無事、Dクラスとの戦いには勝利した私達。大歓声を挙げる中、一人貞操の危機に瀕して泣いている吉井君。
この奇襲作戦は、瑞希あってのもの。瑞希がいなければ成り立たない。まさかAクラスレベルの生徒がFクラスにいるなんて思いもしないだろう。
吉井君は何だか申し訳なさそうだけど、騙し討ちも立派な戦略の一つだよ。
とはいえ、試召戦争で下位のクラスが上位のクラスに勝利した場合、設備の交換が認められる。
これで晴れて、カビた畳と折れかけの卓袱台と綿なし座布団とはおさらばー!
「いや、設備は交換しない」
なんて事にはならなかった。まさかの雄二の一声で、設備交換は消えた。吉井君が雄二に疑問を投げかけた。
「雄二、それはどういう事?折角普通の設備を……」
「一つはモチベーションの問題かな?」
「浦方さん、どういう事?」
「確かにこのクラスはFクラスより良い。だけど、あの教室よりいい環境に馴染んでしまったら、それに満足してしまう輩が出ちゃうんだよ」
ただでさえFクラスはバカの集まりだからね。短絡的な発想でそうなる可能性も少なくはない。それで試召戦争をやりたがらない人を出してしまうと、纏まりのないクラスになってしまう。そうなっては打倒Aクラスどころじゃなくなる。
Aクラスに勝つ為には、少しでも不安要素は取り除かないと。
「その通りだ。あとはもう一つ理由がある」
え?まだあるの?
「クラスを交換しない代わりに、俺が指示を出したらあれを動けなくしてもらいたい」
雄二が指してるのは、エアコンの室外機?けど、このクラスにエアコンなんてついてないはず……
ん?待てよ?確かDクラスの隣には、この教室より倍くらいの広さがあるBクラス。じゃああれはBクラスの室外機か。
設備を壊したら教師に睨まれるのは間違いないけど、事故だったら厳重注意くらいでどうにでもなるか。
あれを壊すだけで設備を交換しないで済むのなら、Dクラスは得でしかないね。
「分かったろさ。その提案、ありがたく呑ませてもらおう」
「タイミングについては後日詳しく話す。今日はいいぞ」
そんなこんなで戦後処理は早く終わり、明日の回復試験の為に解散となった。
「さて、あの天幕片付けなきゃ」
一応私が悪戯に使った道具達の後処理はちゃんと済ませて帰らなきゃ。それで対策されるようになったら目も当てられない。
そして片付けが終わり……
さてさて、天幕片付けてたらもう夕方になりかけてるよ。急いで教室から鞄取って帰らなきゃ。
「憎い!その男が憎い!」
ん?何かFクラスの教室から聞こえてきたぞ?終戦直後だっていうのに、まだハッスルしてるのは一体誰だぁ?障子をそっと覗くくらいにして……あれは、吉井君と……瑞希?
瑞希が持ってるのは……手紙?まさかラブレター?!瑞希、アンタって子は……けど、誰宛?気になるなぁ。
けど、いつまでもこうされていると入れないから、なるべく自然な形且つ聞いてないように見せかけて入ろう。それ、ガラッとな。
「あーつかれたー(棒)」
「ひゃぁっ!ま、マリさん?!」
「う、浦方さん?!」
「どうしたの二人して?」
「「い、いや(いえ)!何でも(ありません)!」」
わぁ息ぴったり。それじゃあ何かありますって言ってるようなもんだよ?
「鞄取りに来ただけだから、私はとりあえず帰るよ」
「は、はい……」
「ま、また明日」
「ほーいお疲れ様〜」
軽く手を振ってFクラスの教室から出る。あの二人、何かいい感じだったな。けど瑞希の手紙は誰宛だったんだろうな?
まあ良いや。帰ろっと。階段を降って下駄箱からローファーを取って履き変える。
「さて、明日は回復試験だし、寄り道せずにさっさと帰り……」
「マリ……!」
後から聞き覚えのある静かな声で呼ばれた私はドキッとして、校門から出ようとしたその足を止めた。その声で私をマリと呼ぶ人なんて、一人しか思い当たらない。
「久しぶり、マリ」
「翔子……」
振り返った先には、小学校の時よりも可憐な美少女に成長していた友達、霧島翔子がそこにいた。
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霧島Side
あの時、見間違えたんじゃないかって思ってた。
Aクラスの前を通ったあの水色の髪。まるで星のように輝いていたあの瞳。
「まさか……」
「代表?どうしたの?」
「ごめん優子……何でもない」
きっと見間違いだろうと、私は諦めていた。ここにマリがいるはずがない。そう思ってた。
「ねえ、代表。そういえばFクラスに転校生が入ったんだって」
「転校生?」
「確か高橋先生によると、点数はAクラスに匹敵するらしいわ。けど、うっかり名前を書き忘れて殆ど0点になったって」
そんなうっかりさんがいる事に少し驚くけど、別にそれだけ。あまり興味はなかった。
「確か、浦方さんって言ってたような……」
「浦方……?!」
優子からその名前を聞くまでは。
FクラスがDクラスとの戦いで勝利に歓喜する群衆の中に、マリがいた。
「やっぱり……あなたなのね……」
マリが小学校を転校して以降、あの子とは一度も会う事は無かった。連絡先も分からなかったから、電話で話す事も出来なかった。
もしかしたら、私の事なんて忘れてるかもしれない。だけど私は、あの時のように、また3人と楽しく学校に通いたい。
「マリ……!」
「翔子……?」
おかえりなさい、マリ。
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やっぱり、翔子だね。小学校の時も思ってたけど……やっぱり美人になったよなぁ。
私が男の子だったら、迷わず告白するくらい綺麗になった。
「どうしたの?」
「ひゃぁいっ!い、いや……その、5年も見ないとこんな美人になるんだなって……」
何を口走ってるんだ私は?!そしてそこ!ポッと顔を赤くしないでよ!こっちまで恥ずかしくなるじゃん!
「マリ、どうして?」
「え?」
「マリの成績なら、Aクラスに入れた。どうして?」
何でAクラスにいないのかって?言えない……言えるわけがない。名前を書き忘れたなんて、口が裂けても言えない!
「名前を書き忘れるなんて、マリらしくない」
いや知ってるんかい!焦って損したわ!
「まああの時は、私とした事が馬鹿やったなーって思ったよ。名前書き忘れるとか人生で初めてだし……」
「マリのうっかりさん」
「うぐっ!」
翔子、アンタって人の傷えぐる才能あるよ……。
「けどさ、こうしてまた同じ学校に通えるんだし、クラスが違っても良いじゃん」
「良くない」
「え?」
翔子は何処か不満げだった。私がAクラスに行かなかった事がそんなに気に入らないのか、怒っている。
「マリはAクラスにいるべき。Fクラスには似合わない」
「そこまで言う?」
一体何が翔子をそんな物言いにさせるのか、私には理解が出来ない。
翔子は昔からそうだった。時々、何を考えているのか分からないし、私が予想しえなかった行動を突然やりかねない。
今回だって、何を考えてあんな事を言ったのか分からない。私をAクラスに引き込みたい理由が気になるけど、ちょっとカマかけてみるか。
「今のセリフ、雄二やFクラスのみんなの前で言えるの?」
「……!」
分かってるよ。翔子がFクラスに対する偏見がないってことくらい。そんなつもりで言ったわけじゃないのは分かってるよ。
普段の翔子なら、そんな事は言わないのは分かってる。けれど、もしそれが感情的なった事での失言だったとしても、他の人が聞いていたら許せないだろうね。
案の定、翔子はやってしまったと後悔しているみたい。
「翔子。私ね、AクラスだとかFクラスだの、そんなのはどうでも良いんだ。今目の前にある楽しみを満喫しまくる。今の私は、それで充分」
「マリ……」
そんな悲しそうな顔しないでよ。何か気まずくなるじゃん。
「今の私は雄二のやりたい事に付き合うし、全力で戦う。だから翔子、アンタも全力で来てよね」
これは翔子への個人的な宣戦布告。小学校の時も、こうやって翔子に挑んだっけ。
おっと、懐かしさに浸ってる場合じゃないや。そろそろ帰らないと。
「楽しみにしてる、マリ」
私達は互いに手を振ってそれぞれ家路へとついた。
バカテスト
問 以下の問いに答えなさい
『調理の為に火にかける鍋を製作する際、重量が軽いのでマグネシウムを材料に選んだのだが、調理を始めると問題が発生した。この時の問題点とマグネシウムの代わりに用いるべき金属合金の例を一つ挙げなさい』
姫路瑞希の答え
『問題点……マグネシウムは炎に掛けると激しく酸素と反応する為、危険であるという点。合金の例……ジュラルミン』
教師のコメント
正解です。合金なので『鉄』では駄目という引っ掛け問題なのですが、姫路さんは引っかかりませんでしたね。
土屋康太の答え
『問題点……ガス代を払っていなかったこと』
教師のコメント
そこは問題じゃありません
吉井明久の答え
『合金の例……未来合金(←すごく強い)』
教師のコメント
すごく強いと言われても。
浦方真梨香の答え
『問題点……マグネシウムに火をかけると火の勢いが強くなる フラッシュペーパーを包めたものに火をつけてそれを投げつけ……(以下略)』
教師のコメント
浦方さん、後で職員室に来るように