翔子、あんたまた大化の改新を間違えたの?何度も言ってるじゃん。無事故の改新645年だって。
うん……。だけど、雄二に教えてもらったから……
はぁ……それじゃあいつまで経っても、社会じゃ私に勝てないよ?
他ではマリに勝ってる。
ぐっ……それ持ち出すのはズルくない?
ねえ、また勝負しよう?
え?
いつか、社会で私が勝った時は……
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
Aクラスへの宣戦布告から翌日、私は朝早くから日本史の回復試験を受けた。何とか時間内に出された全ての問題を解いたけど……流石に疲れた……。
けど、出来るだけ多く点を稼がないと翔子には絶対に勝てない。皆の前で啖呵を切った以上、絶対に負けられない。負けるわけにはいかない……負けるわけには……
……zZZ ……zZZ ……zZZ ……zZZ
ハッ……!今私、立ちながら寝てた?!いかんいかん!気を緩めては駄目だ。よし!
何とか目を覚ました私はFクラスの教室に到着。屏風に手を掛けて開ける。
「ただい……ま?」
屏風を開けるとなんてことでしょう。吉井君の左掌と卓袱台が一体化しているではありませんか。
「これは、一体どういう状況?」
「おうマリ、帰ったか。いや、ちょっとバカが騒いだだけだ」
「バカとは何だバカとは?!」
「うん、それは見れば分かる」
「浦方さんまで?!」
そりゃあ卓袱台と一体化する人間なんて聞いたことないもん。そして面白そう。
「どうした?こんな面白そうな
「……え?あ、ああ……。ちょっと、この
「今二人で僕を人扱いしてなかったよね?!おい雄二!」
「屋上に行くぞマリ。作戦会議始めるぞ」
「ほーい」
「僕の話を聞いてよ!!」
屋上には雄二、吉井君、美波、土屋君、秀吉君、私の六人が集まった。瑞希は所用で席を外すとの事だった。
吉井君の左手にくっついている卓袱台に適当なお菓子と飲み物を置いて作戦会議を始める。
作戦とは言っても五対五の順番と科目を決めるだけ。一応向こうが何を指定してくるかを想定した上でどう戦うかを決めるだけなのだ。
「良いの雄二?あんな約束しちゃって」
「俺達が勝つんだから関係ない。向こうが言いなりになる特典がついただけだ」
「本当に良いのか?あの霧島翔子という代表には、妙な噂があるようじゃが」
その噂とやらは気になる。内容次第によっては噂を流した人間にはちょぉっとお話し合いしなくちゃだね。
「成績優秀、才色兼備。あれだけの美人なのに、周りには男子がおらぬようじゃ」
「へぇ。モテそうなのにね」
秀吉君の話を聞いた美波が相槌を打つ。確かに翔子は美人だから彼氏がいてもおかしくないとは思っていたけどね。
「噂では、男子に興味がないらしい」
「
やめなさい吉井君。確かにそう思いたくなるのは分かる。あの瑞希を観察した件のせいで、脳内で翔子と瑞希が生まれたままの姿で百合の花が咲いているヴィジョンが写ってしまう。
……うん、やっぱそんな百合ルートはあり得ないな。
「ままま、まさか……そんなはずは!それって変だよ!そんな事が身近にあるわけないじゃない!ねえ島田さん?」
「ある」
へぇ……あるんだ
「そんな変な子、身近にいるわ」
「見つけましたお姉様ぁ〜!」
突如どこからともなく、オレンジ色の二つの縦ロールの女の子が美波に抱き着いた。あれ?けどあの子、どっかで見覚えがあるような、ないような?
「酷いですわお姉様!美春を置き去りにして、こんな汚らわしい豚どもとお茶会なんて!」
それ私も含まれてる?失礼だね君は。そして君は誰だね?
「ねえ、あの子誰?」
「……清水美春。二年Dクラス」
Dクラスにいたんだ、へぇ。……ヤバい、私イタズラしかしてないから誰一人として覚えてないわ。
もし私もDクラス戦に参加してたら、こんなアクの強い子、忘れようにも忘れないと思う。
しっかし、あの清水さんよっぽど美波の事が好きなんだね。今も美波の腕にくっついて頬スリスリしてるし。
「ウチは普通に男子が好きなの!吉井!何とか言ってやって!」
強引に腕を振り解いた美波は吉井君に助けを求める。
「そうだよ清水さん。女同士なんて間違ってる。」
おっ、吉井君も言う時は言うねぇ。
「確かに島田さんは、見た目も性格も、胸のサイズも男と区別がつかないくらいに四の字固めがあああぁぁぁ!!」
うん知ってたこの流れ。そりゃあ足の四の字固めされてもしょうがないね。
「ウチはどう見ても女でしょう!」
「そうです!美春はお姉様を女性として愛してるんです!」
そう言いつつ清水さんも吉井君の腕ひしぎ逆十字固めをキメている。
「見えっ……見え……ふごぉっ!」
そして土屋君はさり気なくスカートの中を見ようとするのはやめなさい。とりあえず彼には胡椒団子をぶちまけておいた。
「ギブ……ギブ……!た、助けて島田さん!何でも言う事聞くからぁ!」
「本当?!じゃあ今度の週末、駅前の『ラ・ペディス』のクレープ食べたいな!」
ここぞとばかりに島田さんはご機嫌でそう言うけど四の字固めはやめてあげない。悪魔かね君は。
「え?!それだと僕の今月の食費が……」
「あぁん?!」
「い、いえ!奢らさていただきます!」
島田さん、暴力で服従させるんじゃぁない。
「そ、それから!ウチの事は美波様と呼びなさい!ウチはアキって呼ぶから……!」
別にこんな暴力的な事をしなくても、普通に名前で呼べば良いのに。
「それから……それから……///う、ウチのこと……『愛してる』って言ってみて!///」
なら四の字固めはやめて差し上げて。それじゃ無理やり言わせた感しかしないよ。怒ったりご機嫌になったり照れたり、忙しないね。
「は、はい……い、言いま……」
「させません!」
そうはさせるかと清水さんが腕を強く引っ張る。
「さあ!ウチのこと『愛してる』って言いなさい!」
「はい!ウチのこと愛してるって言いなさい!」
吉井君、君は良いやつだったよ。
「このぉバカアアアアアアァァァァーーーーー!!」
美波の怒号と吉井君の悲鳴&関節が外れる音が響いた。
「うわぁ……ん?」
吉井君の悲惨な姿をよそに、ケータイにメールが入った。画面を開いて中身を確認する。
「さてと……」
「どうしたマリ?」
「先に戻ってる」
画面を閉じて先に屋上の階段を降りる。このタイミングであの子からメールが来たなんて知られたら何を言われるか。
とりあえず、私がいつも根城にしている空き教室に来るように返しておく。そのまま私は空き教室に入った。すると既に一人、先客がいた。
「もう来てたか翔子。早いね」
「……マリならここを選ぶと思ってた」
考えてる事はお見通しってわけか。流石翔子。
「それで、話って何?まさか八百長しろなんて言わないよね?」
「そんなの必要ない」
冗談で少しからかってあげようと思ってたけど、やっぱり動じない。
「マリに聞きたいことがある」
「ん?何なのかな?私のスリーサイズでも?」
「……雄二の事について」
え?私のスリーサイズの件はスルー?だとしたら流石の私も凹むなぁ。これでもバストはDくらいはあるんだけどねぇ。
「雄二の事?それがどうしたの?」
「マリは……雄二の事、どう思ってるの?」
「私とって雄二は何か?まあそうねぇ……気が合う悪友って感じかな?」
「……それだけ?」
それだけかと言われてもねぇ。
小学校の頃、私と雄二の関係は、今より結構違ってた。アイツが神童って謳われていた当時、私が仕掛けたイタズラの反応が薄くて、とにかく勉強バカ。だけど社会科目だけは私の方が上で、何かと張り合ってた。
だけどある日、私が転校してしまって以降、お互い別々の中学で再会した時くらいかな、今の関係になったのは。
私が罠を仕掛け、アイツが正面からぶん殴る。気が合う悪友だった。
おっと、これじゃあまるで私が雄二が好きなのかと勘違いされてしまう。念押ししておくけど、私はアイツに恋愛感情なんてこれっぽっちも無いからね?
「じゃあ逆に聞くけど、翔子はアイツの事どう思ってるの?」
私ばかり答えて翔子は聞いてるだけなんてズルい。ガールズトークは互いに思っている事を言ってナンボでしょ。
「さあ、答えよ翔子ぉ!」
「私は……私は……」
何かゴニョゴニョしてなかなか聞き取りにくい。出来ればもう少しハッキリと言ってほしいな。
「私は……私にとって雄二は……!」
翔子の口から、ハッキリとその事を告げてくれた。あの子が雄二に対して何を思っているのか、全部打ち明けてくれた。
「そっか……」
それから数時間後、私達は互いに敵同士として相対した。
次回、Aクラス戦開幕