「んっ──また、なのね」
小さな呻きと共に、ユリス・ラングベルトは目を覚ました。
身体に幾つも感じられる鈍痛。
ナタルから、オーブで目にした自分の分身の事を聞き出そうとして……自分を抑えられなくなったユリスを見咎めたアズラエルに、昨夜もまた酷く虐待を受けた。
一糸纏わぬ身に刻まれた傷の数々。
これがユリス・ラングベルトの人生の記録である。
ムルタ・アズラエルはブルーコスモスの盟主なだけあって、コーディネーターへの嫌悪が激しい。
嫌悪などと言う言葉では形容できないほど、その頭はコーディネーターという種を忌み嫌っている。
そんな彼にとって、洗脳教育が施され逆らう事のできないユリスの存在は良い玩具であった。
最高のコーディネーターという実験の残骸であるユリス。
生まれながらにして持たされた能力が高く、利用すれば大きな戦力となる事は間違いが無かった。
そして彼女の能力が高い程、それを完全に従えた時に満たされる征服欲は甘美に過ぎた。
ユリスの存在は、アズラエルを嗜虐へと駆り立てたのだ。
元よりブルーコスモスの盟主として、コーディネーターはナチュラルの管理下で良い様に使われることこそが当然、と言った歪んだ意見をアズラエルは持っている。
最高のコーディネーターという彼にとって最も忌み嫌う存在故に、ユリスを足元において完全に管理できるのは、彼にとってある種至福とも言える行いであった。
「痛いって思う事も、余りなくなってきたかな」
鈍痛は感じる。しかし痛みとしてはもう余り認識していなかった。
様々な行為に痛いフリはしているが、それは彼の欲を満たすためでしかない。
痛いと感じる心はとうの昔に消えていた。
ただ、生きてやり遂げる事がある。それだけであった。
「兄さん、早く会いたいな」
静かに、彼女の形の良い唇が紡ぐ言葉。
その声音が孕む情は、決して恋慕ではない。
彼女が瞳に宿すのは、力強い戦意の光。
ただ、戦いだけを求めた。
戦ってる時だけが彼女は唯一の自由だった。
MAやMSのコクピットにいる時だけ、ユリスは自分を全て曝け出せる。
敵機を次々と撃ち抜く感覚
敵も味方も死んでいく中で1人だけ生き残る事に陶酔していた。
生きている実感が胸を満たし、生まれてきた意味をそこに見出した。
『おもしろい少女だ。そこまで目を輝かせて戦う者を私は知らない』
戦場で出会った。
仮面をつけた奇妙な男であった。
『最高の舞台を整えたくは無いか? 美しい君が躍るに相応しい、最高の戦場を』
齎される言葉に、ユリスはにべもなく飛びついた。
戦闘中のユリスにとって魅力的過ぎる提案に、コクピットから降りるまで彼女の心は跳ねたままであった。
そうして、彼と長らくの協力関係を続けて、舞台は整いつつある。
既に退く事のできない両者。結末は自ずと互いを滅ぼす終末戦争へと向かっている。
「もうすぐ、もうすぐだよ兄さん。
最高の舞台で、最高の死闘を演じて……そして、私に殺されてね。その後は彼が世界を道連れにしてくれるから──ふふふ、あははは」
狂気を湛えて、少女は嗤う。
軍服に袖を通し、彼女は来る戦闘に備えMS格納庫へと向かった。
最後の扉を、開くために──
L4宙域──コロニーメンデル。
現在の戦争が始まる少し前、コロニー内研究機関においてバイオハザードを起こしてしまった為に廃棄となったコロニーである。
そのおかげか、コロニーとしての設備自体はそれほど大きな損傷もなく生きており、生活必需物資の補給も可能と、潜伏するにはもってこいの場所であった。
アークエンジェル、クサナギ、そしてエターナルの3隻を代表する者達は、一堂に集まり今後の方針を決めていた。
現在最も戦火の中に動きを見せているのは地球軍。とりわけ月基地で準備が進んでる月艦隊である。
奪い返したビクトリアから、次々と人と物を送り出しており、それらを編成してプラントへの一転攻勢と息巻いている状況だ。
その影には、ユーラシア連邦の衰退に合わせて実質的に連合の実権を握った大西洋連邦と、その裏で多くの影響を与えているブルーコスモスの名がチラつく。
元々がコーディネーター憎し、プラント討つべしで凝り固まった人間たちの巣窟である。
動き出すのは時間の問題であった。
しかし、同様にプラントも徹底抗戦の姿勢。
ナチュラルを排し、コーディネーターこそが新たな人類とするべく戦力を充実させている。
新型のMSは配備されているし、MSの技術においてはやはり連合より一枚も二枚も上手だ。
こちらもまた、攻勢こそは予感させないものの、決して退く気のない気配である。
とにもかくにも、これらに応じて止めるには十分な準備が必要であった。
緊急発進してきたエターナルは、まだ艦システムの調整が実戦に合わせて仕上がっていない。
また、積載してきた弾薬等の補給物資も、アークエンジェルやクサナギと共有が終わっていない。
クライン派が持つパイプにより、プラントから補給できるラインも確立されているが、そちらとの連携も確かなものにしておかなくてはならない。
たった3隻の弱小勢力なのだ。
何をするにも、まだまだ戦力が整っていないこの状況は決して十全とは言えない。
さて、そんな準備に忙しい中、タケル・アマノとカガリ・ユラ・アスハ。そしてキラ・ヤマトの3人もまた、クサナギの格納庫でアカツキの調整に追われていた。
コクピットに乗るカガリ。
機体外部のコネクタからシミュレーターへと接続し、実際のコクピット環境下で、とある武装のテストシミュレーションをしていた。
「──っと、ミッション終了。終わったぞ、兄様」
シミュレーション用のヘッドギアを外して、カガリが終わりを告げる。
コクピットの外から様子を伺っていたタケルとキラは、落ち着かない様子でカガリがコクピットから出てくるのを待つ。
「うん、お疲れ。どう? キラと僕で作ったサポートAI“トモシビ”の出来は?」
「凄く楽になった。イメージインターフェスによる制御もかなり柔軟に受け取ってくれて、殆ど認識の齟齬がない。まだ僅かにズレが出る時はあるが、使って行くうちに覚えてくれるんだろ?」
「そうだね。それがAIの強みだし」
「苦労したよ本当に……タケルがカガリの思考パターンをこれまでの訓練からデータ化してなかったら、絶対作れなかったし」
「僕はそのデータからキラがここまでの出来に仕上げてくれたことにびっくりしたけどね。本当、助かったよ。ありがとう」
ひとまずの成功を見れて、タケルとキラは嬉しそうに拳を軽くぶつける。
カガリはそれをなんとなしに見つめた。
ここ最近でよく2人がやる仕草であった。何か上手くいった事があるとよくやっている。
それをする時の2人がなんだか妙に誇らしそうで、嬉しそうで。カガリは何となくそれを見るのが好きであった。
サヤから聞かされた、タケルとキラの真実。
カガリの本当の兄弟であるキラ。そして本当は兄妹でなかったけれど、今も変わらずカガリが兄と慕い、そして変わらずカガリを大切な妹として扱ってくれるタケル。
2人が、それこそ双子の兄弟の様にしている姿を見せてくれるのが、嬉しいのだ。
「これで、アカツキもようやく完成というわけだね」
タケルは染み染みと呟いた。
オーブでアイシャに協力してもらい、火器管制の大部分を担うアカツキ用のサポートAIの開発。
アークエンジェルに乗る以前から、タケルがこれまでカガリに課してきた膨大な訓練の数々と、それらから抽出されたカガリの思考パターンをデータ化。それをキラがアルゴリズム化してプログラミング。そうしてできたサポートAIを、今度はタケルがアカツキの兵装に適合させて学習させ出来上がったのが、アカツキ用火器管制サポートAIトモシビである。
宇宙に上がってからもずっと製作を進めていたアカツキの武装。
バックパックだけで未完成だったそれが仕上がりを見せていたため、カガリが扱うためのサポートAIの作成は急務であった。
ここ数日はタケルもキラもそれにかかりっきりであったがこれにてそれも完成。
今ここに、カガリが乗るアカツキ・零式が正式に完成したのだ。
金色に輝く、完成したアカツキを見上げてタケルは感嘆に大きくため息をついた。
「くぅー、疲れたけど嬉しいもんだねぇ。こうして出来上がったのを見ると」
「はは、僕も嬉しいよ。タケルとカガリの頑張りの結晶みたいなものでしょ」
「うん、もはや僕とカガリの子供みたいなものだね」
「ぶっ!? に、兄様! 変な事を言うなよ!」
思わず、カガリは驚きと共に吹き出してしまう。
「へっ? 何がさ?」
「い、いや、だからぁ……」
私達は兄妹だろう!
そんな言葉を吐こうとしたカガリだが、タケル自身はまるでおかしな事を言ったつもりはないと言う感じである。
「オーブを護りたい。そう思って父上が……父さん達が僕とカガリに求めた力。
僕が乗るシロガネには、敵を穿つ剣となるべく最高の速さと高い継戦能力を。カガリが乗るアカツキには、国を護る盾となるべく絶対に倒れない防御能力と、味方を守る防御兵装を。
そしてアカツキを使いこなす為に、カガリがこれまで頑張ってきた全てを注ぎ込んで作ったAIを載せてるんだから。この機体は設計した僕以上に、使い手であるカガリのこれまでがなけりゃ完成しなかった。
だから、僕とカガリの子供みたいなものだって言ったんだけど……」
ぐっ、とカガリは言葉に詰まった。
兄であるタケルとの子供……などと字面だけで変な想像へと至った己を呪う。
先日エターナルで開催された交流会の事もあってか、思考が完全に色ボケていた。
自分のことに関してはアスランよりも酷い朴念仁ぶりを発揮するであろうタケルが、カガリが想像したような思考を回すわけがないのだ。
「お兄様、シモンズ主任がアイシャのルージュの調整を手伝って欲しいと」
「ルージュね、ありがとうサヤ。行ってくるよ」
「6番ハンガーです」
「りょーかい」
そうして離れていくタケルを見送る一方で、残ったサヤとキラは妙な間をとって視線を交わした。
ちなみにカガリは未だ悶々としている。
「サヤ、オオトリ装備の調整はどう? 僕で良ければ手伝うよ?」
「結構です、間に合っています。あと、気安く近寄らないでください」
取り付く島もないと言った様子のサヤに、キラは僅か足を踏み出すのを躊躇した。
「うっ、ごめん。でも僕としてはもう少し君とは仲良くなっておきたいんだけど……タケルの妹なら、僕にとっても他人とは思えないわけだし」
「他人なのでお気になさらず。他人のままで居させてください」
またも展開される塩対応に、キラは気まずそうに苦笑い。
何故だろうか、ここ数日で極端にサヤからの心象が悪い気がする。キラは今後のためにも彼女とは良好な関係でいたかった。
「うぅん……僕、何かやっちゃったかな?」
「貴方の発言とカガリ・ユラ・アスハのせいで酷い目に遭いました」
「──カガリ、何したの一体?」
キラ自身に何かをした覚えはない。必然もう1人名が挙がったカガリに大きな原因があるだろうと、悶々と唸っているちょっと色ボケた姉(仮)に険しい視線を向ける。
「んーラクスに、キラがサヤを誑かしたと話した、かな」
「カガリ!? 何て事言うんだよ!」
「事実だろ? “僕が君を守るよ”、なんてプロポーズみたいなもんじゃないか」
「くぅ……それでここ数日ラクスが口を聞いてくれないわけか。納得いったよ全く!」
ここ数日、サヤとも上手く付き合えずどうすれば良いかとラクスに相談しようと思ったら、彼女からもつっけんどんな態度をされて、キラは大いに悩んでいた。
むしろ今聞いた事を思えば相談できなくて正解だとも思えたが、とにかく大きな原因は理解できたキラは、慌ててラクスの元へ誤解を解くべく向かおうとした。
「ですがキラ・ヤマト。その誤解を解くには必然、お兄様と貴方の事を話さなくてはならないでしょう」
「あっ」
それはそうだ。普通の関係であれば、キラの発言は出てこない。
キラとタケル、そしてタケルの性格という特異な環境が揃ってこそ出てきた発言である。
それを知らなければ、カガリが言う様にプロポーズ紛いの言葉と取られても仕方ないのだ。
「ですが、この様な些事でそれを明かす様な事をサヤは認めませんよ」
「八方塞がり!?」
キラの先手を取って潰された道。
サヤとしては自身のペースを大いに乱され、愛する兄に余計な誤解を生んでくれたキラへの意趣返しが伺える。
恐らくラクスから受けた恐怖の詰問に対する仕返しの方が強いだろうが……それでも、キラの狼狽える姿を見れて満足な様子だ。
「くっ、僕は一体どうすれば……」
こんなくだらない事だと言うのに、今のキラは正に切羽詰まったという様相が相応しい。
あの手この手を考えて、ラクスとの誤解を解こうと思うも有効な言葉は思いうかばなかった。
だが、そんなキラを救う一手がコロニー外部から齎される。
「っ!? この揺れ!」
「この感じは──外からです!」
コロニーメンデルを、大きな衝撃が揺らした。
L4宙域へと到達したドミニオン。
破棄されたコロニーの残骸といったデブリも漂う中、目標であるアークエンジェルを探して進んでいた。
「さぁて、どこら辺に居るんでしょうね?」
「アズラエル理事は、ここに潜伏していると確信しておいでで?」
「そりゃあね。情報の精査はしているつもりだよ」
自信たっぷりな様子のアズラエルに、ナタルは疑問符を浮かべた。
そもそもこのL4宙域に向かう事も、彼が言い出したこと。
その根拠はプラントからの情報だと言う話で、ナタルとは一度議論している。
情報の正確性を疑うナタルと、ザフトも同様にL4に向かっている事から、本当だったらどうするのかと危惧するアズラエル。
彼の立場を考えれば、ナタルにそれを拒否する権限は無い。
行けと言われればそれまでであった。
「艦長、ディザスターで待機中のラングベルト少尉から入電です。コロニーメンデルに、敵の気配ありとの事」
「何? まだ待機命令すら出していないぞ。どういう事だ?」
「決まりですね艦長さん。コロニーメンデル……目標を定めましょう」
「アズラエル理事、しかし──」
「彼女が言うなら間違いありませんよ。大丈夫です、私が保証します」
逡巡──太鼓判を押す様なアズラエルの雰囲気に、ナタルは抗弁を諦めた。
どの道ここまで来た以上、抗弁する意味もない。
そして、コロニーメンデルはもう目と鼻の先であった。
「コロニーメンデル内、戦艦と思しき熱紋が3──内1隻をアークエンジェルと確認!」
「うーん、良いねぇ。どうやらザフトの部隊もまだの様ですし……それじゃ早速始めるとしましょうか。あの艦は沈めちゃっても構わないので、何とかあの高性能機2機……あー、できればあの銀色か金色のも出てきたら捕獲したいですねぇ──できますか、艦長さん?」
敵機の鹵獲──簡単に言ってくれる、とアズラエルの言葉に反感を覚えるも、ナタルはそれを直ぐに飲み下して息を1つ吐いた。
やれるかなどわからない。そんな事は戦端が開かれてからでないと読めるはずもない。
やることはただ、己の職務を全うするだけ。
「本艦はこれより戦闘行動に入る。
イーゲルシュテルン、バリアント起動。ミサイル発射管全門スレッジハマー装填。ローエングリン2番展開。照準、コロニー内アークエンジェル級1番艦────アークエンジェル!」
矢継ぎ早に下される指示を、どうにかこなしていくクルーに、ナタルは僅か意気が上がる。
ここまでの道中もしっかり訓練させておいたのは無駄ではなかった。
後は、開戦の合図を挙げるだけ。
「ローエングリン2番──てぇ!!」
宇宙を切り裂く巨大な閃光が、最後のステージへの狼煙となって奔った。
響き渡る轟音。揺れるコロニー。
ドミニオンが放ったローエングリンが、メンデルの宇宙港を直撃して揺らした。
幸いにも宇宙港を抜いてそのままアークエンジェルへと届くことは無かったが、瓦礫の1つ2つは飛んでくる。
それらが船体を更に揺らす中、CIC席にいたサイが即座にメンデル外部の索敵を行う。
「接近する大型の熱量……戦艦クラスかと思われます!」
「何ですって!」
「距離700、オレンジ11、マーク18α。ライブラリ照合──ありません!!」
敵襲──それを理解し艦橋の空気が一変する。
「総員、第一戦闘配備!」
アラートの発令。
第一戦闘配備の報が、クサナギとエターナルにも発信された。
クサナギでアラートを聞いたタケル達も一気に警戒態勢へと移っていった。
「ちっ……カガリ、まずは艦橋に上がって状況の確認。アカツキができたところでカガリの役目は指揮官だ」
「分かってる!」
「サヤ、アストレイで待機! キラもエターナルへ!」
「わかりました」
「うん、直ぐに戻るよ」
一斉に動き出す中、タケルもシロガネへと乗り込もうと思ったところで、ふと違和感に気づいた。
「なんだ……この、感じ」
見られてる? 見つめられている? いや、もっと何と言うか根源的な──繋がっている。そんな気配。
わかる理由は、わからない──だが、今感じてるこの違和感が、タケルには形あるものとして感じられた。
オーブの戦いで出会った、彼女が近くにいる。その気配を。
嫌な感触を振り払うように、タケルはシロガネへと急いだ。
「アークエンジェル発進。港の外へ出ます!」
「ラミアス艦長!」
「キサカ一佐、クサナギは?」
「出られる、大丈夫だ!」
「すまない、エターナルはまだ最終調整が完了していない!」
苦々しく申し出るバルトフェルドの声に、マリューはキサカと小さく頷き合う。
「では港の中で待機を。敵がザフトか連合かわかれば、その狙いもわかります」
「わかった、すまない!」
通信を終えたところで、マリューはいつも通りに艦橋内へと指示の声を張り上げた。
「イーゲルシュテルン、バリアント起動。艦尾ミサイル発射管全問装填。戦闘態勢のまま発進。港の外へ!」
アークエンジェルのスラスターが稼働し、白亜の戦艦は一気にメンデルの外へと躍り出た。
周囲には撃ち砕かれたメンデルの残骸が漂う中、敵勢力の索敵を開始。
先のサイの報告通り、敵反応は戦艦1隻のみであった。
戦闘を開始するべく口を開いたマリューであったが、それよりも早くアークエンジェルには敵艦からの通信が飛び込んできた。
『こちらは地球連合軍、宇宙戦闘艦ドミニオン。アークエンジェル、聞こえるか!』
凛とした強い声。要らぬ言葉の無い、端的な物言い。
忘れようはずがない、嘗てアークエンジェルで共に死線を潜り抜けてきた、懐かしき副長の声であった。
「──ナタル」
「バジルール、中尉」
口々に驚きの声が艦橋に上がる中、シロガネに乗っていたタケルもまた、全周波で届いていた彼女の声を聞いていた。
「ナタル、さん……どうして、貴女がそこに」
”必ず生き残って、また君と会う事を約束しよう”
脳裏に浮かぶ優しい声音と小さな笑み。
生きて再会を果たそうとオーブで交わした約束を、タケルは思い返した。
死に別れたくは無かった──だから、生きてもう一度会いたいと願った。難しいだろうと苦い顔をするナタルにわがままを言って、タケルはただの口約束でも良いから彼女との間に縋るものが欲しかったのだ。
それが、こんな形で果たされることになるとは──タケルは、目の前の現実に苦痛の表情を浮かべた。
『本艦は、反乱艦である貴艦に対し、即時の無条件降伏を要求する』
「わかってる……わかってるさ、これが仕方ない事だって言うのも」
彼女が地球連合の士官であることも知っている。大西洋連邦が地球連合の一部であることも理解している。
だが、それでも──
『この命令に従わない場合は──貴艦を撃破する!』
「一番憎い奴らの中に、貴女がいるなんて……あんまりじゃないですか……」
凛とした声が告げる敵対の言葉────悲しき
サポートAIトモシビは燈火から。カガリの篝火にあやかってと言うかそんな感じ。
あと主人公的にはオーブの意思を継ぐ種火としてカガリを支えると言う意味も込めてる。
盟主王は別にロリコンとかじゃないです。
ただ最もコーディネーターを忌み嫌うが故に、最も手軽に鬱屈した欲求を晴らす最適な玩具を手元に置いて利用していると言うだけです。
さてさて、望まぬ再会に揺れ動く間もないまま始まる事になるだろう戦闘。
どうぞお楽しみください。