突然だけど、今私達FクラスはAクラスの教室にいる。ここでAクラスとの五対五の一騎討ちが行われる。そして、三勝したクラスが勝利。至極単純なルール。
「では、第一試合を始めます。一人目の方、前へ」
Aクラスの担任かつ学年主任の高橋先生が立会人を務める。
「アタシから行くわよ」
「では、ワシがやろう」
お、いきなり木下双子対決と来た。Aクラスが相手であっても、姉の優子さんをよく知る秀吉君なら何か突破法が……
「所で秀吉」
「何じゃ?姉上」
「Cクラスの小山さんって知ってる?」
「はて、誰じゃ?」
確か小山って……Cクラス代表の。確か優子さんになりすました秀吉君が汚い罵声を浴びせて……あっ。
「じゃあ良いや。その代わりちょっとこっちに来てくれる?」
「ワシを廊下に連れ出してどうするんじゃ姉上?!」
秀吉君が攫われた!ヤバい!
『姉上、勝負は……どうしてワシの腕を掴む?』
『アンタ、Cクラスで何してくれたのかしら?どうしてアタシがCクラスの人達を豚呼ばわりしている事になっているのかなぁ?』
『ハッハッハッ。それはじゃな、姉上の本性をワシなりに推測して……あ、姉上んちがっ……その関節はそっちに曲がらな……』
何が起きたかは語らないでおこう。すぐに優子さんが扉を開けて帰ってきた。顔に返り血をつけて。
「秀吉は急用が出来たから帰るってさ。代わりの人を出してくれる?」
「い、いや……ウチの不戦敗で良い……」
ねえ、何でこの学校には私以外にもアクマがこんなにいるの?私の立場が無いんだけど。
第一試合は雄二の申し出でFクラスの不戦敗になった。
これは酷い。
「では次の方どうぞ」
「Aクラス、佐藤美穂。出ます」
丸眼鏡を掛けたボブカットの女の子が名乗りを上げた。一見地味そうに見えるけど、どうなんだろうね?お手並み拝見。
「よし、明久。頼んだぞ」
「え?!僕?!」
ウチのクラスからは雄二の指名で吉井君が出る。だけど吉井君って物理得意だっけ?これで負けたら後がないのに。
「大丈夫だ。俺はお前を信じている」
「ふぅ……やれやれ、僕に本気を出せってこと?」
「ああ。もう隠さなくても良いだろう。この場にいる全員に、お前の本気を見せてやれ」
え?もしかして本当に得意なの?これ本当に勝っちゃうパターン?!だけど、こっそり聞いてみるか。
「ねえ雄二」
「何だ?」
「吉井君、大丈夫なの?」
「ああ、心配すんな。見てれば分かる」
何か今の流れに裏があると見た。
「吉井君、でしたか?あなた、まさか……」
「ご名答。今までの僕は全然本気なんて出しちゃあいない」
そう言って吉井君は左手にくっついた卓袱台の上に乗る。っていうかまだくっついてたんだそれ。
「それじゃああなたは……!」
「そうさ、今まで隠してきたけれど実は僕……」
左利きなんだ
物理 389点 62点
少しでも期待した私がバカだった。結局吉井君は召喚獣が受けたフィードバックをモロに受けた。ついでに卓袱台も粉々になった。
「捨て駒か」
「よし、勝負はここからだ」
「雄二!僕を信頼してなかったのか?!」
「勝つ方に信じていたわけではない!」
「本気の左を食らわしてやりたい!」
まあそんなわけで、向こうが二勝してしまった。これでウチが負ける事は許されなくなった。そして、迎えた第三試合。
「……(ムクッ)」
ここで土屋君がゆっくりと立ち上がった。
「じゃ、ボクが行こうかな」
あれは工藤愛子か!一回だけ会った事あるけど、本当にAクラスなのか。いや、翔子の言っていたことを信じてなかったわけじゃないよ?けど何か、パッと見そんなふうに見えなくてさ。
「教科は何にしますか?」
「……保健体育」
ここで土屋君が選択権を使った。保健体育は土屋君が最も得意とする教科。これならAクラスにも……
「キミ、土屋君だっけ?保健体育が得意なんだ。けど、ボクもかなり得意なんだよ?」
あ、何かかなり余裕そうな態度。これはマズい。ここで工藤さんが勝ったら私が翔子と戦う前に負けてしまう。頼む土屋君、何としてでも勝ってくれ。
「それも君と違って……実技でね♪」
……それ関係ある?
「……実技」
何を想像したのか土屋君の鼻の穴から大量の血が噴出された。そして土屋君はそのまま倒れた。
やめて工藤さん!土屋君をこれ以上イジメたら出血多量で倒れちゃう!お願い死なないで土屋君!あなたがここで倒れたら、私と翔子の対決はどうなっちゃうの?!ここで耐えれば、土屋君は勝てるんだから!
「ムッツリーニ!何て事を、よくもムッツリーニを……」
「そっちのキミ、吉井君だっけ?キミが選手交代する?けどキミ勉強苦手そうだし、保健体育で良ければ教えてあげるよ。もちろん……実技でね♪」
次回、吉井君死す。
「余計なお世話よ!アキには永遠にそんな機会無いから!」
「そうです!永遠に必要ありません!」
もうやめて美波、瑞希。吉井君のライフはとっくにゼロよ!
ま、まあ本気じゃないけど、吉井君が可哀想だし……ここは。
「じゃあ吉井君。私がその機会を与え……」
「マリもダメ!」
「そうです!いくらマリちゃんでも吉井君にはダメです!」
別に保健体育(実技)を教えるわけじゃないのに、変な勘違いをした二人に全力で阻止された。
だけど土屋君が徐に立ち上がる。鼻血は出ているけど、戦う力は残っているようだ。
「ムッツリーニ?!」
あ、吉井君も復活した。
「……大丈夫」
「では、始めてください」
高橋先生の合図で召喚フィールドが展開される。学年主任の高橋先生は全ての教科のフィールドを展開出来るからこその芸当だ。
「
まずは工藤さんが召喚獣を召喚した。セーラー服姿に巨大な斧。あれはまさに一撃必殺の破壊力を誇るだろう……けどこれどういう組み合わせ?
「……
土屋君の召喚獣。黒い忍び装束に逆手持ちの小太刀。
「実践派と理論派、どちらが強いか見せてあげるよ!」
工藤さんの召喚獣が動き出した。振り上げた斧の刃が光る。
「バイバイ、ムッツリーニ君!」
「……加速」
だけど、土屋君の召喚獣に装着されていた腕輪が光出した。その瞬間、光速とも言えるその速さの一撃が工藤さんの召喚獣を葬った。
「加速、終了」
土屋君が静かに呟いた。
Aクラス 工藤愛子 VS Fクラス 土屋康太
保健体育 446点 VS 572点
「そんな……このボクが……!」
何が起きたのか分からず、そのままやられてしまった工藤さんはその場にへたりこんだ。
「っていうか、あの腕輪何?」
「知らないのかマリ?400点以上取った召喚獣にはああいう腕輪が付与される。点数消費する代わりに、様々な能力を発揮する代物だ」
何それ凄っ。
「それでは第四試合を始めます」
「あ、はい!私が出ます!」
ここで瑞希を出す。
「それなら僕が相手をしよう」
眼鏡を掛けた男子が出てきた。彼は誰?
「久保利光か。厄介だな……」
「どうしたの?彼そんなに危険なの?」
「お前は知らないだろうが、あいつは学年次席だ」
じゃあ翔子に次ぐ実力者って事か。確かに厄介だね。
「教科は何にしますか?」
「総合科目でお願いします」
総合科目。全科目の点数が召喚獣に反映される。つまり順位がそのまま召喚獣の強さになってしまうというわけだ。
「それでは……」
「「
Aクラス 久保利光 VS Fクラス 姫路瑞希
総合科目 3997点 VS 4409点
な、何いいぃぃ?!瑞希がぶっちぎりで超えているだとぉ?!しかも点数差が400点?!
「ぐっ……!姫路さん、どうやってそんなに強くなったんだ……?!」
「私、このクラスの皆が好きなんです。人の為に一生懸命な皆のいる、Fクラスが」
「Fクラスが好き……?」
「はい、だから頑張れるんです!」
戦う理由が強い想いであればあるほど、人もまた強くなれる。それが二人の勝敗を分けた。
瑞希の召喚獣が、久保君の召喚獣を聖剣で打ち払った。これで、二対二。これには高橋先生も予想外だったのか戸惑いが僅かに見て取れる。
「では最終戦を行います」
「……はい」
遂にAクラスからは翔子が出てきた。となれば、その相手は……
「私が行きます」
私が行くしかない。とはいえ、Fクラスからは代表が出てこない事にAクラスは戸惑っている。
『どういう事だ?』
『Fクラスは代表の坂本が出るんじゃないのか?』
そう思うのも無理はない。だけどこれは五対五の一騎討ち。最後に代表が出て来なくてはならないというルールはない!
「坂本君からは伝達済みです。こちらは了承を得ています」
私が事実上のFクラス総大将としてAクラスの代表、翔子と戦う。
「教科は何にしますか?」
高橋先生が尋ねてきた。私的には当然、アレだ。だけど、向こうも同じ事を考えているはず。
「「日本史でお願いします」」
一言も違える事なく、私達は言った。
「マリ。いつかの勝負、ここでやりましょう」
「望むところよ、翔子」
ここまで来たんだ。負けてたまるかっての。
「「
同じタイミングで召喚獣が召喚された。さあ、決着と行こうかぁ!!