機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

102 / 264
PHASE-79 第二次オーブ防衛線

 

『カガリ・ユラ・アスハも皆と共に戦おう!』

 

 伝えられる言葉は熱を持って届いた。ズンと胸の辺りで灯るようにそれは心に焔を宿す。

 本来無関係である自分でさえこれなのだ。祖国を守ろうとする者達はもはや麻薬の様に彼女の言葉に酔いしれて士気を上げるだろう。

 

「ふふ、凄い子ねアンディ。もう子猫ちゃんなんて呼べないかもしれないわ」

 

 次々と降下してくるストライクダガーの部隊を屠りながら、今は亡き愛しの人へとアイシャは語りかけた。

 初めて出会ったのは砂漠で。彼が突然連れてきたケバブソース塗れ少女であった。

 見てわかる光る原石の気配に、気合を入れて飾ってあげたのは内緒だ。

 まだまだ子供。生意気盛りでやんちゃな気配が抜けない様な、無垢と言える少女であった。

 

 それがどうだろう。

 今や一国の命運を背負い、前線の指揮官として彼女は皆の前に立っている。

 砂漠の虎と呼ばれた彼は、その高い能力を示すことであの地を治める指揮官足り得たと言うのに、カガリ・ユラ・アスハはその声と言葉、そして戦う姿勢だけで共に戦う同志達を奮い立たせた。

 オーブの獅子の娘──あれは正に獅子の咆哮と言わざるをえない。

 

「ねぇ、フラガちゃんと褐色ちゃん、ちょっといい?」

 

 共に戦うパーフェクトストライクとバスターへと、アイシャは通信を繋いだ。

 アイシャは正規の軍人でもなく、タケルが連れてきた外部技術協力者だ。

 国防軍へと組み込むこともできず、アークエンジェルの一員として、ムウ等と共に遊撃に回っている。

 

「おいおい、フラガちゃんって、俺まで子供扱いかよ」

「女の尻に敷かれてるうちは子供扱いよ。当然でしょ?」

「俺がマリューに勝てるわけないだろ」

「おっさん何かマシだろ。俺なんて肌の色じゃねえか!」

「おい待て、おっさんはやめろ! 俺はまだ28だ!」

「もう、そんなこと良いから、ちょっとここら辺の掃除を2人でお願いね」

「あぁ? アイシャ、お前何言って──」

 

 I.W.S.Pのメイン武装とも言えるコンバインシールドに備えられた、30mm6連装ガトリング砲を構えると、アイシャはスラスターを噴射させその場を後にした。

 向かうは最も苛烈な戦場となっている前線中央部の港区域。国防本部への最短ルートのエリアである。

 昨日に続きオーブ国防軍主力部隊と、モルゲンレーテのアサギとマユラが奮戦していた。

 

「おいアイシャ、お前どこに」

「あの子達の助けになってあげたいから。ここは何とかして、フラガちゃん」

「おいおい持ち場放棄かよ。ちっ、これだから女ってのは面倒くせえ」

「んなこと言うなよ褐色ちゃん。結局俺達男は、美人には勝てないんだぜ?」

「おっさんと一緒にすんじゃねえよ!」

「おっさんはやめろって言ってるだろが!」

『良いから早く戦いなさい!!』

 

「「イェス、マム!!」」

 

 通信越しに届いた母(艦長)の怒りに即応すると、ムウとディアッカの2人はその場に降下してくるストライクダガーの迎撃を再開する。

 

 

 戦いは、まだ始まったばかりである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦闘が本格的に始まってからは、カガリはアカツキを一度下がらせていた。

 いくら共に並び立ち戦うとは言っても、それこそそのまま前にいて落とされてしまっては元も子もない。

 カガリが落ちれば、せっかく上がった士気が下がってしまう。フラッグシップは決して落とされてはならないのだ。

 

 絶対絶命の状況を演出した。

 何百と迫り来るミサイルの雨から無傷で現れる事で、アカツキは絶対に落とされないMSだと見せつけた。

 だからこそ今、オーブの士気は猛々しく、連合の戦意は落ち込んでいる。

 

 アカツキに搭載された防御兵装“アメノイワト”。

 機体両肩部と両脚部、そして胸部に備えた“光波性防御フィールド”発生装置により機体全体を覆う防御フィールドを発生させる──それが、あの演出の絡繰りである。

 アルテミスの傘をヒントにタケルがアカツキに搭載した新規技術の防御兵装で、MSが備える程度の武装であればいかなるものも無力化する。

 消費エネルギーが相応に激しい為、長時間の使用はできないが、先ほどの使用も30秒程。

 まだまだ余裕はあった。

 

「カガリ姫。後方艦隊からの援護射撃です」

 

 入ってくる聞き慣れた声の聞き慣れぬ呼び方に鳥肌が立ち、背筋を震わせながらもアカツキを動かした。

 アマノイワトを起動。出力と範囲を調整して、周囲にいる5機のM2アストレイを覆う様にフィールドを展開。

 降り注ぐミサイルの雨を全て防いでみせる。

 ここはジュリ達が布陣している山岳部の狙撃エリアだ。

 連合としても、遠距離からこれ以上撃たれてはたまらないだろうと狙撃部隊を狙ってくる。

 それをシュンライの第二射まで守り切るのが、今のカガリの役目である。

 

「皆、大事ないか?」

「問題ありません!」

 

 健在な様子を自らも確認して、カガリは通信モニタへと目をやった。

 

「サヤ、その言葉遣いはやめろと言っている──心底気持ちが悪い」

「お兄様よりの厳命です。好き好んでしているわけではありません。今この戦場で、貴方はもはや神格化するべき象徴なのです。普段通りの言葉遣いをできないのは理解ください」

 

 カガリ・ユラ・アスハの護衛についているM2アストレイ・オオトリ。

 搭乗者であるサヤ・アマノの余りにも普段とは違う言葉遣いに、カガリは居心地の悪さが抑えきれなかった。

 タケル曰く、絶体絶命で不可避な状況を演出して無傷で現れたら、もはや神様みたいだよね。せっかくだから本当に勝利の女神にでもなってもらおうか──との事である。

 それ故にサヤとしても甚だ不本意でありながら、普段の様に敵意剥き出しな言葉を吐く事はできず、こうして心を殺してカガリに丁寧な口調を見せているのだ。

 

「バカ兄様め……徹底しすぎだ」

「その様な言葉遣いもダメです」

「断る。いくら士気を上げる為とは言え、偶像にまでなるつもりはない」

「では、後程お兄様にはその様にご報告させていただきます」

「そっ、それはちょっと、ズルくないか?」

「ズルくありません。お兄様の想いを無駄にされない様に進言しているだけです」

「卑怯だぞ、サヤ!」

「卑怯なのはカガリ姫も同じです。そうやっていつも、お兄様からご寵愛されているんですから──次、来ますよ」

「くっ、えぇい!」

 

 再びアメノイワトを起動。降り注ぐミサイルを防ぎながら、カガリは忌々しそうに通信越しのサヤを睨みつける。

 

 

 傍受していたジュリだけは、タケルの思惑が欠片も上手くいってない事を理解していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーもう、ズルいなぁ姫様!」

「アサギ、無駄口叩かないの!」

 

 アサギが飛び込み攪乱。後続としてマユラが接近し次々とストライクダガーを切り裂いていく。

 

 昨日の経験もあって、硬さもとれた2人は確実に戦闘経験値を増やして、戦場で躍動していた。

 

 シュンライ・改で艦船を撃ち抜いているジュリへの対抗意識もあるだろう。

 戦闘開始から数十分と言う所。彼女達がいる場所が未だストライクダガーの物量に押し負けていないのは、偏に彼女たちの活躍があるからこそだ。

 

 だがそれにしても、胸に灯った焔は行き場を求めて熱を発しているようであった。

 友人関係にはあったが、それでも代表首長の娘でオーブのお姫様と呼べるカガリ。

 そのカガリのまるで知らない一面を見せられ、更にはその言葉に心が揺り動かされていた。

 

 アサギが言うズルいとは、その言葉と姿勢だけでこうも自分達を奮い立たせてくれるからである。

 

 そんな姿勢を見せられたら。そんな声を聞かされたら。奮わないわけにいかないじゃないかと。

 ハードルを上げられた気分であった。

 だから、応えてやろうと、より一層奮起した。

 

 集中力が増していく。機体を制御する感覚が研ぎ澄まされていく。

 嘗て、アークエンジェルでタケルにカガリが言われた様に、100の仮想(シミュレーション)より1の実戦。

 彼女達がこれまで仮想で培ってきた経験と技術は、昨日の実戦を経て大きく開花していた。

 

「次、降りてくる!」

「無防備が過ぎるのよ!」

 

 MS用のパラシュートを用いて降りてくるストライクダガーを補足して、アサギは先手を取って飛翔。

 マニューバの機動力を生かして、降下途中のダガー部隊を次々と叩き落していく。

 

 なんとか狙われずに降下できたとしても、地上では狼の様に敵機の喉元へ喰らいつかんとする、マユラのアストレイが待ち構えていた。

 

「あら、結構余裕そうじゃない?」

「あ、アイシャさん」

「どうしてこちらに?」

 

 ムウ達の元を離れ駆け付けたルージュの姿を見つけ、不思議そうにアサギとマユラは通信を繋いだ。

 

「降下部隊、次々とこっちに降りてたから。援護に来たのだけど……」

「それなら助かります!」

「ジュリが向こうに行っちゃってるから、後方支援が無くて苦しかったんですよ」

 

 姦しい……だが微笑ましい。

 きっと、この子達もあの声に乗せられて必死なのだろうとアイシャは思った。

 頑張りたい。応えてあげたい。そんな気持ちが声に漏れている。

 

「OK、それなら任せて。あの子ほどじゃなくても、しっかりやれるから」

「疑ってなんかいません」

「私達もあの時のシミュレーションは見てましたから!」

 

 ガトリング砲に115mmレールガン。更には105mm単装砲と、ルージュの遠距離兵装は十分。

 複雑な火器管制も十二分に使いこなせることを、アカツキの複座シミュレーションでアイシャは証明している。

 他にない援軍に、アサギとマユラも嬉しさを湛えて笑った。

 

「それじゃ、今だけの小隊編成ね。よろしく頼むわ」

「はい!」

「お願いします!」

 

 またも増援として降りてくるストライクダガーへと目を向けて、3人は連携も十分に次々と襲いかかっていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当にカガリ……君って子は」

 

 ジャスティスのコクピットでアスランは自嘲の笑みを浮かべた。

 

 当初はディアッカと共に、参戦するべきかどうかを迷っていたが、彼女の声を聞いた時アスランは胸に宿った熱を我慢することができなかった。

 

 オーブの中立の理念は聞いている。そして、その意図するところも理解している。

 彼女ならそんな理想を体現できると、そう思わせる強い声であった。

 

 ”立場に従うなよ。従うのは己の意思……だろ”

 

 嘗て無人島でカガリが言った言葉をアスランは思い返していた。

 ザフトの、アスラン・ザラ──そう言ったラクスの言葉は的を射ていたのだろう。

 父の命令に従い、ザフトの人間として戦うだけ。それがこれまでのアスランであった。

 

 だが昨日、アスランは自らの意思で戦い、キラを助けた。

 その瞬間からきっと……答えは決まっていたのだ。

 

 アスラン・ザラは、彼等を放っておくことなどできないのだと。

 

 気が付けばジャスティスに乗り込み、フリーダムと共に連合の機体を迎え撃つべく海上へと向かっていた。

 

 

「アスラン……本当に良いの?」

 

 並び立ったジャスティスを見て、キラが問うてくる。

 が、アスランに迷いは無かった。

 

「彼女のあんな声を聞いてはな……俺も居てもたってもいられないさ」

「そっか……好きになっちゃったんだもんね」

「ぶっ!? ち、違う! タケルみたいな事を言うんじゃない!」

「えっ、違うの?」

 

 キョトンとした顔が通信モニタに映り、アスランは言葉に詰まった。

 反射的に違うとは言ったものの、本当に? と言った風に聞き返されると難しい。

 元来アスランは嘘を吐くことができない性格だ。

 茶化したような雰囲気でないキラの言葉に、真面目に捉えて考えてしまった。

 

「──気には、なってる」

「ぶっ!?」

 

 僅か照れくささの見える親友の様子に、今度はキラが吹き出す番であった。

 ラクスから聞かされていたが、この親友は生真面目で朴念仁。周りが意識させない限り浮いた話の一つも出てこないだろうと言うのが、ラクスからの評価であった。

 

「ちなみにどんなところが?」

「男勝りだけど優しいし……危なっかしいけどそこも放っておけないと言うか」

「ぶっ!?」

 

 またも不意打ちだ。

 まさか真面目に答えてくるとは思わなかった。その上、ちゃんとカガリを見て評価している様な意見だ。

 完全に堕ちている。まるで恋する乙女の様ではないか。

 予想外過ぎるアスランの返答が、これから戦いに赴くと言うのに、カガリが引き締めた気持ちを全力で緩めに来ていた。

 

「──あれ?」

「どうした、キラ?」

 

 口を閉ざして、キラはふと気が付いた。

 ラクスがアスランの評価を教えてくれた────そう、婚約者であるはずの彼女がだ。

 そんなアスランがカガリに惹かれ始めている。

 

「どうしたんだ、キラ?」

「ううん、何でもない!」

 

 これはもしかしてとんでもない事を聞いてしまったのではないかと、キラは冷や汗を流していた。

 表情を僅か固めたキラであったが、コクピット内の警告音が敵機の接近を知らせる。

 

 青と緑と黒の3機。昨日も戦った連合の新型であった。

 

「あいつらだ。行くよ、アスラン!」

「あぁ。俺とお前なら、負けはしない!」

 

 

 さっきまでの緩い空気を消し去り、2人は戦士となって3機のMSへと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 シュンライ・改──第2射が放たれた。

 

 最初と併せて計9隻の艦船が墜とされ、既に大西洋連邦の損害は大きい。

 だが、大西洋連邦もバカではない。

 主力となるダガー部隊を航空輸送機から次々と降下させ、海上の艦船は必要最低限の人員で援護射撃を撤退させいわば囮とする。

 

 昨日のシロガネによる被害を考え、海上の艦船が占める戦略的要素を減らしたのだ。

 

 そして大幅に改良を加えてはいるものの、シュンライ・改は急増で仕上げた兵装。その威力と高すぎる電圧のせいで射撃は2回までが限界であった。

 

 

 昨日より増えたダガー部隊の物量に、戦局は膠着状態へと向かい始める。

 

 

「おおお!」

「はぁあ!」

 

 その最中、シロガネとディザスターは死闘を繰り広げる。

 ぶつかり合うビャクヤとサーベル。

 光の火花を散らしたかと思えば、シロガネは即座に回り込んで追撃。対してディザスターはシールドを挟んで受けきった。

 

「あはっ! 本当に今日は違うんだね兄さん。全然負けてくれない!」

「違うのは君もだろう。昨日と比べれば怖さが感じられない!」

 

 蹴りつけて距離を取った瞬間にはキョクヤを構えて撃ち放つ。

 それをディザスターは射線を見極めて回避──タケルは僅かに舌打ちをした。

 

 互いにSEEDを発現した者同士。恐らくこの反射領域でまともに射撃兵装は当てられない。

 それが分っているからこそ、ディザスターは肩の大型ビーム砲を封印しているのだろう。

 ビームライフルでの牽制射撃こそ挟んでいるが、あくまで牽制目的だ。接近のための隙を作るとかその程度。

 当てる気で撃ってはいなかった。

 つまるところ、接近戦での優劣が勝敗を決める。

 

 上等──それは己の領分だとタケルは身構えた。

 

 ディザスターがビームライフルを構える。それを勝機だと悟る。

 真っ向からの突撃……放たれるビームライフルにそのまま機体を晒す。

 装甲に当たって霧散するビームに、ディザスターの動きが僅かに固まった。

 

「ビームを弾いた!?」

 

 これまでシロガネが全ての射撃を回避していたからこそ陥る罠。

 シロガネの装甲ミカガミはビームを霧散させることはできるが、その衝撃までは殺せない。

 機体に無為に負荷をかけないために、タケルが回避を選択していただけでビームライフル程度なら正面から受けても大きな衝撃は無い。

 ディザスターはライフルを持ち換えようとしたことで対応が遅れる。

 

「取った!」

「なめるなぁ!」

 

 持ち替えようとしたビームライフルを犠牲にすることで、ディザスターはビャクヤの光刃を回避。

 どうにかそのままシロガネを受け流すことに成功した。

 

 しかし、この一合で手玉に取られたことがユリスの自尊心を刺激した。

 

「このっ! よくも!!」

 

 封印していたはずの大型ビーム砲シュヴァイツァを発射。

 タケルは即座に回避するも、そのまま次々と撃ち放ち、距離を詰めようとしてくる。

 

「(なんだ? 急に動きが雑に)」

「よくも、よくも、よくも!!」

 

「タケル! 後ろ!」

 

 聞こえた声に、即座に回避軌道を取った。

 シロガネがいた場所を通り過ぎる閃光。カラミティから放たれたビームの光であった。

 いつの間にかタケルとユリスは、キラ達が戦っていた場所に近づいていたのだ。

 

「チャンスだ……アスラン、交代して!」

「何? そうか、わかった!」

「えっ、どういう──」

「キラは後方支援に!」

 

 タケルはシロガネを、カラミティ、フォビドゥン、レイダーの真っただ中へと飛び込ませていく。

 タケルの意図を察して、アスランは逆にディザスターへと向かった。

 

「よくも、よくも──逃げるなぁ!!」

 

 ディザスターから放たれるシュヴァイツァのビームがシロガネを狙い、そして射線上にいた3機を襲う。

 

「ちっ、何やってんだよユリス!」

「邪魔すんなばぁか!」

「うざいんだよ!」

「だまりなさい! さっさとそいつを──きゃっ!?」

 

 執拗にシロガネを追いかけようとしたディザスターを、ジャスティスが強襲。ファトゥムがディザスターにぶつかり機体が大きく流された。

 

「ここ!」

「きゃあぁあ!?」

 

 すかさずフリーダムがクスィフィアスで追撃。

 ディザスターを海面へと叩き落す。

 

「ナイスだ、2人とも──そしたら僕は」

 

 最大戦速でシロガネを走らせる。目標は防御能力の低いレイダーから……機動性においてタケルとシロガネに追従できるわけもなく、レイダーはあっけなく接近を許してしまう。

 

「うっ、このっ!?」

「遅い!!」

 

 至近距離ではじき出されるミョルニルを、SEED下における反射能力で回避。

 そのまま、ビャクヤを一閃。レイダーのスラスターの一部を切り落とした。

 

「次!」

 

 そのままカラミティ―へと突撃。

 ビャクヤで牽制の射撃を放ち、そのまま急速接近──からの急制動とサークル軌道を描いて背後へ。

 肩にある2本のビーム砲と頭部メインカメラを薙ぎ払う。

 

「キラ、アスラン!」

「任せろ!」

「うん!」

 

 フリーダムのプラズマ収束砲から始まる波状攻撃。ファトゥム、シロガネ、そして最後にはフリーダムがビームサーベルを抜いて切りかかり、フォビドゥンのゲシュマイディッヒ・パンツァーの片側を切り落とした。

 

 機体の損傷を受け、3機が撤退していく。

 

 

 タケル達は少しだけ荒くなった息を整えながらそれを見送った。

 

「ふぅ、助かったよ2人とも。特にアスランは、僕の意図を汲み取ってくれてありがと」

「連中にはまるで連携の気配が無かったからな。タケルを追ってきた機体を見て同士討ちが狙えると思ったんだ」

「はぁ、流石だね2人とも。僕にはそんなの全然思い浮かばなかった」

「仕方ないよ、キラはそういう戦いとは無縁だったんだし」

「それより、他の援護に向かおう。これ以上被害を出すわけには──」

 

 そうアスランが言った所で、旗艦パウエルより、信号弾が上がった。

 

「撤退信号か……ん、国防本部より電文? なっ、バカな!」

 

 国防本部からの電文を確認したタケルは、驚きの声を挙げた。

 

「どうしたの、タケル?」

「一体何が」

 

 開かれている通信モニタからうかがえるタケルの表情には驚愕の様がありありと見え、キラとアスランは言い様のない不安が胸を過った。

 

「残存部隊は……マスドライバー施設があるカグヤ島へと集結しろって」

「何?」

「それってどういう──」

 

 疑問符を浮かべるキラとアスランを余所に、タケルは嫌な予感をヒシヒシと感じていた。

 

 

 それはどこか確信めいたものをもって、タケルの胸を締め付けるのであった。

 

 

 




正直、あのシーンが近づいて来るほど作者の胸が締め付けられていく。

アカツキ・零式はドラグーンフィールドの先駆けとしてアメノイワトを持たせました。
本当ならユーラシアから技術が流れてくるのもっと後なんですけど、技術の結果を目にしていれば、彼なら作り上げるだろうという感じです。


感想よろしくお願いします。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。