機動戦士ガンダムSEED カガリの兄様奮闘記   作:水玉模様

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PHASE-88 届かぬ願い

 

 

 

 嘗ての仲間、ナタル・バジル―ルによって付きつけられた無条件降伏の提示。

 

 そして従わない場合の撃破勧告。

 

 不幸な宿縁……だが、それを素直に受け入れるわけにはいかない。

 戦闘体勢へと入っていくアークエンジェル。

 

「ナタル……」

「艦長、敵艦の光学映像出ます!」

 

 艦橋のモニターに映る敵艦の姿。

 それを見た者達は思わず目を見開いた。

 

「アーク、エンジェル……?」

「同型艦か」

 

 そこには白亜から黒に変わった以外はなにも変わらない。アークエンジェル級2番艦、ドミニオンの姿があった。

 

『お久しぶりです、ラミアス艦長』

「──ええ、久しぶりねナタル」

 

 思い浮かぶ、最後の別れの時。

 名残惜しくもアラスカ基地で別れた時には、2人ともこんな再会になるとは思っていなかった。

 

『このような形でお会いすることになって、残念です』

「そうね。本当に……」

『アラスカ基地での事は、自分も聞いています……ですが、どうかこのまま降伏し、軍上層部ともう一度話を! 私も及ばずながら弁護致します──本艦の性能は、よくご存知のはずです」

 

 厳しくも優しい──マリューがよく知る彼女らしい言葉であった。

 最初から裏切者と呼んで撃ってこないだけでも、反乱艦であるマリュー達には過ぎた対応である。

 その上で最大限の弁護までしてくれると……だが。

 

「ありがとう、ナタル────でも、それは出来ないわ!」

 

 モニタの奥で、ナタルはさして驚くこともなくマリューの声を受け入れた。

 ナタルが知るマリューも、こんな降伏勧告を受け入れることが無いとはわかっていた。

 ただ、このままこうして戦いたくは無かったのである。

 

『──ラミアス艦長』

「アラスカだけの事では無い。私達はオーブでも地球連合の非道を見てきた……今の私達は、地球軍そのものを信じていません。よって降伏、復隊はないわ!」

『あっはっはっは! 何をするかと思えば、呆れますね艦長さん』

 

 毅然とした態度を見せるマリューの言葉に、通信越しに別の声が届く。

 

『言って分かれば、この世に争いなんておこりません。分からないから敵になるんでしょう? そして敵は、討たねば』

『アズラエル理事……』

 

 ナタルがつぶやいた名前に、マリュー達だけではない。

 クサナギに居たカガリやキサカ。何より、タケルは目を見開いた。

 

「ブルーコスモスの盟主……オーブを攻めてきた、張本人……」

『カラミティ、フォビドゥン、レイダー、ディザスター発進です。不沈艦アークエンジェル……今日こそ沈めて差し上げる』

 

 聞こえてくる気障な声音が、タケルの神経を逆撫でる。

 ぎりぎりとシロガネの操縦桿を握る手に力が籠るが、それと同時に胸の内を悲しみが埋める。

 

 何故、自分が最も殺したい人と殺したくない人が、同じ場所に居るのだろうか……

 

 ナタルがいる時点で、タケル・アマノにドミニオンは討てない。

 父を喪ったばかりのタケルは、これ以上喪う悲しみを許容できないだろう。

 それ程に、タケルにとってナタルの存在は大きくなっている。

 

 故にタケルは、最も憎むべきアズラエルにすら、その憎しみをぶつけることができない。

 奥歯を砕かんばかりに噛み締めた口元で僅かに血が滲んだ。

 

「ドミニオンよりモビルスーツの発進を確認しました!」

「キラ君! ムウ!」

『了解、出撃します!』

「続いてストライク発進、どうぞ!」

『ムウ・ラ・フラガ、行くぜ!』

 

 メンデルの目の前で戦端が開かれていく。

 

『アスラン・ザラ。ジャスティス、出る!」

『ディアッカ・エルスマン。バスター行くぜ!』

 

 フリーダム、ストライク、ジャスティスにバスターと主力となる面々が出撃していく中、アークエンジェルから遅れてメンデルを出港したクサナギも、ドミニオンを捕捉した。

 

「クサナギ、最大戦速! アークエンジェルの左舷に付け! MS部隊は順次出撃だ!」

 

 聞こえてくるカガリの声を聞きながら、タケルは必死に胸の内に渦巻くどうしようもない感情を抑え込んだ。

 いくら辛くても、タケルに戦わない選択肢はなかった。

 こんなところでアークエンジェルが討たれるわけにはいかないのである。

 

『兄様……気持ちは分かるが……』

「大丈夫、戦うよ──僕は、戦える」

 

 奮えそうな声を必死に抑え込み、タケルもまた戦場を見つめた。

 

「サヤ・アマノ──アストレイ・オオトリ、出撃します!」

 

 アストレイに乗ったサヤが……ルージュに乗ったアイシャが。そしてアサギ達3人も出撃していく。

 それを見送りながら、最後に残ったシロガネもカタパルトに接続。

 

 

「タケル・アマノ──シロガネ、出撃する!」

 

 

 迷いを抱えながらも、タケルは戦場へと飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「アークエンジェル、及び不明艦1、前進してきます。進路グリーン94、マーク3、ブラボー」

 

 開戦──それを受けて、ナタルは即座に指示を下す。

 

「ミサイル発射管、1番から6番、コリントスの終端誘導を自律制御パターンBにセットして装填。照準、オレンジアルファ17から42まで、5ポイント刻みの射角で発射せよ! 同時に転進、進路インディゴ13、マーク20チャーリー、機関最大!」

「そんな明後日の方向にミサイルを撃ってどうするんです?」

「解らないなら黙っていて下さい」

 

 直接アークエンジェルをミサイルで狙うわけではないナタルの指示に、隣で聞いていたアズラエルが訝しむも、ナタルはそれを聞き流して戦況を観測していく。

 

 前方では、さっそくMS戦の火蓋が切って落とされていた。

 

「そりゃあ!!」

 

 レイダーのミョルニルが開戦の合図となりフリーダムを狙う。

 それを躱しながらキラはカラミティをビームライフルで牽制。同時にジャスティスがフォビドゥンへと肉薄。

 連結したビームサーベルで切りかかる。

 

「はぁああ!」

「うざーい」

 

 それを回避すると同時、今度はジャスティスをカラミティのスキュラが狙う。

 既にオーブでの戦闘で互いの手の内は割れていた。2対3の数的不利も併せて、膠着状態へと陥っていく5機。

 

 その最中、互いに引かれ合うようにぶつかるシロガネとディザスター。

 

「兄さん、今日も遊びましょう」

「くっ、また君か!」

 

 ビャクヤを抜き、ビームサーベルを展開し。シロガネとディザスターも火花を散らした。

 

 

 

 

 ぶつかり合う3隻連合と地球軍。

 そんな両者を、コロニーメンデルから少し離れたところで、クルーゼ率いるザフトの部隊が観測していた。

 

 

「ふむ、既に幕が上がっているか……一足遅かったようだな」

「エターナルの他に2隻。1つは足つきの様ですが…………もう1隻はわかりませんね。対して、連合の方は1隻のようですな」

 

 戦況を観測しながら様々な推測が過ぎる。

 彼等の任務としてはエターナルの追撃──だがこうして目の前に因縁の艦であるアークエンジェルがいて、更にはプラントの大敵である地球軍もいるとなれば、取るべき選択肢も多い。

 

「ともあれ、こうも状況が分らぬのでは手の打ちようがない。私とイザークで、コロニー内部から潜入し、まずは情報収集に当たるとしよう」

「はいっ!」

 

 イザークへと目を向けながら出される提案に、イザークは小さく頷きながら返し、アデスは僅かな驚きを見せた。

「隊長自らですか?」

「ヘルダーリンとボイジンガーはここを動くなよ──コロニーメンデル、上手く立ち回ればいろいろな事に片が付く。良いな?」

「はっ!」

 

 準備を進めて、クルーゼが乗る白いシグーと、イザークのデュエルが発進していく。

 

 更なる乱入者を加え、戦場は思惑の入り乱れる混沌の様相を呈していくのであった。

 

 

 

 

 

「ゴットフリート照準! 敵戦艦は1隻だ、エンジン部を狙えば──」

 

 カガリの指示で動き出そうとしたクサナギを小さな衝撃が襲った。

 

「何だっ!?」

「わかりません! いや、何か船体に……ケーブルの様なものが!?」

 

 メンデル周囲に浮かんでいたコロニーのデブリ体。その中に含まれていたメタポリマーストリング──コロニー構造体を支える高分子超高強度ワイヤーがクサナギの船体に絡み、捕らえていた。

 

「引きちぎれ!」

「ダメです、引きちぎれません!」

「ちっ、アサギ。船体に何か絡んだ。外してくれ!」

『了解!』

 

 近くで戦闘していたアサギがビームサーベル片手にケーブルを切断しに動いた。

 

「ん? あれ、もう終わりじゃん」

 

 それを目ざとく見つけたシャニ・アンドラスは、フォビドゥンを駆りクサナギに迫る。

 戦艦とは言え、クサナギは元々オーブとヘリオポリス間を行き来していた連絡艦だ。

 フォビドゥンを寄せ付けないほどの火器が搭載されてるわけもない。

 接近してくるフォビドゥンを迎撃できるはずもなく、アサギのアストレイの背後にフォビドゥンが迫った。

 

「アサギちゃん! 気をつけて!」

「あぁん?」

 

 反応したジュリがスナイプパックのビームスナイパーライフルで牽制。

 僅かに回避行動を取らせて動きを抑える。

 だがそれも一瞬。そのままフォビドゥンはアサギのアストレイに迫りニーズヘッグが振り下ろされた。

 

「くっ、何の!」

 

 アストレイを翻して、メタポリマーストリングを盾にする様に緊急回避。

 ニーズヘッグをやり過ごすと、即座にビームサーベルを振るってアサギが反撃に出た。

 

「はんっ!」

「ぐぅ!?」

 

 小さく鼻で笑ったシャニはアストレイの腕に狙いをすましてニーズヘッグの柄でかちあげる。

 体勢を崩されたところへ、レールガンを展開。

 

「させない!!」

「ちっ、邪魔すんなよ……」

 

 間一髪、マユラのアストレイが突撃。シールドを構えて突撃し、接近と同時に脚部ビームブレイドで蹴り付けようとした。

 不快そうに呟いたシャニはフォビドゥンを下がらせて距離を取る。

 

「──だったら、先にコイツを」

 

 フォビドゥンがクサナギの艦橋前へと躍り出て、フレスベルグの発射体制へと入った。

 高出力のエネルギーが臨界を迎えようとするところで、だが再びそれを阻む機体が現れる。

 

「させるとお思いですか!!」

 

 マユラに合わせて攻撃体勢に入っていたサヤである。

 オオトリ装備の背部のレールガンとビームランチャーを展開。フォビドゥンへと撃ち放つ。

 

「ふふ、私もいくわ」

 

 次いでアイシャも続く。

 ルージュのコンバインシールドに備えられたビームブーメランを投射。さらに9.1m特殊合金製対艦刀で切り掛かる。

 

「くっ、こいつらぁ!」

 

 フォビドゥンはレールガンとビームランチャーを回避。ビームブーメランと対艦刀をニーズヘッグで退けた。

 

「アイシャ! 私と貴方でこれを相手取ります!」

「ん、OK。子猫ちゃん達は雑魚への応戦をお願いね」

「了解!」

 

 ストライクダガーの部隊をアサギ達に任せて────今度はアストレイ・オオトリが対艦刀を構えサヤが前衛に。アイシャがレールガンとコンバインシールドのガトリングを展開して後衛に回る。

 

「行きますよ、アイシャ!」

「サヤ、先走っちゃダメよ」

「その様な無様は晒しませんっ!」

 

 元の技術体系はXシリーズで共通のルージュ。

 そしてXシリーズを基礎にアカツキ向け試作バックパックを装備したM2アストレイ・オオトリ。

 後期発展機のフォビドゥンを相手取ったとしても、機体性能でそこまで引けは取らない。

 その上でタケルに似通った戦い方を得意とするサヤと、後方支援に定評のあるアイシャは、能力も十分でありながら前後衛の相性も良い。

 ビーム系統の近接兵装を持たない事もあって、フォビドゥンはアストレイの対艦刀を防ぐ術がなく、ルージュの射撃兵装もTP装甲で受けるには衝撃が大きいため回避を強いられる。

 

 予想外な強敵の出現に、シャニ・アンドラスは2人との互角の戦いを繰り広げることになった。

 

 

 

「やぁああ!」

「このぉお!」

 

 光の刃が火花を散らす。

 タケルは必死で翻される刃を躱し、払い、迎撃していく。

 

 ユリスが駆るディザスターの猛攻に、タケルとシロガネは防戦一方な展開を強いられていた。

 

 ドミニオンにいるナタル。そしてアズラエルの存在によって出撃前に乱された精神が、タケルからSEEDに至るだけの集中力を奪っていた。

 

「(何をしているんだ僕は! こんな……)」

「考え事してる余裕なんて……ないでしょ、兄さん!」

「くっ、そぉ!」

 

 ギリギリ、胴体に吸い込まれそうであった光刃を防ぐ。

 同時にキョクヤを展開──至近距離で狙うも、それはシールドに防がれ2機は距離を取った。

 

「はぁ、はぁ……」

「────ダメ。全然ダメだよ兄さん」

「何!?」

 

 通信越しに聞こえる酷く落胆したユリスの声に、タケルは表情を険しくさせた。

 

「つまらない……集中してないし、まるでやる気がない。こんなんじゃ面白くないから私あっちに行くね」

「なっ、待て!!」

 

 踵を返して、フリーダムとジャスティスの方へと向かうディザスターを、タケルはすぐに追いかけるが、振り返り様に肩の大型ビーム砲塔が火を噴き、その出鼻を挫かれた。

 

「くっ、逃すか!」

 

 タケルはシロガネを走らせるが、シロガネが追いつくよりも先に、ユリスはクロトへと通信を開いて呼び出す。

 

「クロト、交代して」

「あぁん? 何言ってやがんだユリス!」

「私がそいつ等の鹵獲に回るから兄さんの相手をしておいてって言ってるの。早く行きなさい」

「──んだと!」

「早く行けって言ってるのが、わからない?」

 

 通信越しにかけられる威圧──逆らえば殺す。そんな意思乗せた様な気配に、クロトは息を呑んだ。

 冗談でも脅しでもなく、戦闘中の彼女はそれをできるし、やる。

 クロトはユリスの気配に舌打ちを一つして機体を翻した。

 

「ちっ、勝手な事言いやがって」

「黙りなさい」

 

 もはや返す言葉もなく、レイダーがシロガネを迎え撃ち、代わりにディザスターが、カラミティと共にフリーダムとジャスティスを狙う。

 

「アスラン、あいつ……」

「あぁ、オーブでは上手く退けられたが……気を抜くなよ、キラ!」

「わかってる!」

 

 ディザスターを迎え打つフリーダムとジャスティス。

 ニヤリと舌舐めずりをしたユリスは、一気にスラスターを吹かして接近していった。

 

「あはっ、それじゃ行くよ────人類の夢の産物、キラ・ヤマト!!」

 

 漏れ出る憎しみと共にSEEDを発現させて、ユリスはフリーダムへと迫った。

 

 

 

 

 

「そりゃあ! 抹殺!!」

「ちぃ!?」

 

 ディザスターと入れ替わりで向かってくるレイダー。

 放たれるミョルニルをシロガネは紙一重で回避するも、ミョルニルは鉄球自体にブースターを供えた追尾兵装だ。躱しても背後から迫ってくるミョルニルに、タケルは舌打ちしながらも応じた。

 

「くっ、嘗めるな!」

 

 ビャクヤで、高速で迫りくる鉄球を両断。次いで、再び飛翔しレイダーへと接近していく。

 だが、シロガネを迎え撃つレイダーは、オーブでの攻防を顧みてMA形態へと移行。

 シロガネに対抗するべく機動力を上げつつ、機体に備える射撃兵装を一斉射。シロガネの接近を許さない様に弾幕を張った。

 

 シールドを持たずに、装甲も薄いシロガネでは物理兵装を多く備えるレイダーの弾幕に突っ込む事も出来ず、タケルは被弾をきらって回避軌道を取る。

 

 ビャクヤでの射撃が宙を裂く中、集中しきれてない己の弱さに表情を歪めた。

 

「(何をしているんだ僕は! こんな状況で、戦闘に集中しないでどうする!)」

 

 皆が必死に戦っている。

 同じ想いを持つ者たちが集い、そして共に戦っている。だと言うのに、情けなくも個人の感情に囚われ、力を発揮できてないなどと、そんな無様が許されるだろうか。

 

 否──ユウキ・アマノが手塩にかけて育てた己が、無様を晒すなどあってはならない。

 

 2人の父親に誓ったのだ。

 前を向くと────歩みを止めないと。

 だから、迷ってる暇などない。

 

 揺れていた気持ちに、芯が通る。

 SEEDに至りはしないまでも、集中の度合いを大きく引き上げたタケルは、レイダーへと追従。

 再びばら撒かれたレイダーの弾幕へ躊躇なく飛び込み、そしてその機動性を持って潜り抜ける。

 

「て、てめぇ、来るんじゃねえ!」

「──逃さない!」

 

 接近して斬る。ただそれだけ。

 だが、それをシールドも無しに無傷のままできる事が異常なだけである。

 攻撃が当たらない恐怖に慄きながら、懐に潜り込んできたシロガネに、クロトは敗北を確信した。

 

「落ちろ!」

「ヒィっ!?」

 

 コクピット目掛けて出力される光の刃。それを後退しながらMS形態へと変形し、さらには脚部を犠牲に何とかクロトは生き延びる。

 コクピットを避けられたのはたまたまだ。変形によってどうにか位置がずらせただけに過ぎない。

 即座に追撃が来る──とクロトが思った時には、シロガネは背を向けて別の場所へと飛翔していた。

 

「な、何だってんだ……?」

 

 呆気に取られるクロトがシロガネを見送る。

 

 

 シロガネに乗るタケルの視線の先には、アークエンジェルへとデブリの影から回り込むドミニオンの姿があった。

 

 

 

 

 

 

 ストライクダガーの部隊と、交戦するアークエンジェル。

 周囲にはストライクとバスターが展開して、迎撃に応じていた。

 

 そして気がつく……戦闘の混乱に乗じて、いつのまにかドミニオンが索敵から逃れていることに。

 マリューがハッとして声を上げた。

 

「ドミニオンは!?」

「くっ、デブリが多く、周辺では……なっ!? グレー19、アルファにドミニオンです!!」

 

 それは、すぐそばと言って差し支えない。

 それも側面を突く形となる、最高の奇襲状況。

 

「いつの間に!」

 

「ゴットフリート、てぇ!」

 

 驚きに染まっている暇すら与えず、ドミニオンから砲火が放たれる。

 大きな閃光が宇宙をかけ、アークエンジェルに迫った。

 

「回避!」

 

 ノイマンが即座に艦を動かして、間一髪でゴッドフリートを回避して見せる。

 しかし、それだけでは終わらない。

 

「オレンジデルタよりミサイル急速接近!」

「何ですって!?」

 

 開戦と同時にドミニオンから放たれていたミサイルが、網にかかったアークエンジェルを捕捉し自立制御で稼働。

 近距離から突然現れたミサイルにマリューが慄いた。

 

「迎撃!」

「ダメです、間に合いません!」

 

 状況を察したキラが、フリーダムを翻してバラエーナを展開。

 

「くっ、アークエンジェルが!」

「逃すわけないでしょ!」

 

 しかし、ユリスがそれを許さない。

 発射体勢を取ったフリーダムに、高出力ビームのシュヴァイツァとビームライフルがフリーダムを掠める。

 

「ちぃ、やらせねえよ!」

「そんなもんで!」

 

 パーフェクトストライクのアグニと、バスターの対装甲散弾砲が迎撃に放たれるが、それでも数発が迎撃を抜けた。

 

 アークエンジェルを轟音と爆炎が襲う。

 

 右舷のスラスターと、ゴットフリートの1番がミサイルの直撃を受けてしまった。

 

「アークエンジェルが──」

「あなたまでよそ見しないでよぉ!!」

「くっ、そぉ!!」

 

 接近してきたディザスターのビームサーベルを受けながら、フリーダムは距離をとりつつビームライフルで牽制。

 しかし、SEEDを発現したユリスにはまるで当たる気配が無かった。

 

 

 そんな中、ナタル・バジルールは次の一手を既に準備していた。

 

「スレッジハマー、てぇー!」

 

 追撃にアークエンジェルへと放たれるミサイル──その数10。

 先立って控えさせておいた自立誘導ミサイルと、装填していた本命のミサイルによる波状攻撃。容赦のないミサイルの雨に、撃沈のニ文字が浮かぶ。

 

 ストライクとバスターの迎撃砲が再び火を噴くが、先より数を増したミサイルの雨をすべて撃ち落とせるわけもない。

 絶体絶命──だが次の瞬間。

 

「させるかぁ!!」

 

 閃光が翔ける。

 SEEDを発現したタケルは、最大戦速でシロガネを駆り、背部メインスラスターに突き刺さる花弁の様なサブスラスターを射出。

 

「いけ────ジンライ!」

 

 射出された4枚のサブスラスターが光の刃を帯びて高速で飛翔。アークエンジェルへと迫るミサイルをすべて切り落とした。

 

 シロガネ背部のサブスラスター兼、分離式高速機動兵装群──ドラグーン機動兵装“ジンライ”。

 イメージインターフェースにより、複数の機動兵装ブレードを脳波でコントロールして敵を穿つ、ビャクヤとキョクヤに次ぐ、シロガネに搭載された最後の武装である。

 

 

 

「うーん、惜しい。すごい攻撃だと思ったんですけど……相手もなかなかやりますねぇ」

 

 ドミニオン艦橋では、少しばかりの落胆の声がアズラエルから挙がった。

 

「防がれるとは思っていませんでしたが、あちらのMSを少し甘く見ていた様です」

「あの銀色君も厄介だね。どう? どれか一つでも捕まえられるかな?」

 

 アズラエルの問いに、ナタルは逡巡する。

 既にレイダーが撤退してきている今、状況は不利になりつつあった。

 アークエンジェルは先の損傷でしばらく動けないだろうが、それでも敵方のMSは健在。

 ストライクダガーの数も減ってきている今、チャンスはそれほど残されていないだろう。

 

「自分は、やれることをやるだけです────ゴッドフリート照準。赤いMSを牽制する! 同時にヘルダートとバリアントで銀のMSを牽制! ディザスター、カラミティ、白のMSを鹵獲しろ!」

『やってみるけど、多少壊れてても、文句は言わないでね』

 

 交戦的な声音と言葉を送ってくるユリスに、未だ違和感を拭いきれない中、ナタルは攻撃の指示を下した。

 

「てぇー!」

 

 一斉に放たれるドミニオンの砲火。

 同時にカラミティも全兵装の一斉掃射。そして隙間を縫う様にディザスターがビームサーベルを出力して接近する。

 

 

 

 ジャスティスを、フリーダムを、そしてシロガネを狙って──幾多の攻撃が一斉に宇宙に放たれた。

 

 




ようやくお披露目、シロガネの切り札。
カッコよく描けたかな。
でも相変わらず迷っちゃう主人公。まぁ、大好きだから仕方ないね。

ちょっとこれからは更新が躓きそうです。
戦闘多くて、難しいので……


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