バカとアクマと召喚獣   作:レーラ

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今回は途中で三人称視点になります


第十六問 女の戰い

 Aクラス 霧島翔子 VS Fクラス 浦方真梨香

 日本史  612点    613点

 

『なっ?!一点差で代表に勝ってるだと?!』

『ま、マリさん凄ええぇぇ!!』

『彼女は何者なんだ?!』

「流石マリ……」

 

 FクラスがAクラスの代表に一点差で勝っている事に、クラス問わず衝撃を受けている。流石の翔子もこれには苦い表情が出ている。

 

「浦方さんの点数が、霧島さんの点数を上回ってる?!」

「凄いマリ!」

 

 吉井君と美波が褒めてくれる。だけどごめん。一点差じゃ安心出来ない。

 

「でも、ここからは召喚獣バトルの世界。少しの操作ミスが、負けに繋がります……!」

 

 その通り、少しのダメージが勝敗を分ける召喚獣バトル。一発デカいのを貰っただけで即死する可能性がある。

 Aクラスの重鎮達も、点数を見て焦りの表情が出ていたけどそれも一瞬。すぐに平静を取り戻している。

 とはいえ、負ける可能性が出てきた事でそれ以外の面々は不安に駆られている。

 

「今度こそあなたに勝つ、マリ……!」

「願いを叶えたければ、私を倒しなよ翔子!」

 

 互いの召喚獣が互いに駆け出した。

 

 

 ※ここからは召喚獣のサイズが等身大の身長になり、三人称視点になります。あくまでも召喚獣バトルのイメージであり、本人達が戦っているわけではありません。ご注意ください。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「そらぁっ!」 

 

 漆黒の忍び装束を纏った真梨香の持つ鎖鎌によって繋がれた棘鉄球がしなる。

 

「はぁっ……!」 

 

 武者鎧を纏い、翔子が日本刀で弾く。攻勢に出るべく走り出した翔子の持つ日本刀が振り下ろされる。

 鎖で防ぐも、その分の点数が僅かに消費される。だが咄嗟に翔子の腹に蹴りが入った。点数も消費され、後退った事で再び距離を取られた。

 

 霧島翔子《572点》VS 浦方真梨香《592点》

 

 頭上に表示されている点数。0になれば戦死、敗北を意味する。ちょっとした打ち合いでも点数はごく僅か消費する。

 たが真梨香の得物は広範囲で制圧出来る鎖鎌。刀では手数に劣るものの、懐に入ってしまえばその広範囲も形無しになる。

 翔子はなるべく懐に潜り込んで一撃を与えようと近付くも、辛うじて防いでいる。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 浦方真梨香《562点》

 

 召喚獣の操作練度は翔子の方が上。まだ操作に慣れていない真梨香は攻撃か防御しか出来ない。

 

「徐々に代表が押してきた!」

 

 ギャラリーとして静観していた優子も、勝機を見出した事で声が出る。

 

「マズいな。召喚獣の操作に慣れていないのが知られてちまっては分が悪い」

 

 雄二が険しい表情になる。代表の不安は部下にも伝染する。勝つ気でいたFクラスの士気が落ちていくが……

 

「狼狽えるなぁ!!」

 

 だがここで真梨香が不安の雰囲気に呑まれ始めたFクラスに一喝する。そして、真梨香は雄二の方を見る。

 

「私を信じて、雄二!」

 

 絶対に勝つ。そんな事を言わずとも、その一言で伝わる。

 

「頼んだぞ、マリ!」

「オーケェイ!」

 

 不敵な笑みで翔子に向き直る。その翔子の表情はどこか睨んでいるようにも見えた。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 翔子side

 

 私には、マリの笑顔が眩しかった。

 

 雄二の前で見せる本音に、無邪気な笑顔。悪戯をした時の活き活きとした姿。

 

 雄二を信頼しているからこそ見せているのは分かる。

 

 だから、不安になる。マリはひょっとして、雄二の事が好きなんじゃないかって。

 

 もし、大好きな親友の好きな相手が、私と同じ相手だったら?それでマリを傷つける事になったら?

 

 Fクラス戦を前にして、どうしてもこの迷いが私を悩ませた。

 

 この際、マリの気持ちを聞こう。そう思って私はマリにメールをした。アドレスを交換してから初めてのメールが、こんなメールだなんて……。

 

 私はマリが気に入りそうな空き教室でメールを送ると、そこで待つ事になった。

 マリは、誰も立ち寄らない静かな空間を選ぶ。小学校の頃から、何も変わっていなかった。

 

 少し待つと、空き教室の戸が開いた。

 

「もう来てたか翔子。早いね」

「……マリならここを選ぶと思ってた」

 

 大事な戦いで手を抜きたくない。迷わず私は、マリに気持ちを問いただす。

 

「マリは……雄二の事、どう思ってるの?」 

「私とって雄二は何か?まあそうねぇ……気が合う悪友って感じかな?」 

「……それだけ?」

「じゃあ逆に聞くけど、翔子はアイツの事どう思ってるの?」

 

 逆に問い返されてしまった。マリは昔から、大事な事は誰であろうと関係なく面と向かって話す。

 羨ましい。そんな風に思えたけど、私も本当に叶えたい願いがあるなら、マリのように面と向かって話さなくては。

 

「私は……私にとって雄二は……!」

 

 決意をしたんだ。話しなさい、霧島翔子……!

 

「たった一人、心から好きな人なの……!」

 

 マリに本当の想いをぶつけた。あの日、雄二はマリと一緒に私を守ってくれた。困っていた私を助けてくれた。

 たとえ雄二が誰からも蔑まれようとも、私は絶対に雄二の味方になる。雄二の傍に寄り添う。これだけは、マリでも譲れない。その想いを、全てぶつけた。

 

「……そっか」

 

 マリは満足そうに微笑んでる。

 

「マリ……?」

「やっと翔子の本音が聞けた」

「えっ……?」

「いやぁね。さっき、翔子が男子に興味が無いって噂を聞いてさ、そんなわけないって思ってたんだけどね」

 

 私が興味があるのは雄二だけ。他の男子と付き合うつもりがない。

 

「それで変な噂が広まったってわけか……ま、今はどうでも良いか」

 

 マリ、呆れてる?

 

「アンタの本音はよぉーく分かった。アンタが雄二にベタ惚れしてるって事も」

「っ……///」

「で、勝った方が何でも一つ言うこと聞く。勝って雄二と付き合おうって算段か。けど……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 尚更、止めたくなったな

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

「……え?」

 

 どうしてそんな事を言うのか、すぐに理解出来なかった。何でマリがそんな意地悪な事を言ったのか、理解出来なかった。

 

「何を言ってるの……?マリ……」

「素直に応援してあげたいけど、それって私が負ける前提みたいに話されてさ……」

 

 そんなつもりで言ったわけではないのに、またマリを不快にさせるような事を言ってしまっていた。

 

「ごめんなさい……そんなつもりで……」

「翔子」

「っ……」

「本気で雄二が欲しい?」

「……欲しい」

「私を蹴落としてでも?」

 

 親友を蹴落とすなんて、気持ちのいいものじゃない。そんな意地悪な問いかけをされては、迷いが生まれてしまう。だけど、私には雄二しかいない。

 

「……うん」

 

 マリが腕を組んで天井を見上げる。少しすると、再び私の方へと向いた。

 

「だったら全力で私を倒しな。私も、全力で翔子を倒すから」

 

 マリがそう言うと、空き教室の戸に手を掛けた。そこで止まって、こっちに振り返る。

 

「私達が戦う教科。分かってるよね?」

「……うん」

「じゃあ、楽しみにしてる」

 

 フッと笑うと、マリは空き教室から出て行った。

 

「マリ、今度こそ私が勝つ。小学校の時、あなたに勝てなかった唯一の教科……絶対に」

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 鎌と日本刀の刃が激しく打ち合い、火花が散る度に互いの点数が少しずつ消費されていく。

 気がつけば、真梨香の点数は421点、翔子は427点。そこからまた1点ずつ削られていく。

 真梨香が召喚獣の不慣れがこの点数の差が開いてしまった。だが下手に攻撃して、決定打をくらえば真梨香は負ける。

 耐えるしかない真梨香に、この防戦一方はもどかしい。

 

「逃さない……!」

 

 何とか距離を取ろうとしても、すぐさま翔子の召喚獣が距離を詰める。日本刀が振るわれる度に、鎖鎌で弾いていくが、その分点数も消費されてしまう。

 

 真梨香 411点

 

(いける……だけど油断はしない……!)

 

 少しの気の緩みを真梨香は見逃さない。このまま迅速に畳み掛けて、勝負を決める。

 

(あんまり使いたくないけど……仕方ない……!) 

 

 だが真梨香もただでやられているわけではない。使用することで点数を消費する腕輪の力。真梨香こ召喚獣が、その腕にはめられた腕輪を天高く掲げる。

 

「使わせてもらうよ、腕輪の力!」

「そうはさせない!」

 

 すかさず翔子の召喚獣が刀を振り下ろされた。

 

 真梨香 411点→381点 

 

 だが点数が半分消費されたと同じタイミングで真梨香の召喚獣が真っ二つに一刀両断。

 

「獲った!」

 

 外野の優子がガッツポーズをする。だが、翔子はその手応えの無さに違和感を感じる。

 

「まさか……!」

 

 真っ二つになるはずだった真梨香の召喚獣が溶けるように消えた。

 

「残像……!」

「おらぁっ!」

 

 真梨香の召喚獣がライダーキックをかます。反応が遅れた翔子の召喚獣が大きく吹き飛ばされる。

 

 霧島翔子 427点→322点

 

 

「あの霧島翔子に一撃を!」

「凄いマリ!」

 

 観客として見守っていた秀吉と美波が声を挙げると、他のFクラスの面々も大きな歓声を挙げる。

  

「くっ……はっ……!」

 

 倒された翔子の召喚獣が起き上がろうとするが、頭上から真梨香の召喚獣が鎖鎌を大きく振り回して投擲する。

 

「でりゃあぁっ!」

 

 大きく投擲した鎌の刃が翔子の召喚獣を目掛けて襲い掛かる。ギリギリで弾くも、距離を取られた事で今度は真梨香の反撃が始まる。

 

「マイ、タァーン!!」 

 

 鞭のようにしなる鎖の先にある鎌と棘鉄球の猛攻が翔子を追い込む。圧倒的な攻撃範囲を前にして翔子は315点、301点、289点と少しずつ翔子の点数が消費される。

 

「代表……!」

 

 優子を始め、Aクラスの面々の雲行きが怪しくなっている。Aクラスとして敗北は許されないという矜持、敗北への恐怖、様々な不安に押し潰されそうになる。 

   

「翔子!!」

 

 猛攻をやめ、鎖鎌を手繰り寄せた真梨香が叫ぶ。

 

「私は……絶対に勝ぁつ!!」

「……勝つのは私」

 

互いに譲れない思いを胸に、二人は激突する。

 

  

 

 




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