バカとアクマと召喚獣   作:レーラ

3 / 17
ここで真梨香の成績表
※()は本来であれば取っていた点数

浦方真梨香

現代国語 0点(210点)古典0点(194点)
数学0点(177点)物理0点(85点)
化学(150点)生物0点(201点)地学0点(221点)
地理0点(367点)日本史401点 世界史347点
現代社会0点(451点)英語0点(36点)
保健体育0点(151点)

総合科目 748点(2851点)


第二問 戦いを始める前に

 さて、自己紹介も最後の一人となった。坂本雄二。かつて神童よ呼ばれる程の秀才だったが、今は真逆の悪鬼羅刹。そして最下位のFクラス代表であり、真梨香とは同じ水無月小学校に通っていた幼馴染(悪友)である。

 

「Fクラス代表の坂本雄二だ。皆に一つ聞きたい。」

 

 自己紹介かと思いきや、Fクラスの皆に問う。

 

「かび臭い教室、古く汚れた座布団、薄汚れた卓袱台。Aクラスは冷暖房完備の上、座席はリクライニングシートらしいが……」

 

 一呼吸置いてから

 

「不満はないか?」

 

 ここまでの格差を見せつけられたら誰だってこう叫ぶ。

 

 

大アリじゃあぁぁっ!!

 

 

 案の定Fクラスの生徒達は魂の叫びを発した。

 

「だろう?俺だってこの現状は大いに不満だ。代表として問題意識を抱えている。」

 

 雄二の演説に呼応する様に、Fクラスの生徒達はこの格差に不満を吐く。それを聞いて満足したのか、雄二はある提案をする。

 

「これは代表としての提案だが、FクラスはAクラスに試験召喚戦争を仕掛けようと思う。」

 

 試験召喚戦争、略して試召戦争は召喚獣を用いたクラス単位の総力戦であり、下位のクラスが勝てば負けた上位のクラスの設備と交換する事が出来る。逆に下位クラスが敗れれば、現時点の設備より1ランクダウンしてしまう。卓袱台の時点で机とは言い難いがFクラスが敗れれば、卓袱台よりさらに低品質な設備、悪ければその台すら用意されない可能性だってある。

 

 さらに召喚獣の強さは個人の成績によって変動する。この学園のテストには上限がない為、200点や300点を超える事だって可能だ。しかし、Fクラスは最下位、つまりバカの集まりであり、3桁など得意科目か余程の奇跡でもない限り現れない。対するAクラスは300点は当たり前、それどころか上位であれば400点オーバーはザラである。成績が試召戦争の鍵を握るのであれば、AクラスとFクラスではまさに天と地の差、勝ち目など万に一つもない。設備を落とされるのが目に見えている。

 

勝てるわけない……

これ以上設備を落とされるなんて嫌だ……

姫路さんがいたら何もいらない……

助けてマリさん……

 

 このように熱狂から一転、悲鳴に変わる。途中、姫路と真梨香への求愛が聞こえたがそれは置いておく。

 しかし雄二は

 

「そんな事はない。必ず勝てる。いや、俺が勝たせてみせる。」

 

 高らかに宣言するが、無策で……いや、策があっても戦力差が違いすぎるが故に否定的な意見が多い。雄二はそれについては百も承知であるが

 

「根拠はあるさ。このクラスには試召戦争で勝つ事の出来る要素が揃っている。それを今から説明してやる。」

 

 不敵な笑みを浮かべた雄二は壇上に達、皆を見下ろす。

 

「おい康太。畳に顔をつけて姫路とマリのスカートを覗いてないで前に来い。」

「……!(ブンブン)」

「はわぁっ!」

「ひゃぁっ!」

 

 必死に否定しながら壇上へ上がった康太だが顔面に畳の跡がついている。真梨香と姫路はスカートの裾を押さえるが最早手遅れであった。

 

「土屋康太。こいつがあの有名な寡黙なる性識者(ムッツリーニ)だ」

 

 土屋康太という名前はそこまで有名ではないが、ムッツリーニという名前はこの文月学園に名を馳せている。女子生徒からすれば軽蔑でしかないが、男子生徒には畏怖と畏敬が込められている。

 康太ことムッツリーニはそれでもなお必死に否定するが、畳の跡がそれが真実であると物語っている。

 

(もしかしてムッツリスケベとムッソリーニをかけてムッツリーニかな?)

 

 真梨香の推測はあながち間違いではないだろうが、真相は定かではない。

 

「姫路の事はは説明する必要もないだろう。皆だってその実力を知っているはずだ。」

「え?私ですか?」

「ああ。ウチの主戦力だ。期待している。」

 

 学力の低いバカの集まりに、Aクラスレベルの姫路がいればこれ程心強いものはないだろう。

 

「そしてもう一人の主戦力、それはマリだ。」

 

 真梨香の名前を挙げた途端、Fクラス生徒達は一斉に真梨香の方に向いてざわつく。

 

何でだ?!

マリさんだって点数が低かったからウチに来たんだろ?

 

 ここにいる者の殆どは転校生である真梨香の事を知らない。数少ない女子とはいえ、学力に関して懐疑的になるのも無理はない。しかし、同じ小学校に通っていた雄二だからこそ知っている事実がある。

 

「マリは特定の教科を除けば、姫路とまでは行かないだろうが、俺どころかAクラスに匹敵する。」

 

 

な、何だってえぇぇぇーーーー?!

 

 

 皆が口を揃えて驚愕した。今回、真梨香がFクラスに入った理由は名前を書き忘れただけであり、それさえなければ、今頃AかBクラスに入っていたはずだ。

 

「マリには戦力としてもだが、俺の補佐についてもらう。」

「私が雄二の?」

「悪知恵なら俺より働きそうだからな。」

「悪知恵とは失礼な!悪戯と言ってもらおうか!」

 

 どっちも同じである。

 

「木下秀吉だっている。」

 

 木下秀吉。彼は演劇部のホープとAクラスにいる双子の姉、木下優子の弟である事で有名なのだが、学力に関してはあまり聞かない。当然秀吉の事を知らない真梨香には何の事かさっぱりである。

 

「当然俺も全力を尽くす。」

 

 彼は今でこそ悪鬼羅刹として他校の不良達に恐れられているが、かつては神童として名を馳せていた。中学校が違っても悪鬼羅刹の時も関わり合っていたとはいえ、その気になれば上位のクラスに行ける事を真梨香は知っている。

 そして雄二には不思議なカリスマ性を持っており、今もクラスの士気を上げさせている。先程まで絶望していたFクラスは皆やる気に満ちている。

 

「それに、吉井明久だっている。」

 

 しーん……

 

 明久の名を挙げた途端、先程の歓声とは真逆、教室は静寂に包まれた。

 

「ちょっと雄二!どうしてそこで僕の名前を呼ぶのさ?!全くそんな必要は関わり合っていたよね?!」

 

 誰だよ吉井明久って?

 聞いたことないぞ。

 

「ほら!せっかく上がりかけてた士気に翳りが見えてるし!僕は雄二と違って普通の人間なんだから普通の扱いを……って何で僕を睨むの?!浦方さんもそんな哀れみの目で僕を見ないでぇ!」

「そうか、知らないようなら教えてやる。こいつの肩書きは……《観察処分者》だ。」

 

 その肩書きが出た瞬間、明久の顔は青褪めた。そこに真梨香が手を挙げる。

 

「ねえ、その観察何とかって何?」

「観察処分者っていうのは、学園生活に支障をきたす問題児につけられる、言ってしまえばバカの代名詞だ。」

「身も蓋もない事を言わないでよ!」

 

 すると今度は姫路が手を挙げる。

 

「あの……それってどういうものですか?」

 

 Aクラスレベルの姫路には観察処分者なんて単語とは関わりないであろうから知らないのも無理はない。

 

「具体的には教師の雑用だな。力仕事とかそういった類の雑用を特例として物に触れる召喚獣でこなすと言った具合だ。」

 

 召喚獣は基本的に物に触る事は出来ない。明久の召喚獣にのみ物に触る事が出来る。

 

「そうなんですか?それって凄いですね。試験召喚獣って見た目と違って力持ちって聞きましたから、そんな事が出来るなら便利ですよね。」

 

 姫路から羨望と尊敬の眼差しが向けられる。悪い気はしないだろうが明久は少し恥ずかしい。

 しかし、ここで真梨香が再び挙手をする。

 

「でもさ、物に触れられるって事は、感覚も共有されるんじゃないの?」

 

 図星を突かれた明久の心臓にグサリと精神的なダメージが入った。

 

「その通りだマリ。初めてにしては良い所を突くな。」

 

 観察処分者の召喚獣、先程述べた事がメリットに聞こえるかもしれないが、実際はその逆、デメリットの塊である。召喚獣というのは基本的に教師の監視下でなければ呼び出せない。明久本人が使いたい時に使えるわけではない。

 そして最大のデメリットは先程真梨香が聞いた感覚の共有である。物に触れた召喚獣の負担は使用者本人にも何割かにフィールドバックされて返ってくる。当然作業中に召喚獣にダメージが入ってしまえば、その痛みも使用者本人にも共有される。

 自分の為に使えるわけでもないのに疲労やダメージも共有されるなんてものを到底便利だなんて言えない。観察処分者の召喚獣とは、言わばバカに与えられるペナルティである。

 

「じゃあ吉井君、おいそれと召喚獣を呼び出せなくない?」

「気にするなマリ。どうせいてもいなくても変わらない雑魚だ。」

「雄二!そこは僕をフォローする台詞を言うべきだよね?!」

「とにかくだ。俺達の力の証明として、まずはDクラスを征服してみようと思う。」

 

 明久の想いはスルーされた。可哀想に。

 

「皆、この境遇は大いに不満だろう?」

 

当然だぁ!!

 

「ならば全員(ペン)を執れ!出陣の準備だ!」

 

おおぉぉーーーー!!

 

「俺達に必要なのは卓袱台ではない!Aクラスのシステムデスクだ!」

 

 うおおぉーー!!

 

「お、おー……」

「おーう!」

 

 Fクラスの熱狂に押され、姫路はぎこちないが、真梨香はこの流れに乗った。バカがトップに下剋上、こんな刺激的な事は他にあるだろうかと。さて、Dクラスの人達にどんな悪戯を仕掛けてやろうか、真梨香はそれを考えるだけでワクワクしてきた。




バカテスト 国語

以下の意味を持つことわざを答えなさい
(1)得意なことでも失敗してしまうこと
(2)悪いことがあった上に更に悪いことが起きる喩え

姫路瑞希の解答
『(1)弘法も筆の誤り』
『(2)泣きっ面に蜂』

教師のコメント
正解です。他にも(1)なら『河童の川流れ』や『猿も木から落ちる』、(2)なら『踏んだり蹴ったり』や『弱り目に祟り目』などがありますね

土屋康太の答え
『(1)弘法の川流れ』

教師のコメント
シュールな光景ですね。

吉井明久の解答
『(2)泣きっ面蹴ったり』

教師のコメント
君は鬼ですか。

浦方真梨香の解答
『(1)誰にだってそういう時はある』
『(2)それが人生なのだから』

教師のコメント
テストでポエムを作る人は初めて見ました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。