機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

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PHASE-82 決心の時

 

 

 ドッキング作業が終了して少しの時を置いて。

 

 クサナギの艦橋にマリューとムウを呼び込んで、主要な人物を集めたところで今後の動きを決めるミーティングを行った。

 

 地球と月のラグランジュポイントを基点として、L1やL2といった宇宙開発の起点となった宙域にはコロニーが点在していたものの現在はほとんど使われていない。

 L3宙域にもアルテミスやヘリオポリスといった拠点的建造物がある。そして地球から最も遠いL5宙域にはプラントが。

 そんな中、彼らが一端の潜伏先として選んだのがL4宙域────中立のコロニー群があったものの、戦火の中で破損し廃棄されていった、いわば無人の空白宙域となってしまった場所だ。

 

 廃棄されたとはいえ、元々は人が暮らしていたコロニー。必需となる物資の多くを抱えている。

 その上、アスランからの情報でL4宙域のコロニーの内、何基かはまだ設備も生きているという。

 

 拠って立つ地がない彼等にとって、またとない潜伏先であった。

 

 

 

 そうして、L4宙域を一先ずの目的地へと決めたところで、ふとムウが投げかけた疑問がその場に波紋を呼んだ。

 

 

「しかし、ザフトの君は本当に良いのか? 勿論、もう一人の彼もだが」

 

 ムウから投げられた問いに、アスランは逡巡した。

 

「どう、でしょうね……」

「オーブの戦闘は俺だって見てるしな。着ている軍服にこだわる気は無いが、これからはザフトとも敵対することになるだろう。オーブの時とは違う」

 

 オーブから脱出してきたのは、敵前逃亡艦として既に連合からも追われる身のアークエンジェルと、残っていた数少ないオーブ軍。

 これから彼等が何をするにしても、地球とプラントのどちらにも属さない第3勢力となる。

 少なくともザフトの正規軍人となるアスランとディアッカには、その立ち位置を確定させる必要があるだろう。

 ムウの疑問は当然であった。

 

「覚悟はあるのか? パトリック・ザラの息子である君が、俺達と一緒に戦う覚悟が」

「そんなものは在りません。俺はずっと父の言いなりで戦ってきただけで。だから──」

 

 アスランは迷いを捨てる様に一度首を振った。

 

 ずっと迷い続けて来た。

 キラと戦う事になり、ラクスにも言われ、自分は何のために戦えばいいのだろうか。

 迷い続けいつまでも中に浮いていた想いに芯をくれたのは、カガリの言葉であった。

 

 立場に従わず、自分の意思に従えと。

 

 言われたその時は理解できていなかった言葉であったが、オーブの戦いの折にそれを理解した。

 それまでの自分はザフトのアスラン・ザラでしかなかったと。

 自身を形作るはずの根幹である、“自分”が抜けていたと。

 そして今の自分は、もう選んでここにいる…………いや、ここに居たいと思っている。

 

 だから、アスランは決心した。

 

「シャトルを一機、貸していただけますか。これまでの自分を、精算して来ます」

「アスラン……それって」

「プラントに帰る。父上とちゃんと話をして、その上でこちらに戻って来ます」

 

 それはとても難しい、不可能と言って良い話。

 そもそも最新鋭機に乗っていた軍人が、何を話し合ってきたところで国外に出てこれるわけがない。

 拘束、軟禁は必須。場合によっては監禁か今のひっ迫した戦況であれば不安要素であるアスランは銃殺の可能性だってある。

 ジャスティスもまた、核動力搭載機なのだ。

 

 決心をしたアスランの姿に、だがタケルは待ったをかける様に声を挙げた。

 

「アスラン、本気なのそれ?」

「本気だタケル。俺はプラントに戻る」

「自分がどれだけ無謀なこと言ってるか分かってる?」

「分かっている」

「分かってないよ。今から自殺しますって言ってるんだよ」

「それでも行かなきゃいけないんだ!」

「そんな無鉄砲に行かせるわけないでしょ!」

 

 アスランの頑なな答えに、タケルもまた声を荒げた。

 睨み合う2人に、その場にいた者達は静まり返った。

 

 小さくため息を一つ付いて、タケルは落ち着いてから口を開く。

 

「はぁ、もう──帰って来るプランは?」

「考えていない」

「確認するけどただ死にたいわけじゃないよね? それなら止めないよ」

「そ、そんなつもりは」

 

 完全にノープランのアスランに、呆れを超えて戦慄も超えてタケルは表情を喪った。

 こんな考え無し人間がザフトでは特務隊だと言うのか──連合の勝利も近いと思えた。

 

「──わかったよ、僕がなんとかする。カガリ、アカツキ借りるよ。エリカさん、アカツキ少し弄るので手伝ってください。あとサヤ、特殊潜入任務想定で装備揃えておいてくれる?」

「構わない、兄様」

「それじゃ格納庫に行ってるわね」

「了解しました、お兄様」

 

 疑問を抱かず応じる3人に、アスランは思わず慌てた。

 

「お、おいタケル。俺の勝手な都合に君達を──」

ジャスティス(あんなもの)をお蔵入りさせたくないんだよ。アスランが死んだら誰がアレつかうのさ」

「君が使えば良いだろう」

「嘗めるな。僕のシロガネはジャスティスに劣らない。ただでさえ僕達は戦力が少ないんだ。ケリを付けに行って簡単に死なれたらたまったもんじゃない。決心するなら、ちゃんとこっちで戦う決心をしてもらうよ」

 

 そう言って、タケルはクサナギの格納庫へと向かってしまう。

 

 あれよあれよという間に話が進んでいったアスランは呆気にとられ、キラとマリュー、ムウはどこか懐かしそうにそれを見送った。

 

「久々に見た気がしますね。タケルのあの姿」

「今度は何をするんでしょうね」

「ザフトの坊主。覚悟しておいた方が良いぞ。あいつ、納得いく形にするまで譲らねえぞ」

「はっ? と言うかタケルは一体何をあんなに──」

「仕方ないよ。少し前にお父さん達を亡くしたタケルが、アスランの無謀な覚悟を許すわけないし」

「あっ、それは──すまない、カガリ」

 

 傍にいたカガリに思わず謝罪の言葉を向けた。

 無神経であったのだろう。死なせたくない父親を、国の為に仕方なく犠牲にしたばかりのタケルとカガリ。

 それを思えば、今のアスランの覚悟のなんと軽く浅はかな事か。

 

「──ほんと、もう少し配慮しろよな。そんな簡単に死ぬことを覚悟されたら……ツラいんだぞ」

 

 話の途中でアスランが死ぬことを想起したのだろう。

 身体を震わせ、またも涙を滲ませそうなカガリの様子にアスランは思わずカガリの手を握った。

 

「すまなかった……タケルの言う通りだな。無謀で無鉄砲だった。ちゃんと、帰ってくるために全力を尽くす」

「そろそろ信じなくなるぞ、お前のそういう言葉……兄様の戦死の嘘つかれたの。私まだ忘れてないからな」

「そ、それは……すまなかった。俺も知らなくて」

「だから、ちゃんと今回は嘘にしないでくれ……信じて待ってるから」

「あぁ──必ず」

 

 完全に2人の世界に入ってしまったカガリとアスランを遠巻きに見つめ、その場に残ったものは静かに己の成すべきことへと移っていった。

 

 

 余談だがモニタリングしていたエリカの策略でこの映像を見たタケルが、アカツキのコクピットでアスラン抹殺計画を立案し始めたとか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 プラント本国は少し前より混乱状態にあった。

 

 ザフト大規模作戦であるオペレーション・スピットブレイクの失敗。

 それに伴い、プラントの歌姫であるラクス・クラインが国家反逆罪の指名手配。

 崩れ去った平和の偶像が失われ、プラント市民だけでなく、ザフトの軍人達にまで影響は波及した。

 

 元々世論には穏健なクライン派と主戦なザラ派の二つに分かれていたこともあり、ラクス・クラインは利用されているだけであったり、この騒ぎこそがザラ派の陰謀であったりと、真偽不明な噂が流布され、人々は信じるべき真実を見失っていた。

 

 極めつけは、プラント国内を流れる放送である。

 

『私達は何処へ行きたかったのでしょうか? 何が欲しかったのでしょうか? 戦場で今日も愛する人達が死んでいきます。私達は一体いつまで、こんな悲しみの中で過ごさなくてはならないのでしょうか。戦いを終わらせることが……』

 

 可憐な少女の声が紡ぐ、戦いを忌む反戦の放送。

 彼女を信じる者は未だ多く、プラントではラクスの声に応する穏健派の人間が根強くいた。

 クライン派として組織だって動き、各地を転々として未だラクスが捕まらないのは彼等の協力があってこそだろう。

 

 そして、そんなラクスの放送に対抗するように、パトリック・ザラも会見を行う。

 

『ラクス・クラインの言葉に惑わされてはなりません。彼女は地球軍と通じ、軍の重要機密を売り渡した反逆者なのです。戦いなど誰も望みません。だが、では何故このような事態となったのでしょうか? 思い出していただきたい。自らが生み出したものでありながら、進化したその能力を妬んだナチュラル達が、我等コーディネイターへ行ってきた迫害の数々を! にもかかわらず、我等の生み出した技術は強欲に欲し、創設母体であるプラント理事国家から連綿と送りつけられてきた、身勝手で理不尽な要求の数々を』

 

 不安を煽り、ナチュラルへの憎しみを煽る。そうして、自身が進める主戦主義へと扇動していく。

 

 

 

 そんなプラントの情勢を、帰国したラウ・ル・クルーゼは面白そうに見ていた。

 

「ふっ、ラクス・クラインには議長も大分手を焼いておいでの様だな。よもや、それで我等に帰国命令が出たわけでもなかろうが」

「しかし、私には信じられません。彼女が反逆者などと……」

「まぁ、そりゃ簡単には信じられねえだろうがよ。事実としてアラスカじゃ情報漏洩があったわけだしな」

「それが彼女の仕業だと? 本当にそう思うのかミゲル」

「いんや。そうは思えねえさ。だけど、そう思うからこそ、穏健派にとって象徴みたいに前面に押し出してきてんだろ。いわばザラ議長への当てつけっつーか」

「その通りだ。イザーク、君がそんなことでどうする? 我々はザラ議長の下国防の為に戦わなければならない戦士だ。その様に戦いに迷っては、大事なものも失う」

「し、しかし──」

「様々な人間の思惑が絡み合うのが戦争だ。目の前の情報に踊らされて、戦う相手を見誤るなよ」

 

 ラウの言葉に押し黙ったイザークは、再び聞こえてくる放送へと耳を傾けるのであった。

 

 

 どこか御しきれないしこりを、胸の奥に抱えたまま……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戦いを止め、道を探しましょう。

 求めたものは何だったのでしょう。幸福とは何でしょうか。このように戦いの日々を送ることこそ、愛する人々を失っても尚、戦い続けるその未来に、間違いなく待つものなのでしょうか」

 

 

 

 ラクス・クラインは、ひたすらに訴え続けていた。

 

 追われる身となってからしばらく。今や逃げる場所は限られてきていた。

 情勢はどんどん切迫してきており、未だ穏健派の議員と動き続けているシーゲルとは会えていない。

 

 どれだけ大切に扱われても、ラクス・クラインに出来ることはただ、平和の詩を謡うだけ。

 その陰で、次々とクライン派の人間は囚われ、反逆者として殺されている。

 

 これしかできない──そう何度も歯がゆく思うが、それをラクスは押し殺し続けた。

 不安も、恐怖も、見せるわけにはいかなかった。

 それが象徴たる自身の役目だから。

 

 

「ふぅ……」

 

 放送のスイッチを切り、小さく息をつく。

 空模様は夕暮れ時であった。

 

「ラクス様」

「また、移動ですのね?」

 

 少しだけ申し訳なさそうにかけられた声音に、ラクスはそれを察した。

 今のラクスの身辺警護を任されている責任者マーチン・ダコスタである。

 

「申し訳ありません」

「いいえ、私は大丈夫ですわ。何か、新しいお話は?」

「良い話は特に。ビクトリアとオーブが地球軍の攻撃を受け、マスドライバーがオーブのは破壊。ビクトリアの者は奪還されました」

 

 少しだけ、驚きの表情がラクスに浮かんだ。

 

「ビクトリアにはザフトの部隊もかなり配置されていると聞きましたが……」

「地球軍は、新しくMSを投入したようです。ザフトの優位性が、これで無くなったと、国防軍でも厳しい見解が出ているみたいで」

「そうですか……私達も急がねばなりませんね」

 

 その時、ダコスタの通信端末に連絡が入る。

 

「失礼──どうした? なに、シーゲル様が!?」

 

 ラクスから背を向け通信に出たダコスタであったが、その直後驚きにその顔を染めた。

 

 

 

 それはラクスの父、シーゲル・クラインの訃報であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「確認するよ、アスラン」

「あ、あぁ……」

 

 どこか引き気味にタケルの声に答えて、アスランは頷いた。

 

 アスランの目の前には、特に大きな変化はないアカツキが鎮座し、そして更に目の前にはサヤが用意したであろう装備を携えたタケルとサヤの姿があった。

 

「地球軍のシャトルで行くんだ。まずは早めに通信。認識番号等の確認でちゃんと辿り着いてよ。ここで撃ち落されるとか洒落にならないからね」

「分かっている。さすがにそれはいくらザフトでもありえないから安心しろ」

「──ホントかなぁ。とりあえず、その後はお父さんとケリ付けてくるんでしょ。最悪でも監禁までに抑えて。まかり間違ってその場で射殺も勘弁して」

「あぁ、わかっているさ」

 

 やや投げやりな答えとなって来るアスランに、サヤの視線が鋭くなるがタケルは視線で抑えて話を進めていく。

 

「その首にある護り石。石を外すと根本に発信機が仕込んであるから。監禁されたらそれ起動して」

「ちょっと待て。この石はカガリからもらったものなんだがどういうことだ?」

「カガリが誘拐された時困るから、以前に僕が送ったものだし」

「そうか……流石だよ全く」

 

 らしいな、と納得しながらアスランは押し黙った。

 確かにタケルの過保護っぷりを考えればわからなくはない。

 

「後はバッテリー追加で稼働時間を延ばしたアカツキのミラージュコロイドで、僕とサヤがプラントに近づいて潜入するから、どうにか救出にいくよ」

 

 ミラージュコロイド。

 それがタケルが持ち出してきた秘策であった。

 元々はXシリーズのブリッツに搭載されていた機能だが、アークエンジェルがオーブに寄港した際にデータは貰っていた。

 タケルがアカツキの設計をした際に、アメノイワトと併せてアカツキの生存能力を高めるためにバックパックでの搭載を予定していた機能である。

 あくまで緊急時の避難用であったため、背後に守るべきオーブがあったオノゴロで戦いでは、逃げる事だけはしたくないと言うカガリの意向でオミットされていたのだ。

 

「もう一度聞くが、ホントにそれで何とかなるのか?」

「無理なら諦めて」

「お、おい!」

「だって仕方ないでしょ。バッテリーを追加したところで限界があるし、アスランが発信機を起動するのが遅ければ、僕達は諦めて撤退することになる。だから、アスラン次第だよ」

 

 死にたくなければ何とかしろ──そうタケルの視線が物語っていた

 生き帰って来る為の最善の策は考えた。これ以上は、アスラン次第だというのは間違いが無い。

 

 タケルの視線を受けて、アスランは大きくうなずいた。

 

「──ありがとう、タケル。俺の無茶な願いにここまで答えてくれて」

「はっ? 何言ってるの?」

「えっ?」

「言ったでしょ、ジャスティス使って戦ってもらわなきゃ困るって。僕は父さん達からオーブを……この世界の行く末を託されてるんだ。僕は絶対に僕達が望む未来を実現させる。その為に必要な事をしているだけ」

「あ、あぁ……なるほど?」

「だから、お礼なんかいらない。そんなことより死なずに帰ってきて戦ってくれれば良いさ。あと分かってるだろうけど……カガリを泣かせたら、絶対ダメだからね」

 

 いっそそっちが本音だろうと言わんばかりの殺気交じりの声を放つタケルに、アスランは冷や汗を流した。

 

「わかったよ。絶対──だな」

「そうだよアスラン。絶対……じゃないとタケルが本当に切れるからね」

「既にその片鱗は見たよ──了解した」

 

「それじゃ、行こうか」

 

 タケルの声にキラ、アスラン、サヤの3人は頷いて、搭乗機へと向かった。

 アスランはシャトルに。キラはアカツキを牽引するためフリーダムに。

 そしてタケルとサヤは2人でアカツキに乗りこんだ。

 

 

 

 こうして4人はプラントのあるL5宙域へと向かうのだった。

 




生存能力考えるならミラコロは考えるでしょう。と言う事でアメノイワトに続くアカツキの防御兵装第二弾

アニメのアスランはクライン派いなかったらどうするつもりだったのか。
あそこの展開は謎しかないです。
キラとも話してて戻る気でいたはずですよね?考え無しが過ぎるでしょ。

っていう感じで主人公がおこでした。

本当に、作者は意図してそんなつもりは無いんですが。アスランが悪く描かれちゃって・・・まずいですね。本当にそんな気は無いんです。


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