで秀吉君が生着替えを開始……
「どうじゃ?これで良いかのう?」
えっ?!速っ!もう着替え終えたの?!
「…………(ガクッ)」
男子達が大歓声を挙げる中、カメラを構えてスタンバイしていた土屋君だけが崩れ落ちた。撮れなかったのが悔しかったのかな?
にしても、本当に優子さんかと見間違えちゃうよね。これ入れ替わっていてもバレないんじゃない?
「浦方よ、そんな見つめるでないぞ……///」
「あ、ごめん……何か色っぽくってつい……///」
いかんいかん。ときめいてどうするよ。けど無理もないわ。だって可愛いもん。
それはさておき、秀吉君は優子さんを装ってAクラスの使者として喧嘩を売りに行った。これは宣戦布告ではないから、試召戦争を行う必要はない。
だが問題は喧嘩を売られた側であるCクラスだ。はい、今私はCクラスに見つからないよう、遠くから盗み聞きしている。
『静かにしなさい、この薄汚い豚ども!』
優子さん(中身は秀吉)がCクラスに入った矢先に放った第一声。これは酷い。
『な、何よアンタ?!』
『話しかけないで!豚臭いわ!』
自分から喧嘩売っておいてそれはないよ。
『アンタ、Aクラスの木下ね?ちょっと点数良いからっていい気になってるんじゃないわよ!何の用よ?!』
完全に優子さんだと思い込んでる。これも雄二の狙い通りね。
『私はね、こんな臭くて醜い教室が同じ校内にあるなんて我慢ならないの!貴女達なんて豚小屋で充分だわ!』
うーん……話してみた限り、優子さんがそんなセリフを言うとは思えないけど……
『なっ!言うに事欠いて私達にはFクラスがお似合いですって?!』
あ、私Cクラスの代表嫌いだわ。豚小屋=Fクラスと言った辺り、完全に見下してるわあいつ。
『手が穢れてしまうから本当は嫌だけど、特別に今回は貴女達を相応しい教室に送ってあげようかと思うの。ちょうど試召戦争の準備もしているようだし、覚悟しておきなさい。近いうちに私達が薄汚い貴女達を始末してあげるから!』
そう言い残すと優子さん(中身は秀吉)がCクラスの教室から出て行った。
「これで良かったかのう?」
あ、おかえり秀吉。
「うん。上出来……」
『Fクラスなんて相手にしてられないわ!Aクラス戦の準備を始めるわよ!』
すんごいヒステリックな叫び声に遮られた。
「マリ、アイツ、キライ」
「何故急に片言になる?」
作戦は成功したけど……うん、やっぱりアイツ嫌いだわ。とりあえずFクラスに戻るか。
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さあBクラス戦2日目の開幕だー。……とは言ってもまた私は前線のバックアップだ。そりゃああれだけの点数差を見せられたら下手に私を出すわけにはいかないよね。
「私とした事が後のことを考えてなかったなぁ……」
まあ作戦は……『敵を教室内に閉じ込めろ』だってさ。とりあえず、Fクラスの皆は命令を遂行しようと雄叫びを挙げながら特攻している。だけど……
「何かヤバくない?」
そう、押されている。何とか押しとどめているけど、左側の出口が突破されそうになっている。
「瑞希!左側が……えっ?」
明らかにピンチなのに、この作戦の要であるはずの瑞希が指示を出していない。駄目だ、瑞希がアテにならない。
「吉井君!どうなってるの?!」
「分からない!姫路さんの様子がおかしいんだ!」
「様子がおかしいって……もう、こうなったら私が出張るしかない!」
Bクラスの連中が教室から出してしまったら、真っ直ぐに雄二の所へと突撃されてしまう。そう簡単にはやられないとはいえ、数の暴力で押し込まれたらおしまいだ。
幸いにも左側は古典。やや得意!
「浦方真梨香、
召喚獣を召喚して、包囲の突破を図ろうとする敵の召喚獣を鎖鎌で斬り落とした。
「ま、マリさん?!」
「マリさんが来たぞ!」
私が来た事で、劣勢に立たされていたFクラスの士気が高まった。私の古典の点数は409点。そう簡単には殺られはしない。
「あいつだ!あいつを討ち取れ!」
「マリさんを守れ!」
私に気がつくと、躍起になって討ち取りに来たBクラスから守らんと後詰めのFクラスが左側に集結する。
「皆!ここは任せたよ!」
「任せください!」
「死んでもここは守り抜きます!」
これで何とか時間は稼げるけど、それも長くは持たない。瑞希、一体どうしちゃったの?!
「瑞希!総司令官のアンタがちゃんとしないでどうするの?!」
「ま、マリちゃん……その……」
何か今にも泣きそうだけど、泣いたって何も変わらないでしょうが!
「浦方さん落ち着いて!姫路さん、さっきから様子がおかしいよ?一体……」
「な、何でもありません……」
苛立つ私と違って、吉井君は優しく問いただしているけど、瑞希は答えようとしない。
「右側の出入り口、現国に変更されました!」
「数学教師はどうした?!」
「Bクラスに拉致された模様!」
何か明らかにヤバい報告が聞こえてきた。
「わ、私が行きま……っ!」
出張ろうとした瑞希が立ち止まってしまった?瑞希の視線の先には……Bクラス代表の根本?アイツがどうかしたのか……あっ!
「吉井君あれ!」
「あれって……!」
私は見てしまった。アイツが手にしている可愛らしい封筒。アイツのものじゃないのは見て分かる。しかもあの封筒、あれは瑞希が三日前に持っていたラブレターだった。
まさか、初日に回復試験を妨害しに来たBクラスの連中に盗まれたのだとすぐに分かった。
してやられた。それに気付いた私は悔しさのあまり、壁に殴りつけた。
「浦方さん?!」
(私の落ち度だ。撃退したと思い込んで、友達がなけなしの勇気を持って書いた乙女の手紙を掠め取られた……)
それを盾に瑞希を無力化した。あの協定も、瑞希を無力化出来ると分かってやったんだ。私の仕掛た罠によって、奇襲部隊が殺られたのは想定外だったろうけど、その日の試召戦争が終われば鬼の補習もお預けになる。その後に根本にラブレターが渡ったんだろう。
クッソ!私とした事がここまでしてやられるなんて……!
「吉井君、ちょっと来て」
吉井君を廊下の四階まで続く階段へと連れ出す。
「浦方さん……痛くないの?」
こんな時まで人の心配なんて、優しいね吉井君。
「平気だよ。それより、吉井君。一緒に面白い事しない?」
「面白い事……なるほど」
お、バカな吉井君も分かったみたいだね。意外と気が合うみたいだね。
「浦方さん、僕に考えがある。手伝ってほしい。」
「愚問だよ」
(Bクラス代表根本……)
(アイツだけは……)
「「ブチ殺す」」
次回、Bクラス編終幕!